「裁判所職員」が働く「裁判所」の概要
裁判所とは、日本の立法権、行政権、司法権の内、「司法権」を担う国家機関です。
「裁判所」はもちろん裁判を行う場所でありますが、裁判所の業務は大きく分けると「裁判部門」と「司法行政部門」に分けることができます。
「裁判部門」は審理・裁判の他、裁判に関する事務業務を行い、「司法行政部門」では事務局が設置され、その事務局が、人事や会計など人や設備などの面で「裁判部門」を支援する職務を行っています。
また裁判所では、裁判官だけでなく、さまざまな人が働いています。
裁判官はもちろんのこと、裁判の開始に必要な「裁判所書記官」や「裁判所事務官」、そして「調査官」など、さまざまな人が部門ごとに職務を果たすことで裁判所が成り立っています。
「裁判部門」の仕事内容
一般的に裁判所 の「裁判部門」には、「民事部」と「刑事部」が設置されており、家庭裁判所の「裁判部門」では、「家事部」と「少年部」が設置されています。この中で「家事部」というのは、家庭や親族の問題に関する家事事件や人事訴訟事件を取り扱っている部署で、「少年部」というのが、非行少年の問題に関する少年事件を取り扱っている部署のことです 。
「裁判部門」で働く国家公務員としては、「裁判所書記官」「裁判所事務官」「家庭裁判所調査官」などの職員がいます。
裁判所書記官
「裁判所書記官」は裁判に関わるあらゆる場面で活躍しており、裁判官とも協力し、裁判の迅速・正確な進行を支えています。
具体的な仕事内容として最も基本的なのが、裁判の公証人としての職務です。裁判で行われた内容を、法律的に構成し、文書としてまとめることで、裁判で行われた内容を証明します。この裁判所書記官が作成した文書は、裁判の内容を証明する唯一のものという強い効力が認めらており、この文書の作成は非常に重要な職務です。
この他にも裁判所書記官には、裁判に関わる法令などの調査を行う裁判官の補佐や、「裁判所書記官」の独自の権限によって行われる事務作業など、多くの仕事があります。
より詳しい情報は、この「裁判所」の下記ページにて確認できます。
http://www.courts.go.jp/saiban/zinbutu/syokikan/index.html
家庭裁判所調査官
「家庭裁判所調査官」は、主に心理学・社会学・社会福祉学・教育学といった専門的な知識を利用して、家庭裁判所で取り扱っている家事事件と少年事件などについて調査を行うことです。
「家事事件」では、家庭内の離婚や子どもをめぐる紛争といった問題の解決のための調査などを行います。特に子どもが関係する場合、上記のような専門的知識をもとに子どもの思いを調査し、その思いを親や裁判官に報告します。
「少年事件」では、非行を犯した少年についての様々な調査を行い、動機や生活環境など、事件の裏側にある事柄についての調査をします。また調査だけではなく、少年が更生するにはなにが必要なのかを考えることも重要な仕事です。これらの調査・分析結果は裁判官に報告し、裁判官が最終的な審判を行います。
(家庭裁判所調査官の詳しい情報)
http://www.courts.go.jp/saiban/zinbutu/tyosakan/index.html
裁判所事務官
「裁判所事務官」は、各裁判所の裁判部や司法行政部門に配置されています。裁判部では「裁判所書記官」のもとで様々な裁判事務を担当し、司法行政部門では総務課、人事課、会計課等といった「事務局」において司法行政事務全般を行います。
「司法行政部門」の仕事内容
「司法行政部門」の業務は、各裁判所に設置されている「事務局」が行っています。この事務局には、総務課、人事課そして会計課等の部門があり、裁判所事務官がその業務を行います。
総務課
「総務課」は、会計関係を除く司法行政事務全般を取り扱うため、事務の内容はさまざまです。
その中の一つとして、広報活動があります。 広報活動には、例えば裁判官の日々のエッセイ等を掲載したりする広報誌の作成や公開をする業務があります。また広報活動以外にも裁判所見学等のイベントの手配等も行います。
なお日本の裁判制度は原則公開されているため、通常誰でも傍聴できますが、世間の注目を集める事件等はマスコミや傍聴したいという人がたくさん集まります。あまりにたくさん傍聴人が集まる事件では、事前に裁判所の総務課では傍聴券の交付を行い、訴訟が円滑に執り行われるように手配します。
会計課
「会計課」では、裁判手続きに関するお金についての事務を行います。裁判手続きによっては、事務手数料以外にもお金を要する手続きがあります。このようなことを管理するのが裁判所の会計課です。
人事課
「人事課」の仕事は、優秀な人材を職員として採用することや、採用と予算のバランスをとるといったことがあります。また職員への指導や育成によって、職員の意欲や能力を最大限に引き出し、裁判所という組織全体の円滑な運用を図ることも重要な仕事です。
裁判所職員の採用・勤務地・異動
裁判所職員の採用試験
裁判所職員の採用試験には「総合職試験」と「一般職試験」があり、「総合職試験」では政策の企画立案等に係る高い能力を有するかどうかが試験され、「一般職試験」では的確な事務処理に係る能力を有するかどうかが重視して行われます。「総合職試験」と「一般職試験」では試験内容は違いますが、基本的にどちらも合格後は「裁判所事務官」として採用されます。
また「家庭裁判所調査官」は、「総合職試験(家庭裁判所調査官補,院卒者区分・大卒程度区分)」によって、「家庭裁判所調査官補」として採用された後、裁判所職員総合研修所という研修施設で2年間の研修を受け必要な技能などを習得することで「家庭裁判所調査官」となります。
採用試験裁判所職員の勤務地については、一般職採用と総合職採用で取り扱いが異なります。
「裁判所書記官」になるには、裁判所職員として一定期間勤務した後に、「裁判所職員総合研修所入所試験」という試験に合格し、同研修所で約1~2年間の研修を受けることが必要になります。しかし「総合職」で採用された人は、採用初年度に限り、「裁判所職員総合研修所入所試験」の筆記試験の全てか一部が免除されます。
ちなみに「裁判所職員総合研究所」は、最高裁に設置されている研修期間で、裁判官以外の裁判所職員に対してさまざまな研修を行っています。
裁判所職員の勤務地・異動
総合職試験・一般職試験によって「裁判所事務官」として採用された場合は、希望する勤務地を管轄する高等裁判所の管轄区域内の裁判所で勤務することになります。
この場合の異動は主に3年ごとにあり、採用された裁判所のある都道府県内での異動が一般的です。ただし、上位ポストが上がるにつれて、違う都道府県への異動も行われることになります。
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