新年の披露式!警察の年頭部隊出動訓練・年頭視閲式、消防の出初式について

新年が明け、毎年1月になると各地で行われている出初式などの警察と消防のお披露目式。市民に近い公務員と言われている警察官や消防官の演目、車両などを見られるイベントでもあります。ここでは警察・消防の新年の行事である「年頭部隊出動訓練」「年頭視閲式」「出初式」について説明しています。


警察の新年のお披露目について

消防組織には出初式がありますが、警察組織にも出初式と同じく新年に日ごろの訓練の成果や警察組織の持っている能力を公開する場があります。警察の場合、出初式という名称ではなく警視庁は「年頭部隊出動訓練」、各都道府県の警察本部では「年頭視閲式」と、各自治体によって異なる名称がついており、毎年1月の成人式付近に各自治体の会場にて警察組織が行っています。

年頭部隊出動訓練と年頭視閲式、共に警視庁の警視総監や各警察本部長などの幹部と会場に招かれた来賓の前で、警察組織の各部隊が日ごろの訓練や技術力を披露する為の式典となっています。

年頭部隊出動訓練や年頭視閲式の内容を見てみよう

式典としての年頭部隊出動訓練や年頭視閲式

式典としての内容は自治体によって様々ですが、大まかな流れとしては開会の辞、各部隊による行進、国家斉唱、各部隊の視閲、通常点検、警察音楽隊によるドリル演奏、警察本部長の訓示、閉会の辞となっています。

警視庁の年頭部隊出動訓練は午前7時から、と早朝から始まりますが各都道府県警察本部の年頭視閲式は午前10時から午後14時ごろまで行われている所が多くなっています。

年頭部隊出動訓練や年頭視閲式で行われる催し物

▼分列行進
警察組織には、任務の内容に応じて色々な部隊があります。年頭部隊出動訓練や年頭視閲式では、機動隊や広域緊急援助隊各部隊や各組織に分かれて見事な分列行進を披露します。警察官の分列行進はもちろん、警察の航空隊や警察犬がいる警察本部では、同時にヘリコプターや救助犬、警察犬も分列行進に参加しています。

▼パレード
分列行進の他、車道でのパレードも行われます。各警察本部長を乗せたオープンカーや、白バイ、警らパトカーを始めとした各警察車両もパレードに参加します。参加する車両の数は各自治体によって異なりますが、警視庁年頭部隊出動訓練では、およそ150台の警察車両が一同にお披露目されます。

▼白バイドリル走行展示
警察本部の白バイ隊によるドリル走行を披露します。男性隊員は青の制服、女性隊員は赤の制服を着用し、会場全体を広く使用した迫力のある白バイ走行は、警察本部の白バイ隊の持つ高いテクニックを目の当たりにできます。

▼各訓練披露
警視庁の年頭部隊出動訓練では、「訓練」という名前が付く通りメインは訓練の披露となっています。

テロリストに扮した警察官に対するテロへの初動行動訓練や、SPによる要人警護訓練、警察犬部隊も導入した訓練など、ありとあらゆる事件を想定した規模の大きい訓練が行われています。

各消防組織の行っている出初式について

江戸時代から続く新年の消防関連行事

出初式の起源は江戸時代にさかのぼり、江戸幕府直営の火消しである定火消が誕生した翌年の万治2年1月4日上野東照宮に定火消4組が集まり、気勢を整え団結を強める「出初」を行った事とされています。

当時、江戸の街で火消しを行っていたのは町人の町火消や武士による武家火消など、いわゆる民間人の火消しばかりでしたが、江戸時代最悪の被害を出したと言われている「明暦の大火」の発生を受けて、幕府直営、つまり公営の火消しである定火消の誕生に繋がったと言われています。定火消は江戸の人たちを火事から守る存在として大いに期待され、その中で行われた出初は人々の心に大きな印象を残し、翌年から出初は恒例化され町火消や武家火消へも広まりました。今の出初式でも行われているはしご乗りは、江戸時代の定火消が出初で行った事が起源です。


現行スタイルでの出初式が始まったのは、明治7年1月4日の「第1回東京警視庁消防出初式」です。当時東京警視庁安寧課消防掛の所属だった39組の消防組が八代洲町にあった東京警視庁練兵場に集まり、整列状態での消防組の集結、消防ポンプやはしご乗りの披露が行われました。

現在の消防の出初式とその目的

現在の消防本部と消防団になってからの出初式は、昭和23年、消防組織が警察から独立して現在の自治体の消防本部と民間の消防組織である消防団がそれぞれ誕生、東京に配備された東京消防庁が翌年の昭和24年1月15日に「東京消防出初式」を開催したのが始まりです。現在では毎年1月6日ごろから全国の各自治体で消防出初式が行われています。

消防が出初式を行う目的とは、消防職員及び消防団員の士気を上げる事、そして消防組織の持つ規律統制のある行動を一般市民に公開する事により、防災意識を高める啓もう活動としての側面も持っています。

消防の出初式の内容を見てみよう

式典としての消防出初式

開会宣言後に国旗の掲揚、その自治体の消防本部長や県知事、市長などの訓示、来賓からの祝辞の後に、自治体消防本部や消防団による様々な催し物が開かれ、国旗の後納、閉会宣言で出初式は終わります。式典全体の流れとしては午前9時ごろから始まり、12時前後に閉会する所が多いです。

出初式で行われる催し物

▼消防車両や消防官、消防団員による行進
大通りのある都市の消防本部での出初式なら、大通りを交通規制の上消防官や消防職員、実際に使用している消防車両のパレードを行います。消防音楽隊が演奏しながら、カラーガード隊や地域にある幼年消防団などの子供たちが一緒に行進する事もあります。

