【文部科学省】GIGAスクール構想とは?と2021年現状と今後の展望

義務教育中の子どもたちが「1人1台」のPCなどを使用できるよう整備する、文部科学省が推し進める「GIGAスクール構想」について解説します。


文部科学省が進める「GIGAスクール構想」とは?1人1台端末がついに実現か。

文部科学省が進める「GIGAスクール構想」について、文部科学省は次のように説明しています。

・1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備することで、特別な支援を必要とする子供を含め、多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化され、資質・能力が一層確実に育成できる教育環境を実現する

・これまでの我が国の教育実践と最先端のベストミックスを図ることにより、教師・児童生徒の力を最大限に引き出す

引用元:文部科学省「(リーフレット)GIGAスクール構想の実現へ」

つまり、「GIGAスクール構想」とは、これまで蓄積されてきた日本の義務教育のノウハウをさらに活かすために、児童や生徒のために、1人1台の学習者用PCと、それを利用するための高速ネットワーク環境などを整備する構想です。目標として、PCとネットワークを全国の教育機関で5年間かけて整備することを目指す計画です。

「Society 5.0時代」の教育を目指す

GIGAスクール構想は、すでに内閣府が進めてきた「Society 5.0」の考え方に対して、文科省として取り組む計画の一つです。

Society 5.0と文科省の施策の関係については、こちらの記事も参考にしてください。

「【文部科学省】大学改革の基本方針「柴山イニシアティブ」を発表」

「GIGAスクール」での4つの整備事項

文部科学省の進める「GIGAスクール構想」では、大きく4つの整備が必要です。

【GIGAスクール ポイント1】児童生徒の端末整備支援

「1人1台端末」の実現に向けて、令和元年度の時点で全国の小5、6、中1の分が整備されたのに加えて、現在小1〜4、中2、3の分の整備が進められています。令和5年度(2023年度)までに完了する計画でしたが、令和2年度には、前倒しでの整備のために予算が組まれていました。

また、「障害のある児童生徒のための入出力支援装置整備」の配備も進められています。視覚や聴覚、身体等に障害のある児童生徒が、端末を使用する場合に、通常仕様のPCだと不便な場合があります。そのため、障害に対応した入出力支援装置の整備について、全国の国立・公立・私立の小学校・中学校・特別支援学校等に、整備にかかる全体の費用の1/2の補助金を出すなどして、推進しています。

【GIGAスクール ポイント2】学校ネットワーク環境、クラウドなどの全校整備

GIGAスクール構想では、希望する全ての小・中・特別支援学校・高等学校等に校内LANを整備を目指しています。子どもたちのが皆、インターネットに接続する場合も想定して、高速かつ大容量の回線の接続が可能な校内LAN整備計画が必要になるほか、モバイルルーターなどについては、ランニングコストの確保を踏まえ、各学校での計画が必要とされています。

国からの補助金は都道府県を通じて申請することができ、全費用の1/2または、定額が支援されます。


また、小・中・特別支援学校での電源キャビネットの整備についても補助金が出ることになっています。

【GIGAスクール ポイント3】GIGAスクールサポーターの配置

GIGAスクール構想では、急速な学校ICT化を進める中、ICTの専門家不足となっている自治体などを支援するため、ICT関係企業OBなど、ICT技術者の配置経費も支援するようです。

【GIGAスクール ポイント4】緊急事における家庭でのオンライン学習環境の整備

2020年には新型コロナウイルス感染症の流行による緊急事態宣言発令に伴って、全国で一斉休校措置がとられましたが、そのような緊急時、災害時などに家庭でのオンライン学習ができる設備の強化も必要とされています。

GIGAスクール構想では、家庭学習のための通信機器整備を国が支援するとして、Wi-Fi環境が整っていない家庭に対して自治体が貸し出せる、LTE通信環境(モバイルルータ)の整備について、費用の半額(上限あり)を補助するようです。

