保護者から電話「学校に行きたくない」対応についての体験談



教師にとって、保護者とは?

教師をしていると、子供だけではなく、保護者との関わりを持ちます。

私の経験では保護者とは、大切な我が子の命を預けている担任に、期待と願い、そして応援の気持ちを向けてくださる大切な存在です。

ですが少し前に、教師に対して理不尽な要求をしてくるいわゆる「モンスターペアレント」という言葉がはやり、保護者へのイメージがあまり良くないものとして扱われる時がありました。

しかし、一つ言いたいのは、保護者は決して、教師を虐めたくてこのようなことをしてくるわけではないと思います。

全ては、大切な我が子を思ってのことなのです。

そんな保護者から、「自分の子供が学校に行きたくないと言っています」との電話は、教師をしていたときに何回も受けたことがありました。

そこで今回は、そんな電話が来た時の対応を4個、各ポイントごとに具体例と合わせて詳しくご紹介したいと思います。

対応その1:保護者から詳しい事情を聞く。

保護者から電話をいただいた時に、ただ話を聞くのではなく、保護者から信頼してもらえるように話を聞くことで、問題はぐっと解決しやすくなります。

そんな良好な関係づくりをするための話の聞き方のポイントを2つご紹介したいと思います。

ポイント1:保護者が怒っていたとしても、すぐに自分の責任だと思わないで話を聞く

教師になって間もない頃は、保護者からの電話があったら、「私がまた、何かしてしまったんだろうか…」と気が重くなっていました。しかし、そんな私の姿を見て、当時の先輩は、


「保護者はあなたが嫌いで電話してくるんじゃないよ。仮に怒っていたとしても、その怒りの中にある要望や想いにちゃんと耳を傾けて。怒りはね、願いなんだよ」と教えてくださいました。

それを聞いて、確かに!と納得しました。例えば過去に、

「娘が怪我をして帰ってきた!!!」と保護者からの語気の強い電話を受けた時に、その先輩の話を聞くまでは、「どうして先生は娘が怪我しないように、しっかり見てくれないんですか!」と、私に対して怒っていると思っていました。

しかし、保護者の気持ちとしては、「自分で転んだのだったら仕方ないけど、誰かに悪意を持って突き飛ばされたとかではないか」と心配していたのです。

怪我をしたのに、すぐに保護者に連絡をしなかったのは私の落ち度ですが、怪我をした経緯を説明すると安心されたようで、和やかに電話を終えることができました。

もし先輩からの教えがなかったら、「自分の子供が学校に行きたくないと言っています」と保護者から言われた時に、「あぁ、私のことが嫌いで学校に来たくないんだ、私の責任だ、どうしよう…」と慌てていたと思います。

ポイント2:解決法よりも、まずは保護者の気持ちに寄り添う

まず、保護者から相談や訴えがあった場合は、ひたすら事情を聞くことに徹します。

今回のケースは、不登校にも繋がりかねない重要なケースなので、できれば電話口ではなく、「直接お話がしたいので、お伺いしてもよろしいでしょうか?」と伝え、家庭訪問することをおすすめします。

その際、子供に直接会って話を聞くことができればベストですが、先生に話したくない、会いたくないという状況も考えられます。

そんな時は無理に会おうとせず、保護者だけに会って、ここ最近の様子で変わったことがなかったなど、保護者から話を聞くことがいいと思います。

ここで大事なのが、保護者の心配や不安な気持ちに寄り添うことだと思います。

学校に行きたくない理由が分かっているならまだしも、保護者も理由が分からない場合は、保護者の心配や不安は計り知れないものだと思います。

しっかり話を聞き、大丈夫です、学校全体で見守り、考えていくので、焦らず一緒にやっていきましょうということを伝えられるといいと思います。

対応その2:学校全体で対応する

何か問題があったときにまず一番大事なことは、一人で判断せず、学校全体で動くことです。

保護者から詳しい話を聞き、いよいよその後は学校全体で解決へ向かうための対策を考えていきます。


その方法について、2つのポイントで紹介したいと思います。

ポイント1:学年全体で共有する

単級以外の場合は、学年主任、その他のクラス担任にも共有することが大事です。

そうすることで、学年の教師全体からクラスの様子を見守ってもらえたり、管理職へ相談する前に学年で相談して話を整理できたりすることができます。

一人で全てを抱え込むのではなく、学年の教師全員で子供達を見守り、育てていくという意識を持つことが大切です。

ポイント2:管理職には事前、事中、事後を抜け漏れなく報連相する

わざわざ管理職にまで報連相するのは手間だと思うかもしれません。

ですが、問題は一人で抱え込まず、教頭や校長などの管理職に相談することで、的確なアドバイスをもらえます。

学校によっては、まず教頭に報告してから校長へ繋ぐ場合や、主幹教諭や副校長がいる場合はそちらを通してからなど、学校によっては相談する手順が違うので、確認してみてください。

