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【文部科学省】大学改革の基本方針「柴山イニシアティブ」を発表

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目次

文部科学省が発表した教育改革戦略「柴山イニシアティブ」

文部科学省は2019年2月に「日本の高等教育・研究改革イニシアティブ」、通称「柴山イニシアティブ」を発表しました。この戦略では国主導の「大学改革」によって、世界を牽引するようなトップ大学や、地域や専門分野をリードする大学を整備し、最前線で活躍する研究者や、次世代を担う学生を育成することを目指すものです。

本ページでは、具体的にどのような方針で「大学改革」を進めていくのか、解説します。

「柴山イニシアティブ」とはどんな意味?

戦略名になっている「柴山イニシアティブ」とは、「大学改革」等を含む、日本の高等教育・研究改革戦略のことです。

この戦略は、「少子高齢化」や「グローバル化」する日本社会に対応できる人材育成や技術開発を目指すため、所得格差に捉われずに意欲がある学生の「進学機会の確保」をすることと、大学に対して成果に応じた「手厚い支援と厳格な評価」を行うことが二本柱になっています。

「柴山イニシアティブ」の「inisiative」は「主導権」という意味で聞くことが多いという方もいるかもしれませんが、政治などの場面では「構想」や「戦略」などと訳されることがある英単語です。言葉の持つニュアンスが伝わりやすいように、和訳せずにカタカナで「イニシアティブ」と表記して使用されることもあります。

また「柴山」は現在の文部科学省大臣の柴山昌彦氏の名前に由来しています。安倍内閣では、レーガン元アメリカ大統領の「レーガノミクス」にちなんで首相の名前を取り入れた経済戦略の「アベノミクス」をはじめ、河野外務大臣の名前に由来する「河野四箇条」という対中東の外交戦略など、閣僚の名前に由来するキャッチーな戦略名が使用されているようです。

参考:文部科学省ホームページ「高等教育・研究改革イニシアティブ(柴山イニシアティブ)」
http://www.mext.go.jp/a_menu/other/1413322.htm

「Society5.0」に向けた人材育成

「柴山イニシアティブ」が前提としている政策の一つが、内閣府が「科学技術政策」として掲げる「Society5.0」です。文部科学省では、「Society5.0」に対応するために、「大学」を人材育成やイノベーション創出の基盤とするために「大学改革」などを進めていく方針です。

そもそも「Society5.0(ソサエティ5.0)」とは、内閣府の説明によると、「サイバー空間(仮想空間)」と「フィジカル空間(現実空間)」を高度に融合させたシステムによって、経済発展に加えて社会的課題の解決をも両立する「人間中心の社会(Society)」を指すようです。

ソサエティ5.0の考え方では、5.0に発展するまでに五段階の社会発展があったと考えられています。まず一段階目の社会が「狩猟社会(Society 1.0)」、二段階目が「農耕社会(Society 2.0)」、三段階目が「工業社会(Society 3.0)」、四段階目が「情報社会(Society 4.0)」でした。

そして、それらに続く人間中心の新たな目指すべき社会が「Society5.0」ということです。「Society5.0」では、IoT、ロボット、人工知能(AI)、ビッグデータなどの先端技術を活用し、社会システムの最適化を図ることが目指されます。「Society5.0」は平成28年に発表された第5期科学技術基本計画の中で、日本が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱されたようです。


参考:内閣府ホームページ「Society5.0」
https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/index.html

「柴山イニシアティブ」の内容

日本が国全体として目指す「ソサエティ5.0」という方針に対して、文部科学省の役割の一つが「人材育成」や「イノベーション創出」の基盤を整えることです。その具具体的な戦略「柴山イニシアティブ」の内容についてご紹介します。

「柴山イニシアティブ」では、大きく4つの「改革の方向性」があります。それは、意欲ある者の「高等教育機関へのアクセスの確保」、「大学教育の質保証・向上」、「研究力向上」、「教育研究基盤・ガバナンス強化」です。

「柴山イニシアティブ」では上記の4通りの方向性ごとに「手厚い支援」と「厳格な評価」がそれぞれ用意されている構成になっていますので、次にそれぞれの詳細について、ご紹介します。

高等教育機関へのアクセスの確保

「柴山イニシアティブ」の一方針である「高等教育機関へのアクセスの確保」では、「手厚い支援」として、本当に支援を必要としている、低所得世帯の子ども達に対して、「授業料・入学金の減免」と「給付型奨学金の支給」を合わせて用意します。経済的支援によって進学意欲のある子どもの、大学などへの進学可能性を広げます。

