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2007年に成立した「特別会計法」とは?不明瞭な特別会計制度の立て直しを目的に制定

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目次

はじめに - 特別会計法とは?

特別会計法とは、通称の呼び方で、正式には「特別会計に関する法律」といいます。この法律は、日本の国家財務の「特別会計」について規定した法律で、2007年3月31日に公布されたものです。さらに省略して、「特会法」とも呼ばれることがあります。

本ページでは、この「特別会計法」について解説します。

日本の「特別会計」は不明瞭だと批判され、2007年に改革、改善されました

日本の会計制度では、「一般会計」と「特別会計」があります。

「一般会計」は1つの予算を立てますが、「特別会計」は2018年度(平成30年度)の時点で13種類あり、13個それぞれの予算が存在します。そして、この特別会計というのは、会計ごとに所管大臣が決まっていて、その担当省庁が予算を立てるルールになっていました。

例えるなら、国全体で1つのお財布をやりくりする「一般会計」とは異なり、「特別会計」は目的別に複数のお財布があり、お財布を管理する担当者もそれぞれです。

この「特別会計」について、いわゆる「特別会計法」が成立する2007年以前は省庁によってルールがまちまちであり、内容が公表されない会計があるなど、担当する省庁の外から内情が見えにくいといった批判がなされてきました。

2003年に当時の財務大臣であった通称「塩爺」こと塩川正十郎氏が「母屋(一般会計)はおかゆなのに、離れ座敷(特別会計)ですき焼きを食べている」と表現したことは有名で、特別会計を通じて官僚の天下りが行われたり、必要の無い事業を発注して、特定の業者に便宜をはかったりするなどの問題が指摘されてきました。

そうした問題を受けて、特別会計に共通ルールを持たせ、情報開示や国会審議を義務付けようと2007年度(平成19年度)に成立したのが、「特別会計に関する法律」であり、通称「特別会計法」や「特会法」などと呼ばれています。

2007年以前は、「特別会計」ごとに法律が制定されていた

2007年に特別会計に関する法律が制定される以前の2006年には、「特別会計」は31種類も設置されており、それぞれの特別会計ごとの法律も31種類存在していました。

つまり、特別会計ごとにルールが違っており、管理の仕方もバラバラだったためにわかりにくく、会計の経理の実態が不透明だとの批判につながっていたということです。

そこで2007年に特別会計の改革が行われ、まずその設置されていたバラバラの内容の31種類の法律は廃案となり、代わりに特別会計のルールを一括して定めた「特別会計法」が成立しました。


2007年以前は31種類あった特別会計は、統廃合されて17種類までに削減され、その後も削減した結果、2018年には13種類にまで減らされています。

2018年度(平成30年度)に設置の特別会計一覧

1.交付税及び譲与税配付金特別会計
2.地震再保険特別会計
3.国債整理基金特別会計
4.外国為替資金特別会計
5.財政投融資特別会計
6.エネルギー対策特別会計
7.労働保険特別会計
8.年金特別会計
9.食料安定供給特別会計
10.国有林野事業債務管理特別会計
11.特許特別会計
12.自動車安全特別会計
13.東日本大震災復興特別会計

「特別会計法」の内容について

「特別会計法」では特別会計に共通するルールが定められました。下記にて解説します。

新ルール:特別会計も「予算」の国会提出が必要

特別会計法の第3条では、それぞれの特別会計を担当する府省庁の大臣が、「歳入歳出予定計算書」を作成し、財務大臣に提出することが義務付けられました。

これは、特別会計でも一般会計の予算作成の流れと同じように、各府省から財務省へ、必要な予算を伝えて、財務省が本当に必要かを査定する、「概算要求」が行われることになったことを意味しています。

第三条 所管大臣(特別会計を管理する各省各庁の長(財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第二十条第二項に規定する各省各庁の長をいう。)をいう。以下同じ。)は、毎会計年度、その管理する特別会計の歳入歳出予定計算書、繰越明許費要求書及び国庫債務負担行為要求書(以下「歳入歳出予定計算書等」という。)を作成し、財務大臣に送付しなければならない。

