政府(Government)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた言葉 GovTech を紹介

世界で注目される「GovTech(ガブテック)」に関するまとめ(2021年4月)

【公務員総研と関係の深い「GovTech」についての記事です。】
テクノロジー関連で話題に上がることの多い○○Techというワード。

今回はその中でも政府(Government)と技術(テクノロジー)を組みわせた言葉GovTech(ガブテック)について事例付きで紹介します。


GovTechとは?

政府(Government)と技術(テクノロジー)

デジタルテクノロジーの発展は、生き方や働き方、そして人びとの交流のしかたをより良い方向へ進化させる可能性を広げました。

そんな中、近年盛り上がりを見せているのがxTech(クロステック)というワードです。

このxTechが表す意味は既存の産業とテクノロジーを組み合わせることでイノベーションを起こしていくという動きを意味していて、例えばEdTech(エドテック)は教育(Education)とテクノロジーの融合、FinTech(フィンテック)は金融(Finance)とテクノロジーの融合…というように表現され、生活のいたるところで科学技術が活用されはじめています。

xTechの中でもGovTech(ガブテック)は、政府(Government)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた言葉で、政府関係のテクノロジー活用を指します。政府が積極的に新しい技術を取り入れ、公的サービスをテクノロジーの力でより良いものにするのがGovTech、と言えそうです。公務員総研がテーマとする公務員は地域や世界、政治・行政といったテーマになりますのでGoveTech以外にもLocalTechやCivicTechといった言葉にも注目しています。

GovTechの先行事例「スマートシティ・プロジェクト」

GovTechの例としては、政府主導で行われる「スマートシティ・プロジェクト」が挙げられます。スマートシティ・プロジェクトとは、テクノロジーを活用した様々な革新的なサービスを市民に提供するもので、 より良い暮らしやコミュニティ強化、そして全ての市民により多くの機会を創り出すことを目指しています。その対象は交通、生活環境、ビジネス生産性の向上、高齢化対策を含めた健康分野など、多岐に渡ります。

また、テクノロジーを活用することで、リソースの節約やコスト削減も実現できます。さらに政府が市民とコミュニケーションをとることを可能にし、それによって市民が本当に欲しい公的サービスが提供されるようになるのだとか!

政府は大学や研究機関、ベンチャー起業などと提携して、新しい技術を積極的に公的サービスとして市民に提供しているようです。つまり、アイデアや技術はあるけど資金力が乏しいベンチャー企業や、大規模な研究データが欲しい大学などがスマートシティ・プロジェクトに参加し、政府のサポートによって街全体を「大きな実験室」として活用しているということ。

新しい技術を実際に利用してみて、市民からのフィードバックを得て改良を重ねるというプロセスを円滑に行うことで、「より良い暮らし」を実現させるのがGovTechです。

データを活用した新しい技術活用としてのGovTech

また、GovTechでは、集めたデータをオープンデータとして世界中に公開することが多いようです。データを公開することによって多くの人がプロジェクトに参加でき、発展の速度が上がるというメリットがあります。とてもイノベーティブな動きですよね!

世界各国のGovTech 導入事例を紹介します。

GoveTech導入事例その1:e-estonia エストニア政府

エストニア政府

ヨーロッパにある小さな国、エストニアは政府が提供するサービスの全てが電子化されているという、まさにGovTech先進国。結婚と離婚、そして家を売ること以外は全てデジタル化されているそうです。世界で最初にオンライン投票を始めたのもエストニアです。そして税金の回収率も世界一なのだとか。

また、世界で唯一e-Residency(オンライン市民)をオファー。すでに138カ国から2万人以上の人々が市民として登録されており、エストニアのe市民になった人は3時間で会社が設立でき、3分で税金の申請ができるなどのメリットがあるとのこと。


e-estonia

エストニアの先進的な試みに反応して面白い人材が集まってくるようで、e市民が設立するベンチャー企業(スタートアップ)が次々と誕生しています。現在までになんと3000以上の会社がe市民によって設立されています。

また、Skypeを開発したのもエストニアのベンチャー企業だって知っていましたか?こうした事実からも、ICTはエストニアの強みであることがよく分かりますね!

