子どもが食中毒になった際の保健室の先生の対応は?保健所とのやりとりの例を紹介

子どもが校内で食中毒になった場合、保健室の先生にはどのような対応が求められるでしょうか?本記事では、保健所とのやりとりの例を紹介します。


暑くて湿気の多い季節は学校や家庭での食中毒に注意

梅雨や夏の暑くてジメジメした季節は、食中毒が発生しやすい季節でもあります。保健室の先生は、学校や家庭で食中毒がおきないよう保健指導を行いますが、それでも食中毒に感染してしまう子どももいます。

私の勤めていた学校では、給食や家庭科実習など校内での活動による食中毒は発生しませんでしたが、子どもの家庭で発生した食中毒により、学校に保健所が入ったことがありました。

そこで今回は、子どもが食中毒になった際に、私が実際に保健所と行ったやりとりや食中毒収束までの事例をご紹介します。小・中学校で働く保健室の先生や、保健室の先生を目指している方の参考になりましたら幸いです。

子どもの食中毒が発覚したきっかけ

5月下旬の月曜日の夕方、保健室の先生が業務を終えて退勤しようとした際に管理職の先生から「保健所から連絡がきた」と呼び止められました。管理職の先生の話によると、今日欠席していた小学2年生の子どもが激しい下痢状態のため、親が病院に連れて行ったところ、便から「腸管出血性大腸菌O-157」が検出されたので、今から保健所が学校を訪問するとのことでした。

腸管出血性大腸菌O-157とは

「腸管出血性大腸菌O-157」とは、毒性と感染力の強いベロ要素を産む大腸菌の一種で、抵抗力の低い乳幼児や年配の方が感染すると重症化したり、重い後遺症を残したりする非常に危険な食中毒です。

O-157は主に動物の腸内に生息しており、ローストビーフやユッケなど十分に火を通していない肉料理や、生野菜などの食品が原因で感染するケースが多いとされています。

またO-157は学校保健法において第三種感染症に指定されており、診断を行った医師は直ちに保健所へ届け出をする義務があります。そのため、学校への連絡は子どもの家庭や診断を行った医師ではなく、保健所が行ったようです。

学校に保健所職員が到着してからの対応

夜18時頃、学校に保健所職員が到着し、保健室の先生と管理職の先生、栄養教諭で今後の対応について話を聞きました。

子どもが食中毒になった原因は学校ではなく家庭のようですが、周囲に二次感染している恐れがあるため、保健所職員が食中毒になった子どもが在籍しているクラスのすべての子どもたちの家を周り、便を検査するとのことでした。

さらに保健所職員が、食中毒の子どもの使用している教室やトイレを中心に、校舎内の消毒を実行することになりました。

そして学校は保健所から、食中毒の子どもがいるクラスのみ学級閉鎖し、検便の結果をみてクラスを再開するか判断するように指示されました。


その後保健室の先生は保健所に直近の欠席者のデータなど必要な情報を提出し、管理職の先生は学級閉鎖と検便を行うクラスの保護者対応を行いました。

食中毒が発覚した翌日以降の学校や保健室の対応

食中毒が発覚した次の日、食中毒の子どもがいるクラス以外はとくに腹痛や下痢などで休む子どもはいなかったため、通常通りの学校活動が行われました。

その後食中毒の子どもがいるクラスの子どもたちの検便結果が揃い、O-157が検出された子どもはいなかったと報告を受けました。その結果から、保健所と管理職の先生が食中毒の子どもがいるクラスの閉鎖を解除してよいと判断したため、学級閉鎖は終了しました。

食中毒に感染した子どもの出席停止期間

子どもが食中毒に感染した場合の出席停止期間は、感染した菌によって異なります。
この事例の子どもが感染したO-157は、学校保健法で下記の条件を全て満たすまで出席停止と定められています。

・下痢や腹痛など症状が消失している
・抗菌薬による治療が終了している
・48時間あけて連続2回の検便によっていずれも菌陰性が確認されている

O-157は感染力も毒性も強いため登校再開できる条件が厳しく、さらに感染した子どもの体力もかなり落ちてしまったため、感染した子どもが登校できたのは、感染発覚から2週間以上後でした。

食中毒による出席停止が明けた子どもへの対応

食中毒から回復した子どもは、食中毒がトラウマになってしまい、登校してきても給食を教室で食べるのを嫌がったり、腹痛を訴えたりする日がしばらく続きました。

保健室の先生は家庭と学級担任と相談や連携しながら、給食を保健室で食べさせたり、腹痛があるときは保健室で休養させたりと、子どものペースに合わせて心身の回復を待ちました。

その結果、食中毒から回復した子どもは、登校再開してから2週間後には一日中クラスで過ごせるまでに元気になりました。

食中毒が収束した後の学校の様子

この事例の食中毒は、保健所の迅速な対応と学校や家庭の連携により拡大せずに収束しました。

一方、保健所が市内の病院にO-157が発生したことを通達したためか、その夏は下痢や腹痛の子どもに対して便などの検査をする病院が増え、今まで聞いたことのないような食中毒菌で休む子どもが数名現れました。

食中毒菌に感染した子どもたちの症状は軽く、病院に行っても通常なら検査はせず胃腸炎などで済まされているような症状だったので、日頃、気づかないうちに軽い食中毒にかかっている子どもも少なくないのだろうと気付かされた夏でした。

食中毒を予防するために保健室の先生ができること

保健室の先生は子どもたちの食中毒を予防するために、トイレの後や食事の前は手洗いをする、弁当の食材はしっかり火を通す、体調の悪い人が料理をしないなど、保健だよりなどを利用して子どもたちや家庭、そして先生方に呼びかけるのが大切です。

また私が保健室の先生をしていた学校では、汚れが残っている部分の手が真っ赤になる薬品を使用して手洗い指導を行い、どのように洗えば手の汚れがきちんと洗い流せるのか実演をしたり、実際に子どもたちに体験してもらったりしました。水で手をパパっと洗っただけでは汚れが落ちないのを体験すると、子どもたちも手洗いの大切さに納得してくれ、意識して手洗いをしてくれるようになりました。

今回の事例は家庭内での食中毒だったため、保健室の先生は最小限の対応ですみました。しかし万が一学校内で食中毒が発生し、感染者が拡大してしまうと、保健室の先生は食中毒の収束まで大変な思いをすることになりますので、日頃から食中毒予防を心がけてくださいね。


本記事は、2023年8月31日時点調査または公開された情報です。
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