出典
特別会計に関する法律

さらに、特別会計法の第5条では、内閣が各特別会計の予算を作成し、一般会計の予算とともに国会に提出することも義務付けられました。

第五条 内閣は、毎会計年度、各特別会計の予算を作成し、一般会計の予算とともに、国会に提出しなければならない。

出典
特別会計に関する法律

新ルール:特別会計の「決算」についての書類も国会提出が義務に

特別会計の決算についても、共通のルールが作られました。

各特別会計の管理を担当する府省は、必ず「歳入歳出決定計算書」を作成し、財務大臣に送ってチェックを受けなければならなくなりました。

第九条 所管大臣は、毎会計年度、その管理する特別会計について、歳入歳出予定計算書と同一の区分による歳入歳出決定計算書を作成し、財務大臣に送付しなければならない。

出典
特別会計に関する法律

また、特別会計法の第10条では、財務大臣に提出された各特別会計の計算書をもとに、各特別会計の「歳入歳出決算」の書類を作成し、国会に提出することが義務付けられています。

第十条 内閣は、毎会計年度、歳入歳出決定計算書に基づいて、各特別会計の歳入歳出決算を作成し、一般会計の歳入歳出決算とともに、国会に提出しなければならない。

出典
特別会計に関する法律

新ルール:特別会計の「決算」については「情報公開」も義務化されました

以上のように、特別会計法の成立によって、特別会計の予算・決算ともに、各特別会計の管理をする府省が計算書を作成し、財務省への提出が必要になりました。

また、財務省へ提出された計算書をもとに、内閣として予算・決算を作成し、国会に提出し、審議をした上で、議決が行われることになり、特別会計の予算作成から決算までの手続きは、一般会計とほぼ同じ流れになりました。

決算後の各特別会計の財務状況については、特別会計ごとに異なっていた書類の形式を、企業会計で一般的に採用されている書式を参考として、「省庁別財務書類」という決まった形式に一本化することも、特別会計法で定められました。

さらに、内閣に対して、この提出された決算に関する書類を、会計検査院で検査することを経て、国会に提出することも義務付けられました。

そして、この決まった形式の書類を、財務大臣への送付するように各特別会計の所管大臣に対し義務付けました。所管大臣は、財務情報についてインターネットなど、国民がアクセスできる適切な方法で開示することも義務になりました。

第十九条 所管大臣は、毎会計年度、その管理する特別会計について、資産及び負債の状況その他の決算に関する財務情報を開示するための書類を企業会計の慣行を参考として作成し、財務大臣に送付しなければならない。
2 内閣は、前項の書類を会計検査院の検査を経て国会に提出しなければならない。

第二十条 所管大臣は、その管理する特別会計について、前条第一項の書類に記載された情報その他特別会計の財務に関する状況を適切に示す情報として政令で定めるものを、インターネットの利用その他適切な方法により開示しなければならない。

出典
特別会計に関する法律

裏を返せば、それまで特別会計は、予算や決算について国会での審議が行われなかったり、財務情報が公表されない特別会計があっても法的には問題なかったということです。しかし、2007年以降はすべての特別会計の決算について、共通の財務書類が作られ、国会で検査され、インターネットで公表されるようになりました。


ただし、各特別会計の計算書を財務省の査定するにしても、内閣が作成した予算・決算を国会で審議するにしても、それぞれの特別会計ごとの査定や審議になってしまい、特別会計の全体像が見えにくい、という課題があります。

国会のチェックは働いているものの、各特別会計はそれぞれ複雑に成り立っていることから、一般会計のように、国会議員による全体のバランスを考慮し、全てを把握した上での国会審議というのは、物理的に難しいようです。

新ルール:「特別会計」で余ったお金「剰余金」は溜め込みすぎず、一般会計で有効に使う

さらに、「特別会計法」では、特別会計での歳出に対して、決算後に余ってしまった歳入の金額の一部、つまり「剰余金」の処理について、共通のルールを設けました。

第八条 各特別会計における毎会計年度の歳入歳出の決算上剰余金を生じた場合において、当該剰余金から次章に定めるところにより当該特別会計の積立金として積み立てる金額及び資金に組み入れる金額を控除してなお残余があるときは、これを当該特別会計の翌年度の歳入に繰り入れるものとする。

