はじめに
社会福祉士の就職先は多岐に渡りますが、その中でも市役所や保健所、公立病院などの施設に就職すると、社会福祉士は公務員として働くことができます。
今回は、公務員として働く社会福祉士の勤務先と仕事内容について、詳しく解説します。公務員として働きたい社会福祉士の方は、ぜひこの記事をご参考ください。
公務員の「社会福祉士」の勤務先と仕事内容
公務員の「社会福祉士」の勤務先は、まず県庁や市役所の福祉課があります。そのほかにも、保健所、保健センターなどをはじめ、公立病院、公立の介護施設、自治体が設置している地域包括ケアセンター、児童相談所など、さまざまな勤務地があります。
「社会福祉士」と「社会福祉主事」の違い
地方公務員の社会福祉職に採用されるために「社会福祉主事任用資格」が求められることがあります。
「社会福祉士」の資格を持っていることで、「社会福祉主事」になることができます。つまり、「社会福祉士」の方は「社会福祉主事任用資格」を持っていると認められるので、「社会福祉主事」の求人にも応募することができます。
▼参考:厚生労働省「社会福祉主事について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/shakai-kaigo-fukushi1/shakai-kaigo-fukushi8.html
「福祉課」で働く「社会福祉士」の仕事内容
都道府県庁や市役所、町村役場の福祉課で働く「社会福祉士」は、「福祉職」として一般行政事務とは別の区分で採用されていることが多いようです。
福祉職として採用されると、「福祉課」や「健康福祉課」や「保健福祉課」など、各自治体によって名称は様々ですが、社会福祉に関係する部署に配属されるのが一般的です。
「社会福祉士」の資格を活かした窓口での相談業務や面接業務のほか、生活保護業務を担当する場合などは、被保護者の家を定期的に家庭訪問することで、何か困っていることはないかを調査する、地域のケースワーカーとしても活躍します。
一方で、「社会福祉士」の資格がなくても対応できる一般的な事務作業を担うこともありますので、さまざまな業務への対応力も求められます。
新卒の福祉職の採用で「社会福祉士」の資格を求められることは少ないようですが、「社会福祉士」や「社会福祉主事」の資格に必要な専門的知識は、業務に直結していると言えます。
保健所や保健センターで働く「社会福祉士」の仕事内容
保健所や保健センターで働く「社会福祉士」は、「相談員」として、窓口での相談業務を担当したり、相談を受ける中で福祉や医療サービスが必要と判断した場合には、地域の医療機関やその他の関係機関と連携し、福祉をつなげる業務を行います。
もちろん、他の機関につなげることもあれば、保健所や保健センターの「社会福祉士」が援助業務まで担当することもあります。
公立の病院や介護施設で働く「社会福祉士」の仕事内容
公立病院や公立の介護老人保健施設で働く場合、「社会福祉士」は「医療ソーシャルワーカー(MCW)」という職名で呼ばれることが多いようです。
「医療ソーシャルワーカー」になるには特に資格は必要ありませんが、実際には多くの病院や介護施設で「社会福祉士」の資格を持っている方を採用・もしくは優遇しています。
医療ソーシャルワーカーの仕事は、入院が決まった患者の精神的な問題から経済的、社会的な問題までを患者本人や家族などから聞き取り、一緒に考え、解決へと導くものです。
入院生活や病気に対する不安を受け止め、医師や看護師など医療スタッフに相談するといった病院ないでの連携を強化することもあれば、入院費や生活費の心配がある場合には、利用できる制度が無いか調べ、行政機関と連携するなど、福祉サービスにつなげる役割を担います。
公立病院の「社会福祉士」の立場
公立病院の中でも、県立病院や市立病院など、自治体が運営する病院の職員として働く「社会福祉士」については、「地方公務員」という扱いとなります。給料や待遇については各自治体の条例などで決められています。
公立の病院の中でも、国立病院は基本的に独立行政法人のため、公務員ではなく独立行政法人職員という扱いですが、独立行政法人職員の待遇などは国家公務員とほぼ同等とされていることが多く、「みなし公務員」などとも呼ばれています。
