学級担任をしていると、ある程度、それぞれの子供が何が得意で何が苦手なのかが見えてきます。
学習が得意な子供は、進んで難しい問題にチャレンジしたり、先取りしたり、自分で学習することができます。
しかし、学習が苦手な子供は、自分でも何に困っているかわからない場合が多く、教師の支援は必須となってきます。
今回は、そんな学習が苦手な子供に対する手立てを3つご紹介したいと思います。
手立て1:授業に参加する機会を意図的に作る
学習が苦手な子供は、授業中にぼーっとしたり、宿題を満足にやってこなかったりということが多いですが、決してサボっているわけではありません。
何とかして分かるようになりたい、授業を楽しく受けたい!と思っている子供がほとんどです。
そんな子供の意欲を守るためにも、教師側が意図的に授業に参加できるようにする手立てを考えることが大切です。
例えば授業の参加方法について、代表的なものは挙手です。授業中によく手をあげる子供は、問題がすぐに解くことができる子、みんなの前でハキハキと発表できる子など、ある程度固定化されがちです。
そして、教師側も、正しい答えを発表する子供を指名することで授業がスムーズに進むので、どうしても、学習が苦手な子供が置いていかれがちになります。
そうならないためにも、授業内容を考えるときに、発問内容をしっかり考えることや、誰でも挙手しやすい学習環境を作ることが大切です。
その手立てについて、詳しくご紹介したいと思います。
誰でも挙手できるようになる手立てその1:選択制にする
例えば算数の時、基本的な流れとしては問題を確認する、式を組み立てて答えを出す、発表するとなりますが、これでは、計算するどころか、式を組み立てることができない子供達は、ただ困ってしまう時間となってしまいます。
そこで、教師側から式を提示するのも手立ての一つです。
ただ式を提示するだけでは子供の考える機会を奪ってしまうので、正解の式、そして明らかに間違った式など、2種類ほど提示します。
どれが正解かわからなくても大丈夫、何となくこれかな?と思うものに挙手しても良いことを伝えることで、全員が挙手する機会を得ることができます。
こうすることで、全員が挙手でき、また、解くべき式を確認することができます。
このように、クイズ形式を盛り込むことによって、学習が苦手な子供でも参加しやすくなります。
誰でも挙手できるようになる手立てその2:「途中まで分かる」を大いに褒める
ここまで分かるのに…と最後まで答えが分からないからといって挙手を諦めてしまう子供がたくさんいます。
そもそも授業とは、一人の力で進めるものでなく、全員の思考や知恵を組み合わせて、ゴールに向かっていくものだと思います。
だからこそ、「ここまでは分かる」を組み合わせることによって、皆んなが学びあえる素晴らしい授業になると思います。
では実際にどのようにしていくのかというと、途中まで発表した子供が、続きを答えられる子を指名し、協力して答えを導き出す方法があります。
例えば、4年生の社会科で、「関東地方にある都道府県を言えるかな?」という発問に対して、「関東地方は全部で7個で東京都、茨城県…ここから分からないから続きがわかる人!」と、分かるところまで発表します。
続きは、子供達同士で指名し合い、全員で答えを完成させます。
この時に、同じ子供ばかり指名されないように、子供一人に対して、1授業中に指名されるのは1回まで、どうしても誰もいない時は、スペシャルボーナスで手をあげても良いなど、ルールを設けておくと良いです。
答えを1から100まで答えられることだけが素晴らしいのではなく、発問に対して、考え、答えを導く楽しさを実感することで、挙手のハードルをぐっと下げることができると思います。
また、「良い連携プレーだったね!」とか、「さすがこのクラスは、力を合わせるのがうまいなぁ」など、みんなで答えを出し合ったことを大いに褒めると良いと思います。
手立て2:ノートを書く労力を最小限にする
今まで担任してきた中で、学習にしんどい子供のほぼ大半は、ノートを取ることに苦労していました。
理由は様々ですが、そもそも文字を書くのが苦手な子供、黒板を見て文を覚えることができず、一文字ずつしか黒板を見ては書きしかできない子供、マスの使い方が分からず、ノートがぐちゃぐちゃになってしまう子供、など理由は様々でした。
書く力ももちろん大切ですが、まず力を入れたいのは、思考力を養うことだと思います。
書くことばかりに注力するあまり、黒板の問題をやっとの思いで写し終えたと思ったら、周りは既に問題を解き終わり、授業もどんどん進んでいき、結局答えを丸写しして、何も考えずに授業が終わってしまうなんてことになりかねません。