出典
特別会計に関する法律

それまで剰余金については共通のルールが無く、貯金されすぎてしまうことも問題視されていました。貯金しておけば、翌年以降の財源にまわすことができ、それぞれの特別会計を担当する省庁が、ある程度お金を自由に使えたり、貯めたりする状況にあったようです。

そこで、特別会計についても合理的で常識的な見積りに基づいて、積み立てる金額を決めるようにしました。

積み立てたお金を、翌年度の歳出財源に充てることも可能ですが、客観的に見ても合理的だと判断された範囲に限られることになり、翌年度の歳入に繰り入れる金額以外は、その年の一般会計に繰り入れて有効活用することなども法的に定められました。

新ルール:「特別会計」を積み立てる場合は、明細を公表することも義務づけ

また、「特別会計法」では、特別会計の積立金、つまり余ったお金を貯金に回す場合は、その必要性や、必要な水準などを、各特別会計の予算の「積立金明細表」に明記して、公表することが義務づけられました。

積立金は、翌年度以降の歳入として使用することもできますし、いつか使う貯金として、とりあえず財政投融資に預けて、運用することもできます。

「特別会計法」の総則では他に、急な支払いが必要なく現金が余っている状態の「余裕金」について運用することや、「借入金等及び繰越し」などについても、すべての特別会計共通の規定が定められ、ルールが統一されました。

こうして、2007年度の特別会計改革で統廃合され、新設された17の特別会計は、それぞれ目的や、所管大臣、勘定区分、歳入及び歳出、一般会計からの繰入対象経費、積立金、借入金対象経費と繰越しなどについて、共通ルールが定められ、管理されることとなりました。

まとめ

以上、このページでは2007年に成立した「特別会計に関する法律(特別会計法)」についてご紹介しました。

特別会計法の成立によって、特別会計制度は大きく改革され、それまで所管する省によってまちまちで不透明なために「埋蔵金」などと批判されてきたことから脱却し、ルールも一本化されました。

そして30以上もあった特別会計は統廃合により、現在では13まで削減されています。

特別会計の手続きとして、改革以前は国会審議の必要の無い特別会計もありましたが、改革後はすべての特別会計が国会審議を必須としています。

また、国会での審議や国民への情報開示の仕方として、決められた項目を明記した書類を公表することになっており、以前のように特別会計の管轄外部から見ると分かりにくいということも減ったようです。

しかし、特別会計制度にはまだまだ見直しの余地があるという専門家の意見もあるようです。

例えば、特別会計法では特別会計の剰余金について、一部を一般会計に繰り入れることになっていますが、一部ではなく全部を一般会計に繰り入れ、少しでも一般会計の財源を確保するべきだとの意見や、一般会計に繰り入れしている特別会計が全体の一部に過ぎず、すべての特別会計で一般会計への繰り入れを検討すべきとの意見があるようです。

また、積立金についても、特別会計法では目的を公表さえすればいくら積み立ててもいい状態のため、客観的な基準や上限額を定めるべきだという意見などもあります。

繰り入れや借り換えなどが入り組んだ状態で複雑に成り立っている特別会計は、専門家であっても全てを把握するのは困難だとの声があるほどで、一般会計に比べて報道も少なく、国民の関心も薄くなりがちです。


しかし、だからといって、都合の良いように予算を立て、余ったら貯金にして省ごとに自由に使うことがあってはならないでしょう。

今後さらに、特別会計制度の見直しと改革が行われ、特別会計がより分かりやすく、国家を支えるために有効に活用されることが期待されます。

▼出典:e−Gov 電子政府の総合窓口「特別会計に関する法律」
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=419AC0000000023#H

▼参考:参議院|特別会計の現状における問題点と「特別会計に関する法律」
https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/keizai_prism/backnumber/h19pdf/20073913.pdf

本記事は、2020年8月3日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

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この記事を書いた人

公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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