【入国Gメン】国家公務員「入国警備官」になるには?

「入国警備官」は、高校卒業程度で就職できる「国家公務員専門職」です。法務省管轄の入国管理局に所属し、入国に関する公安活動を行います。「入国警備官」には、人事院・法務省が実施する「高卒程度採用試験」や「社会人採用試験」を受験し、合格し、採用されることでなることができます。


はじめに

国家公務員の公安職のひとつである入国警備官。法務省管轄の入国管理局に所属し、不法に滞在する外国人や、不法就労を行う外国人、資格なしに不法に入国をしている外国人の調査から送還までを行います。入国警備官は時にはメディアなどで、入国Gメンなどと呼ばれ、摘発と呼ばれる捜査のシーンが取り上げられることもあります。

また、地方入国管理局やその出張所は全国に配置されていますが、入国警備官の人数は全国に1千人あまり、他の公安職に比べるととても少ない人数となっています。採用はどこで行われるのか?どうすれば入国警備官になれるのか?をみていきましょう。

国家公務員「入国警備官」を押さえる3つのポイント

その1:法務省管轄の入国管理局に所属する「国家公務員専門職」です。
その2:警察職員としての権限が与えられています。
その3:類似した職種に「入国審査官」があります。こちらは、国家公務員採用一般職試験によってなることができます。

そもそも、国家公務員「入国警備官」とは

「入国警備官」とは、法務省に置かれる8つの内部局のうちのひとつである「入国管理局」に所属する国家公務員の公安職で、日本の法律に違反して滞在している外国人の調査、摘発・収容、自国への送還などを行う職員です。

「入国警備官」が行う調査の対象となるのは、在留期間を過ぎて滞在している不法滞在者(オーバーステイ)や、働く資格なしに就労している外国人不法就労者、不法入国者などの違反事件です。入国警備官は司法警察職員ではないものの、国家公務員法等では警察職員という位置づけになっています。

現在、法務省より発表されている国内の不法残留者数は6万2千人以上、警察庁発表の国内での外国人の犯罪件数は平成初期に比べ2倍以上に増えたといわれています。

2015年度一年間に入国警備官が退去させた外国人数は1万2千人以上ですが、依然として不法に滞在し就労する外国人や、罪を犯す外国人は後を絶たず、また裏で手を引く日本人の存在も否定できないのが現状です。

そのような背景の中、入国警備官は日本の法令に則り、治安を守るために働くという重要な役割を担っています。入国警備官の調査対象は外国人の違反者ですが、地道な捜査の先には、日本の国民生活を守り、円滑な国際交流の発展を目指すという大きな目標があります。

入国警備官になるまでの流れ

入国警備官 試験の流れ イメージ画像
公務員総研作成
入国警備官になるには、人事院が行う「入国警備官採用試験」に合格し、入国管理局に採用される必要があります。

入国警備官の仕事内容と勤務地

入国警備官は不法滞在者などの情報を収集し、必要な措置を執りますが、その流れはいくつかの段階に分かれます。また、勤務地に関しては、転勤を伴うような場合もあります。

「違反調査」業務

違反調査では不法に入国している外国人、在留期間の更新をせず不法残留を続ける外国人の情報を収集し見つけ出すのが違反調査です。また、就労不能な在留資格で就労している不法就労者も違反調査の対象になります。


情報は自ら収集するほかに、入国管理局に寄せられる一般の人からの情報、本人の出頭などを元に事実調査を行います。違反の手口は、組織がらみや、裏で手を引く日本人の存在も否定できず、年々複雑になっているようです。

「摘発」業務

入国警備官は違反調査の結果、必要があれば強制捜査や身柄拘束なども行います。摘発は、強制送還を恐れて逃走されたり、抵抗を受けたりする可能性もあります。時には罪を犯している者やその組織に対してメスを入れる場合もあり、危険を伴うケースもあります。そのような摘発では、警察と入国警備官の合同摘発を行う場合もあります。

