全国初!つくば市がロボットスーツで図書館司書業務の負担低減へ(2020年8月)

茨城県つくば市では全国初の取り組みとして、腰を使った作業をサポートするウェアラブルロボットスーツを図書館に導入することになったようです。ウェアラブルロボットとはどのようなものか、つくば市がロボットを導入するに至った経緯などについてもご紹介します。


つくば市立中央図書館に「ウェアラブルロボット」が導入開始

茨城県つくば市では、平成30年8月1日からつくば市立中央図書館に、重いものを持ち上げる際の腰部への負荷を軽減することができるウェアラブルロボット「HAL(R) 腰タイプ 作業支援用」を導入しました。図書館では、業務の中で大量の書籍の上げ下ろしなど腰に負荷のかかる力作業が日常的に発生するため、ロボットによって図書館司書の負担を低減できると期待されているようです。

ウェアラブルロボット

「ウェアラブルロボット」とは「人の体に装着できるロボット」のこと

「HAL(R) 腰タイプ 作業支援用」とは、つくば市に本社を構えるCYBERDYNE株式会社(サイバーダイン株式会社)が開発したウェアラブルロボットです。ウェアラブルロボットのウェアラブルとは、「wearable」と書き「身につけられる」という意味ですが、ウェアラブルロボットとはその名の通り人体に装着して使うロボットのことです。

「HAL(R) 腰タイプ 作業支援用」は腰に装着するタイプのウェアラブルロボットで、腰を使った作業を補助します。仕組みとしては、腰を使って作業しようとする際に脳から筋肉へ送られる微弱な信号である「生体電位信号」を、ロボットのセンサーが読み取り、腰に装着した補助部分のモーターを動かすことで、人体の動作をサポートし、より楽に重いものを持ち上げられたり動かしたりできるというものです。

開発者のCYBERDYNE株式会社は、筑波大学の教授の研究成果を活かすため、医療福祉機器の研究・開発などを行う企業です。「HAL(R) 腰タイプ」は主に介護の現場での活用される「介護支援用」と、今回図書館に導入されることになった日常的な重量物を運ぶ負荷軽減を目的として開発された「作業支援用」があり、どちらも「つくば市トライアル発注認定制度」で認定されています。「HAL(R) 腰タイプ」シリーズの開発は医学的・解剖学的観点からの解析・シミュレーションに基づいて行われ、人の腰部負荷を低減する機能の実現に成功したようです。

画像:「HAL(R) 腰タイプ 作業支援用」

HAL(R) 腰タイプ 作業支援用

Prof. Sankai, University of Tsukuba / CYBERDYNE Inc.

画像:「HAL(R) 腰タイプ 介護支援用」

HAL(R) 腰タイプ 介護支援用

Prof. Sankai, University of Tsukuba / CYBERDYNE Inc.

屋外でも使用できる防塵・防水機能

また今回つくば市に導入された「作業支援用」の製品には、従来の製品には無かった防塵・防水機能が加わったため、図書館業務の中でも移動図書館業務など、屋外での作業にも役立てられるとのことです。

ウェアラブルロボット

ロボット導入に至った「つくば市トライアル発注認定制度」とは

つくば市で図書館にロボット導入が実現することになったのは「つくば市トライアル発注認定制度」事業によるものです。「HAL(R) 腰タイプ 作業支援用」については、つくば市の消防本部に導入された実績があり、市内で2例目として図書館に導入されることになったようです。全国では図書館にウェアラブルロボットが導入されるのは初の試みだということです。

「つくば市トライアル発注認定制度」とは、つくば市内のベンチャー企業や中小企業が開発した、新規性が高く優れた新商品や新サービスの普及を支援する制度です。つくば市が定めた基準を満たす商品と、その商品を開発・生産する企業を認定し、認定されるとつくば市のお墨付きとしてホームページで紹介されるだけでなく、市の業務に導入される場合があります。


つくば市が認定商品等を試験的に購入し評価する制度は「つくば市トライアルユース制度」として並行して実施されているようです。

「つくば市トライアル発注認定制度」は平成27年度から開始され、これまでに14事業者の15製品・サービスが認定されてきました。その中で、実際に8製品がつくば市の機関に導入されています。

例えば、つくば市中央図書館では平成30年3月から、同じくトライアル発注認定制度で認定された株式会社Doog製の自動追従運搬ロボット「サウザー」が導入されています。

詳しくはこちら>「つくば市トライアル発注認定制度」つくば市ホームページ
http://www.city.tsukuba.lg.jp/jigyosha/shigoto/sangyo/1001723.html

CYBERDYNE株式会社とは?

サイバーダイン株式会社は茨城県を代表する大学である筑波大学大学院システム情報工学研究科・サイバニクス研究センターの設立者である山海嘉之教授の研究成果で社会貢献をすることを目的として、2004年に設立された会社です。茨城県つくば市に本社があり、社員にも筑波大学出身者がいるなど、つくば市のご当地ベンチャー企業として、これまでに様々な研究・開発と商品化の実現を行ってきたようです。

今回つくば市に採用された「HAL(R) 腰タイプ」シリーズのような、身体機能の増強をするものだけでなく、治療を目的とした医療用の機器の開発も行います。図書館司書だけでなく、障がい者の方や高齢者の方の生活をサポートする機器もあり、大学での研究成果が医療や福祉の現場で活かされています。

また、サイバーダイン株式会社はドイツなど海外にもグループ拠点を持ち、技術力を活用したリハビリ施設の展開などで成果をあげているようです。そのほかにも一般の人が利用できるフィットネス施設やエンターテイメント事業なども展開しています。つくば市発のサイバーダイン株式会社は国内外で活躍を続けており、つくば市が本書所在地の自治体として同社の製品を認定することは、つくば市の技術力をアピールし盛り上げることにもつながるかもしれません。

まとめ

このページでは、茨城県つくば市が全国初の取り組みとして図書館に導入したウェアラブルロボットスーツについてご紹介しました。図書館での仕事は意外にも力仕事が多く、腰部への負荷が多いものなのですが、そのような図書館司書の業務負担を低減するために、つくば市ではロボットの力を活用することに乗り出しました。つくば市中央図書館で働く司書の皆さんには朗報でしょう。

今回全国で初めて図書館に導入されたロボットの他にも、つくば市では「つくば市トライアル発注認定制度」や「つくば市トライアルユース制度」として、市内のベンチャー企業や中小企業が開発した優れた商品を認定し、市の機関に導入することで実際に使用し、更に評価する事業を展開しています。この制度によって、市内の地元企業を応援し、つくば市が発信源となる新規性の高い優れた商品・サービスの研究・開発を促しており、つくば市独自の地元PRにもつながる取り組みと言えます。

全国の自治体では今後人手不足が懸念される中、さまざまな対策が練られ始めています。つくば市のようにロボットの力を活用しようと動き出す自治体のほかにも、AIを活用する自治体も出てきており、公務員の業務は今後変革していくでしょう。特色ある取り組みを始めたつくば市などの先進的な自治体の動きには注目したいところです。

本記事は、2018年11月18日時点調査または公開された情報です。
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