また、公立の大学病院についても、職員は独立行政法人職員という扱いが一般的ですが、その勤務条件などは国家公務員と同等に設定されていることが多いようです。
地域包括ケアセンターで働く「社会福祉士」の仕事内容
「地域包括ケアセンター」とは、地域の高齢者のための、介護・福祉・保健・医療の総合窓口のような役割を担う機関です。
「地域包括ケアセンター」は、厚生労働省が推進し、2025年を目標に完成を目指している「地域包括ケアシステム」の中心的機関です。市町村や都道府県が設置しているか、市町村などに委託された社会福祉法人が設置・運営している場合もあります。
地域包括ケアセンターで働く「社会福祉士」は、高齢者の介護予防・生活の総合的な相談・オレオレ詐欺などの認知能力につけ込んだ搾取行為から高齢者の尊厳や権利を守る活動・地域のケアマネージャーなど専門家を集めたケア会議の開催などを担当します。
▼参考:厚生労働省「地域包括ケアシステム」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/
児童相談所で働く「社会福祉士」の仕事内容
児童相談所で働く「社会福祉士」は、児童や保護者、学校の先生などの関係者からの相談を受ける相談業務や、ケアが必要と判断した場合の支援や指導を担当します。
児童相談所や一時保護所、子ども家庭支援センターで勤務することがあり、それぞれの施設が担当する各種事業の企画・立案・実施までを担当することもあります。
児童相談所での業務のほか、家庭訪問や、学校などに出向いて、問題解決のために話し合いをする場合もあります。
近年増加傾向にある児童虐待や家庭内暴力(DV)を防止するため、「社会福祉士」としての専門知識を活かして取り組む仕事です。
▼参考:東京特別区人事委員会「採用試験情報:児童相談所等」
http://www.tokyo23city.or.jp/saiyo/kei_jido.htm#03
公立学校で「スクールソーシャルワーカー」として働く「社会福祉士」の仕事内容
公立学校で「スクールソーシャルワーカー(SSW)」として働く公務員の「社会福祉士」もいます。
スクールソーシャルワーカーは、児童・生徒が抱える日常生活の悩み、いじめ、暴力、虐待、貧困、ヤングケアラー(病気や障害を持つ親やきょうだいの介護をする子ども)などの問題について専門的な知識を活かし解決を図る職業です。
スクールソーシャルワーカーになるために必須の資格はありませんが、一般的には「社会福祉士」や「精神保健福祉士」「臨床心理士」の資格を持つ人を採用することが多いようです。
「社会福祉士」がスクールソーシャルワーカーとして働く場合には、先生や家庭と連携して問題解決を図ったり、子どもの安全のために外部の支援が必要だと判断した場合には、必要に応じて、児童相談所、市町村の福祉課、警察などの専門機関と連携を図ったりして、最適な解決方法を模索します。
まとめ
このページでは、公務員として働く「社会福祉士」の仕事内容について、勤務先ごとにご紹介しました。
公務員の「社会福祉士」は、「社会福祉士」という職名で採用されることは少なく、各施設の「ソーシャルワーカー」や「医療ソーシャルワーカー」、「スクールスソシャルワーカー」の求人で、「社会福祉士」の資格を持つ人が応募可能となっていたり、優遇して採用されることが多いようです。
また、「社会福祉士」以外にも福祉系の資格を複数持つ方も多く、単に「社会福祉士」として働くのではなく、福祉のスペシャリストとして「社会福祉士」の専門的知識を活かした総合福祉職として働いている方も多くいます。
また、公務員の「社会福祉士」として働くには、「社会福祉士」が本来は担当しないような事務的な仕事や、介護的な仕事を担う場合もあります。「社会福祉士」の資格を活かした就職によって、あらゆる仕事に携わる機会が生まれます。
以上のように、「社会福祉士」という国家資格を活かした仕事内容は様々です。公務員の「社会福祉士」は、どの職場で、誰のために、どのように働きたいのか、その考え方によって、働き方を選ぶことができる仕事だと言えるでしょう。
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