「収容」業務

入国者の中で、在留期間の期限が過ぎてから出頭した者や、捜査、摘発を行った者の身柄を収容する必要がある場合には、地方入国管理局に設置された施設に収容します。収容施設の警備や、収容している者への処遇も入国警備官の仕事になります。この間、収容された者は入国審査官の違反審査を受けます。

収容施設は、入国者収容所といい、国内の3箇所に置かれ、収容所・入館センターといった略称で呼ばれています。

「送還」業務

審査の結果、退去強制令書が発付されると強制退去となり、入国警備官は速やかにその外国人を送還しなければなりません。送還の為の手続きや確実に出国させるための空港などへの護送も入国警備官の仕事になります。

また、直ちに送還することができないときは,送還可能なときまでその者を収容することができます。

不法就労助長罪とは(出入国管理及び難民認定法第73条の2第1項第1号)
日本に在留する外国人には「在留資格」が付与され、それぞれの資格に応じて日本での活動の範囲が定められています。この資格を遵守せず外国人を斡旋した者、雇い入れた者も「不法就労助長罪」として処罰の対象になります。

出典
不法就労 – こちら関東管区警察局です

勤務地

全国にある地方入国管理局、その支局(成田空港、横浜、関西空港、神戸、那覇)と96カ所の出張所(主に海港や空港)にある官署や、牛久市(茨城県)、大村市(長崎県)にある入国者収容所入国管理センターが勤務地となります。
異動もあるため、引越しを伴うような転勤になる場合もあります。

法務省管轄の入国管理局とは

入国管理局は法務省管轄の機関のひとつで、出入国の管理行政を行っています。入国警備官は入国管理局の職員で、地方入国管理局や入国者収容所に配属され、日本国内で不法に滞在する外国人の違法調査や送還などを行っています。入国警備官は国家公務員法等で警察職員に定められています。

地方支部局

入国管理局は8つの地方入国管理局、2つの入国者収容所から成ります。また、地方入国管理局には支局や出張所が設けられています。

札幌入国管理局(出張所5か所)
仙台入国管理局(出張所6か所)
東京入国管理局(出張所11か所)
成田空港支局
羽田空港支局
横浜支局(出張所1か所)
名古屋入国管理局(出張所8か所)
中部空港支局
大阪入国管理局(出張所5か所)
関西空港支局
神戸支局(出張所1か所)
広島入国管理局(出張所7か所)
高松入国管理局(出張所3か所)
福岡入国管理局(出張所10か所)
那覇支局(出張所4か所)

収容施設(入国者収容所)

東日本入国管理センター(茨城県牛久市)
大村入国管理センター(長崎県大村市)

入国警備官試験の難易度

入国警備官の採用予定数は約40名程度、社会人若干名と少なく、合格率の低い難易度の高い試験となります。

受験資格

高等学校または中等教育学校を卒業した日の翌日から起算して5年を経過していないもの、または、試験年度翌年3月までに卒業見込みの者、人事院がこれらの者と同等の資格があると認める者と定められています。社会人区分では年齢が40歳未満の者と定められています。

試験内容

第一次試験は、筆記試験、作文試験で、第二次試験は、人物試験、身体検査、身体測定、体力検査です。

合格基準

試験の合格基準は第一次試験受験者のうち、筆記試験が基準点以上である者(満点の30%)を筆記試験合格者とし、その合格者を対象に作文試験の評定にて第一次試験合格者が確定します。


第一次試験合格者を対象に第二次試験を行い、最終合格者を決定します。

合格者数

平成28年度
・申込者数 1,906 人 (女性456人)
・一次合格者数 206人 (女性43人)
・最終合格者数 126人 (女性30人)

平成27年度
・申込者数 1,785人 (女性398人)
・一次合格者数 180人 (女性53人)
・最終合格者数 122人 (女性44人)