そうならないようにするためには、ノートのコピーを渡すことが有効です。
具体的に算数で考えると分かりやすいと思います。
コピーには、あらかじめ問題が書かれてあり、式と答えを穴埋めにします。
この時、筆算を使う場合には、マスを正しく使って計算するために、筆算に使うマスの範囲を囲うなどしておくと尚良いです。
まとめのところでは、大事な単語だけを穴埋めにします。
このように、大事なところだけ書くことができるコピーがあると、考える時間を作ることができます。
また、書くだけではなく、授業の流れがわかりやすいので、見通しを立てやすくなるのもメリットの一つです。
慣れてきたところで、問題文を半分穴埋めにするなど、書く量を増やしていくことで、最終的には自分でノートに書く力を養うことができます。
手立て3:家庭学習(宿題)の量、質を一人ひとりのペースに合わせる
学習が苦手な子供にとって、宿題は大きなストレスになります。
分からない問題ばかりでやる気が削がれ、何とかやってみるものの間違いだらけで、たくさんのやり直しと共に、また次の分の宿題も出されて…と、終わらない宿題地獄に苦しむことになります。
そうならないためにも、家庭学習でできる手立てはあります。
まずは、宿題の全てをさせようとしないことです。
例えば算数ドリルで全20問の宿題があったとします。その中には、基本的な問題、応用的な問題と分かれています。
応用問題はひとまず置いておいて、基本的な問題に焦点を置き、練習問題も数問に絞ります。
全20問ならば、5〜10問に絞ることができます。
この時に、子供に好きな10問を選ばせるのではなく、子供と一緒に教師がやるべき問題を指示してあげることが大切です。
また、子供とのやりとりだけではなく、宿題を減らす時には保護者との相談も必須になってきます。
一度、保護者の承諾なしに行ってことがありますがその時に、
「子供が、宿題をサボりたいためだと思うんですが…『先生が10問だけで良いって言ったもん!』なんてことを言っているんですが、本当ですか?」という電話をいただいたことがありました。
保護者にそのような心配を掛けないように、宿題の量を減らす理由の説明と、承諾を得ることを忘れないでください。
大切なことは、授業で学習した基本的な内容を使って問題が解けること、そして、子供本人が
「できた!」という達成感を得て、次への学習に向かうことができることです。
宿題を減らすということは、決して甘えではなく、子供の学習意欲を守るためにも有効な手立てになると思います。
手立て4:保護者への理解、協力を得る
この手立ては、一番難しいかもしれませんが、ぜひ行ってほしい手立てです。
まずは、子供の学習状況について、保護者に伝える機会を作ります。
この時に、学習状況のことだけを伝えると、保護者もショックを受けて、今後の協力へのお願いにつながりにくいので、普段の授業で頑張っていることや、学校での友達との様子、係活動や行事など、その子の頑張りや良いところも併せて話をすることがおすすめです。
また、「学習に全然ついてこられません!」とか「テストの点数がいつも悪いです!」と言った漠然としたことを伝えるのではなく、「算数の筆算をするときに、マスの使い方が難かしいようで…」とか、「国語では、ふりがなをつけると文章を上手に読むことができますが、初めての文章では戸惑ってしまうようです」など、「ここまではできるけど、ここからが困っている」ということを可能な限り具体的に伝えてみてください。
そうすることで、保護者も子供に対して、「じゃぁ、教科書にふりがなをふってみようか」とか、「筆算をする時には、マスを囲ってみよう」など、具体的な手助けの方法が分かり、安心することができます。
大切なのは、良いところも褒めつつ、伸び代をさらに伸ばすために、学校と家庭で協力していきましょうという気持ちを伝えることだと思います。
まとめ
今回は、学習が苦手な子に対しての手立てをご紹介しました。
子供は、「もっとできるようになりたい」「もっと頑張りたい」と言った、前向きなエネルギーを持った素晴らしい存在です。
そのエネルギーが削がれないように教師側でできる手立てはたくさんあると思います。
そして、皆んなと同じ100点満点を目指すのではなく、その子なりの頑張りと伸び代を見守り、褒めることが大切だと思います。
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