【県庁職員に聞きました!】県職員として身につく能力・スキルアップ

どんな仕事にも、その仕事を通して身につく、新しいスキルがあります。それらは、努力して身につけることもあれば、いつの間にか獲得していることもあるでしょう。

本記事では、県庁職員のAさんに、「県職員として身につく能力やスキルアップ」をコラムにして書いてもらいました。


はじめに

今回は、新卒である地方の県庁職員(行政職)となり、約6年間の勤務を経て現在は民間企業で働いているAさんに、「県職員として身につく能力やスキルアップ」についてインタビューしたので、ご紹介します。

県職員として身につけられた能力

県職員として身につく能力と一口に言っても、その能力が何であるかは、前提として同じ県職員でも行政職(事務系)か技術系かによって異なります。また、配属される部署によっても左右されます。

同じ事務系でも出先機関に多い総務や出納のような定型的な業務と、本庁に多い事業・イベントの立案や庁内取りまとめのような非定型的な企画の業務の経験から身につく能力は異なります。

しかし、一方で事務系の県職員であれば、幅広く業務を経験する中で、比較的一般に身につけやすい能力があるのも事実です。そこで、以下ではそのような能力について筆者の経験談を交えて記載します。

文書作成力

一般的に、事務系の県職員の仕事にはペーパーワークの割合が大きいです。

それは庁内外に発信する依頼や連絡のための公文書であったり、庁内意思決定のための稟議書であったり、単なる報告・説明のための資料であったりします。そして、ペーパーワークの割合が大きいがゆえに、庁内では文書作成のための手引書やマニュアルが存在します。

このため、とりわけ公文書や稟議書に関しては、手引書やマニュアルで定められた書式・体裁に則ることが強く重視されます。中には、部下の作成した文書が書式・体裁は基より庁内でこれまで慣例的に使われてきたような表現と馴染まない場合に、「てにをは」の指導を含め赤ペンで徹底的かつ何度も文書修正する上司が存在します。

筆者はそのような文書指導に強烈なこだわりを持つ上司に何人も出会いました。個人的には生産的でない過剰な指導もあったと考えるのですが、そのようにして若手はほぼ例外なく、県職員としての文書作成能力を鍛えられていきます。

段取り力

部署により程度の大小はあれど県職員の業務は定型的な内容が比較的多いです。

毎年、毎月あるいは毎日、同じ業務ないしは同じパターン処理で対応できる仕事が少なくありません。これは、行政の大部分が法令に基づいて決まった事柄を実行するものであることに起因するためで、若手ほど企画の自由度や裁量の余地が小さい定型業務を担う傾向にあります。

このことは、一見すると若手のうちは自由な発想を通じた創造的な仕事をする面白みに欠けるのですが、裏を返すと業務の型が決まっているため、仕事の進め方や段取りの仕方学びやすい利点があります。


若手は定型ながらその業務を反復して実行することを通じて仕事の「型」を身につけることができます。実際に筆者も初めての業務を担当する際は、前任者がその業務をどのような順序とスケジュール感で捌いていたのかを過去の資料から学び、同じように進めることができるのか、改善の必要があるのかを調べ考えながら準備をすることができました。

このようにして体得した仕事の段取り方や組み立て方は、手順の定まっていない非定型的な企画業務を行う上であっても、その手順を自ら構築していく発想のベースとなります。

県職員としての自己研鑽・スキルアップ

続いては、県職員として働く上での自己研鑽やスキルアップに関して紹介します。筆者は、一般的に自己研鑽やスキルアップは大きく2つのアプローチがあると考えています。

1つは、担当する業務への理解を深めたり、関連する知識を広げたりするための勉強です。

自治体の行う行政事務の根拠は基本的に関係の法制度に求めることができます。したがって、その法制度が軸としている法律、その関連の政令・省令、条例・規則、その他関わりの深い法規が何であるかといった法体系を把握することや、その法制度が実現しようとしている理念や目指す社会の姿がどんなものであるかを理解することなどは、行政職員としての基本的な姿勢と思います。

具体的に筆者のケースでは、土木分野の職務を担当していた際、建設業界を規制するための産業法である建設業法や、公共工事の入札制度のあり方などを定めた入札契約適正化法などが身近であり、着任して早い段階での理解に努めました。

また、法制度以外にも、その行政分野における社会的な動向などについて新聞・ニュースや書籍などから学ぶことは大切なことと言えます。さらに県職員は一般的に2-5年ごとに異なる部署に異動となりますので、そのたび担当業務を学び直す必要があるとも言えるでしょう。

もう1つは、現在担当する業務に直接関係はしないものの、将来的に異動を希望する分野であったり、働く上での教養的側面であったりする内容を学ぶ勉強です。

また、昇進試験を課す役所の場合、その試験範囲は公務員・行政職員として基礎的・応用的に求められる知識や発想を問うものが一般的であるでしょうから、これに当てはまるものと考えます。

ところで、一般的な会社員が取得したいとされる人気の資格や検定に、TOEICや簿記、中小企業診断士、マイクロソフトオフィスなどがよく挙げられます。筆者の経験からは、事務系の県職員として働く上でこれら一般の資格や検定を取得する必要性はほとんどないと考えます。

しかし、元来学習意欲が高く、英語の勉強などを地道に続けられるような職員は筆者の周辺にも一定数いました。中には、弁護士や公認会計士、税理士などの上級と言われる国家資格を取得される方、大学院で博士や修士の学位を取得される方も珍しくありませんでした。

まとめ

以上、筆者の経験を基に県職員として身につけられる能力や、県職員の自己研鑽・スキルアップ事情についてご紹介しました。よく「公務員は民間に転職しても使えないのではないか」と言われることがあります。実際に民間企業に転職した筆者の経験のみから言えば、転職前後で異なる仕事をする場合は即戦力になり得ず、懸念はそのとおりと思われます。

一方、上記1で記載した文書作成力や段取り力、すなわち事務処理能力に限れば、必ずしも通用しないわけでないとの手応えを感じています。

筆者の元勤務先で高級幹部を務められた県職員の先輩は、退職前にご自身のキャリアを振り返る中で、(異動を繰り返した結果)専門性は身につかなかったかもしれないが、民間に行った友人と比べても事務処理能力を磨くことができた自負があるとのことを語っており、ベテラン職員のご経験からも筆者と同様の理解をされていることを知りました。

このことは、とりわけ筆者の元勤務先県庁では職員がゼネラリスト的なキャリアアップを重ねていることの表れだろうと考えています。


本記事は、2019年9月20日時点調査または公開された情報です。
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