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【現場の発言】大阪刑務所と福岡刑務所の刑務官が語る現場の声

【国家公務員「刑務官」のコラム】
「刑政」には毎号、「現場の発言」というコーナーに現場職員の生の声が掲載されます。

今回は、その中から大阪刑務所と福岡刑務所の刑務官が語る現場の声を紹介しましょう。執筆は、元・刑務官の小柴龍太郎氏です。

2019年11月06日更新

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目次
「現場の発言」
大阪刑務所の中辻さんの声
福岡刑務所の仲里さんの声

「現場の発言」

「刑政」には毎号、「現場の発言」というコーナーに現場職員の生の声が掲載されます。「刑政」の編集室がテーマを設けて、それに対して全国の矯正職員が自分の思いなどを披露するコーナーです。

読んでみると千差万別でひとくくりにはできない声のオンパレードであり、現場の懇親会で酒を酌み交わしながらワイワイガヤガヤと好き放題言い合うような様相を呈していて、面白いです。

多くの職員用広報誌のたぐいでは、このようなコーナーもどこかお行儀が良くて、建前だけのお話ばかりで終始するような印象を持っているのですが、一般公開されているのにもかかわらず、この「刑政」では実に現場の生の声が生き生きとオープンにされていると思います。むしろ、こんなことまでオープンにして大丈夫かと思うほどです。

そこは明治21年創刊のこの「刑政」の歴史なのでしょうか、あるいは刑務官たちの開けっ広げな気質から来るものでしょうか、ともあれなかなか貴重な現場の声が披露されているので、紹介するに値すると思います。

今回は、その中から大阪刑務所と福岡刑務所の刑務官が語る現場の声を紹介しましょう。ちなみに今回のテーマは「「矯正職員の使命」に関連する体験談②」というものです。

大阪刑務所の中辻さんの声

中辻さんは、工場の担当さんのようです。面倒を見た受刑者が釈放になる際、中辻さんにこんなことを言うそうです。

「本当にお世話になりました。これからは絶対に人に迷惑を掛けずに真っ当に生きていきます」
「先生方にあえてお礼は言いません。社会で真面目に生きていくことが、本当の恩返しになると思っているので」

そして、この覚悟を語った受刑者は二人とも1年以内にまた大阪刑務所に戻ってきたそうです。それを中辻さんは、

「B指標の累犯受刑者を収容する大阪刑務所では日常的なことである」と淡々と表現しています。

そうです。これが現実なのです。

出所前の受刑者の口上は、きっと本心から出たものだと思います。そう信じたいです。しかし実際の更生・社会復帰はそう簡単ではありません。その結果、彼らは頭をかきかきまた刑務所に戻ってきます。世話した刑務官は当然がっかりしますが、それが繰り返されるとだんだん慣れてきて、特に感情が動くことはなくなります。

しかし、だからといって、受刑者の更生を諦めたわけではありません。いつかは立ち直るだろう、更生を果たすだろうと自分に言い聞かせ、また彼らの面倒を見るのです。これが現実であり、これがプロフェッショナルです。

大阪刑務所にいる受刑者の平均入所度数は4回だそうです。つまり、何回も刑務所のお世話になっている受刑者ばかりが集まっているわけです。そして最高入所度数は35回とのこと。おそらく常習累犯窃盗か詐欺の人で、刑務所から出たらすぐまた万引きとか無銭飲食をやって舞い戻るタイプです。

ここまでになるとさすがに更生・社会復帰は相当手ごわいことになります。辛抱強いベテラン刑務官もほとんど諦めてしまうような人です。

でも、そんな大阪刑務所で勤務する中辻さんはこう言います。

「被収容者を決して信じてはいけないが、彼らが更生する可能性は信じないといけない」

被収容者とは受刑者と未決拘禁者などを総称する言葉です。彼らの言うことをそのまま信じることは保安警備上の観点からは危険が伴うのでできないが、彼らの更生の可能性は信じるというのです。この境地まで達するにはなかなか大変だと思うので、この中辻さんはとても優秀な方だと思いました。

福岡刑務所の仲里さんの声

仲里さんは、福岡刑務所で反則行為をした受刑者の調査を担当しているそうです。規律違反をした受刑者などを取り調べて事実関係を明らかにする仕事をやっている人ですね。

多くの受刑者は素直に非を認めて懲罰を甘んじて受けるのですが、中には否認して徹底抗戦をする人もいます。懲罰に付されれば冤罪だとして不服申立てをしたり、裁判沙汰にしたりする人もいます。

万一それで受刑者の言うことの方が正しいと認定されたり、敗訴したりしたのでは仲里さんの仕事ぶりに問題があったということになりかねません。

ですから、とても慎重に、さりとて不正は許さないという強い気持ちを持って仕事をしなければなりません。とても難しい分野ですから、そのような仕事を命じられている仲里さんは優秀な方なのだろうと想像します。

その仲里さんは、上司や先輩からいろんなことを教わって現在に至っているのだそうですが、その中の一文がとても印象的でした。

「最もやっていけないことは、『これしかない、こいつしかない』などと先入観を持」つこと。

そうですね。とっても大事なことですね。一般社会の警察や検察でも求められる基本的姿勢なのですが、塀の中でもそれは変わりません。

たぶん仲里さんは特別司法警察職員(刑務所の中の犯罪に対して捜査権が付与されている刑務官)に任命されていると思いますので尚更です。

それに、「ルールに違反すれば必ず摘発され相応のペナルティを受ける」ことを刑務所でしっかり教えることは、彼らの再犯防止や更生にも役立つことですから、仲里さんにはこの金言を胸にこれからも頑張ってほしいと思いました。

(小柴龍太郎)

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