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反社会勢力との交際は本当に規制できるのか?-反社チェックの実情

地方公共団体は「暴力団排除条例」という条例を制定し、市民や企業が「反社会勢力」との交際をなくすよう努めていますが、完全な排除には至っていないようです。

本記事では、「反社会勢力」とは何かから、「暴力団排除条例」や具体的な反社チェックなどについて解説します。

2019年09月08日更新

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目次
はじめに
「反社会勢力」に対する法規制
実際に企業はどのように反社チェックをしているのか
実際に反社チェックは機能しているのか?
まとめ

はじめに

暴力団などの「反社会勢力」の活動は法律により厳しく制限されています。また、「反社会勢力」だけではなく関連する企業や個人も暴力団との交際発覚により社会的な信用が毀損、何らかのペナルティを受けます。しかし、暴力団と企業の交際に関するニュースは後を絶ちません。

本記事では「反社会勢力」やその関係者に対する規制について説明します。

「反社会勢力」に対する法規制

まずは、「反社会勢力」とは何なのか?認定されるとどのような法規制を受けるのかについて説明します。

「反社会勢力」とは何か?

まず、「反社会勢力」としてイメージしやすいのが暴力団ですが、暴力団は「反社会勢力」の一部でしかありません。暴力団のフロント企業、総会屋、半グレ、特殊詐欺グループなど反社会的な活動を行う団体を総称して「反社会勢力」と呼ばれています。

ここでポイントとなるのが暴力団以外にも「反社会勢力」が存在することです。暴力団は法律により厳しく規制されており、警察も構成員、準構成員をデータベース化しているのに対して、半グレや特殊詐欺グループについては誰も全貌を把握していません。

よって、暴力団を除けば「反社会勢力」と一般的な企業や団体を明確に区別することは困難だと言えます。

暴力団に対する法(条例)規制

「反社会勢力」の中でも最もイメージしやすいのが暴力団ですが、暴力団に対する規制は厳しくなっています。暴力団については法律として暴力団対策法(いわゆる暴対法)と各都道府県が制定している暴力団排除条例(いわゆる暴排条例)の2層で取り締まりをしています。

暴対法では各都道府県公安委員会に「指定暴力団」を指定する権限を与えて、指定暴力団に対する「不当な行為」を禁止したり、何か事件が発生した時に指定暴力団の代表者に対する責任を追及できるようにしたりと、暴力団規制に関するさまざまなルールが定められています。

また、各都道府県の暴排条例では、さらに細かく暴力団に対する規制ルールについて定められています。さらに、暴力団に関する問題の相談窓口として各都道府県で暴力追放運動推進センター(いわゆる暴追センター)を設置して、暴力団の追放に勤めています。

暴力団規制で逆に勢力を拡大するその他の「反社会勢力」

暴力団に対しては以上のような厳しい規制が行われているため、構成員は減少し、弱体化していると言われています。

暴力団の弱体化の裏で、勢力を増しているのが半グレを代表するその他の「反社会勢力」です。これらの「反社会勢力」には暴力団に対する法規制や条例が適用されないため、暴力団よりも自由度の高い活動が可能です。

データベースで確認できる暴力団が減少、誰も全貌を把握していないその他の「反社会勢力」が力を増していることにより、一般人が「反社会勢力」を見分けるのがますます難しくなりつつあります。

「反社会勢力」と付き合いがある企業、個人はどうなるのか?

「反社会勢力」と付き合いがあるということはそれだけで潜在的なリスクになりえます。どのタイミングで「反社会勢力」が牙を剥くか分かりませんし、何らかの事件に間接的に無自覚に巻き込まれることもあるでしょう。

それに加えて「密接交際者」として認定されると、暴力団と同じように公の仕事に参加できない、銀行口座が作れないなどのペナルティが発生する可能性があります。

反社条項に伴う大きなリスク

具体的にどの程度のペナルティが発生するかは、算定困難です。暴対法や暴排条例に基づく規制の他に企業の自主規制が働くからです。たとえば、暴力団やその構成員は銀行口座を開設できないと言われていますが、法律や条例に定められているのではなく、銀行の自主規制によりそうなっています。

銀行に限らず、契約時に暴力団や「反社会勢力」で無い事を確認する旨の「暴力団排除条項」「反社会勢力排除条項」を契約書に盛り込むのが企業にとって当たり前になりつつあります。

暴力団の密接交際者として認定されると、このような条項を元に契約が無効になるケースも考えられます。

よって、暴力団をはじめとする「反社会勢力」と付き合うのには大きなリスクが伴います。

「反社会勢力」には表の顔と裏の顔がある

「反社会勢力」と付き合わなければ良いのではないかと考えるかも知れませんが、意図せずに「反社会勢力」と付き合う可能性もあります。「反社会勢力」は大抵の場合、非合法な手法で収益を上げる裏のビジネスとは別に、一般企業、人としての表のビジネスを持っているからです。

非合法なビジネスで収益を上げても、そのお金が使えなければ意味がありません。そのために、大抵の「反社会勢力」は裏のビジネスで上げた収益を、表のビジネスでマネーロンダリングして、堂々と使えるお金にします。

【アル・カポネが発明したマネーロンダリングという手法】
マネーロンダリングのロンダリングとは英語で「洗濯する」という意味があり、マフィアのボス、アル・カポネがコインランドリーを使った資金洗浄を行ったから、「ロンダリング」の字が使用されたと言われています。

