ふるさと納税とクラウドファンディングを組み合わせた新しいサービス

地方自治体の資金調達手法「ガバメントクラウドファンディング」とは?解説(2010年1月記事)

ふるさと納税とクラウドファンディングを組み合わせたサービスを「ガバメントクラウドファンディング」といいます。

このサービスは今までの地方自治体の資金調達とは全く性質の異なる手法です。

本記事では「ガバメントファンディング」とはどのような資金調達方法なのかについて説明します。


はじめに

地方ができる新たな資金調達手法としてふるさと納税が注目を集めています。ふるさと納税を利用すれば、所得税や住民税の控除を受けながら自分の好きな自治体に寄附を送り、なおかつ返礼品を受け取ることもできます。

そして、2018年は、このふるさと納税とクラウドファンディングを組み合わせたガバメントファンディングという新しいサービスが急速に広まりつつあります。

本記事ではガバメントファンディングとはどのような資金調達方法なのかについて説明します。

「ガバメントクラウドファンディング」とは?

まずは、「ガバメントクラウドファンディング」とはどのようなサービスなのかについて説明します。

「ガバメントクラウドファンディング」とは?

「ガバメントクラウドファンディング」とは、冒頭で説明した通り、ふるさと納税とクラウドファンディングを組み合わせたサービスです。

「クラウドファンディング」とはインターネットを使って小口の投資を集める際に使われるサービスで、自分が行いたいプロジェクトをクラウドファンディングサイトに登録、クラウドファンディングサイトを閲覧している一般投資家が自分の興味があるプロジェクトに対して投資を行います。

プロジェクトの資金を集めている人はサービスを通じて半自動的に投資を集めることができますし、投資家はプロジェクトに投資をする代わりに返礼品を受け取ることができます。

「ガバメントクラウドファンディング」では、「クラウドファンディング」の仕組みでふるさと納税が行えます。すなわち、自治体が応援して欲しいプロジェクトを「ガバメントクラウドファンディング」サイトに登録して、一般投資家からプロジェクトに対する寄付を募ります。

自治体はプロジェクトに対する投資を集めることができますし、一般投資家はふるさと納税のスキームで所得税や住民税から還付を受けながら、自分の好きなプロジェクトに投資をして返礼品を受け取ることができます。

2013年に日本初の「ガバメントクラウドファンディング」

日本で初めて「ガバメントクラウドファンディング」による資金調達事例が誕生したのは2014年で、「ふるさとチョイス」を運営している株式会社トラストバンクと埼玉県宮代町によって行われました。

宮代町には山崎山という地域住民に親しまれている山がありましたが、この山の整備のために寄附を募ったのが最初の事例です。自治体にお金がないから寄附を集めたというよりも、町の予算で山崎山の整備を行って、最後の一区画分だけ残して、その一区画を山崎山に思い入れのある人々からの寄付によって整備を完成させたいという思いから立ち上がったプロジェクトです。


寄附金は2013年9月2日~2013年10月30日とわずか58日間しか募集していませんでしたが、目標500万円に対して、支援人数775人、寄付金総額約940万円と大成功に終わりました。

2018年に新規参入者増加

上記のような事例が2013年にありましたが、「ガバメントクラウドファンディング」に注目が集まるのはまだまだ先のことです。ふるさと納税自体が流行しつつあったと言っても今ほどの市場規模は存在しませんでしたし、クラウドファンディングもまだマイナーな資金調達方法でした。

そして、ふるさと納税やクラウドファンディングがメジャーになることによって新規参入企業が増加しはじめたのが2018年のことです。ふるさと納税サイト系の企業やクラウドファンディング系の企業が続々と「ガバメントクラウドファンディング」に参入しました。

ちなみに、2018年12月現在「ガバメントクラウドファンディング」サービスの最大手は最初に事例を作ったふるさとチョイスで常時100件程度の案件が掲載されています。

「ガバメントクラウドファンディング」のメリット・デメリット

このように地方自治体に「ガバメントクラウドファンディング」という新たなプロジェクトが誕生したことにはどのようなメリットやデメリットがあるのかについて説明します。

「ガバメントクラウドファンディング」のメリット

一般投資家の目線から見たときの「ガバメントクラウドファンディング」のメリットは自分が関心のあるプロジェクトに投資できることです。

通常のふるさと納税の場合、どの自治体に寄附をするかまでは選択することはできても、寄附したお金をどう使うべきか指定することはできません。しかし、単なる返礼品目当てではなく、地域愛からふるさと納税をしている場合は、自分が関心のある地域も問題などに役立てて欲しいという願いは少なからずあるはずです。自分が関心のある地域の問題に対してダイレクトに寄附金を届けられるという点で、ふるさと納税よりもメリットがあります。

この特定のプロジェクトに投資をしてもらうという性質は地方自治体にもメリットになります。

寄附金を集められるのはもちろんのこと、プロジェクトに投資をしてもらうことによって、そのプロジェクトに対する社会的関心を測定したり、プロジェクトに対する応援者を集めたりすることができるので、ただ自治体が予算からプロジェクトに予算を投入するよりも、プロジェクトを盛り上げることができます。