まずは、事前です。「私のクラスの保護者からこのようなお電話がありましたので、対応についてご相談させてください」と相談します。

ここで、学校全体への共有についての一歩になります。

次に、事中です。「各児童への聞き取りの進捗状況です」など、現時点で行っている対応、その進捗状況を報告します。

対応中に上手くいかない時などは、ここの段階で「次はこういう風にしてみて」と、アドバイスをもらうことができます。

ここでスムーズにアドバイスをもらえる条件として、事前に相談していることが必須です。

そうでなく、事中からいきなり「実はこんなことになってまして…」と相談すると、

「もっと早くから共有してくれていれば、状況把握もできて、対応の方針も決めて進めることができたのに…」となってしまうので、必ず電話が来た時点で相談します。

最後に事後です。問題が解決して、保護者にも連絡できた時点で管理職に報告します。

ここで終わらず、「あれから様子を見ていますが、特に問題はなく、元気に登校しています」など、その後の児童の様子を管理職の耳に入れておくようにすると、なお良いです。

対応その3:学校に行きたくない理由を明確にする

今まで経験してきた事例とその対応について、ケースごとにご紹介したいと思います。

ケース1:学校での勉強が分からない、学習がしんどい

学校生活の大半は授業です。その授業についていけなくなると、学校へ行きたくなくなるケースも多いです。

そんな子供に対するアプローチの方向として、大きく分けて授業と家庭学習(宿題)の2つあります。


まず、授業においては、学習がしんどいとノートを取ることも難しいので、教師がノートのコピーを授業前にあらかじめ渡しておくと良いです。

式と答えだけ穴埋めにしたり、大事な用語やポイントだけを穴埋めしたりすることで、子供も書く量が減りつつ大事な部分が分かりやすくなり、授業に参加しやすくなります。

問題が解けなくていなくても、写すことができていたらたくさん褒めると良いです。

また、家庭学習では宿題の量を減らす(20問あれば、大事だと思う問題を教師が数問選んであげる)こともできます。

その際には、保護者にも了承を得て、さらに大事なことは、「ここまでなら出来そう?」と子供と相談して、本人が納得してやる気を出すことです。

どちらも大事なことは、みんなと同じゴールを求めるのではなく、その子供に合った目標を一緒に設定して、その子なりの伸び代を教師が見守り、そして、大いに褒めることだと思います。

ケース2:友達関係の心配事

友人関係では、友達から嫌なことをされた、誰かから悪口を言われている気がするといったケースもありました。

どのようなケースでも、まずは、本人からの主張や希望を丁寧に聞き取ります。

例えば、嫌なことをされた場合でも様々で、謝ってほしい子、謝罪はいらないけど、取りあえず加害者に気持ちを伝えたい子、二度と顔見たくなくて許したくない子、何事もなかったように関係を戻したい子など、様々にあります。

本人の聞き取りが終わり次第、相手側の聞き取りを行います。

双方の意見が上手く合えば、当人同士で話し合いの場を設けることができますが、多くの場合は双方での意見や主張が食い違い、なかなか進まないことがあります。

ここで大事なことが、被害者の言葉だけを信じることはせず、どちらの意見も信じて中立の立場で話を聞くことです。

ここでは便宜上、被害者と加害者と書いていますが、どちらも大切な、自分のクラスの子供です。

最初は嘘をついたり、都合の良いことしか言わない場合も多いですが、怒ったり責めたいんじゃなくて、何とかお互いに楽しく学校生活に戻ってほしいから話し合っているんだよという気持ちを伝え、根気強く聞き取ってください。

対応その3:保護者にこまめに連絡する

理由も分かり、対応も進めていく中で大事なことは、保護者に都度連絡をすることです。

というのも、当日中に解決すればすぐに報告できますが、多くの場合は結果報告するまでに時間がかかります。その間保護者は、「学校ではどのような対応をしてくれているんだろう…」と不安になっている場合があります。

解決をしていなくても、「今、このような対応をしています、引き続きしていくのでお家でも何かありましたらいつでもご連絡ください」と伝えることで、保護者も安心することができます。

結果報告だけで良いと思われがちですが、冒頭にも書いたように、保護者の不安と心配を少しでも減らせるように、連絡をこまめに取ることをおすすめしたいです。

また、行きしぶりの理由も分かり、その問題も解決して子供が学校に通えるようになった後も、「最近は学校で笑顔で過ごすことも増えました。これからも見守っていきたいと思います」など、その後の学校の様子をこまめに連絡すると、なお、安心できます。

まとめ

今回は保護者から「子供が学校に行きたくないと言っている」という電話が来た時の対応についてご紹介しました。


やることはたくさんあり、大変に感じるのも無理ありません。

ですが、子供が壁を乗り越えようとしているときに、一番の支えになるのは担任の存在です。

子供達は学校生活を通して人間関係や勉強に悩み、葛藤し、そして、成長していきます。

その成長の支えになり、そばで見守ることのできるとても素晴らしい仕事なので、ぜひ周りと協力しつつ、乗り越えていってほしいと思います。

本記事は、2024年3月24日時点調査または公開された情報です。
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