社会人から公務員へ(5)筆記試験対策Part.1(傾向と対策)

公務員試験合格アドバイザーとして活動する「イマイ カツヤ」さんによる社会人から公務員へ転職を考える方向けのハウツーコラムです。

第五回のテーマは「筆記試験対策Part.1(傾向と対策)」についてです。


はじめに

社会人から公務員へ転職された「イマイカツヤ」さんのハウツーコラムシリーズ第五回です。

第四回は「受験する自治体選びと経験者採用」でした。続いて、第五回のテーマは「筆記試験対策Part.1(傾向と対策)」です。

> 第四回:「受験する自治体選びと経験者採用」

100点を目指す必要はない!

ほとんどの試験において、筆記試験は1次試験として位置づけられており、これを通過しないことには、面接試験を受けることすらできません。つまり、この筆記試験は受験者を「ふるい落とす」ための試験なのです。

自治体によっては何百人、何千人の受験者がいる中で、全員を面接する時間はありません。(最近では全員を面接する自治体も出てきましたが、まだまだ一部にとどまっています。)

本来の意味での平等のためには、全ての受験者を面接で判断するべきなのでしょうが、時間も人手もそこまで避けないのが現実です。そこで、最低限のレベルにも達していない受験者を「切る」ために、筆記試験が存在しているということなのです。

この記事を読まれているのは、大変忙しい社会人の方が大半だと思います。 勉強に費やせる時間も、大学生やフリーターとは比較にならないくらい少ないでしょう。そんな中で、筆記試験を通過するために、最も重要な考え方とはなんでしょうか?

それは、「完璧を目指さない」こと。

先程も申し上げたとおり、筆記試験は「落とす」ための試験です。公務員試験の筆記試験において、100点満点を取る必要はないのです。必要最小限の勉強で、落とされなければこちらの勝ちなのです。

教養試験ってどんな試験?

教養試験は、一般知識分野と一般知能分野に分類が可能です。順番に解説していきます。

一般知識分野の問題

中学校や高等学校の教科となっているものが多いため、多くの方には馴染みが多いと思います。


市役所試験の場合、問題の難易度もそれほど高いとは言えませんので、じっくり取り組めば、必ず得点源とすることが可能です。

ですが、この一般知識分野でネックとなるのは、どの科目も非常に範囲が広いということです。全ての科目を完璧にしようと思ったら、いつまでたっても勉強を終えることができなくなってしまいます。

完璧を追い求めるのではなく、苦手な科目は最低限の勉強を、得意な科目はある程度力を入れた勉強をと、力の入れ具合を調整してください。

つまり「コストパフォーマンス」を意識した勉強が重要ということですね。

<政治>

この分野では、高校で学習する「政治・経済」の政治部分が出題されると考えておけばよいでしょう。

センター試験の政治・経済と比較すると、若干こちらのほうが難しいかなというくらいのレベルです。一般常識として聞いたことのある用語や概念が出題されることも多いので、それほど恐れる必要はないのではないでしょうか。

特に出題されやすい内容としては、憲法や政治制度、選挙制度、基本的人権などでしょうか。時事的な知識が出題されることも多いので、試験勉強だけではなく、ニュースなどもチェックするようにしてください。

3問~4問の出題が想定されるので、頻出の問題については落とさないよう対策しておきましょう。

<経済>

ミクロ経済やマクロ経済などの「経済原論」と日本や世界の「経済事情」が出題されることが多いです。

大学時代に経済を学んだ人であれば、楽に得点できるくらい基本的なものが出題されます。逆に、全く経済に馴染みのない学部を卒業された方や経済分野に苦手意識を持っている人にとっては、負担が大きいでしょう。

出題は2問~3問の場合が多いので、基本的な部分だけを押さえ大まかな動向を把握するだけでも良いかもしれませんね。浅く触れておけば、1問でも正解できる可能性はありますので、完全に捨てることだけはやめておきましょう。

