日本の「国家予算」が成立するまでの流れを、9つのステップにわけて解説します。国家の予算の編成・審議は、前年夏頃から既に始まり、前年度3月末日までの成立を目指します。
はじめに - 日本の国家予算の成立までの流れ
本ページでは、日本の「国家予算」が成立するまでの流れを、9つのステップにわけて解説します。
下記、日本の国家予算についてとあわせてご覧ください。
日本の国家予算は一般会計100兆円程度、特別会計は200兆円規模だと言われており、合計で日本の国家予算は300兆円くらいと言われています。 今回は公務員としても、日本人としても知っておきたい日本の「国家予算」についてまとめました。
ステップ1:各府省庁が見積もりを作成する「概算要求」からスタート
まず、前年度の8月末日までに、各府省庁が財務省に提出するのが「概算要求書」です。翌年度に各府省庁が予定している政策を実行するために、どのくらいの予算が必要か、見積もりを出します。
見積もりを出すためには、準備が必要です。6月〜7月頃には既に内閣によって閣議決定されている財政の基本方針が出されているので、各府省庁は、それらを確認し、国の予算の全体像や、各省庁に求められる役割を確認します。
そしてそれぞれの府省庁が担当する政策について、前年度からも引き継ぐ予定のものは継続するのか、見直すのか、新たな政策については、どのくらいの予算があれば実現可能か、国全体の方針を見ながらを確認し、調整します。
府省庁が自分たちの組織に対して国に予算をつけてもらえるよう、見積もりを出して要求するので、「概算要求」といいます。
ステップ2:各府省庁の見積もりを取りまとめた「財務省原案」の作成
9月からは、財務省が各府省庁から提出された概算要求書という見積書を元に、財務省としての予算案を作成します。これが「財務省原案」です。
財務省は、各府省庁から提出された見積もりについて査定し、必要があればヒアリングを行います。
修正が必要な部分を説明し、修正してもらう行程などを経て、最終的に12月中旬頃には「財務省原案」が策定されます。財務省原案は、概算要求の結果として、各府省庁にも内示されます。
ステップ3:財務省原案が「政府案」となり、「閣議決定」が行われる
財務省原案について、政府の中で最終調整が行われます。そして、最終的には財務大臣が「政府案」としての予算案を閣議に提出します。
これが承認されると、「国家予算」が「閣議決定」したという段階に入ります。
「国家予算」の閣議決定は、毎年12月下旬に行われています。
ステップ4:閣議決定した政府原案が「国会」に提出され、国会審議スタート
閣議決定した政府案は、その年の1月頃に「政府原案」として国会に提出されます。ここから、国会での「国家予算」の審議が始まります。
「国家予算」は内閣の一存では決められず、国民の代表としての国会で広く審議されて成立します。ただしこれは、後ほど説明するように、「国家予算」の一般会計の部分の成立の流れであり、特別会計には国会審議は必要ありません。
ステップ5:先議権のある「衆議院予算委員会」での審議
「国家予算」の国会審議では、まず衆議院での審議が行われます。日本では、予算案について「衆議院の優越」といわれる、衆議院の先議権があります。
衆議院の議長の名目で、予算案は衆議院の本会議での審議の前に、衆議院予算委員会で審議されるよう委員会に渡されます。
予算委員会はテレビ中継されることが多いので、目にした方も多いと思いますが、政権与党と野党が対面し、白熱したやり取りが行われます。
万が一何か政府案に不備がみつかった場合、国民の代表の国会議員によって、追及されます。
ステップ6:国民を代表した専門家の意見などを聞く「公聴会」の開催
予算委員会では、「公聴会」が開かれます。公聴会は、国民の声を広く予算案に反映させるために開かれるものであり、衆議院予算委員会、参議院予算委員会のそれぞれで開かれます。
公聴会には専門家などが招かれ、予算案についての意見をヒアリングします。
ステップ7:「衆議院本会議」での審議、採決で、可決・否決が決まる
公聴会など、予算委員会での審議が完了すると、いよいよ本会議での審議が始まります。
衆議院本会議ではまず、衆議院予算委員会からの報告があり、その報告に従って、各党や会派の代表者による質疑応答によって討論が行われます。
475名の衆議院議員によって採決が行われ、賛成多数で可決されます。
ステップ8:衆議院と同じ流れで「参議院本会議」での審議へ
衆議院で可決された予算案は、参議院での審議に回されます。参議院でも、衆議院と同様、まず参議院予算委員会が開かれ、その中で公聴会が行われます。
参議院予算委員会で審議が終わると、参議院本会議での審議が行われます。
本会議では、242名の参議院議員によって、衆議院を通過した国家予算案について、予算委員会からの報告、各党会派による答弁、採決という流れで審議されます。
ここで、衆議院で可決されたものの、参議院で否決となった場合には、国家予算案については「衆議院の優越」が適用され、衆議院での採決結果が優先されることとなります。
ステップ9:半年以上におよぶいくつもの段階を経て、「予算成立」!
「国家予算」の予算案が衆議院と参議院の両院を可決、通過すると、ようやく予算成立となります。
参議院が衆議院で異なる採決の結果が出た場合には、ステップ8でもご説明したように基本的には「衆議院の優越」の原則にしたがって、衆議院の結果が優先されますが、「両院協議会」が開かれて、協議によって調整されることもあるようです。
3月中には、翌年度の予算案が可決、成立という流れになっています。
4月の新年度には、各府省庁に決められた予算が配分され、それぞれが順次、政策を実行します。
補足1:「補正予算」が審議されることもある
「国家予算」が成立した後に、何らかの予算が必要な事案が発生し、成立した予算案での政策執行が難しくなった場合、「補正予算」といって予算を組み替える、追加する場合があります。
補正予算を審議する理由には、自然災害や、何らかの社会情勢の変化による不況などがありますが、令和2年度については、「新型コロナウイルス感染症」に対する緊急経済対策関係費用が「補正予算」として組み込まれました。
令和2年度の補正予算は4月中に国会での審議が行われ、4月30日に成立しています。
》参考:財務省|令和2年度補正予算
https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2020/hosei0420.html
補足2:年度終わりには、決算がある
予算が計画の通りに使用されたのかは、決算報告書によって確認されます。
「国家予算」の決算は、翌年の7月末日までに行われ、各府省庁から財務省に「決算報告書」など必要書類の一式が提出され、完了となります。
まとめ – 約3年に及ぶ、「国家予算」の成立と執行の過程
以上のように、日本の「国家予算」は概算要求の準備から、決算まで、約3年をかけて計画、実行、振り返りが行われます。
つまり、その年の予算を執行しながらも、翌年の予算についての予算案が審議されたり調整されたりしており、さらに、年度の前半では、前年の決算も行われているので、3つの予算についての作業が、同時進行で行われているのです。
また、「国家予算」については、財務省の役割が大きいこともわかります。「国家予算」の計画によって、国のお金の使い道を決め、国の大きな歳入源となる税金の仕組みを検討するのも財務省の仕事のひとつです。
日本の国家予算は一般会計100兆円程度、特別会計は200兆円規模だと言われており、合計で日本の国家予算は300兆円くらいと言われています。 今回は公務員としても、日本人としても知っておきたい日本の「国家予算」についてまとめました。
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