私たちは人間社会を形成していくうえで、多くの「法・法律」に従って生活しています。「人を殺してはいけません」というごく当たり前の概念ですら、法のひとつです。
本記事では、日本における法の種類や分類について、解説します。
法の種類
「法」は上記の図のように、枝分かれするように分類されています。本記事では、上記の図の分類に沿って説明していくので、上記の図を参照しながら読み進めてください。
法には「自然法」と「実定法」がある
法を大きく分類すると、まず「自然法(しぜんほう)」と「実定法(じっていほう)」に分けられます。
「自然法」とは?
「自然法」は、法として文章化するまでもないような、基本的で普遍的な、時代も国も人種も関係なく全人類に共通していえる、当たり前の「決まり事」のようなものを指します。例えば、「人は人を殺してはいけない」レベルのものが「自然法」です。
「実定法」とは?
一方「実定法」は、人が作った法、もしくは特定の社会内で実効的に行われている法のことです。社会慣習や立法機能により作りだされた「決まり事」であり、普遍的ではなく、時代や国によって異なることもあります。
憲法・民法・会社法・刑事訴訟法、そして慣習によって守られるようになった慣習法も「実定法」の一つです。
「実定法」はさらに、「不文法」と「成文法」に分けられます。次の章では「不文法」と「成文法」について説明します。
「実定法」は「不文法」と「成文法」に分けられる
前述のように、法はまず「自然法」と「実定法」に分けられ、「実定法」はさらに、「不文法(ふぶんほう)」と「成文法(せいぶんほう)」に分けられます。
実定法その1:「不文法」とは?
「不文法」とは、文章として明文化されてはいないけれど、「法」として人を拘束するもののことです。不文法には大きく、「慣習法」「判例法」「条理法」があります。
「慣習法」とは、社会生活を維持する社会規範として、長期にわたって人々に支持されてきた慣習が法として意識されるようになり、実際に法的効力を有するようになったもののことです。なお、刑法においては、慣習法による処罰は禁じられています。
「判例法」とは、似たような紛争が起きたとき、それらの紛争を解決するために裁判所が同様の判断(判決)を繰り返し下すことによって、その判断自体が法と同じような拘束力を持つにいたった規範やルールのことです。
「条理法」の条理は、「社会通念」と言い換えることができます。裁判の際に、成文法にも、そして不文法のうちの上記2つである判例法・慣習法のいずれにも該当する法律が存在していない場合に、その裁判を行っている裁判官自らが、その場で「社会通念(条理)」を基準として裁判の判決を下すことがあります。このような場合に用いられるのが「条理法」です。
実定法その2:「成文法」とは?
「成文法」とは、権限を有する機関によって文章で表記され、一定の形式・手続に従って制定される法のことです。別名、「制定法」とも呼ばれます。
「成文法」はさらに「国内法」と「国際法」に枝分かれしていきます。次は「国内法」「国際法」について解説します。
「成文法」は「国内法」と「国際法」に分けられる
法 → 実定法 → 成文法と枝分かれしてきた「成文法」は、さらに「国内法」と「国際法」とに分けられます。
成文法その1:「国内法」について
「国内法」とは、1つの国の中で通用する法のことであり、日本で言えば「日本国憲法」などがこれにあたります。
国内法は、以下の5つに分類できます。
・公法
・私法
・社会法
・命令
・地方自主法
一つずつ解説していきましょう。
国内法のうち、「公法」「私法」とは?
「公法」と「私法」は、「誰を対象とするか」の違いです。
「公法」は一般的に、「国・地方公共団体」対「国民・市民」の関係を対象とした法であり、「私法」は「個人」対「個人」の関係を対象にした法です。
日本国憲法や刑法などは「公法」に、民法や商法などは「私法」に分類されます。
国内法のうち、「社会法」とは?
「社会法」は「私法」の一部ですが、上記で述べた「公法」と「私法」の中間的な役割を果たすものです。
例えば「企業」対「個人」で考えた場合、「企業」は国や地方自治体ではないので、法律上は「個人」という扱いになりますが、実際にとは「個人」として扱えない権力を有している場合もあります。
この場合、「大企業」と「一個人」を平等に扱うのは非常に困難であり、社会正義に反します。
「社会法」とは、この力の差を平等にするために「私法」を修正・補足するための法律のことです。
「社会法」の代表的なものとして、「労働基準法」や「男女雇用機会均等法」などがあります。
国内法のうち、「命令」とは?
「政令・省令」等のことを「命令」といいます。
「政令」とは、内閣が制定する命令であり、行政機関が制定する命令の中では最も優先的な効力を有します。
「省令」は各省庁の大臣が発する命令です。政令よりも効力は低く、法律の円滑な運用をはかるために、各省が所管の行政事務について制定する命令です。
国内法のうち、「地方自主法」とは?
