【部活に、進路指導】大変だけどやりがいのある「中学校の先生」の仕事内容

今回は、公立中学校に25年間、勤務された先生に仕事内容について解説いただきました。先生になる経緯から、先生の仕事、テスト期間・学級経営・部活動・進路指導・やりがいについて語っていただきました。最後の合唱コンクールのエピソードは必見です!


『中学校の先生ってやりがいいっぱい!』

私は2年間の講師時代を含めて、合計25年間、公立中学校に「先生」として、勤務してきました。いろいろなことがありましたが、その仕事から離れてみて、改めて、先生という職業はやりがいがある仕事だったとしみじみ思います。

先生になるめには?講師と教諭の違い

まず、教員免許が必要になります。そのためには大学に進学しなければなりません。教員養成課程の大学ならば、その大学のカリキュラムに沿って就学すれば、免許がもらえます。そうでない場合は、自分が専攻した学科に勉強に加えて、教職課程を履修しなければならず、履修する科目が結構増えます。

私は、社会福祉を専攻しながら、中学校と高校の社会科教諭の免許をとったので、2年生、3年生はほぼ毎日1時限目から最後の5限目まで埋まっている状態でした。

そして、試験に合格して、決められた単位が取れれば、教員免許状がもらえます。しかし、免許がもらえたからといってすぐに「先生」になれるわけではありません。

公立学校の先生を目指す場合は、それぞれの都道府県の教員採用試験を受け、それに合格しなければなりません。これに合格して、初めて『教諭』という役職で呼ばれる「先生」になれます。

もし、試験に合格できなくても、『講師』といわれる「先生」になることはできます。この場合も、多くの都道府県が講師希望の登録を受け付けているので、こちらに登録をしておくと、講師が必要となった学校の管理職から、連絡が入ります。

どちらも「先生」と呼ばれるのは変わりがありませんが、私も経験した『講師』の場合は、いわゆる契約社員のようなものなので、契約期間が終わったら、次に必ずまた、「先生」が続けられる保証はありません。採用試験にチャレンジして、合格を目指すことがずっと教師を続けられる一番の近道です。

中学校の先生の仕事

先生の仕事は、もちろん「勉強を教える」ということが一番です。中学校はご存知の通り、教科担任制なので、それぞれの教師には、自分が担当する教科があります。

そして、教科担当に加えて、学級担任を任せられることがあります。この時は、学級担任として、学級に所属する生徒の生活全般の指導の責任を持つことになります。また、学級という集団を作り上げていく「学級運営」も仕事です。

すべての先生が担任をする訳ではなく、担任を持たない、「フリー」と呼ばれる先生もいます。学級担任と「フリー」の先生が一緒になって、1学年を担当します。いわゆる教師の「学年所属」といわれるものです。


「フリー」の先生は、担任を持たない分、学年がうまく回って行くように、そして、学級担任が学級運営に力を発揮できるように、広い視野を持って学年全体を見て、学年として行わなければならない仕事や学級担任の補助をしたりします。

さらに中学校ですので、部活指導も教師の仕事です。教師の過重労働が問題になっている昨今、徐々に、この仕事は、外部の指導者に任されるようになってきてはいますが、完全に教師の手を離れている訳ではなく、まだ多くの学校では、部活指導も教師が行っているところが多いです。

中学校の先生の「普段」の一日 ー 終わりは20時頃

中学生

教師にももちろん始業時間があります。これは学校によって定められている時間がいろいろですが、だいたい8時15分から8時30分の間に設定されている学校が多いです。この時間に出勤していなければ「遅刻」になります。

ですが、上にも挙げた部活動の顧問を行っている教師は、部活動の朝練習があれば、朝練習を指導するために、始業時間よりも前に出勤します。大抵の学校が7時30分くらいから、朝練習を行ってよいルールを作っています。もちろん、強制ではありませんので、部活動の顧問を行っていても朝練習を行わなければ、定められた始業時間までに学校に着いていればいい訳です。ただ、朝練習をしていない教師も大半が、始業時間の15分くらい前から、早い人では30分くらい前には出勤していました。朝は余裕をもってスタートさせたい人が多いからでしょう。

始業時間から、職員室にて、教師全員で打ち合わせを行います。その日に必要な伝達事項が伝えられ、確認事項を全員で共有するためのものです。そして、学年ごとにさらに細かい打ち合わせがあり、一日がスタートします。

