司法機関である「裁判所」で働く国家公務員「裁判所職員」になるには

裁判所には、裁判所に所属し、各裁判所に勤務し、裁判に必要な事務処理、人事・会計・庶務などを担当する職員がいます。

本記事では、裁判所職員になるにはどのような手順が必要なのか、解説します。


はじめに - 裁判所で働く職員

裁判所職員とは、広義で言えば、裁判所に勤務する職員のことなので、裁判官も裁判所職員です。しかし一般的に「裁判所職員」というと、裁判官以外の職員(裁判所事務官、裁判所書記官、家庭裁判所調査官、営繕技官など)を指すことが多いようです。

本記事では、裁判官以外の職員のうち、裁判所事務官、裁判所書記官、家庭裁判所調査官になるための方法を解説します。

なお、営繕技官とは裁判所施設を整備・維持する技術職(技術系国家公務員)です。

裁判所職員の仕事内容

まずは、裁判所職員の仕事内容について簡単に触れておきます。

裁判所職員は、全国にある裁判所で裁判所運営に関わる事務作業などを担当する、司法をつかさどる裁判所に所属する国家公務員です。裁判所で働く職員の職種は、「裁判所事務官」「裁判所書記官」「家庭裁判所調査官」などがあります。

「裁判所事務官」や「裁判所書記官」の仕事内容

裁判所職員のうち、「裁判所事務官」として採用されると、大きく「裁判部門」と「司法行政部門」の2部門に分けられます。「裁判部門」では、裁判が円滑に行えるよう、裁判に関する事務作業を、「司法行政部門」では、人事・会計・庶務などをおこなっています。「司法行政部門」は、一般企業における事務職のような役割です。

裁判所事務官に採用され、一定期間在職すると、裁判所書記官となるための試験を受験することができます。

裁判所書記官になると、法律の専門家として固有の権限が付与され、調書作成や訴訟上の事項に関する証明、執行文の付与などを行います。

「家庭裁判所調査官」の仕事内容

「家庭裁判所調査官」として採用されると、各家庭裁判所で裁判官の指示の元、少年事件や家事事件に関する調査、報告を行うといった仕事を担います。

裁判所職員になるために押さえる3つのポイント

裁判所職員になるための3つのポイントについて解説します。

1)裁判所職員は三権分立の「司法」機関に所属する国家公務員です。


2)裁判所職員には、「裁判所事務官」、「裁判所書記官」、「家庭裁判所調査官」がいます。

3)裁判所職員の中でも「裁判所事務官」には、総合職と一般職の2種があります。

4)裁判所職員になるための採用試験受験に当たり、特別な必要資格等はありません。

裁判所職員になるには

裁判所職員になるためには、裁判所が実施する採用試験に合格する必要があります。国家公務員ではあるものの、特別職となるため、裁判所独自で採用試験を実施しています。

裁判所職員採用試験の採用区分は?

裁判所職員採用試験の採用区分は以下の通りです。

裁判所職員採用試験の採用区分

・総合職試験(裁判所事務官、院卒者区分・大卒程度区分)
・総合職試験(家庭裁判所調査官補、院卒者区分・大卒程度区分)
・一般職試験(裁判所事務官、大卒程度区分)
・一般職試験(裁判所事務官、高卒者区分)

裁判所職員の中でも、裁判所事務官になるには、総合職試験の院卒者区分・大卒程度区分、もしくは、一般職試験の大卒程度区分か高卒者区分を受験します。

また、家庭裁判所調査官補になるには、総合職試験の院卒者区分・大卒程度区分を受験します。

総合職と一般職に関して、両者の違いを分かりやすく言うと、求められる能力に違いがあります。総合職では政策の企画立案に係る能力を備えているか、一般職では事務処理に係る能力を備えているかを重視して採用します。