「ガバメントクラウドファンディング」のデメリット

「ガバメントクラウドファンディング」のデメリットとして挙げられるのが、本質的にはふるさと納税の抱えている問題を解決できないかもしれないということです。

近年ふるさと納税の返礼品の過当競争が問題になっています。すなわち、寄附金を集めるために自分の自治体と関係ない人気の返礼品や金券を用意したり、還元率を高めたりして自治体の競争が激化していたのです。

このような過当競争を行うことは、全体としては税収に悪影響を与えます。元々税収が低い地方自治体は、還元率の高い返礼品を使って利幅を低くしてふるさと納税を集めるメリットはあります。

しかし、このように返礼品にお金を掛けると、住民税や所得税のトータルは変わらないので、返礼品を返さなければならない以上、住民税における自治体の予算総額は少なくなってしまい、かえって自治体の財政を圧迫させてしまいます。

このような理由から、ふるさと納税を管轄している総務省は地方のふるさと納税の運用状況にたびたび改善の通知を出していますが、なかなか守らない自治体も存在します。

「ガバメントクラウドファンディング」はプロジェクトベースで支援するものの、ふるさと納税として返礼品も受け取ることができるので、このような競争を止める力はないのではないかと考えられます。


「ガバメントクラウドファンディング」にも、ふるさと納税制度にまつわる返礼品競争というデメリットがあります。

地方自治運営も資金調達の上手さで差が

一般企業の社長の最も大事な仕事の1つが資金調達です。いくら素晴らしいビジネスモデルであっても、それを運営するための資金がなければ、収益を生み出すことはできません。そして、営業や経理、製品開発などの会社の各仕事は社員や外注先に任せることができますが、資金調達自体は社長しか行えません。

地方自治体と補助金

今までの地方自治体はどちらかと言えば、この資金調達という視点がありませんでした。もちろん、地方自治体が地方債を起債したり、政府の補助金を取ってきたりすることはありますが、民間の一般的なロジックとは大きく異なります。

特に補助金は募集条件ありきでプロジェクトが進められるので、そのプロジェクトに社会的なニーズがあるのかはわかりませんし、成果を出さなくても責任追及はほとんどされませんし、公的資金なのでそれによって利益を出そうとすることもできません。

地方自治体の意識が変わる?

一方で「ガバメントクラウドファンディング」によって調達する資金は民間の投資家より集めた資金です。ふるさと納税によって、所得税や住民税から還付を受けて返礼品も貰っているとはいえ、興味がある社会的に意義があると思えるプロジェクトでないと、投資家は投資してくれません。また、立ち上げたプロジェクトがまったく効果が出ていないのならば、自治体の評判にも関わるでしょう。

このように「ガバメントクラウドファンディング」によって資金調達をすることによって、これまで一般の市場原理に晒されてこなかった自治体の資金調達が、市場原理に晒されることになります。

その結果、自治体が社会的に意義のあるプロジェクトは何なのかを真剣に考えて、一般市民がその是非を評価することができます。

プロモーションとしての「ガバメントクラウドファンディング」

「ガバメントクラウドファンディング」にはただの資金調達の手法ではなくプロモーションとしての機能を持っています。

「ガバメントクラウドファンディング」の元となるクラウドファンディングも単なる資金調達手法ではなく、プロモーション方法として使われることも多いです。

一般的にクラウドファンディングとして利用されている購入型クラウドファンディング(得返礼品がもらえるクラウドファンディング)は、資金調達というよりも予約注文的な役割が大きいです。

すなわち、プロジェクトを実施する前から、プロジェクトの内容について発表し、どの位の投資が集まるかによって事業の成否を予測し、事前に面白いプロジェクトだと話題作りのためにクラウドファンディングをすることも多いのです。

もちろん、「ガバメントクラウドファンディング」にもこのような要素があり、面白い自治体のプロジェクトはネットで話題になることも考えられますし、そのプロジェクトに興味を持ってくれたり、投資をしてくれたりした人は自治体自体にも興味を持ってくれるはずです。

このようにプロモーションとして「ガバメントクラウドファンディング」を利用することもできます。

まとめ

以上のように、「ガバメントクラウドファンディング」について紹介してきました。2013年に初めての事例が誕生したものの、まだまだ事例は少なく2018年から注目を集めた地方自治体の資金調達手法です。

ただし、「ガバメントクラウドファンディング」は今までの地方自治体の資金調達とは全く性質の異なる手法であり、プロモーション効果も期待できます。今後、「ガバメントクラウドファンディング」を上手に活用することによって、地方創生の推進を加速する自治体が現れることが望まれます。

SNS上でのガバメントクラウドファンディングの反応まとめ

 


 

 

 

本記事は、2019年1月10日時点調査または公開された情報です。
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