また、学校からの遠隔学習機能を強化するとして、臨時休業等の緊急時に学校と児童生徒がやりとりを円滑に行うために学校側が使用するカメラやマイク、テレビ会議システムなど、通信装置などの整備についても費用の半額(上限あり)を補助します。

参考:文部科学省「(リーフレット)GIGAスクール構想の実現へ」

文部科学省「(リーフレット:追補版)GIGAスクール構想の実現へ(令和2年度補正)」

「文部科学省ICT活用教育アドバイザー事務局」公式YouTubeチャンネルも開設

文部科学省は、「ICT活用教育アドバイザー事務局」を立ち上げ、全国の学校現場の先生などに向けた説明と、問い合わせ対応などを実施しています。

「ICT活用教育アドバイザー事務局」では、公式YouTubeチャンネルとして、「『GIGAスクール』ch」を開設し、説明会動画の配信などを行っています。

YouTube:「GIGAスクール」ch

先行して「1人1台端末」を導入した自治体や学校には課題も見えている

本格的に「GIGAスクール構想」が導入される前に、すでにテスト的に「1人1台端末」が配備されている自治体や学校には、課題も見えてきているようです。

「1人1アカウント」の壁

例えば、PCを使用するにあたり、「1人1アカウント」が必要という認識が先生によって理解されている場合とそうでない場合があり、児童のアカウント取得が遅れ、またはセキュリティの観点からアカウント取得が禁止され、ほとんどPCが使えないケースがあるようです。

また「クラウド」を利用することが推進されていますが、クラウドの設置や利用についても個人アカウントが必要です。ただし、セキュリティの問題があり、アカウントを作れてもクラウドに利用制限がかかっていて満足に使用できなくなっているケースもあるようです。

端末が配備されても活用されているとは言い難い状況が続く自治体や学校もあるようで、宝の持ち腐れ、のようなもったいない状況も見受けられるようです。

「充電器」が足りない!

生徒がPCやタブレット端末を持ち帰って学習する場合、ACアダプターも一緒に持ち帰り、家に忘れてきてしまって、学校で充電がなくなるというケースがあるようです。授業で使用できないことを回避するために、予備のACアダプターを用意したり、持ち帰らせないように保管庫で保管する場合もあるようですが、学校保管でも充電切れは発生するため、やはり予備のACアダプターは必要な場合もあります。


このような細かい周辺機器までも、必要に応じて学校は整備する必要があるようです。

「禁止」「制限」ばかりでなく、メリットを感じられる教育内容が必要

生徒や児童に端末を配布すると、どうしても禁止事項や、利用制限の話が最初に教員から説明されることが多いようですが、そうするとICT教育が楽しい、便利なメリットあるものに感じられない、苦手意識を作ってしまう、などの懸念もあるようです。

教員が「1人1台端末」の長所を活かした授業などの組み立てをすること、生徒とのコミュニケーションなどでメリットを感じることなどが必要ですし、さらに、教員をサポートするために、ICT教育アドバイザーの存在も不可欠だと考えられています。

ただし、現在ICT教育アドバイザーに支払われる報酬も少ないことから、できることは限られます。人材確保への費用も今後ますます必要になってくると思われます。

(参考:https://www.watch.impress.co.jp/kodomo_it/news/1304540.html

https://say-g.com/global-and-innovation-gateway-for-all-3830

まとめ

このページでは、文部科学省が推進する「GIGAスクール構想」についてご紹介しました。

義務教育で、PCやタブレットなど「1人1台端末」を全国の学校で配備することを目指したこの5年計画ですが、端末導入までの課題はもちろん、その後の活用までの課題もさまざまに指摘されているようです。

2023年(令和5年)の完了を目指し進む「GIGAスクール構想」はこのまま実現し、十分に活用されるところまで発展するのか、注目されています。

本記事は、2021年6月24日時点調査または公開された情報です。
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