「地方自主法」とは、地方自治体がその自治権に基づいて制定する条例・規則などの総称です。
成文法その2:「国際法」について
「国際法」とは、複数の国の関係を規定する法、もしくは条約のことです。「日米安全保障条約」や「世界人権宣言」のようなものがこれにあたります。
「実体法」と「手続法」について
最初の図を見るとわかるように、「公法・私法・社会法」には、「実体法」と「手続法」があることがわかると思います。
「実定法」とは、権利義務の発生や変更、消滅といった目に見えない用件を定める法律であるのに対し、「手続法」は、その実現のために必要な手続や方法を規律する法律のことです。
ものすごくかみ砕いてわかりやすく言えば、「こういう事実があるとこういう権利が発生しますよ(民法)」や、「こういうことをするとこういう罰をうけますよ(刑法)」といったことを規定しているのが、実体法です。
これに対して、実体法を具体的に実現する手続を定めた法律(民事訴訟法、刑事訴訟法など)が、手続法です。
法の序列に着目した分類
次は、法の序列に着目して、分類していきましょう。つまり、「どの法律が強いか」ということです。
日本において、最も強い力を持つのが「日本国憲法」です。日本国内の最高法であり、主権者である国民が制定する法です。
次に強いのが「法律」です。法律は国会が制定します。
3番目は「条例」であり、これは地方自治体が制定する法です。
次が「命令」であり、「政令・省令」等のことです。
最後が「規則」、地方自治体の長(都道府県知事や市町村長)が制定する法です。
上位にある法は基本的・一般的なことを規定しており、下位の法は具体的で詳細な内容を規定していることが多いです。
また、基本的に下位にある法は、上位にある法を覆すような内容を規定することはできません。上位の方が「NO」といっていることを、下位の方が「OK」ということはできないのです。
適用関係に着目した分類 - 「一般法」と「特別法」
法律には「適用関係から分類する」分け方もあります。それが「一般法」と「特別法」です。
「一般法」とは、その法が適用される領域が限定されていない法律のことです。これに対して、「特別法」は、その法が適用される領域が限定されている法律のことを指します。
イメージとしては、まず「一般法」という大きな枠組みがあり、「特別法」はその枠組みの中の、個々の限定的なものに対処していくための法律です。
具体例を挙げるとすれば、まず、「民法」は一般法です。個々人の一般的な相互関係を規制しています。
一方、「労働基準法」は特別法です。個々人の一般的な相互関係の中でも、「労働者と使用者」の相互関係のみを規制している法律です。
なお、ある事項について、「一般法」と「特別法」で異なった規定が存在する場合、「特別法の規定が優先される」という決まりがあります。
これを、「特別法の優先の原則」と言います。
当事者の意思に着目した分類 - 「強行規定」と「任意規定」
法律にはまた、「当事者の意思が尊重されるかどうか」に着目して分類することもできます。これが「強行規定」と「任意規定」です。
「強行規定」とは、当事者の意思に関係なく守らなければならない規定のことです。
一方、「任意規定」とは、当事者に別の意思がある場合にはそちらを優先してよい規定です。これには、例えば遺産相続などが当てはまります。
新旧に着目した分類 - 「新法」と「旧法」
これは単純に、その法律が新しいか古いかに着目した分類です。「新法」と「旧法」があり、日本国憲法(新法)と、大日本帝国憲法(旧法)などがこれに当てはまります。
さいごに - 日本における重要な6つの方を「六法」という
日本には、特に重要な方が6つあり、憲法と、その他の5つの重要な法律を合わせて「六法」といいます。
六法については、詳しくは以下の記事をご参照ください。
「六法」とは何でしょうか?本ページでは、日本の法律の中で、最も基本的な法律である憲法、民法、刑法、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法の6種類の法律を意味する「六法」について解説します。
まとめ
以上、「法の種類・分類について」でした。
法律はよく、スポーツのルールに例えられます。サッカーがサッカーとして成り立つのは、「サッカーはこうしてプレイしましょう」というルールがあり、全員がそのルールに従ってサッカーを行うからです。これは確かに「法」に通じるものがあります。
しかし、サッカーにルールを設定する目的が「サッカーを円滑に行うため」であるのに対し、「法」がある目的は、ただ「社会生活を円滑に営むため」だけではありません。
「法」の一番の目的は、社会生活を円滑に営むことを超え、「人々の幸福を守る」ことです。
日本の基本的な「法の分類」について今まで詳しく知らなかった方も、ぜひ今回の記事を通して、「法」への興味を深めてください。
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