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大阪メトロの民営化から一年!業績はその後どうなったのか(2020年)

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大阪メトロ民営化


目次

はじめに – 2018年4月大阪メトロの民営化

2018年4月から大阪市営地下鉄が民営からされました。この政策は大阪維新の会が長らく主張していたことの一つですが、民営化にあたっては賛否両論入り乱れていました。

本記事を執筆しているのは2019年3月なので大阪市営地下鉄民営化からちょうど1年が経とうとしています。改めて、大阪メトロの民営化の結果と、官民の関係性について考察します。

(本稿は事実をもとに筆者の考えをまとめたものであり、本メディアの意見と必ずしも一致するものではありません。)

大阪メトロとは何か? – 地下鉄は基本的に公営

近畿圏にお住いの方以外には大阪の地下鉄がどのようなものなのかピンとこないという方も多いと考えられます。まずは、大阪メトロ及び地下鉄とはどのような交通機関なのかについて説明します。

大阪メトロとは?

大阪にはJRはもちろんのこと、阪急、阪神、近鉄など様々な鉄道が存在します。ただし、これらの鉄道は大阪の主要エリアを全てカバーしているわけではなく、地下に張り巡らされた鉄道によって大阪の人は様々な場所に移動します。それが大阪メトロです。

東京の地下鉄は複雑に張り巡らされていますが、大阪メトロは基本的に南北の線、東西の線によって構成されており、全部で9つの路線から成り立っています。駅の数は100駅で日本の地下鉄としては2番目に大きな地下鉄となっています。ちなみに1番目は東京メトロで141駅、3番目は都営地下鉄で98駅です。

1日当たりの乗降客数も第2位で約290万人の人が大阪メトロを利用しています。ちなみに駅数と同じく第1位は東京メトロの約690万人、第3位は都営地下鉄の約250万人となっています。

東京圏にお住いの方は都営地下鉄と同じか、少し大きい位の地下鉄が大阪メトロであると考えるとわかりやすいかもしれません。ちなみに、大阪メトロは現在民営化されていますが、民営化する前は日本最大の公営地下鉄でした。

大阪の地下鉄の歴史

大阪メトロが誕生したのは1933年のことで、日本初の公営地下鉄として現在の御堂筋線が開通しました。その後、1942年四つ橋線、1961年中央線と徐々に路線が増えて、2004年に今里筋線が開業して現在の形になりました。

一般的に鉄道は線路を敷かなければならないため莫大な建設費用がかかりますが、大阪メトロも線路建設の費用などによって莫大な赤字を抱えていましたが、リストラを含めた様々な経営改善に着手した結果、2003年より黒字に転換、2010年には累積赤字を解消して、順調に黒字経営を続けています。

大阪メトロの民営化は2006年から検討されはじめましたが、本格的に民営化を検討するきっかけとなったのが2011年の橋下大阪市長の就任です。ただし、議論はされるものの、議会などとの関係から橋下市長の任期中には大阪メトロ民営化とはなりませんでした。


具体的に民営化に舵を切り出したのが2016年12月吉村大阪市長の時代で、これまで大阪メトロの民営化に反対だった自民党が賛成にまわったことにより基本方針が成立し、2017年3月に条例を改正、民営化正式決定となり、2018年4月から民営化されました。

民営化にあたって大阪市より事業を譲渡されたのは。大阪市高速電気軌道株式会社という企業で大阪市が100%出資して2017年6月に設立されました。同社は地下鉄の運営だけではなく、沿線や地下空間に都市開発なども行います。

地下鉄は基本的に公営?

大阪に限らず、地下鉄は基本的に公営となっている場合が多いです。大阪メトロの歴史の部分でも説明しましたが、地下鉄の建設のためには鉄道を敷くだけではなく、地下を掘らなければならないので建設のために莫大な資金が必要になります。

このような事業は地域住民の生活の質向上に寄与するものの、イニシャルコストが高すぎるので民間事業者にはなかなか参入しにくい事業だと言えます。そのため、歴史的に地下鉄は民営ではなく公営で運営されていることが多いです。

大阪メトロが民営化した結果

以上のような経緯で、大阪メトロが2018年4月に民営化されて1年が経過しようとしています。民営化によって大阪メトロはどのように変化したのでしょうか。

コスト削減により営業利益11%増?

まず、確報値ではありませんが読売新聞の報道によると、2019年3月期の連結決算は2018年7月に想定していた営業利益391億円から大きく増加して、前期比11.2%増の446億円になる見通しであるとされています。

好調の理由については、マンションの建設ラッシュや訪日観光客の拡大により売上が前期比2.0%アップの1,863億円になる見込みであること、民間のコスト管理手法を導入や経営の合理化によりコスト削減が実現できたことなどが挙げられています。

》参考リンク:大阪メトロ営業益11%増…コスト削減奏功

大阪市には約100億円が配当、税金として支払われる

大阪メトロの利益の一部は当然税金として大阪市に納税されますし、大阪市が出資しているので配当金が支払われます。吉村元大阪市長によると、税金と配当金を合わせて大阪市に支払われるお金は約100億円になるとされています。

大阪メトロユニオンが結成される

一方で大阪メトロに対して労働ユニオンが結成されました。民営化により人員が削減され、祝日、夏季休暇、有給の生理休暇などがなくなり労働環境が劣悪化しているとして、大阪メトロの労働問題に対して戦っていくとのことです。