一方で「厳格な評価」としては、支援の対象となる進学先を「学問追究と実践的教育のバランスがとれている高等教育機関に限定すること」と、「学生の進学後の学習状況について厳しい要件を課し、 これに満たない学生は支援を打ち切ること」という2つの条件を用意します。大学などへの評価と、学生に対する評価がそれぞれ行われることになるようです。

大学教育の質保証・向上

「柴山イニシアティブ」の一方針である「大学教育の質保証・向上」では、「手厚い支援」として、「教育の質保証・情報公表のための仕組みを構築」することと、「実務家教員の登用促進等、教育体制の多様化・柔軟化」を目指します。

主に学修成果などを「見える化」し、適切に公表することで、教育の質の保証・向上を図ります。また、大学等を生涯学習の場として、18歳以外の多様な学生も学び、学んだことを社会に生かせる体制を整えるようです。

一方で、「厳格な評価」として、「大学評価において学生の伸びの確認を徹底」すること、「教育の質を保証できない大学は撤退」するなど厳しい措置もあるようです。まずは学生の評価基準や、大学の設置基準などの抜本的な見直しから進められていく方針が見られます。

研究力向上

「柴山イニシアティブ」の方針のひとつである「研究力向上」では、「手厚い支援」として、「研究人材改革(優秀な若手研究者へのホスト重点など)」「研究資金改革(若手研究者への重点支援など)」「研究環境改革(設備などの共用と研究支援体制強化)」といったプログラムを用意し、研究者への支援を強化します。

一方で、「厳格な評価」としては、研究者や研究機関に対する「厳格な業績評価の実施」を行い、資金面では「競争的研究費の審査の透明性向上、および制度の評価・検証の徹底」を図ります。具体的な新しい評価の方法などは今後検討が進められていくようです。

このように研究者への「手厚い支援」と「厳格な評価」によって、研究のための人材・資金・環境を多角的に改革することを目指すようです。

教育研究基盤・ガバナンス強化

「柴山イニシアティブ」の4つ目の方針である「教育研究基盤・ガバナンス強化」では、「手厚い支援」として、「改革に意欲のある大学等への重点支援」「ガバナンス改革、連携・統合を進める仕組み構築」「産学連携(外部資金獲得)の推進」といった取り組みが行われる予定です。意欲ある学生の支援にとどまらず、大学についても意欲があるかどうかで支援を決める仕組みを構築するようで、国立大学を中心にの大学の連携や統合を進める場合もあるようです。

一方で、「厳格な評価」としては「改革の進捗や成果に応じた評価・資源配分のメ リハリ付け・徹底」、「単独で改革が行えない大学は再編・統合・撤退」といった厳しい文言が並びます。

国がリードして大学の質を保つガバナンスを図り、大学や研究機関同士の連携によって教育研究基盤を整え、新しい時代に生き残り、世界を牽引できるような「強靭な大学」へより多くの大学が転換できることが期待されます。


まとめ

文部科学省が発表した「柴山イニシアティブ」は、新しい時代を牽引できるような「強い大学」を目指すものでした。少子高齢化に伴い、学生の数が少なくなる中、経営が厳しくなる大学も増加傾向にあるようです。

そんな大学のあり方を見直す「柴山イニシアティブ」による大学改革構想ですが、その中身を見てみると今回の改革方針についてこれない「弱い」大学は、国立大学なら「再編」「統合」「撤退」、私立なら「支援の中止」というケースも想定され、問題を抱える大学側は今後、さまざまな方向転換が必要になることが予想されます。

国の支援を受け続けるためには、大学間の競争、そして淘汰もやむを得ないというような弱肉強食の世界が、大学や教育の現場にもいよいよ到来するということなのでしょうか。くれぐれも大学の経営難によって、学生が教育を受ける機会を奪われるというような事態は避けてほしいものです。

また、今回発表された「柴山イニシアティブ」では主に進学希望者への「学資支援」や、評価の高い大学への「資金支援」など、カネが中心の戦略であったと言えます。例えば、低所得世帯の子どもに対して、成績が落ちると支援を打ち切るような方針も打ち出されましたが、本当に「打ち切り」をする前には「成績が落ちないような教育面での支援」といった金銭面以外での取組みも必要かと思われます。

もしも「意欲があって勉強するお金を支援されたけれど、どのように勉強したらいいかわからない」というまま、成績が伸びずに支援まで打ち切られてしまうような学生がいたら、とてももったいないことだと思います。

今後、この「柴山イニシアティブ」に則って、具体的に文部科学省が、どのような教育制度を構築していくのかが重要だと思われます。この戦略によって大学などの教育機関や研究機関に所属する、より多くの学生や研究者が、希望通りに学び、研究できるような未来がくることを期待したいものです。

本記事は、2019年2月27日時点調査または公開された情報です。
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公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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