2021年6月に成立した「重要土地取引規制法」とは?
2021年6月に成立した「重要土地取引規制法」とは、自衛隊の基地や原子力発電所や自衛隊機が使用する空港などの重要なインフラ、離島など、日本の安全保障の上で、重要な地域での土地利用、土地取引を規制する法律のことです。
この法律では、上記のような重要な施設の周囲およそ1キロメートル内や、国境近くの離島を「注視区域」に定めて利用方法を確認します。
そして注視する中で、指定区域内で問題のある利用方法、例えば大きな構造物を立てて電波を妨害したり、ライフラインを寸断したりといった日本の安保を脅かす土地利用を確認すれば、国が所有者に土地の利用の中止を勧告・命令できるようになります。
具体的にこれらの業務を担う組織として、2022年4月に内閣府に土地情報を一元管理する組織が新設されるようです。
▼参考URL:日本経済新聞|重要土地利用規制法とは 安保脅かす取得・利用防ぐ(外部サイト)
「重要土地取引規制法」が成立した背景とは?
「重要土地取引規制法」が成立した背景には、北海道や九州などの土地が、外国人や外国法人によって買収が進んでいることへの懸念がありました。
内閣官房の資料を元に、代表的な土地買収の動きを解説します。
新千歳空港周辺の土地取得について(北海道千歳市)
2014年1月に、航空自衛隊千歳基地や東千歳駐屯地、新千歳空港から約3キロの隣接地の苫小牧市美沢で、中国の企業による7.9ヘクタールに及ぶ大規模な土地取引があったようです。
これを受けて、千歳市長は「外国資本の土地取得に係る法整備は、自治体の権限を超えるものであり、国防の観点から、国において適切に対応されるべきもの」として、国に法整備を求めていました。
対馬の土地取得について(長崎県対馬市)
2013年の9月12日の対馬市議会の議事録によれば、外国人による土地、建物などの不動産取得が話題になってることについて、現行の日本の法律では、外国人に対する土地の購入の規制はできない点について、対馬市は何か策を講じているのかという質問が出たようです。
これに対し、対馬市長は「長崎県と対馬市で、韓国人による市内の土地の購入状況というものを調査をし、対馬市の0.0069%という土地が買われているということを、改めて把握をした」との発言した上で、これまでにも国に要望書を提出してきたが、改めて提出する旨を答弁しています。
奄美大島の土地調査について(鹿児島県奄美市)
2018年には、鹿児島県の奄美市議会で、外国資本による土地獲得の動きについて討論されています。
この議題で、奄美市総務部長によって、市では外国資本における土地買収にかかる調査は実施はしておらず、国の林野庁の調査では、2016年(平成28年)の1月から12月までの期間で、鹿児島県における森林買収はないという点、奄美駐屯地の隣接地場については、買収の事例はないということが報告されています。
しかし、当時は、外資による土地購入規制はもちろん、防衛施設周辺の土地調査を可能とする法律も存在しなかったことが、調査を妨げているという指摘もあり、国へのはたらきかけを求める声が出ていました。
竹富島の土地取得について(沖縄県八重山郡竹富町)
2016年の町会議議事録で、東京の不動産会社がインターネットに公開した約2万4,000平米のを売却予定の土地について、中国ファンド、台湾からの買収の申し出があったということで、不動産会社としては外国資本による国内の土地買収については非常に憂慮しているため、沖縄県土地対策課に連絡したという記載があります。
不動産会社から海外資本に土地を売却してよいのかという連絡については、竹富町にもあったようですが、沖縄県としても県土は余り海外資本には譲りたくないため、土地取り引きを待ってもらうようにお願いをし、土地所有者と不動産会社と協議をする旨が企画財政部長から報告されています。
▼参考URL:内閣官房 土地調査検討室|国土利用の実態把握等に関する有識者会議(外部サイト)
「重要土地利用規制法」には、国民の権利侵害につながると懸念の声も
上記のような懸念から、早期成立が求められていた「重要土地利用規制法」ですが、どの土地を「重要土地」に指定するのかという議論が不十分であり、「重要土地」に指定されてしまった場合、その土地に関係する国民のプライバシーや、私的権利が侵害されるのではないか、というような反対の声もありました。
具体的な重要土地の指定については2022年4月に内閣官房内に設置される予定の新組織で議論されるようですが、その議論を前に、「駆け込み」で土地を購入しようとする外国資本の動きも目立ってきているとの報道もあります。
国民の権利に関わる重要な議論ですから、慎重にという声もあって当然ですが、その隙に土地の購入の動きは進んでしまっているという待ったなしの状況が続いています。
▼参考URL:朝日新聞「どこが対象? どうしたら罰則? 土地規制法に不安の声」(外部サイト)
与党からも反対の声があった「土地利用規制法」
Twitter上では、2021年5月14日付の産経新聞の記事を受けて、下記のような反応もありました(現在は削除されています)
安全保障上重要な土地を中国政府関係者に700件も買われていた。それでも公明党は土地利用規制法の整備に邪魔している。国民を守るべき政権与党と政府の無責任は大きいし、無策も酷い。道理、石垣の漁師達の生活が破壊されても知らん顔の政府は、中国の傀儡そのもの。
日本の「重要土地」を外国人の方がよく理解しているのでは?という指摘も
日本の重要土地については、すでに外国資本の企業が立地していたり、外国人が暮らしていたりしているという指摘もあります。
私が生まれ育った赤坂の隣には、みんなが応援する総理大臣・菅義偉さん(当時)が執務される首相官邸があるわけですが、そこから日枝山王神社をまたいだ反対側は中国人、韓国人の皆さんが多数暮らしている地域で、1キロどころではないご近所に外国人の皆さんがいらっしゃるんですよね。
さらに首相官邸から赤坂見附方面に200メートルほど行くと中国銀行東京支店(Bank of China Tokyo Branch)があるんすよ。これもう重要拠点とか、安全保障などとお花畑言ってる場合じゃないぐらい我が国ジャパンの入り込まれ具合はヤバいじゃないですかってルノアールで隣に座った女子高生の集団が喋っていました。
最後に、最近不動産大好き人間の間で特に話題になりますが、外国資本の引き合いに良く出る地域に目黒区青葉台や千葉県印西市周辺の物件があります。言わずもがな、地盤が固くデータセンターの立地にもってこいのこれらの地域が中長期的には日本の重要拠点になる可能性を、日本人より先に諸外国の皆さんがよくご存じであることは残念なことです。
まとめ
このページでは、2021年6月に成立し、2022年秋には施行される予定の「重要土地利用規制法」について、各地方で懸念されてきた事案や、重要土地利用規制法成立までの賛否両論、また施行を前に外国資本による「駆け込み」での土地買収が進んでいることなどをご紹介しました。
日本では、土地の調査や利用を規制できる法律が無かったため、これまで国防上重要な土地を外国資本に購入されるという事例が多発してきました。
重要土地利用法の運用の仕方によっては、国の調査や規制によって国民のプライバシーや、自由な土地利用の権利の侵害が起こりうるとして反対の声が起こっていたことも確かです。
ただ、その議論をしている間にも、重要土地が買われていってしまう現実があります。反対の声も重く受け止め、制度について早急に議論し、施行に向けて運用方法をより具体化し、反対していた国民の方も安心できるような法整備や制度の運用が求められています。
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