市町村職員の退職金制度
一般に公務員の退職金は優遇されているイメージですが、実際にはどうなのでしょうか。市町村職員の退職金について、その制度と実情について見てみましょう。
地方公務員の退職手当(退職金)は次の計算式で決められます。これも給与と同じように、国家公務員に準ずる形となっており、国家公務員退職手当法に基づいて定められています。
退職手当額 = 基本額 + 調整額
基本額 = 退職日給料月額 × 退職理由別・勤続年数別支給率
調整額 = 調整月額のうちその額が多いものから 60 月分の額を合計した額
- 出典
- 国家公務員退職手当法
基本額は、退職した時の給与月額に支給率を掛けたものです。支給率は自己都合退職か、定年退職かなどの退職理由によって、また勤続年数によって変動します。
職員側の都合で、勤続年数が短いほど退職金が少なくなり、自治体側の都合で、勤続年数が長いほど退職金が多くなる仕組みです。
また、調整額とは、その人の階級によって定められている月額の60か月分が支給される部分です。
市町村の職員も能力や経験年数によって、係長、課長、部長のように昇級していきますが、退職手当の調整額は、この階級が高い人ほど沢山もらえるようになっています。
退職金は優遇されている!?
統計データを見てみると、地方公務員の一般職員の退職手当支給額は、一人当たり2,300.8万円(25年以上勤務後の定年退職者)※1となっています。 民間企業の退職金は、大学卒で一人当たり1,567万円(勤続35年以上、退職一時金のみの場合)※2ですので、退職金という点においては、市町村職員は優遇されていると言えるでしょう。
※1)出典:総務省/平成27年4月1日地方公務員給与実態調査結果
※2)出典:厚生労働省/平成28年就労条件総合調査
市町村職員の年金制度
退職後の第2の人生を考えた時、年金がいくら貰えるのかというのは、とても気になる話です。
市町村職員の年金制度は平成27年10月に大きく変化しています。ではどのようになっているのか、年金制度の改正も併せて見ていきたいと思います。
民間企業で働く人は、「国民年金に厚生年金を合わせた額」が支給されます。公務員の場合は、これまで「国民年金に共済年金(厚生年金に相当)を合わせた額、そこに“職域加算”を加えた額」が支給されていました。一見しただけでも、職域加算分だけ多いことがわかります。
しかもこの職域加算については、保険料(掛け金)を支払わなくても良いことになっており、丸儲けの部分だったのです。
平成27年の制度改革では、この職域加算がなくなり、公務員も共済年金ではなく厚生年金を支給される形に変化しました。
さらに、これまでは保険料(掛け金)が厚生年金に比べて安かったのですが、公務員も段階的に値上げされ、平成30年を目途に厚生年金と同じ保険料率になることが決まっています。
ただし、職域部分廃止に伴い、「年金払い退職給付」という新しい制度が始まりました。これによって、民間企業の「退職一時金+企業年金」の額面と、公務員の「退職手当+年金払い退職給付」の額面が、大体同じになるように設定されています。※3
年金について、まとめると…
まとめると、これまで公務員の年金制度は優遇されていましたが、平成27年の制度改革では民間企業に合わせた形に変化しました。それでも「年金払い退職給付」という新しい制度も始まったことで、未だに若干優遇されていると言えるでしょう。
今後は、民間企業の実情に沿って、さらに制度変化が行われていくものと考えられます。
※3)参考:地方職員共済組合/年金ガイド
互助会のメリット
市町村などの自治体では、職員の福利厚生を上乗せする為の組織として、職員互助会というものがあります。互助会では職員が給与に応じて毎月会費を払い、冠婚葬祭時の祝い金・見舞金や、病気になった時にやむを得ず給食した場合などに一定額を支給してくれます。
その他に、互助会が保険の窓口となっているところもあります。これによって、生命保険や医療保険などの任意保険に安く入れるというメリットもあります。
互助会の制度は市町村によって様々で、互助会に入ることで受けられるサービスも異なっています。
また、互助会でのサービスを受けるために会費を支払っているとはいえ、自治体からもその財源を得ている為、職員への支給は不適切ではないかという議論もあります。よって、今後は各自治体による差はありますが、縮小や撤廃の方向に進んでいくものと思われます。
まとめ
このように、退職金や年金制度について、市町村職員は優遇されているというのが現状のようです。また、互助会という組織も市町村職員にとっては経済的なメリットとなります。
しかしながら、今後はより世間の実情に沿う形で、そのような優遇は減る方向に進むものと思われ、互助会も撤廃の向きにあると考えます。
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