採用後の研修

試験の最終合格者は採用候補者名簿に記載され、全国の地方入国管理局または入国者収容所入国管理センターに採用が決まります。

全国の地方入国管理局などで一定の期間勤務し、その後、茨城牛久市の法務総合研究所牛久支所にて3ケ月間の初任科研修を受けます。研修は合宿研修で行われます。

研修では憲法や出入国管理及び難民認定法はじめとする各種法行政、外国語、逮捕術、けん銃操作、武道などの教育を受け訓練を行います。3か月の訓練を修了すると現場配属となります。その後も、採用年数とスキルに合わせて研修が用意されています。

採用後の主な研修

・中等科研修について
採用から4年経過すると中堅職員を目指した、より高等な知識、実技の習得を行います。

・語学研修について
外国語専門学校などで語学を学ぶ研修が行われています。

入国警備官の収入や福利厚生

国家公務員の公安職である入国警備官の給与には、公安職俸給表(一)が適用されます。公安職の給与は一般の国家公務員に比べ12%程高くなり、公安職俸給表(勤続年数、階級など)により特別な事情がない限り毎年昇給が実施されます。

初任給・年収

入国警備官は、公安職として公安職俸給表(一)が適用され、一般の国家公務員より高い水準の俸給が支給されます。

具体的には、、高校卒業後、公安職俸給表1級3号俸が適用され、東京都特別区内の官署に勤務する場合には、地域手当を含め202,080円(平成29年4月1日時点)が支給されます。

このほか、扶養手当、住居手当(一か月あたり最高27,000円)、通勤手当(一か月あたり最高55,000円)、期末手当・勤勉手当(いわゆるボーナス)など諸手当が支給されます。

勤務時間、休暇について

入国警備官の一日の所定労働時間は7時間45分、1週間に38時間45分です。勤務形態は週休2日制です。但し、日勤と日夜勤の2交替勤務があります。

年次有給休暇は年20日付与(採用年度は15日付与)されます。この他に、夏季休暇、結婚・出産・忌引・介護・病気休暇と、ボランティアなどの特別休暇制度があります。

福利厚生

入国警備官は国家公務員共済組合に加入します。共済組合では、医療保険、共済年金、福祉などをカバーし、病気やけが、結婚、出産があったときや、死亡、高度障害になったときなどには給付を受けることができます。また、ケガや災害で休職するとき、災害で家財に損害があったときにも給付を受けることができます。

住居には全国に設けられている公務員宿舎が利用できます。賃貸などに住んでいる場合は月額27,000円が住居手当として支給されます。

入国警備官と入国審査官の違い

地方入国管理局などで働く公務員の中には、入国審査官と呼ばれる行政職(または指定職)職員と、公安職の入国警備官があります。入国警備官は「入国Gメン」などと呼ばれるように、何らかの違反を犯して日本に滞在する外国人の事実調査から、摘発、収容、送還を行いますが、入国審査官は外国人の入国審査、日本人の出帰国確認などを行います。

入国審査は旅券が有効であるかなど、空港などでのパスポートチェックや出入国、在留資格の審査と入国の可否決定を行います。入国警備官は入国後の違反者を対処するのに対し、入国審査官は水際における監視を行います。

入国審査官になるための試験

入国審査官は入国警備官のようにその職種独自の試験はなく、人事院の行う国家公務員採用一般職試験を受け、各地方入国管理局に採用される必要があります。


入社当初は法務事務官として補助業務からはじまり、経験を積むことで入国審査官になることができますが、特別な試験や資格はありません。

研修

入国警備官も入国審査官も採用後に全寮制の研修を受けます。必要な法律知識や語学力が求められる点は共通していますが、そのほかの内容には大きな違いがあります。

公安職である入国警備官の研修では逮捕術や武道、けん銃操作なども行いますが、入国審査官の研修では実務の知識、より多くの語学習得、国際感覚などを学んでいきます。

また入国警備官には階級が定められていますが、入国審査官委には階級はありません。

入国警備官の採用試験

入国警備官 試験の流れ イメージ画像
公務員総研作成

入国警備官になるための試験は国家公務員入国警備官採用試験で、試験区分には警備官と警備官(社会人)があります。

採用予定数は、警備官は40名程度、警備官(社会人)は若干名となっています。合格者は採用人数によりますので、受験者数が多ければ多いほど、難易度の高い試験となります。詳しくは人事院のホームページで発表されます。