生徒の登校時間は、教師の始業時間よりおよそ10~15分後に設定されています。この間に教師の打ち合わせが行われ、それを終えて学級担任は、生徒の登校時間までに、教室へ向かいます。この生徒の登校時間というのは、教室に入っていなければ「遅刻」と見なされるため、担任がしっかりチェックをし、遅刻の場合は、しっかり控えておいて、学期末の通知表に「欠席」日数と共に回数を書き込めるようにしておかなければなりません。

教室では、朝の会が行われます。この時、学級担任は、学級へ。フリーの教師は、所属学年の教室の様子を見て回り、必要があれば、簡単な掃除、遅刻してくる生徒への対応など、臨機応変に動きます。
朝の会では、担任は、出欠、遅刻の確認後、生徒に伝えなければならないことをわかりやすく伝えます。その日一日生徒の生活に混乱が起こらないようにするためです。

朝の会後は、いよいよ本業の教科指導です。

だいたいの学校が、1時間50分で、午前中4時間、昼食をはさみ、午後に2時間の6時間の授業が行われています。その中で、自分がどの学級へ何曜日の何時間目に授業に行くのか、時間割が組まれており、それに合わせて、授業に向かいます。
毎日6時間すべて授業をしている訳ではなく、時間割には、毎日1~2時間、授業のないところがあります。授業がないからのんびりしていられるかというとそうではなく、多くの学校では生徒に日記を書かせているので、学級担任はまず、それに対するコメントを書く時間に当てます。学級担任はそれがまず優先です。その日のうちにコメントを書いて、その日のうちに返せるようにするためです。そして、それが終わって、まだ時間があれば、自分の仕事、たとえば授業の準備などに当てます。フリーは日記を見る必要はありませんが、授業がない時間に学年の仕事をしたり、授業の準備をしたりします。

午前中4時間が終われば、昼食です。これは学校によって、弁当を持参する学校、給食がある学校で、対応が少し変わってきます。弁当持参の学校は、4時間目が終わればすぐに昼食の時間がとれます。しかし、給食の学校は、配膳の準備が必要になってきます。ここに担任の教師はもちろん、時にはフリーの教師も加わって、配膳準備を行います。

昼食は、弁当でも給食でも「昼食指導」ということで、担任は、学級で生徒たちと一緒にとります。フリーは職員室で。その後、大抵昼休みが15~20分程度取られますが、ここでも、昼食指導の続きで、担任は、学級に残って生徒と話をしたり、生徒の様子を見たりする必要があり、フリーも食べ終わってまた、学年の教室の様子を見て回ったりと、生徒には休み時間でも、教師は休めることはありません。

午後の2時間が終わったら、全校的に掃除が行われます。(学校によっては昼休み後に掃除の時間がある学校もありますが、授業が終わってからの学校が多いように思います。)生徒がいくつかの掃除場所に分かれて掃除にかかるので、それに教師も分担して、「清掃指導」にあたります。

掃除が終わると、学級担任は、帰りの会です。今日一日の振り返りと翌日の時間割の確認などが主な内容です。この間もフリーは学年の教室の様子を見守ります。

この帰りの会が終わると、いわゆる放課後で、生徒は部活動に所属しているものは部活動へ、そうでない生徒は帰宅となります。教師も基本的に1日の仕事はここで一区切りとなります。あとは、退勤時間(学校によって違っていますが、だいたい16時45分~17時15分の間に設定されています。)まで、自分の仕事をすることになります。
しかし、先にもあげたように、中学校では部活動があります。自分の仕事を優先することなく、顧問をする部活動の指導にあたる教師がほとんどです。部活動の時間が保障されるように、生徒の下校時間(完全下校)は、日没に合わせて、設定されるため、日没が早い晩秋から冬にかけて以外は、教師の退勤時間より、生徒の完全下校の方が遅く設定されることになり、部活指導をしていれば、当然、退勤時間に帰宅できることはありません。もちろん、退勤時間に帰宅しても何ら問題はありませんので、夕方私用があり、退勤時間と同時に学校を出る教師も日によってはいます。が、毎日退勤時間で学校を出る教師は、いません。

完全下校時間には、部活指導をしていた教師を中心に、学校に残っている教師みんなで、生徒の下校を促す「下校指導」を行います。生徒が完全下校時間を守れるように促しながら、全員が学校を出るのを見届けます。


