市役所に「就職」 ー 社会人生活がはじまります。
ワーク・ライフ・バランスの根幹の一つに「就労による経済的自立」というのがあります。学生から社会人へと進み、経済的に自立し、暮らしの経済的な基盤を作ることで、安心して働くことがワーク・ライフ・バランスを考えるうえで求められています。
安心して働くという点においては、非正規雇用より正規雇用の方が良いと考える人は多いですが、市町村は正規雇用職員の割合がとても多い職場です。
総務省の労働力調査※2によれば、全産業では正規雇用3364万人に対し、非正規雇用が2016万人ですが、地方公務員では正規雇用141万人に対し、非正規雇用は33万人に留まっています。
正規雇用を100人とすると、全産業では非正規雇用は60人、地方公務員は23人となり、地方公務員には非正規雇用の職員が少ないことが分かります。
働き方のスタイルは、人それぞれ求めるものが違いますが、正規職員として安心して働けるという点では、ワーク・ライフ・バランスの取りやすい職業であると言えます。
「結婚」 ー 仕事をやめないのが主流
市町村職員は、結婚のための退職をする人が殆どいません。例えば結婚によって通勤できない程遠くに引っ越さないといけないとか、元々専業主婦/主夫になりたいという希望があって、結婚したら仕事を辞めると決めていた人など、よほどの理由がなければ、結婚を機に退職することはありません。
結婚・出産を機に離職する人は医療・福祉の分野の職業の人が多いです※2が、これは看護師など有資格者が多く、再就職に強いということによると考えられます。
市町村職員は一度その職に就くと安定して仕事ができますが、とくに行政職(一般事務)の職員は再就職に強い職業ではありません。
その後に訪れるであろう、子育てや介護などのライフイベントに備えて、安定して働ける市町村の仕事から離れる人は少ないと言えます。
「出産・子育て」 ー 働き方が変わる大きな転換点
出産はワーク・ライフ・バランスの大きな転換点と言えるでしょう。それまでは自分の身の回りの事ができていれば良かったものが、子どもの生活の事全てに責任を負うようになります。
例えば、結婚しても相手は大人なので「仕事が忙しいから、今日は夫婦別々に外食で済ませよう!」という事もありますが、子どもがいると、子どものために栄養を考えた食事を作り、一緒に食べて団らんの時間をとり、食事のマナーを教え、後片付けをするというように様々な手間をかける必要が出てきます。
その為に“ワーク”から“ライフ”の方へと、バランスをシフトしたいと考える人が多いでしょう。そしてその時に使える制度が「育児休業制度」です。
地方公務員は育児休業を、最長で子が3歳になるまで取得することが出来ます。一般的に採用される「育児休業法」での定めでは、基本的に子が1歳になるまで(保育所に入れないなどの事情がある場合は1歳6か月まで)なので、3歳までというのはとても長いです。
ほとんどの市町村職員は、育児休業を1年程度取得して職場に復帰する人が多いのですが、中には3年間フルに取得する強者も存在します。
また、「パパも育児に積極的に参加しよう!」というのが社会的な流れになっていますし、政府の施策の向きもそのようになっています※5。
市町村などの自治体においては、こういった政府の施策モデルとなるように取り組むため、パパが育児休業を取得している職員も散見されます。こういった“イクメン”職員は非難的な目で見られるのではなく、ワーク・ライフ・バランス対策に積極的に取り組む人として、市町村の中では評価される傾向にあります。
「病気になったとき」 ー ポイントは「90日」
市町村の職員が、病気やケガで働くことが出来なくなった時には「病気休暇」を取得して、病気やケガからの回復に専念することができます。
具体的な措置については、各市町村の条例で定められていますが、基本的に国家公務員に準ずる形で病気休暇が定義されている自治体が多いです。
その国家公務員の病気休暇は「人事院規則一五―一四(職員の勤務時間、休日及び休暇)」第二十一条によって定められています。そこでは、「療養のため勤務しないことがやむを得ないと認められる必要最小限度の期間」とし、最大で連続した90日取得できるとなっています。
よって、市町村の職員が病気やケガで働けない時には、承認を得ることによって90日間の休暇を取得することが出来るようになっているところが多いです。
90日では治らないような病気・ケガに見舞われた場合は、一般的には「病気休業」に切り替えた形で回復に専念することになります。
これは、職員本人の意思でなくとも休職させることができるというもので、“処分”のニュアンスを含みます。よって職員の意思で取得する「病気休暇」とは性質が大きく違います。
病気休職は最大で3年というのが一般的で、それを過ぎるとやむなく退職ということになってしまいます。
ところで、気になるのは休んでいる間は給与が出るのかという事ですが、病気休暇は年次有給休暇のような感じで、給与が100%出るという自治体が多いです。一方、病気休業は給与の何割か(1年を限度に80%支給とする自治体が多い)が支給されます。
「3年間休職するとなると、給料がない期間があるではないか!」となってしまいますが、その時には加入している市町村共済組合から「傷病手当金」という形で、概ね給与の2/3程度が給付されます※6。
このように、病気やケガで働けないという期間があっても、少なくはなりますが、給与や手当金をもらいながら生活することが可能です。よって市町村職員は、病気やケガという予想外の事が起こっても、仕事を失うリスクや経済的リスクを抑えた形で生活を送ることができると言えるでしょう。
親などの「介護」 -40代、増える責任
40歳代に入ってくると、親などの介護に直面する職員も増えてきます。40歳代だと自分も家庭を持っていて、仕事上でも責任のある立場を任されている人も多いでしょう。
そのような中、介護のための時間を確保しつつも、無理のない形で仕事を続けることが出来るように、ワーク・ライフ・バランスを見直す必要が出てきます。
もちろん、自分の手で介護したいと考える人や、介護保険を活用して専門職に介護を任せたいと考える人もいるでしょう。
介護保険制度については40歳以上になると保険料を支払うのですが、市町村職員であっても、保険料の徴収窓口が市町村共済組合になるというくらいで、民間企業と差はありません。
次に介護休業についてですが、自分の手で介護したいという場合には、「介護休業」を取得することができます。
介護休業の期間は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」第十一条で、「3回まで分けることができ、通算93日まで」と定められています。
市町村職員も同法の第六十一条で同じ期間の定めがあります。よって介護休業の取得に関しては、他の職業と変わりないと言えます。
介護休業中は、市町村共済組合から「介護休業手当金」が支給されます(給与の67%)。民間企業の場合は、雇用保険から「介護休業給付金」という形で給料の67%が支給されますので、休業中のお金の面では他の職業と同じ状況です(※6、※7)。
まとめ – 育児支援が手厚く
市町村職員の場合、正規雇用の形で働く人が多く、ライフイベントがあっても退職する人は少ないです。
育児については休業期間が最長3年と長く、メリットがあります。また“イクメン”も推進されています。
病気になった時には、3年以内は休業という形で仕事を続けることができます。その間も給与または手当金という形で、何らかの収入はあります。
介護をする必要が出てきたときには、介護休業や介護保険制度を利用することが出来ます。これらの制度については民間企業のそれと差はありません。
※5)参考:厚生労働省/イクメンプロジェクト
※6)参考:兵庫県市町村職員共済組合/短期給付事業
※7)参考:厚生労働省職業安定局/雇用継続給付
コメント
コメント一覧 (1件)
女性で、結婚して子供を産んでも辞めない方が多いということに納得しました。子育てがしやすそうな環境が整えられているのはさすが公務員だと思います。