小学校で行う歯科検診の重要な役割とは
保健室の先生を目指している方は、小学校で行う歯科検診が、子どものむし歯や歯周病などを早期発見して保護者に治療を促す大切な役割があるということを理解していると思います。
しかし、小学校で行う歯科検診が、子どものむし歯や歯周病の治療を促した後の保護者の対応によって、ネグレクトなど子どもの家庭問題を洗い出す重要な役割も担っているのをご存知ですか。
この記事では、小学校で歯科検診を行う際に知ることができる子どもの家庭の問題について紹介しますので、これから小学校の保健室の先生を目指す方や、初めて小学校で歯科検診をする保健室の先生はぜひ参考にしてみてください。
保健室の先生が歯科検診で子どもの家庭環境を知る方法
小学校の保健室の先生が、歯科検診で子どもの家庭環境についても知りたいと思う場合は、子どものむし歯の数よりも、むし歯のある子どもの保護者が子どもを歯科に連れて行くかに注目しましょう。
もちろん、歯医者を極度に嫌がって治療ができない支援級の子どももいますが、それ以外の家庭は基本的に、保健室から虫歯の治療を勧められたら子どもを歯医者に連れて行ってくれます。
しかし、子どもにむし歯がある家庭のなかには何度も保健室の先生が子どものむし歯の治療を勧めても、なかなか歯科に行かない家庭もあります。
保護者が子どものむし歯を治療しない理由とは
何度も保健室の先生が子どものむし歯の治療を進めても、保護者が子どものむし歯を治療しない理由を、実際に私が保健室の先生として対応したなかから3つ紹介します。
保護者が子どもの虫歯が治療しない理由その1:保護者が乳歯のむし歯は抜ければ問題ないと思っているから
保護者が子どもの乳歯のむし歯を放置している場合は、保護者が歯についての正しい知識をもっておらず、「乳歯は生え変わるから治さなくていい」と勘違いしているケースがあります。
しかし、乳歯が酷いむし歯になってしまうと、下にある永久歯のエナメル質が形成されずボロボロの歯が生えてくるなど、永久歯に悪影響を与える可能性もあるため危険です。
子どものむし歯の知識が乏しい保護者は、乳歯の治療をすることの大切さを知れば納得して歯科に足を運んでくれる場合が多いので、子どもの歯の大切さを記載した保健だよりを歯科検診前や治療勧告時に配布するなどして、子どもの歯を守るための正しい知識を学んでもらうのが大切です。
保護者が子どものむし歯を治療しない理由その2:ネグレクトされているから
保護者が子どものむし歯だらけの歯を放置している場合、子どもの健康状態に興味がないケースがあり、その子どもはむし歯だけでなく、栄養状態が悪かったり、お風呂に入っていなくて不衛生だったりと、ネグレクト状態に陥っていることが多いです。
私の勤めていた学校にいたむし歯の治療がされていない子どものなかにも、毎日同じ服を着ていたり、夏でも風呂に入っていなかったり、ネグレクトの傾向がみられる子どもが複数いました。
子どもにむし歯がある保護者に、何度も治療を促しても効果がなく、さらに他のネグレクトの傾向がみられる場合は、管理職や専門機関と連携しながら、ネグレクトを受けている可能性のある子どものためにできることを考えましょう。
保護者が子どものむし歯を治療しない理由その3:むし歯の治療で子どもが痛がるのが可哀そうだから
子どものむし歯を放置している保護者のなかには、「むし歯の治療で子どもが痛がるのが可哀そう」という考えの方もいます。
私の勤めていた学校にも、子どもに大して異常に甘く、甘い食べ物を欲しがるだけ与えるのに、歯磨きは嫌がるからやらない、むし歯の治療は痛くてかわいそうだからやらない、という家庭がありました。
保護者が本当に子どもを大切に思うならば、子どもの健康のために歯の治療をしなくてはいけませんが、子どもが可哀そうだからむし歯の治療をしない家庭にはなかなか伝わらないので、保護者に子どものむし歯を治療する大切さを説明するのと同時に、子どもにも、むし歯を治したいと思える気持ちを育てる保健指導をするのが重要です。
子どもが自ら保護者に「むし歯を治したい」と言えるようになれば、保護者も子どもの意思を尊重して歯科に足を運んでくれる可能性が高くなります。
新一年生は就学児健康診断の歯科検診をチェックすると家庭の問題が見えてくる
新一年生が入学してくる際、幼稚園や保育園から小学校に子どもの特性などについて申し送りがありますが、申し送りの書類だけでは家庭の状況までなかなかわからないので、就学児健康診断の歯科検診の結果をチェックしてみてください。
就学児健康診断の歯科検診で、むし歯が1本もない子どもはもちろん素晴らしいですが、むし歯を治療した跡があったり、奥歯にシーラントが被せてあったりする子どもも、保護者が子どもの健康を大切にしているサインです。
一方、就学児健康診断でむし歯だらけの子どもも、入学までに治療の時間はたっぷりあるので、子どもの健康を大切にしている保護者なら入学前にむし歯の治療を済ませてくれます。
もし、入学式までに1本もむし歯が治療されていない子どもがいたら、保護者が子どもの健康に関心が薄い可能性が高いため、小学校での6年間、保健室の先生が気にかける必要のある子どもになると思います。
保健室の先生は子どもの歯の健康を守る保護者に労りの心を持つのを忘れずに
保護者が子どもの歯の健康を守るのは義務ですが、大人でも苦手な人が多いむし歯の治療に、子どもを連れて行くのは本当に大変で、私も子どもを産んでから、子どもの歯を守る苦労を身を持って知りました。
子どものむし歯を治さない家庭の理由は様々ですが、子どもの歯を健康に保つのが大変なのはどの家庭も一緒です。
保健室の先生は、子どもだけでなく保護者の心に寄り添うのも大切な仕事なので、ぜひ子どもの歯の健康を守る保護者の苦労を気遣う心を忘れないでください。
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