▼消防演技
消火隊による消火活動の演技や、救助隊による救助演技など出初式の消防官による消防演技披露は自治体によって内容の幅が広く、例えば東京消防庁の消防演技は、救助隊員によるロープレスキューの披露や、ハイパーレスキューによる消防ロボットや重機を使用した救助活動の披露、仙台市消防局なら訓練設備ではなく仙台市役所を使用し、市役所内で火災が発生し消火と救助隊による屋上からのロープレスキュー披露などが行われています。

▼新部隊や車両のお披露目
消防組織の中では、新しい部隊が創設されたり、新型車両を導入したりします。来年度から導入予定、もしくは新年から新しく導入された車両や部隊のお披露目も出初式で行われる事が多くなっています。

例えば、東京消防庁では全国初となる航空隊における特別高度救助隊という位置づけの「航空消防救助機動部隊(エアハイパーレスキュー)」を平成28年に創設しましたが、エアハイパーレスキューのお披露目も、平成28年1月6日に行われた東京消防庁の出初式にて行われています。

▼はしご乗り
消防の出初式といえば、このはしご乗りを想像する方が多い、出初式の風物詩ともいえるはしご乗りです。はしご乗りは、江戸時代の出初めの時から続く伝統演技で、今でも各自治体の消防職員や消防団員が、見事なはしご乗りを披露しています。

なお、はしご乗りの披露をする時には法被姿に着替える場合もありますし、活動服で行う場合もあります。

▼一斉放水
出初式のフィナーレとも言えるのが盛大な一斉放水です。ポンプ車や屈折放水塔車など、放水ができる車両で一斉放水を行います。

横浜市の赤レンガ倉庫、東京都の東京ビックサイト東側埋め立て地の様に、海に面している場所での出初式では、海に浮かぶ消防艇による色がついた水の一斉放水も行われています。

子供向けのコーナーも

消防車両の展示や乗車体験、救急隊員や救助隊員の体験コーナー、起震車の乗車体験、子供用の消防官の制服を着用しての記念撮影、その自治体や消防本部のゆるキャラが遊びに来る、など子供向けのイベントやコーナーを出初式の進行と同時に設けている消防本部も多くなっています。

一般市民にとっては防災について考える機会として、また現役消防官がスタッフとして対応しているので、子供たちにとっては憧れの消防官に身近に触れ合える機会でもあります。

年頭部隊出動訓練・年頭視閲式・出初式は一般市民は観覧可能か?

警視庁年頭部隊出動訓練の観覧方法

警視庁年頭部隊出動訓練は、元々警察組織内部で行われていた非公開の訓練でしたので、現在でも開催場所や日時は非公開となっています。一部の来賓のみが招かれ、招待状がないと入る事ができませんので、一般市民は警視庁年頭部隊出動訓練の閲覧は不可能という事になります。ただし、その年に行われた年頭部隊初動訓練の様子は後日警視庁の広報ページやyoutubeに写真や動画として公開され、閲覧できます。


各都道府県警察本部の年頭視閲式の観覧方法

各都道府県警察本部の年頭視閲式は、その警察本部によって対応は様々です。警視庁の年頭部隊出動訓練の様に開催日時や場所を非公開にしていて、当然一般市民も観覧できない所もあれば、開催日時や場所も公開していて、一般市民も観覧できる所もあります。

一般市民も観覧可能な警察本部の年頭視閲式の場合、あらかじめ観覧希望として都道府県警察本部へ応募しなければいけない所もあります。往復はがきなどで観覧希望と応募し、先着もしくは抽選で年頭視閲式を観覧できます。年頭視閲式の観覧についての詳細は、公開している警察本部の場合は、各都道府県警察本部のホームページにて告知が行われています。だいたいは12月の初旬から中旬が締め切りとなっていて、応募できる期間も各都道府県警察本部によって異なりますので、確認の上応募し忘れの内容にしましょう。

例えば、神奈川県警察本部は毎年年頭視閲式の観覧希望者を募っています。以下は、神奈川県警察本部の今年度の年頭視閲式の応募方法を記載したページのリンクです。

▼神奈川県警察ホームページ

「平成30年神奈川県警察年頭視閲式」を観覧しませんか

消防組織の出初式の閲覧方法

東京消防庁や、各市町村の消防本部の出初式は、一般市民にも公開されているので特に応募などの必要なく観覧ができます。場所や日時などの詳細は、東京消防庁や各市町村の消防本部のホームページや、市町村のホームページに告知・掲載されています。

特に応募の必要なく出初式は観覧できますが、ご家族やカップルでゆっくり観覧したい方や、車いすの方や高齢者の方の為に、あらかじめいすの席で観覧できる観覧スペースを設けている消防本部もあります。この観覧席を使用したい時には応募が必要になりますので、必要に応じて応募を忘れないようにしましょう。

以下に、参考として平成29度の東京消防庁出初式の特別席招待の要項ページを掲載します。

▼東京消防庁ホームページ

東京消防出初式に1800人をご招待

また、東京消防庁の出初式の様子は毎年テレビでも放送され、後程東京消防庁だけでなく各自治体の消防本部の出初式の様子もyoutubeに動画としてもアップロードされることが多くなっています。

まとめ

新しい年の始まりである新年の仕事始めは、私たちにとってもとても特別な物です。それと同じく、警察・消防の組織も年頭部隊出動訓練・年頭視閲式・出初式として新年の門出には特別な式を行っている事が分かりました。お住まいの自治体の警察本部が年頭視閲式を公開していない、遠方や予定が合わない等で出初式も見る事ができなくても、今はインターネットで後日各式の様子を見る事もできるようになりましたので、警察・消防組織に興味のある方や警察官、消防官を目指す方はぜひ見てみましょう。

(文:千谷 麻理子)

本記事は、2017年11月29日時点調査または公開された情報です。
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