安倍晴明は式神を使わない?実は「国家公務員」だった陰陽師

陰陽師といえば、漫画等の影響で「式神を召喚して戦う」「呪術を用いて相手を呪う」ことを生業にしているイメージがあるかもしれませんが、実際の陰陽師が「国家公務員」として「天気予報」や「占い」を職務としていたことをご存知でしたか?

今回は、「陰陽師」と「国家公務員」の関連性についてご紹介します。


式神は召喚しない? 国家公務員である「陰陽師」の本当の働き

陰陽師といえば、野村萬斎さんが「安倍晴明」を演じた映画『陰陽師』を思い出す方も多いのではないでしょうか? 本作では、この世とあの世が繋がり、魔物たちが存在していた平安時代に、式神を用いて魔物を鎮めるために活躍していたのが「陰陽師」でした。

映画や漫画を見ていると、陰陽師は、「式神を召喚して戦う」「呪術によって敵を呪う」というある種「オカルト」的な仕事を担当していたイメージがあります。

しかし、実際の陰陽師は、朝廷の命を受けて「天気予報」や「占い」を行う「国家公務員」でした。

陰陽師は「中務省」に所属する「官職」=「国家公務員」だった

陰陽師は、奈良時代・平安時代に制定された「律令制」で定められた「官職」です。官職は今で言う「国家公務員」にあたり、当時の政府にあたる「朝廷」に仕えていました。

朝廷には、「二官八省」という中央官庁が存在し、神祇祭祀を司る「神祇官」と国政一般を司る「太政官」からなる【二官】、そして太政官の下に、「中務省」、「式部省」、「治部省」、「民部省」、「兵部省」、「刑部省」、「大蔵省」、「宮内省」の【八省】がおかれ、国の政治を運営していました。

陰陽師は、そのなかでも天皇に使える「中務省(なかつかさしょう)」内の「陰陽寮」に所属していた官職です。中務省とは、天皇の補佐や官内の政務を担う省で、八省の中でも最も重要な省とされていました。

天気予報や占いは「陰陽寮」だけの特別な仕事だった

今の時代であれば、天気予報や占いは誰でも自由に行うことができ、官職(現在の国家公務員)が特別に行う必要もないように感じます。ですが、律令制の時代では、陰陽寮に所属する者以外は天文観測や時刻測定を行うこと、それらの文献を持ち出すことが厳しく禁じられていました。

そのため、陰陽師が所属していた陰陽寮では、「国家機密」レベルで占い・天文・時・暦の編纂が行われていました。陰陽寮には、陰陽道に長けた「陰陽博士」、今でいうカレンダーにあたる暦を作成する「暦博士」、天文を見て吉凶を占う「天文博士」、時刻を知らせる「漏刻博士」などの専門家が所属していて、各担当者が得た情報は、外部に漏れることがないようにひっそりと天子に伝えられたそうです。

つまり、陰陽師は、天気予報や占いに長けた科学者のような存在だったのです。

なぜ天気予報や占いが禁じられていたのか

奈良時代・平安時代には、国のトップとして「天子」が存在していました。

天子とは、読んで字の如く「天に代わって使える者」という意味であり、天の命を受けて天下を統べる存在として崇められました。そのため、天候の変化や世の移り変わりを知ることは、「天からのメッセージ」であり、天子だけが知ることができるとても特別なことだったのです。


そして、この天からのメッセージを天子に代わって解析し、助言することは陰陽師だけに許されていました。

安倍晴明は「占い」と「天気予報」のプロフェッショナルだった

陰陽師のなかでもとくに有名な存在といえば「安倍晴明」です。最近だと、フィギュアスケートの羽生結弦選手が、平昌冬季オリンピックにて安倍晴明をテーマにしたプログラムを披露したことが記憶に新しいですよね。

そんな安倍晴明は、40歳頃から活躍し始めた遅咲きの陰陽師でした。40歳といえば今でこそ働き盛りの年齢ですが、当時の平均寿命からすると高齢の域にいる年齢です。表舞台に出てくるまでは、陰陽道や天文道といった学問を学んでいたそうで、ひそかに占いの名人として知られていたそうです。

その後、当時の天皇や貴族にまで名が知られるようになり、目覚ましい活躍をするようになりました。有名なエピソードだと、病気になった天皇を禊で回復させた、雨乞いの儀式で干ばつから都を救ったなどがあります。まるで魔法のようなエピソードですが、全て40年以上もの期間で培った知識に基づいた奇跡なのでしょう。

また、安倍晴明は、80歳を過ぎても活躍していたことも奇跡的なことでした。というのも、当時の平均寿命はおよそ30歳ほど。80歳ともなると、平均寿命の2倍以上も生きていたことになり、そのことも安倍晴明の名を知らしめる一因になっていたようです。

安倍晴明は平安時代のヒーローだった?

今も広く知られる安倍晴明は、平安時代には『今昔物語集』、鎌倉時代には『平家物語』に登場するなど、当時から国民に知られるスター的な存在だったそうです。

また、史実に残る安倍晴明といえば、「母親は人間ではなく森の狐だった」や「法力でカエルを触れずに殺した」、「12の式神を使役していた」など「超人的」な存在として描かれています。今となってはその真偽はわかりませんが、当時の安倍晴明は、平安の世を救ってくれると信じられたヒーロー的存在だったのかもしれません。

まとめ

今回は、実は「国家公務員」であった「陰陽師」についてご紹介しました。映画やアニメなど、フィクションのなかの存在であった陰陽師が、実は国家公務員だと知るとなんだか少しだけ身近な存在になったように感じます。

ちなみに、京都府上京区晴明町には、安倍晴明の伝説を伝える「晴明神社」があります。この神社は、85歳で亡くなった安倍晴明の活躍を称え、一条天皇が建てたとされています。晴明神社は、魔よけや厄除けのご利益があるとされているほか、安倍晴明が使役されていたとされる式神が隠れているといわれています。

国家公務員として活躍していた安倍晴明ですが、その実、本当に式神を用いて平安の世を陰から守っていたのかもしれません。ひょっとすると、晴明神社に行けば、安倍晴明の式神が隠れているかもしれませんね。

本記事は、2018年10月24日時点調査または公開された情報です。
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