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障害者雇用と国を巡る問題 - 雇用水増し問題とれいわ議員の誕生

障害を持っていても生き生きと働ける社会の実現のため、日本政府は様々な制度を立案・実施してきました。

本記事では、障害者雇用の歴史、民間企業における障害者雇用制度などをまとめながら、その問題点を解説していきます。

2019年10月05日更新

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目次
はじめに
障害者雇用を巡る歴史
民間企業における障害者雇用
実は遅れていた政府の障害者雇用
障害者雇用に必要なのはテクノロジーの使用と多様な働き方の容認
まとめ

はじめに

選挙により、れいわ新選組から2名の国会議員が誕生しました。国会でも障害者受け入れのためにさまざまな施策が行われています。

障害者の社会進出は近年目覚ましく、政府も障害者雇用を推進しています。一方で2018年度の政府や地方自治体の障害者雇用水増し問題のように、公官庁の障害者雇用への認識の甘さが指摘される事件もあります。

政府の障害者雇用政策と課題について説明します。

障害者雇用を巡る歴史

まずは障害者雇用の促進がいつ頃から行われるようになったのかについて法律の変遷と共に紹介します。

1960年身体障害者雇用促進法が制定される

障害者雇用における1つの転換点となったのが、1960年の身体障害者雇用促進法の制定です。それまでも1947年制定の「職業安定法」、1958年の「職業訓練法」などに障害者雇用は含まれていましたが、はじめて独自の雇用政策として定められたのがこの法律です。

障害者雇用を促進するきっかけになったといわれるのが傷痍軍人対策です。傷痍軍人とは戦争で腕や足を失うなどした元軍人のことを指し、第二次世界大戦から帰国した傷痍軍人はたくさんいました。彼らの雇用を確保するためにも身体障害者の雇用を推進しようとして制定されました。

そして、1976年には身体障害者の雇用を事業主に義務付けて、一定以上の障害者を雇用していない事業主からは納付金を徴収するようになりました。これを雇用納付金制度と呼びます。

1987年対象の障害者が精神障害者にも拡大

当初の雇用促進の対処となる障害者はあくまでも身体障害者のみで知的障害者までその対象が拡大したのは1987年のことです。その後、1997年に身体障害者と同様に知的障害者も事業主に雇用が義務付けられるようになりました。

2006年、精神障害者も雇用の促進対象となる

2006年には精神障害者も雇用促進に対象となり、2018年からは企業に求める社員に占める障害者の割合(法定雇用率)の算定の際に、精神障害者も加えるようになりました。

障害者雇用納付金制度とは?

障害者雇用を促進するための制度が障害者雇用納付金制度です。法定雇用率未満しか障害者を雇用していない企業には納付金を徴収して、目標を達成している企業への報奨金や各種助成金などに使用します。

2019年8月時点での法定雇用率は民間企業2.2%、国・地方公共団体など2.5%、都道府県などの教育委員会2.4%でさらに2021年までに0.1%引き上げることが予定されています。法定雇用率を満たしていない企業は不足分一人につき原則月5万円の納付金を支払わなければなりません。

ちなみにこの法定雇用率を達成するために意図的に障害者の申告数を水増ししていたのが2018年の障害者雇用水増し問題です。これについては後述します。

民間企業における障害者雇用

法律により障害者雇用を義務づけられていることにより、民間企業も色々な手法で障害者の雇用に取り組んでいます。民間企業の障害者雇用について説明します。

2018年度障害者雇用過去最高に

厚生労働省の発表によると、2018年度の障害者雇用状況は約53.5万人、実雇用率は2.05%となりました。目標が2.2%なのでほぼ法定の目標雇用率を達成しています。さらに詳しく見ると、法定雇用率を達成した企業は、2017年度より低下していますが、45.9%と約半数の業者が目標を達成しています。

事業規模別で見ると、最も高いのが従業員1,000名以上の企業が2.25%、従業員50人から100人未満の企業が1.68%となっています。従業員を雇用しなければならないのは45.5人以上雇用している企業からなので、ちょうど対象となる下限位の事業規模が50名から100名未満となります。

大企業が積極的に障害者を最小することによって、全体として法定雇用率に高い障害者雇用が実現できていると言えます。

詳しくはこちらを確認してください
*平成30年 障害者雇用状況の集計結果(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04359.html

「特例子会社」の仕組みを使った障害者雇用

民間の特に大企業が実施しているのが、「特例子会社」という制度を使用した障害者雇用です。特定子会社とは障害者雇用促進法に規定されている会社で、一定の条件を満たして厚生労働省の認可を受ければ、そこで雇用している障害者の数は親会社の障害者雇用数に入れて法定雇用率を算定できる仕組みです。

この仕組みを使って、障害を持った労働者を集めて、障害を持っていても働きやすい業務をしてもらうことにより、障害者に働きやすい職場環境が実現できます。

もちろん、障害者だけを集めた会社を作ることによりかえって健常者と障害者の分断を生んでしまうのではないかという批判がありますが、実際に障害者の雇用に貢献していること、現実的には必ずしも障害者が働くのには向いていない職種が存在することを考えると、適材適所で実現可能な障害者雇用手法です。