<社会>

高校時代に学習した「現代社会」の範囲から出題されると考えてよいでしょう。

労働問題や人口問題、国際問題、少子高齢化問題や環境問題など、かなり幅広い分野からの出題が予想されます。

ただ、問われるのは基本的なものがほとんどなので、ニュースや白書を通じて、知識を広げていってください。例年、1問~2問の出題となりますので、手を広げすぎて他の科目に影響が出ないよう注意するようにしましょうね。

<日本史>

高校時代に学習した「日本史」の教科書の範囲から出題されることが多いようです。


難易度の低い「日本史A」ではなく、比較的難し目な「日本史B」レベルの内容が問われますので、苦手な人は勉強するのが苦痛になってしまう可能性があります。

2問~3問の出題が想定されますが、高校時代に全く勉強していなかった場合は、1問正解するのも難しいかもしれません。

理系の方や世界史・地理を選択した方は、出題頻度の高い分野に絞って勉強をするようにしましょう。範囲が広いので、勉強のコストパフォーマンスはあまり高くないと言えます。語呂合わせなどを活用して、効率よく学習していきましょう。

<世界史>

上で述べた日本史と同じように、高校時代の「世界史」の教科書から出題されることが多くあります。

難易度も、「世界史A」ではなく「世界史B」のレベルに近いようです。日本史よりも範囲が広いので、学習にはより時間がかかります。

私はカタカナを覚えるのが苦手で日本史を選択したので、公務員試験の世界史にはあまり力を入れませんでした。

出題が2~3問なので、1問くらいは正解したいところですが、他の教科に力を入れたほうが効果が出るかもしれません。

日本史も世界史も、突き詰めると趣味の世界に入ってしまいますので、あまり深入りして時間を使いすぎないように注意してくださいね。

<地理>

高校時代の「地理」の教科書の範囲から問題が出題されています。

日本史・世界史と同様に「地理B」のレベルの内容が問われます。分野としては、日本地理に関する問題は少なく、世界の地形や気候、農業や工業についての問題が多い傾向にあります。

一般常識として頭に入っていることも多いと思いますので、日本史・世界史に比べて正解できる可能性は高いのではないでしょうか。

例年、2問の出題となっていますので、1問は確実に正解しておきたいところです。
とは言え、日本史・世界史と同様に出題される範囲が膨大であるため、無理に時間を割く必要はないと言えます。

<数学>

高校時代の「数学Ⅰ」と「数学A」の分野から出題されることが多く、まれに、「数学Ⅱ」からの出題も見られます。

数学と聞くだけで耳を塞ぎたくなるほど、苦手意識を持っている人も多いと思います。1問だけしか出題されない可能性が高いので、捨ててしまいたくもなりますが、基本的なレベルの問題であることが多いので、ポイントを絞って勉強してください。

特に出題されているのは、2次関数や2次方程式といった分野です。理系の方や数学が得意だという方は、確実に得点を取りたいところですね。

<物理>

高校で学習した「物理」の分野から多く出題されます。

特に出題されるのは、力学の分野です。物理に馴染みのない人は、力学の中でも「力のつりあい」だけで良いので学習してみてはいかがでしょうか。

出題は1問だけのことが大半なので、それ以外の分野は捨ててしまって良いかもしれません。あまりこだわらなくて良い分野の一つと言えるでしょう。

<化学>

こちらも、高校で学習した「化学」の分野で出題が多くなっています。


出題範囲が広く、覚えることも多いため、苦手な人や文系出身の方は、勉強に取り組むのが辛いかもしれませんね。出題は1問から多くても2問ですので、学習効率を考えると捨てることも選択肢とするべきでしょう。

毎年テーマが異なり対策が立てづらいことから、得意な人以外はあまり時間をかけないほうが良いと思います。

<生物>

上記の理系科目と同様、高校の「生物」と同じような内容が出題されています。

文系であっても高校時代に学習した人が比較的多い印象ですが、得点源となるほどではないかと思います。

数学・物理・化学と違い、暗記すれば得点が望めるのですが、とにかく範囲が広いため、ポイントを絞ることが最重要です。出題数も1問から2問であるため、この分野に必要以上に時間を使うことのないようにしましょう。