これが終わったら、本当の意味で、1日の仕事が終わります。そして、それからが丸々自分の時間になります。やり残した仕事をやるもの、コーヒーを片手にホッと一息つくもの、いろいろです。が、時には、生徒指導などの緊急の対応が必要になると、この時間もつぶれることもあります。親を呼び出したり、家庭訪問をしたりするのは、大抵が完全下校後の時間になります。

私は、運動部の顧問をしていた時は、朝練習をしていたので、大抵、7時20分頃には学校に着いて、生徒がやってくるのを待っていました。勤務する学校までの通勤時間にも寄りますが、起床時間は6時が多かったです。また、放課後ももちろん部活指導をしていたので、部活指導を終えて、その後、職員室でその日にやり残した仕事を片付け、次の日の授業の準備をして、何とか翌日の仕事の見通しがたって、学校を出るのは、大抵20時頃でした。

中学校の先生の「テスト期間中」の一日

こんな毎日も、テストが近づいてくると、少し変化します。テストの前1週間は、生徒が勉強に専念できるように、と、部活動停止期間になるからです。

帰りの会が終わったら、特別な理由がない限り、生徒は学校に残らず、即下校します。教師もそれに合わせて、帰りの会が終わったら、即自分の時間になります。そのため、いつもは部活指導後にやっていた仕事を、早めの時間帯にできることになります。そのため、うまく時間を使えば、普段はなかなかできない定時退勤も可能になります。

しかし、テスト作成という、普段にはない仕事が加わりますので、やはり、うまく時間を使わなければ、遅くまで職員室に残って仕事をしないといけなくなります。

中学校の先生の「学期末」の一日

また、学期末が近づくと、自分の担当教科で、生徒に成績を付けなくてはいけなくなります。私が勤務していた学校は5段階評価がほとんどでした。そして、それに加えて、各教科で成績に関する観点が決められているので、その、観点別評価というのをABCの3段階で評価をします。

この成績を付けるという作業は、部活指導と並行でやらなければならないので、この時期は多くの教師が遅くまで居残って成績つけをしていました。また、学級担任は、その成績を基に、通知表を学級の生徒分仕上げなければいけないので、学期末の仕事量はかなり多くなります。

仕事ポイント1 やりがいある「学級経営」

学級担任は、教科指導に加えて、学級経営を任されます。

学級をどう組織し、どう動かしていくのか、自分の考えで行うことができます。ただ、中学校は学年としてのまとまりの意識も強いので、それぞれの学級担任が好き勝手できる訳ではありません。学年共通の学級経営の基準を決め、それを守りながら、いかに自分の色を出していくかが、担任をやっていて、面白い点だと思います。

また、中学校は、学級のまとまりを高めていくという狙いで、体育祭や合唱コンクールなどの行事に取り組むのですが、その時も担任の腕の見せ所になります。

私自身は、行事の取り組みは、基本スムーズにいかないものだと思っています。練習をさぼる子が出てきたり、考えが対立したり…。そんな時こそ、担任がその問題を、どう生徒に解決させていくのか、そして、解決のために尽力した生徒が、やってよかった、と思い、頑張ったら自分はこんなことができた、と自信をつけていくように、きめ細やかな配慮をしていきます。最終的に、担任として狙い通りにいけば、こんなに嬉しいことはありません。

行事を通して、生徒の個人としての成長、集団としての成長を見守ることができる学級担任は、本当にやりがいがあります。

仕事ポイント2 責任を感じる「進路指導」

中学3年生は、義務教育最終学年です。卒業後の進路を決めなければなりません。そのため、進路に関わる2者懇談(教師と生徒)や3者懇談(教師と生徒と保護者)の機会が増えます。また、学級活動の時間に、進路についての勉強をする時間も担任が責任をもって進めていきます。

生徒の中には、将来、何がしたいのか全く分からないという生徒もいます。また、ある高校に進学を希望していても成績が伴わず、このまま受験しても、ほぼ不合格になると思われる生徒もいます。

そういった生徒もまとめて、3月には、次の進路を確定させる中心になるのが担任です。懇談を重ねながら、学力が足りない生徒には、はっきり志望校は無理というのか、ギリギリまで頑張らせてみるのか、普段の生徒の様子をどれだけよく見ているかで、その判断は分かれるといえます。この生徒の性格的には、無理なことははっきり無理といった方がいい、と判断するのも担任。この生徒の性格的には、ギリギリまで努力を続けさせた方が、結果的に希望がかなわなくても、そのあとでプラスになる、と判断するのも担任。