実は遅れていた政府の障害者雇用

民間が大企業を中心に障害者の雇用に取り組んでいる一方で、2018年に発覚したのが政府の障害者雇用水増し問題です。さらに民間企業は法定雇用率を発生していないと納付金を支払わないといけないのに対して、国や地方自治体は納付金を支払わなくても良いという不平等な制度になっていたことが、この問題に火を付けました。

障害者雇用水増し問題について説明しながら、政府の障害者雇用について説明します。

2018年障害者の水増し雇用が発覚

2017年の国や地方自治体に対する障害者の法定雇用率は2.3%です。そして厚生労働省の報告によれば、国の実雇用率は2.5%、都道府県の実雇用率は2.65%、市町村の実雇用率は2.44%と報告されていました。

詳しくはこちら
*平成29年 障害者雇用状況の集計結果(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000187661.html


【障害者雇用率の水増しはなぜ発生したのか】
しかし、2018年度に障害者雇用数の水増しが発覚してしまいます。厚生労働省が国や途方自治体の障害者雇用数について障害者手帳など保有をしているか詳しい確認をせずに、自己申告で障害者雇用を申告できたことから、各団体が本来は障害者として申告すべきではない人材についても障害者として申告していたのです。

財務省から厚生労働省への問い合わせでこの問題が発覚、改めて厚生労働省が調査したところ、義務化の当初から中央省庁で障害者の雇用数を水増ししたことが明らかになりました。

ちなみに、この問題は中央省庁以外にも波及して、地方自治体や独立行政法人でも障害者雇用数の水増しが発覚しました。

【本当の公共団体の障害者実雇用率は…】
その結果を受けて修正を行った厚生労働省の報告によると、実は2018年度は法定雇用率2.5%(2017年度から0.2%増加)に対して、国の機関1.22%、都道府県の機関2.44%、市町村のの機関2.38%になることが発表されました。
都道府県の機関、市町村の機関の中にも水増しで申告していた団体があったため雇用率は前年度から微減していますが、特に深刻なのが国の機関の水増しで調査後には約半分になってしまいました。
ちなみに、法定雇用率を達成した国の機関の割合について2017年は97.6 %と申告していたのが、18.6%まで低下しました。さきほど説明したとおり、民間企業の達成割合が45.9%なので実は民間企業の半分以下しか達成できていなかったことになります。

【水増し事件の結果を受けての政府対策】
この結果を受けて国会は障害者促進法を改正、雇用状況のチェック体制を構築し再発防止できるようにしました。また、不足している障害者の雇い入れも早急に進めていますが、どの程度改善されるかは不明確なままです。もともとは2019年末には法定雇用率の達成を目標としていましたが、2019年2月には2020年以降の達成に修正しました。

障害者雇用に必要なのはテクノロジーの使用と多様な働き方の容認

障害者雇用を考えるうえで重要となるのがテクノロジーをどのように活かすのか、多様な働き方をどのように容認するのかということです。

例えば、通勤が困難な方は在宅ワークにしたり、耳が不自由な人は耳を使わなくて良いような職種に配置したり、あるいは特定子会社のように障害者を集めて、その人達にあった事業を行うなどいろいろな工夫をしなければなりません。

また、テクノロジーの導入も重要です。障害者などについてテクノロジーを使って支援するジャンルは「アシスティブ・テクノロジー」と呼ばれていて、近年急速に研究が進んでいます。身体的にハンデがある場合でもテクノロジーの力で解決することが期待できます。

しかし、このような考えが自治体の実際の働き方に還元されるのはまだまだ先になるかもしれません。施設のバリアフリー化だけではなく、仕事自体をテクノロジーやフレキシブルな働き方を容認することによりどのように障害者が働ける環境を構築するのかが求められます。

障害を持った国会議員の誕生と社会参画

そういった意味では、国会議員に重度障害者が加わったというのは意義深いことです。過去にも障害を持った国会議員は存在しましたが、その頃は現在ほど障害者の社会参画に関して社会的な合意形成ができておらず、国会の理解も薄かったと言われています。

参考として>
元祖車いす議員・八代英太氏が語る、重度障害者が国会に行く「意義」(Jcastニュース)
https://www.j-cast.com/2019/07/26363679.html?p=all

しかし、2019年度の参議院選挙の結果を受けて、国会議事堂の玄関にスロープをつけたり、本堂に車いすもまま入れる議席を設けたりと着実に変化しつつあります。

まとめ

戦後一貫して、政府は障害者雇用を促進してきましたが、障害者雇用数の水増し問題で政府や地方自治体の障害者雇用政策への不信感が高まりました。できれば、障害者は雇わない方が良いと内心で考えていたと勘繰られても、仕方がないでしょう。

もちろん、障害者をとりあえず雇用して一般社員と同じようなサポートで同じような仕事をしてもらうと、一般社員よりも生産性が減退する可能性が高いでしょう。生産性を下げずに障害者雇用を行うためには多様な働き方を容認したり、仕事の中にテクノロジーを導入したりすることが必要です。

政府や自治体が障害者雇用を推進するためには、単に障害者を雇うだけではなく、役所の働き方や仕事の進め方自体の変革が問われているのではないでしょうか。

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