<地学>

あまり馴染みはないかもしれませんが、高校の「地学」と同じ分野から出題されます。

天気や地球のことなど、一般常識として知っていることがあるかもしれませんので、そういった出題があればラッキーですね。

範囲が広く、出題数も1問であるため、学習したことのない人は捨ててしまっても良いかもしれません。最低限ニュースをチェックして、時事的な問題を落とさないようにすればオッケーでしょう。

一般知能分野の問題

一般知能分野は、公務員試験特有の科目であり、教養試験の半分を占めます。

文章理解・判断推理・数的推理・資料解釈の大きく4つに分けられ、筆記試験の合否を分ける分野と言っても過言では有りません。

とっつきにくい問題も多く、苦手意識を持つ人も少なくないのですが、勉強すればするだけ結果が出るという特徴もあります。

試験範囲は非常に幅広いのですが、パターンさえ掴んでしまえば頻出の問題は攻略できますので、効率よく学習を進めていきましょう。

<文章理解>

用意された文章を読み、その内容を把握するという点では共通しているのですが、用いられる言語が「現代の日本語」「英語」「古文及び漢文」の3パターンに分けられます。

文学作品ではなく、論理的に書かれた評論などが多く出題される傾向にあります。問われ方としては、内容と合致する選択肢を選ぶ「内容把握」、文章全体の要旨に合う選択肢を選ぶ「要旨把握」、文中の空欄に入る語句や文章を選ぶ「空欄補充」がほとんどです。

現代文と英文が3問ずつ、古文または漢文が1問というのが多くの自治体での出題形式です。現代文については、特別難しい問題はありませんので、苦手な人でも多く問題をこなし、全問正解したいところです。

一方、英文と古文漢文については、単語の壁が立ちふさがりますので、苦手な人は逃げ出したくなってしまうかも知れません。

センター試験よりも難しい問題はあまり出ませんので、過去問演習の中で出た単語は必ず暗記し、なんとか対応できるようにしてください。

<判断推理>

クイズやパズルのような問題が出題されるのが判断推理です。

文章問題である言語分野と図形問題である非言語分野に分けられる場合もあります。特に難しい問題が出るというわけではないのですが、今まで経験したことがない問題が多いため、初見で解くのはなかなか難しいでしょう。

ただ、パターン化された問題も多いため、勉強を繰り返せば得点源にすることができます。6問程度出題されることが多いので、落としても1問で切り抜けたいところです。


また、気をつけていただきたいのが1問にかける「時間」です。時間をかければいくらでも解けるという問題も多いのですが、ここに集中しすぎて他の問題を解く時間がなくなってしまっては元も子もありません。

準備の段階から、「解答時間」にも注意を払うようにしてください。

<数的推理>

小学校の算数や中学校・高校の数学で学習したような問題が、数的推理で出題されます。

算数や数学が苦手だった方は、多くいるのではないでしょうか。私もその一人だったのですが、結果的には判断推理を得点源とすることで筆記試験を乗り越えてきました。

公務員試験での出題においては、それほど難易度が高くないことに加え、選択肢式でもあるので、取り組みやすい問題が多いです。答えがわかればいいのですから、数学にありがちな「計算過程」や「証明」といったものも必要ありません。

1問あたりに割くことのできる時間はこちらも非常に短いため、準備の段階から「解答時間」を意識しましょう。

<資料解釈>

グラフや表などの資料を見て、それらから読み取れることを問われます。

ほとんどの場合は数字が書かれているだけの簡単な資料ではあるのですが、この問題の肝は、いかに早く回答できるかということ。1問だけしか出題されないことがほとんどですが、正確かつ素速く正解したいところです。

必要なのは、慣れただ一つ。何度も過去問に触れるとともに、仕事の中でも意識して表やグラフを見て見るようにしてください。

以上、簡単に教養試験の内容をご説明いたしました。

次回は、具体的にどうやって勉強していけばよいのかということを解説いたしますので、ぜひ御覧ください。

※ご不明点のお問い合わせや公務員試験に関するご相談がある場合は、お気軽にお問い合わせください。

公務員試験合格アドバイザー「イマイ カツヤ」ページ

本記事は、2018年10月18日時点調査または公開された情報です。
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