画像引用元:
Estonian information society presentation slideshow
(https://e-estonia.com/toolkit/)

Govtech導入事例2:Smart Nation Singapore シンガポール政府

シンガポール政府

人口の85パーセントがスマートフォンを持っており、もうすぐ全ての家庭が光ファイバー回線になるなど、シンガポールは実はテクノロジー先進国。GovTechを積極的に取り入れ、人口増加やインフラの整備などの課題に取り組んでいます。

シンガポールでは、日本と同様に高齢化社会が進行しています。これに対応するため、一人暮らしの高齢者の家の中にセンサーを取り付けて常にモニタリングするシステムを開発。しかも、ただモニタリングするだけではなく、毎日の動きのパターンをコンピュータが学習し、いつもと違う動きが検知されたら家族のスマホに通知してくれるのだとか。たとえ高齢の親と同居していたとしても、いつも一緒にいられるわけではありません。こうしたテクノロジーによって、お互いに安心することができますよね。

そして、特に大規模なプロジェクトは街のデザイニング。街全体を3Dモデル化することで、風の通り道や日陰の位置などを分析。そのデータを使うことで公園や保育園、ショッピングセンターをどこに造ればより快適な生活環境となるかがわかります。
このプロジェクトのために街中には様々なセンサーが取り付けられていて、日々収集されるデータを利用することで分析の精度はどんどん良くなっていくそうです。

画像引用元:
Government Technology Agency of Singapore (GovTech)
https://www.tech.gov.sg/

Govtech導入事例3:Smart + Equitable City ニューヨーク市(アメリカ)

ニューヨークでは、リアルタイムでのモニタリングが各方面で行われているようです。

水や空気のクオリティをモニタリングしているほか、交通網もモニタリングによってバスのレーンの信号機が優先的に青信号になるように遠隔操作することが可能です。この操作はバスのGPS情報を利用して自動的に行われており、これによってバスの遅延を解消しており、全体の交通スピードとしては10%も改善したとのこと。

そして銃社会のアメリカならではのGovTechが「リアルタイム銃声検出システム」!建物の屋根に取り付けられたセンサーが銃声をキャッチすると警察に通報するシステムです。この技術によって、目撃者がいない場合でも警察がすぐに駆けつけられるようになりました。

リアルタイム銃声検出システム

その他にも超高速の無料Wi-Fiが市内ほぼ全域で利用可能です。 街中に設置されたWi-Fiスポットとなる機械(LinkNYC)に表示される広告収入によって運営されているため、市民は無料で使えるという仕組みになっています。また、このLinkNYCは公衆電話としての役割も果たしていて、アメリカ全土に無料通話をかけることが可能です。ちなみにスマホの充電もできるようです。

画像引用元:
LinkNYC
https://www.link.nyc/

GovTechの課題は何でしょうか?

ICTを利用した政府の取り組みによって暮らしが便利になり、市民にとっては良いことづくめのように思えるGovTechですが、問題点や課題はあるのでしょうか?

GovTechは多くの場合、ビッグデータの活用がカギとなります。ビッグデータは街中に取り付けられたセンサーや、個人情報と結びついたデータなどを利用して作成されます。そこで問題として取り上げられるのがプライバシー・個人の情報です。例えば、あなたがいつ、誰と、どこに行って何をしたという情報が政府によって取得されているかもしれません。何となく気持ち悪いと思う人もいるのではないでしょうか?

もちろん取得データは匿名化されてから使用されるようですが、政府は市民に対してしっかりとした説明責任(アカウンタビリティー)を持つことが大切となります。例えば、どんなプロジェクトなのか、どんなデータが取得されるか、データはどんな風に利用されるのか…ということについて市民が知ることができると安心ですよね。


さらに、大量のデータを使って分析するのは非常にコストのかかる作業です。分析方法や、その分析結果をどのように解釈するか、という問題も非常に重要だそうです。また、データの解釈を間違うと多くの市民に影響が出る可能性があるため、腕の良いデータサイエンティストが必要とされています。

まとめ

以上、世界で注目される「GovTech(ガブテック)」に関するまとめでした。

新しいテクノロジーによって、世界や国・地域がどんどん住みやすくなっていくのはとってもエキサイティングなことですよね!

これからも、政府と市民がよりよくコミュニケートしていくことで、もっと面白いプロジェクトが生まれることが期待され、公務員総研も積極的に関わっていきたいと考えています。

おまけ:xTechの一覧

AgriTech = Agriculture(農業)x Technology

AdTech = Advertisement(広告)x Technology

AutoTech・CarTech = Automobile / Car(自動車)x Technology

FamilyTech = Family(家族)x Technology

FinTech = Finance(金融)x Technology

FrontierTech = Frontier (開拓)x Technology →宇宙やドローンなど

EdTech = Education(教育)x Technology

FashTech = Fashion(ファッション)x Technology

FoodTech = Food(食料)x Technology

HomeTech = Home(家)x Technology

HealthTech = Health(健康)x Technology

HRTech = HR(人事)x Technology

LegalTech = Legal(法律)x Technology

LocalTech・Locatech =Local(地域)x Technology

MarTech = Marketing(マーケティング)x Technology


MedTech = Medical(医療)x Technology

ReTech = Real Estate(不動産)x Technology

RetailTech = Retail(物流・小売)x Technology

SportTech = Sport(スポーツ)x Technology

TravelTech= Travel(旅行)x Technology

CivicTech = Civic(市民) x Technology

本記事は、2017年6月10日時点調査または公開された情報です。
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