》参考リンク:大阪メトロユニオン結成される!~人格権を守るたたかい進める

以上が大阪メトロの業績ですが、では大阪メトロが今後どのような方針で経営されるのか中期経営計画から大阪メトロの経営戦略についてポイントを抜粋して説明します。

》参考リンク:Osaka Metro Group 2018~2024年度 中期経営計画について

5つの事業グループ

大阪メトロの現在の主力事業は地下鉄です。ただし、大阪メトロは地下鉄を含めて5つの事業グループを展開します。「鉄道」「バス」「広告」「リテール」「都市開発」です。鉄道とバスはイメージが湧くかもしれませんが、現代の交通事業者にとってはこれらの5つの事業の組み合わせは非常に重要です。


地下鉄の駅は利用者が集まるので色々なビジネスが可能となります。例えば、地下鉄の駅の付近に地下街を作り、駅の中に商業施設を誘致することは他の鉄道事業会社もおこなっており一定の成果をあげています。よって、鉄道とリテール(小売)はシナジーが高いと言えます。また、広告についても同様です。駅には自然と人が集まるため、電車の中や、駅の中、地下街の商業施設には広告価値があります。さらに地下鉄により交通の便が改善されることは住みやすさにもつながり、住宅などのニーズも発生するので都市開発も地下鉄と親和性が高いと言えます。

このような事業展開は大阪メトロが初めてではなく、むしろ成功してきた多くの鉄道事業者はこのシナジーを大切にしてきました。例えば、東京の東武鉄道は東武グループとして、バス事業、レジャー事業、不動産事業、流通事業などを展開しています。関西の阪急も阪急・阪神グループとして不動産、エンタメ、旅行などの業務を行っています。

公営の場合は民業を圧迫しないために、このような事業展開を行うことは困難ですが、鉄道として事業として利益を上げるためにはシナジーが期待できる複数の事業を展開するのが王道です。

グループのシナジー効果を活かす

上記の事業の相乗効果を発揮するための仕組みも東京メトロは検討しています。例えば、グループの共通のポイントカードの導入や子育て、女性、インバウンド、シニア層などをターゲットとしたグループ横断での利便性向上などを計画しています。

2024年売上2,100億円、非鉄道売上比率27%、営業利益430億円を目指す

5つの事業をバランス良く行うことによって、大阪メトログループとして2024年に売上2,100億円、非鉄道売上比率27%、営業利益430億円を目指します。前述の読売新聞の報道によると既に営業利益430億円については達成が見えていますが、非鉄道事業が成長すればまだまだ伸びしろがあると考えられます。

民間にできる事と公営でしかできない事

以上のように大阪メトロは民営化以降、比較的順調に経営されています。非鉄道事業のようにまだまだ成長しそうな領域が存在するので、事業としても伸びしろがあると考えられます。

事業には民間にできる事、公営企業にしかできないことの2種類があります。例えば、20世紀における地下鉄事業は初期に必要な建設費用が高く、損益分岐点にのるかリスクの高い事業であったため公営でしかできない事業だったと言えます。

しかし、近年では公営でなければならない事業も徐々に減少してきました。むしろ、民間の方が公共よりも、今まで公共的だとされてきた事業を行っている例も存在します。例えば、宇宙開発と言えば、20世紀はNASAやJAXAのような公的機関が行うのが一般的でしたが、近年では宇宙開発に乗り出すベンチャー企業が増加していますし、既に一定の成果を上げた企業も存在します。

エンジェル投資やベンチャーキャピタルからの投資、技術の発展によって、自己資本が少なくても将来の巨大な産業となりそうであれば、挑戦することができる世の中が到来しつつあるのです。

鉄道についても、近年では公営である必要は少ないと考えられます。鉄道も路線拡大よりも現在の路線をどのように維持するのかが重要になってくるでしょうし、仮に路線拡大のような莫大な投資が必要であっても、そこに市場が存在するのならば民間企業はファイナンスして事業を行うことが可能です。

まとめ

大阪メトロとは何か、民営化してから業績はどのようになったのかについて説明しました。

他の鉄道事業者の事例を見ると、大阪メトロもリテールや都市開発を組み合わることによってシナジーを発揮して、まだまだ成長する余地があると考えられます。また、確報値ではありませんが、営業利益が民営化1年目で11%改善したということは驚くべきことでもあります。

昔は民間ではファイナンスできないので公営にせざるをえない事業がたくさん存在しましたが、近年では将来の収益が期待できるのならば、民間企業でも巨額のファイナンスがしやすくなりました。また、公営企業のように民業を圧迫しないように経営に制限が加えられることも少ないので、民間企業の方が自由度の高い事業展開が可能だと考えられます。

これから公務員を目指すという方は、公営事業と民間事業の境目を意識した上で、自分が何をやりたいのかを考えた方が良いでしょう。

本記事は、2019年6月3日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

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この記事を書いた人

公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

コメント

コメント一覧 (3件)

  • 大阪市としては、バス事業を如何される予定でしょうか? あるいは、既に、メトロとセットで民営化がなされたのでしょうか? 今後の、事業計画の場合、「問題となるポイントは何か?」について、お考えをお持ちでしたら、ご教示下さればありがたいです。

    • コメントありがとうございます。大阪市宛てでしたら、弊社は別の運営母体なので回答できません。ただ、お書きいただいたコメントについては、できるところは回答検討させていただきます。

  • 市営地下鉄って、公営時代か毎年300億円近く黒字出す構造になってて、
    これ民営化で市民得したかって言うと疑問ですよ?
    別に黒字を一般会計に納付もできますし。
    あと、民営化で府や国に税金で多く取られてるのも大阪市民として見た場合、損してる話でもあります

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