わずか15歳で、最初の進路選択をしなければならない生徒と一番に関わる教師として、生徒の将来に責任を負う責任を感じ、3年の担任をするたびに身を引き締めていました。

仕事ポイント3 負担は大きい、けどはまる「部活指導」

最近では、教師の長時間労働を軽減するために、まずは勤務時間外に行うことの多い部活指導を見直そうという風潮にあります。確かに、朝練習に始まり、放課後も完全下校まで。また、土日祝日も、練習や対外試合などで、部活動でつぶれることが多いのが現状です。特に運動部の顧問になるとこの傾向が強いです。

ただ、生徒は、同学年のいつものメンバーで行う、授業や学級での活動とは違った、1年から3年までの学級を越えたメンバーの中で活動するので、普段とは違う面を見せることが多々あります。学級は自分が希望して決まるものではありませんが、部活動に関しては、自分がやりたい部に入るという点からしても、好きなことができる場、として、生徒の頑張りは半端ないことが多いです。

そのため、教師も一緒に頑張る体力と気力があれば、長時間労働や休日出勤のことなど、頭から吹っ飛んだ状態で、生徒と一緒に部活動に取り組むことができます。特に運動部の顧問は、やり出すとはまる若手教師が多いです。


中学校の先生のやりがい – 教師としての喜びを感じる時

こうやって書いていくと、教師って大変な仕事だと思われる方が多いかもしれません。しかし、教師に限らず、仕事をやっていく上で大変なことがない方が少ないと思います。そして、大変だと思うこと以上に、私は教師をやっていてよかったと思うことが多かったです。

授業で難しい話をしていて、なかなか理解できなかった生徒が、私が工夫をして説明したことで、「あっ!わかった!」と笑顔になってくれた時、その笑顔を見て、喜びを感じます。

担任として臨んだ合唱コンクール。学年内の学級対抗で最優秀賞を競った時、生徒はみんな、最優秀賞が取りたいと思います。でも、そこだけに価値をつけるのではなく、それまでの取り組みに価値を見出してほしいと、取り組み中、生徒に手を変え、品を変え、語りかけていました。当日、残念ながら、最優秀賞は取れなかったのですが、何人もの生徒が、「みんなと頑張ってこられたことが嬉しかった。」「みんなで一生懸命努力できたことが他の学級に負けていないと思う。」というような感想を言ってくれました。その言葉が聞けただけで、最優秀賞をとった以上の喜びを、担任として感じられました。

担任を外れ、フリーの立場で、学年全体の生徒を見ていた時に、ある生徒との何気ない会話の中で、「あなたならできるよ!自分を信じて頑張ろう。」と言ったことがあったのですが、卒業目前に、ふと、「先生にあなたならできると言ってもらえて、嬉しかったしやる気がわいた。」と言われたことがありました。私自身は、無理やり取り繕って言った言葉でもなんでもなく、本心から出た言葉だったので、逆に、そんなことを覚えてくれたんだと、本当に嬉しくなりました。

不覚ながら、体調を崩し、学校を休んだ翌日、生徒が駆け寄ってきてくれて、口々に「先生、大丈夫?」「無理してない?」「頑張り過ぎなんじゃない?」などと声をかけてくれるだけでも、私はなんて幸せなんだろうと思えます。

卒業生に街でばったり出会った時に、向こうから「先生!」と声をかけてくれることも本当に嬉しいです。知らん顔して通り過ぎてもいいのに、あえて、声をかけてくれ、中には、「先生にはお世話になったなぁ。」なんていってくれる卒業生がいてくれることに感謝しています。

毎日のやり取りの中で、生徒と心が通じ合ったと直後に感じられる喜び。
その時には、これで良かったのかと悩んだことも、数年後再会した時に、生徒の方から、「あの時はありがとう。」といった感謝の言葉をもらえて感じられる喜び。

人と人とのぶつかり合いの毎日である教師の仕事は、生徒たちから、無数の喜びをもらえる仕事です。授業を通して、学級の中で、部活動で、日々、生徒と真摯に向き合いながら、その生徒からパワーをもらい頑張ることができる仕事です。

本記事は、2017年4月4日時点調査または公開された情報です。
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