20世紀前半のアメリカでは禁酒法が施行されて、お酒の販売が禁止されていました。これに目をつけ、密造酒を販売して勢力を拡大したのがアル・カポネ率いるシカゴ・アウトフィットという組織です。

密造酒の販売は大きな収益を生みましたが、入手先不明の多額の資金を銀行口座に入金したり、使用したりするとそこから警察が捜査されるかもしれません。そこで、カポネはコインランドリーを使いました。コインランドリーにはたくさんの匿名の現金が集まります。このお金の中に密造酒の収益を少しずつ混ぜて、コインランドリー事業の収益として表のお金にしました。

【「反社会勢力」はマネーロンダリングのための表の顔を持つ】
現代の「反社会勢力」もカポネのように裏のビジネスであげた収益を、表のお金に換えるためにマネーロンダリングをしなければなりません。よって、「反社会勢力」はマネーロンダリングのための表の社会活動も行っていることが多いです。

表の社会活動は私たちの身近にあるかもしれませんし、働いていても気づかないかもしれません。よって、裏のビジネスが摘発されてから、実は「反社会勢力」だったのだと気づくことも少なくないでしょう。

実際に企業はどのように反社チェックをしているのか

これまでの説明から分かるとおり、「反社会勢力」は一般企業の活動範囲外に存在するのではなく、社会に浸透しているケースが多々あります。しかし、「反社会勢力」は排除しなければなりません。

そのため企業は「反社会勢力」と付き合わないように、反社チェックを行っています。企業が反社チェックをどのように行っているのかについて説明します。

反社チェックその1:反社条項を契約書に盛り込む

まず反社チェックとして簡単にできる対策が反社条項を契約書に盛り込むことです。反社条項とはさきほども説明した通り、暴力団や「反社会勢力」ではないかを確認する条項で、後から暴力団や「反社会勢力」だと判明した場合は、この条項を元に取引を停止したりします。

反社チェックその2:公知の情報を検索する

企業データベースや行政処分などの情報、ヤフーやグーグルで検索したときの評判などの公知の情報を検索するのも、よく反社チェックで用いられる方法です。過去のニュース記事や企業データベースから情報を取り寄せて反社の疑いがないかをチェックします。

反社チェックその3:調査会社・興信所などで調査する

M&Aなど大規模な案件やその後の経営に影響が大きい案件については、公知の情報を検索するだけではなく、調査会社や興信所を使って企業や経営層について詳しく調査する場合もあります。もちろん、費用も期間も掛かるので、ここまですることはめったにないでしょう。

反社チェックその4:暴追センターに相談

疑わしい企業の場合は、暴追センターに相談しましょう。暴追センターに相談することにより、その企業が、暴力団が関わったものなのか特定できる可能性があります。また、具体的な対応のアドバイスや警察への橋渡しもお願いできるかもしれません。

実際に反社チェックは機能しているのか?

反社チェックは上記のような手法がありますが、100%「反社会勢力」を排除できているとは言い難いでしょう。現状の反社チェックには、共通した手法が存在しない事、手続きに対するコストが現実的ではないことの2つの問題点が存在します。

反社チェックに共通した手法が存在しない

反社チェックに決められた手法はありません。よって、ある企業が反社の疑いが強いと認定しても、ある企業はまっとうな企業だと判定するケースもあります。また、公知情報では問題が無かったけれども、興信所を使って詳しく調べると反社の疑いが強いという場合もあります。

さらに、「反社である」ということは証明できても、「反社でない」ということを証明することは困難です。前者は、反社である理由を1つでも見つければ良いのに対して、後者は反社ではない理由をいくつあげても証明はできないからです。

よって、どこまで反社でないことを証明するかは各社の方針に委ねられます。

手続きに関するコストが現実的ではない

もう1つの問題が手続きに関するコストが現実的ではないことです。全ての取引先に対して興信所を使って調査すれば精度の高い反社チェックができるかもしれませんが、そのためには多額の費用が必要となり、契約提携までに時間もかかるのでビジネスが停滞してしまいます。

費用や調査期間に伴う機会損失を加味するのならば、反社チェックに対して企業が多大なコストを払うことは現実的ではありません。中小企業の中には、人手不足や反社チェックに掛けるコストを確保できないことから、ほとんど反社チェックを行っていない企業も存在すると考えられます。

大企業についても、大規模な案件はともかく、小規模の案件の反社チェックに時間を掛けていると生産性が落ちるので、公知情報に関するチェックで済ませているケースが多いと考えられます。

まとめ

「反社会勢力」をチェックすることは現実的には難しいです。データベース化されている暴力団は減少し、一般企業と見分けがつきにくい「反社会勢力」が増加しており、誰もその全貌を把握していません。

また、反社チェックについても、反社でないことを証明することは困難で手法は各企業に委ねられているし、企業としても反社チェックにコストをかけるインセンティブは働きにくいです。

「反社会勢力」と企業の取引を巡るニュースでは、「反社会勢力」との付き合いがあったことのみがクローズアップされますが、本質的には「反社会勢力」だと事前に気づけなかったのかの方が重要です。

政府や自治体が本記事で「反社会勢力」を排除するのならば、反社チェックに関するガイドラインの整備や反社チェックに使用できるデータベースの整備など、企業が反社チェックを円滑に行えるようなサポートが求められています。

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