国家公務員<専門職>「労働基準監督官」の仕事内容について

ブラック企業など会社・雇用主の不正を取り締まる「警察」とも呼ばれる「労働基準監督官」の仕事内容についてまとめます。

厚生労働省の国家公務員専門職である「労働基準監督官」は、あらゆる業務を通して働く人を守っています。今回は、その仕事内容についてまとめました。


「労働基準監督官」の仕事内容

「労働基準監督官」はいわゆる「ブラック企業」などの会社を取り締まる「警察」とも呼ばれ、事業主(企業)が労働法に違反していないか調査し、もし法令違反が判明したら、逮捕・送検することができる特別な権利を持つ国家公務員です。

「労働基準監督官」や、「労働基準監督官」が勤務する「労働基準監督署」は、通称「労基(ろうき)」とも呼ばれます。

例えば、管轄する地域内の企業について未払い給料がないか、最低賃金を守っているか、という賃金に関する案件や、過剰な残業はないか、不当解雇はないかなど、適法な労働条件が確保されているかどうか厳しく調査する業務があります。

下記では「労働基準監督官」の詳しい業務の内容について、解説します。

「労働基準監督官」の仕事1:監督指導業務

「労働基準監督官」の監督指導業務は、「臨検監督」という会社への立ち入り調査をし、問題がある場合には行政指導を行う業務です。

「臨検監督」で「労働基準監督官」は予告無しに工場や事務所などの事業所に立ち入る権利があるため、ありのままの企業の状態を見極めることができます。

ただし、実際には予告してから立ち入るケースが多いようです。

立ち入り調査では「労働基準監督官」は会社の帳簿や書類を確認したり、従業員に尋問する権限があります。

事前に内通者がいる場合など、臨検監督の前に不正が疑われる情報を仕入れている場合には、証拠としていかに事業主から正しい情報を引き出すかが問われます。

企業側から虚偽の書類を提示されることもあり、正しい判断と不正を許さない厳しい対応が求められる非常に緊張感のある業務のひとつだと言えます。

また、現場での監督指導業務が無いときには、労働基準監督署や労働局など、所属する署内の窓口や、電話での相談業務も行います。


この相談がきっかけで、立ち入り調査に発展し、最終的には行政指導や労働基準関係法違反による逮捕・送検につながる場合もあるため、働く人の声なき声を地道に、丁寧に聞くという業務も重要です。

「労働基準監督官」の仕事2:安全衛生関係業務

「安全衛生関係業務」は、「労災」つまり「労働災害」を無くすために職場の安全管理について監視する業務です。

日本では毎年およそ1,000人もの労働者の方が勤務中に亡くなっているのに加え、重い障害が残る事故も起きています。そういった悲劇が繰り返されぬよう、個別に企業を訪問して安全指導をしたり、実際に起きてしまった労働災害の原因を探る「災害調査」などを担当します。

労働災害防止についての講習会を行うこともあり、様々な方法で働く人の事故を減らそうとする業務です。

「労働基準監督官」の仕事3:司法警察業務

「労働基準監督官」は特別司法警察員としての権限が与えられていますが、その権限を最大限に使う業務が「司法警察業務」です。

「司法警察業務」は労働基準法関係法令に違反する重大な事件や、悪質な事件について捜査し、検察官に送致・送付することもあります。

捜査に入る企業の経営者の中には労災を意図的に隠そうとする悪質な被疑者もいるため、確実な証拠を掴み、立件することが、不幸な労働者を減らすことにつながります。一度違反となった企業が、その後指導の下に生まれ変わり、従業員も働きやすいいい企業になるということもあるようです。

「労働基準監督官」の仕事4:労災補償業務

「労災補償業務」とは、不幸にも労災が起きてしまったときに、怪我をしてしまった本人や遺族からの労災請求を受けて、補償の手続きをする業務です。

労働災害について保険給付が必要な場合には、勤務中に起きた事故なのか、通勤中に起きた事故なのかによって対応が変わるため、丁寧な原因の調査が必要です。また原因を突き止め、事業所に改善すべきところがある場合には指導を行います。

労働災害が起きてしまった場合には、労働者本人や遺族が労働基準監督署の窓口や電話で、労災請求について「労働基準監督官」に相談します。

「労働基準監督官」が相談を受けるのは、労災請求が初めての経験だという人がほとんどで、かつ困難な状況に陥っている場合がほとんどですので、1件1件、相談者に寄り添い丁寧に説明することが求められる業務です。

労働基準監督署の仕事

「労働基準監督署」は、行政上の需要や地理的な事情などを考慮して全国に321箇所設置されています。

労働基準監督署に勤務する「労働基準監督官」は、最も働く人やその職場に近いところで労働基準行政の第一線を担います。各労働基準監督署は地域に密着した機関ですが国の機関なので、ここで働く「労働基準監督官」は国家公務員の一員です。

都道府県労働局の仕事

都道府県労働局は、各都道府県の実情をふまえた労働基準行政を行うとともに、管内にある労働基準監督署を指揮・監督する役割を担います。

労働局にはそれぞれ都道府県の名前がつきますが、国の機関ですので、ここで働く「労働基準監督官」も国家公務員です。


厚生労働省本省と、第一線機関の労働基準監督署をつなぐ調整役、橋渡し役とも言えます。

「かとく(過重労働撲滅特別対策班)」について

東京労働局と大阪労働局には、通称「かとく」という「過重労働撲滅特別対策班」が設置されています。

「かとく」は過重労働の大規模で困難な事案に対応するために、労働基準監督官として監督指導や捜査経験が豊富なベテラン職員を中心に結成されているスペシャリストのチームです。

過重労働の悪質なケースでは企業がパソコン上の勤務データを改ざんしている場合もあるようですが、「かとく」はそういったデータの解析を行い、違法企業を書類送検する役割もあります。

厚生労働省労働基準局の仕事

厚生労働省労働局は厚生労働大臣の下、国民が安心して働けるような職場環境を整備するための労働関係法令の制定や改廃などを行う機関です。

労働基準行政のトップ機関として、各種行政施策の企画や立案を行い、下部組織である各都道府県労働局や、労働基準監督署への指示、監督を担当します。労働基準局で働く「労働基準監督官」も当然ながら国家公務員です。

まとめ

このページでは、国家公務員の「労働基準監督官」の仕事内容についてまとめました。「労働基準監督官」の仕事は、勤務先によって扱う案件は異なりますが、大きく分けると「監督指導業務」「安全衛生関係業務」「司法警察業務」「労災補償業務」があります。

「労働基準監督官」は、時には国の労働基準行政の企画などの頭脳として、時には各地域に設けられている労働基準監督署の第一線の相談員として、様々なフィールドで働く人々を守る仕事をしています。

悪質な企業に対して労働者1人で立ち向かったり、労災に遭ってしまった状態で補償の手続きをするのは困難なことですが、「労働基準監督官」はそんな弱い立場にある人々を救うことができる、やりがいのある仕事だといえます。

本記事は、2018年12月12日時点調査または公開された情報です。
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