詳細な試験内容は、裁判所公式ホームページの試験の概要をご参照ください。

▼参考URL:裁判所|試験の概要
https://www.courts.go.jp/saiyo/siken/gaiyou/

裁判所職員になるための受験資格

裁判所職員採用試験を受験する際に、必須資格で求められるものはありませんが、ただし、院卒者区分は、大学院修了及び修了見込みの方が受験できます。

大卒程度区分に関しては、必ずしも大学を卒業していなくても、大学卒業程度の学力があれば受験する事ができます。

また、裁判所職員採用試験には年齢制限があります。

裁判所職員試験の年齢制限

総合職試験(院卒者区分) 30歳未満
総合職試験(大卒程度区分 21歳以上30歳未満
一般職試験(大卒程度区分) 21歳以上30歳未満
一般職試験(高卒者区分) 高卒見込み及び卒業後2年以内の方

裁判所職員の採用試験について

国家公務員である裁判所職員の採用試験は、国家公務員採用試験とは別で行われ、独立して実施されています。
そして、勤務地ごとに採用試験を行うのではなく、全国統一で実施されます。


裁判所職員採用試験の倍率は?

2019年度は全国で3,862名の申し込みがあり、そのうち最終合格者は130名なので、29.7倍もの倍率となっています。

裁判所職員採用試験の日程について

大卒程度区分と高卒者区分とでは別日程にて試験を行っています。大卒程度区分では例年一次試験は5月に、二次試験は6月に行われます。

高卒者区分は大卒程度区分よりおおよそ3か月程後に行われています。

2020年は、新型コロナウイルスの蔓延により、日程がずれており、大卒程度区分では8月9にt(日)に一次試験を行い、9月5日および9月7日から9月17日に二次試験、総合職では追加で10月9日(金)から10月13日(火)に三次試験が行われます。いずれも10月30日(金)に最終合格者発表が行われます。

一方、高卒者区分では9月13日(日)に一次試験が行われ、10月6日に合格発表。10月14日(水)から10月27日(火)に二次試験が行われ、11月13日(金)に最終合格者発表が行われます。

合格者発表は、いずれも通知による発表の他、裁判所ウェブサイトでも確認することができます。

裁判所職員採用試験の会場について

希望する勤務地に関係なく、全国の試験会場から都合の良い会場で受験します。

2020年度は札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、高松、福岡の8会場で試験が実施されます。

裁判所職員採用試験の試験内容について

総合職、一般職に共通して行われるのが、基礎能力試験(多岐選択式)、専門試験(多岐選択式および記述式・憲法)、論文試験(小論文)、人物試験(個別面接)です。

総合職では、さらに政策論文試験(記述式)、専門試験(記述式・民法、刑法、訴訟法)、二度目の人物試験として集団討議および個別面接が行われます。

裁判所職員の年収について

「裁判所事務官」や「裁判所書記官」の場合

「裁判所事務官」や「裁判所書記官」は、行政職(俸給表一)に当たる国家公務員特別職です。 給与水準は高く、勤続年数に合わせて一定の昇給があります。

参考として、裁判所事務菅の平成28年国家公務員給与等実態調査によると、平均給与は約41万円、平均年収は約667万円でした。

▼参考URL:平成28年国家公務員給与等実態調査(外部サイト)

「家庭裁判所調査官」の場合

「家庭裁判所調査官」は行政職(俸給表一)に当たる国家公務員特別職です。

人事院の平成30年国家公務員等給与実態調査の結果によると、院卒者の平均月収が31.4万円、大卒の平均月収が40.3万円です。

家庭裁判所調査官のボーナスは、期末・勤勉手当として月額の約4.5ヶ月分が支給されるので、単純に16.5ヶ月分の年収を算出すると、院卒は518円程度、大卒は665万円程度です。

▼参考URL:人事院|平成30年国家公務員等給与実態調査の結果
(https://www.jinji.go.jp/kankoku/kokkou/30kokkou.html)

まとめ

以上、司法機関である「裁判所」で働く国家公務員「裁判所職員」になるにはでした。

裁判所で活躍するのは裁判官や弁護士、検事だけではありません。裁判が円滑に進行するようにサポートしたり、そこで働く職員の経理面・人事面のサポートする人が必要になります。


特別な資格は必要ありませんが、法律やそれに携わる人と関わっていく仕事なので、法に興味のある方は、ぜひ裁判所職員を目指してみてください。

(作成日 2020年10月8日/ 最終更新日 2021年6月28日)

本記事は、2020年10月8日時点調査または公開された情報です。
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