試験の時期

受付:7月中旬頃
第一次試験:9月中旬頃(約1ケ月程で合格発表)
第二次試験:10月中~下旬頃(約1ケ月程で最終合格発表)

採用試験

一次試験
・基礎能力試験(多肢選択式)…公務員として必要な基礎的能力についての筆記試験
・知能分野(文章理解、課題処理、数的処理、資料解釈)20題
・知識分野(自然科学、人文科学、社会科学)20題
・作文試験 …文章による表現力、課題に対する理解力など(合否の判定のみ)

二次試験

・人物試験(人柄、対人的能力についての個別面談)
・身体検査(胸部疾患、血圧、尿、その他一般内科系検査)
・身体測定(受験資格の可否確認※1)
・体力検査(上体起こし、立ち幅跳び、反復横跳び※2)

※1 (身体測定の合格基準)
・男子身長160㎝以上、体重47㎏以上
・女子身長148㎝以上、体重40㎏以上
・裸眼視力(どちらか一眼でも)0.6以上
(ただし、矯正視力が両眼で1.0以上は可)
・四肢の運動機能に異常がないこと

※2 (体力検査の合格基準)
・状態起こし 男子21回以上、女子13回以上
膝を曲げ仰向きに寝た状態で30秒間のうちに何回上体を起こすことができるかの検査
・立ち幅跳び 男子205cm、女子147cm
立位姿勢より両足踏切で前方へどれだけ跳躍ができるかの検査

試験地

札幌市、仙台市、東京都、名古屋市、大阪市、広島市、高松市、福岡市、那覇市
上記試験地より1ケ所を選んで受験します。

採用人数

平成29年度の採用人数は、警備官約40名、警備官(社会人) 若干名と発表されています。

入国警備官の階級

入国警備官には階級制度が設けられています。これは出入国管理及び難民認定法に基づき定められており、「警備監」を最高上位として、「警備監」、「警備長」、「警備士長」、「警備士」、「警備士補」、「警守長」、「警守」の7階級で構成されています。

採用後の初等科研修を受けると警守の階級が与えられます。その後は、適正、努力、実績に基づいて昇進していきます。

入国警備官は外国人と接する仕事のため、英語はもちろん、入国する人数の多い、中国語や韓国語、スペイン語などの語学ができることも重要なスキルになります。

まとめ

国家公務員法では警察職員である入国警備官。法務省の入国管理局に所属し、不法滞在者(オーバーステイ)や、不法就労者、不法入国者などの違反事件に取り組んでいます。

これらの一連の捜査などは出入国管理及び難民認定法(通称入管法)に基づき行われますが、時には摘発などの危険を伴うこともあります。

入国警備官は入管Gメンなどと呼ばれることもあるようにハードな職業に思えますが、入国警備官の中には女性も少なくはありません。ただし、不規則な勤務体系や転勤を伴うような異動、体力の必要な職業のため離職率は高いものとなっています。離職率を下げ中堅、ベテランを育成することが今後の課題となっています。

入国警備官の送還する外国人の中には、母国の社会情勢や経済問題など、さまざまな理由を抱え不法滞在者(オーバーステイ)となっているケースがありますが、他国に於いて違反を行う外国人に対し、自国の法の下、ルールを全うすることは、日本を外国人犯罪の温床とさせない、新たな犯罪手口を定着させない、延いては国際的な犯罪組織から守るためにも重要な任務になります。


入国刑務官の仕事はその離職率から見ても、楽な職業ではないようです。地道な情報収集から始まり、過酷な任務もあるでしょう。入国警備官を目指す場合には、中長期的な目線をもって、いずれは経験を積み、ベテラン勢として活躍するという目標があるとよいでしょう。

本記事は、2017年7月18日時点調査または公開された情報です。
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