日本の食の安全を守る国家公務員「食品衛生監視員」の仕事内容

「食品衛生監視員」は、日本の食の安全を守る重要な役割を担っている公務員です。日本には国家公務員の「食品衛生監視員」と、地方公務員の「食品衛生監視員」がいますが、本ページでは、主に国家公務員の「食品衛生監視員」の仕事内容やキャリアパスなどの基本的な部分について解説します。


食品衛生監視員とは?

「食品衛生監視員」とは、食品衛生法という法律に基づいて私たちが口にする食品の安全を守る公務員です。

国や地方自治体における保健所などでは、それぞれ必ず食品衛生監視員の資格を持つ人物を配置することが、義務付けられています。彼らが日々厳しくチェックや管理を行うことで、日本国内における食の安全が常に維持されることになるのです。

食品衛生監視員には「国家公務員」と「地方公務員」の2通りの働き方がある

公務員として働く食品衛生監視員の仕事は、主に厚生労働省が管轄する検疫所で働く「国家公務員」と、自治体の保健所などで働く「地方公務員」の2種類に分けられます。どちらに所属するかによって仕事内容も異なるので、事前によく理解しておきましょう。

国家公務員として食品衛生監視員について

国家公務員として検疫所に勤務する場合、輸入された食品のチェックや検査業務、海外から国内に病原体などを侵入させないようにするためのチェックを行う検疫衛生業務などが挙げられます。これらの業務の中で、必要とあれば行政警察活動を行うこともあります。ちなみに、行政警察活動とは、政府の機関による、公共の安全や秩序の維持を目的とする活動の総称で、警察活動の司法警察活動を除いたものが行政警察活動です。司法警察活動とは、犯罪捜査とその被疑者の検挙など刑事裁判に関する警察活動をいいます。

これら以外にも、国家公務員の「食品衛生監視員」は日本各地にある市場の検査所でチェックを行うことや、厚生労働省などで食品衛生行政に直接関わる業務もあります。平成23年の時点では、全国で約7,500人の任用資格を持つ食品衛生監視員がいるとされており、厚生労働省においても約400人が勤務しています。

地方公務員として食品衛生監視員について

一方、地方公務員の「食品衛生監視員」は、各都道府県の「保健所」で勤務します。保健所が担当エリアで営業する飲食店などの営業許可事務、その施設が衛生面や設備面で基準を満たしているかを指導する業務、食中毒などが発生すればその調査と被害拡大防止措置をする業務なども担当します。市民からの食に関する相談やクレームなどにも対応するので、まさにその地域の「食の警察」とも言えます。

国家公務員「食品衛生監視員」の仕事内容

現在の日本では、輸入食品は、一般的なものととして、ほとんどの家庭の食卓やレストランなどの料理に含まれ、その安全性は非常に重要なものになっています。

その輸入食品の安全を守るのが「厚生労働省」であり、そこに所属する「食品衛生監視員」がその役目をもち、輸入食品の検査を行う「検疫所」に勤務します。

「検疫所」とは、海外から持ち込まれた動植物や食品が、汚染されていないかを調査する「検疫」を行う日本の機関のことで、港湾の他、日本各地に100カ所以上設置されています。

そんな「検疫所」の仕事は大きく「輸入食品監視業務」と「検査業務」、更に「検疫衛生業務」という3種類の内容 に分けることができます。

輸入食品監視業務について

輸入食品の監視業務は、輸入食品をチェックする全国各地の機関から寄せられた届出書類の審査や、輸入食品の製造方法や使用されている添加物などが日本の安全基準に合致しているかを確認します。


基準を満たさない食品に関しては輸入業者などへの直接指導や、輸入を認めないといった措置をすることもあります。食品衛生監視員が自ら食品のサンプリングを集めに奔走することもあり、比較的、活動力の高い業務です。

検査業務について

検査業務は、検疫所で検査機器を用いて微生物検査や理化学検査などを行います。同時に食品に含まれる有害物質や添加物などについてもチェックしており、高い専門知識やスキルが求められます。

検疫衛生業務について

検疫衛生業務は、全国100ヶ所以上にも上る検疫所 で海外から日本にやって来た船や飛行機、その乗組員や乗客に対して感染症などを持ち込んでいないかチェックすることです。

海外で流行している感染症などを国内に広げないために非常に重要な業務で、万が一感染症やウィルスなどが見つかると国内に持ち込ませないように隔離したり消毒したりするなどの対応を行うこともあります。

地方公務員「食品衛生監視員」の仕事内容

地方公務員として自治体の「保健所」で勤務する場合、主に5つの業務を担当します。
ちなみに保健所とは、地域の衛生環境の向上を主な業務としている機関で、全国各地に設置されています。保健所では、母子手帳の発行やエイズ相談など、さまざまな業務を行っています。

実地調査

「実地調査」は、管轄する地域にある飲食店などが営業するために必要な食品の製造、販売における許可や届出に必要となる実地調査などを行います。食品衛生法に基づいてその飲食店の設備などが営業許可基準をクリアしているかを慎重に審査し、最終決定を行います。

営業施設における監視と指導

「営業施設における監視と指導」は営業許可を出した後における、その施設に対しての監視や指導の業務です。食品衛生監視員は直接施設内に立ち入って調査や検査などを行い、必要に応じて指導することもあります。食品に対して試験検査を行うこともあるため、必要な量の食品や添加物といったサンプリングを無償で行う権限も付与されています。

食品の調査

「食品の調査」は、サンプリングした食品を検査し、法律に従って製造されているかを確認する業務です。もし製造方法や添加物などに法令違反が見つかれば、その食品の販売を停止させることもあります。

食中毒等の調査

「食中毒等の調査」は、食中毒などが発生した際に、詳しい調査を行い、被害の拡大を防いだり再発防止策を練ったりする業務です。医師や関係者などと協力して調査を行い、飲食店や販売店の営業を停止したり食品の販売を中止させたりします。

食品に関する苦情や相談への対応

「食品に関する苦情や相談への対応」は、一般市民からの食品に対するクレームや相談などへの対応などの業務です。単純に話をするというだけではなく、深刻だと判断すれば原因を調査したり再発防止のための措置を行ったり、関係者や飲食店などに対して講習会などを行って食品に関する衛生の知識を高めるよう努めています。

食品衛生監視員が所属する厚生労働省という組織

厚生労働省は1官房11局6部2政策統括官からなる行政機関のひとつです。

厚生労働省に属する「検疫所」は、海外から感染症や病害虫などが持ち込まれたり、また持ち出されることを防ぐための「検疫」を行う機関です。人体の検疫は厚生労働省健康局、食品の検疫は医薬食品局食品安全部所管、それぞれの検疫所が管轄しています。また、動植物の検疫は農林水産省消費・安全局所管の植物防疫所(植物)及び動物検疫所(動物)が管轄しています。

保健所は、地域住民の健康や衛生を支える公的機関の一つです。地域保健法に基づいて都道府県、政令指定都市、中核市、特例市、その他指定された市(保健所設置市)、特別区が保健所を設置します。

保健所の業務は大きく分けると「対人保健」と「対物保健」に分けられます。

対人保健(住民に対するもの)

一般には保健指導または保健サービスと呼ばれ、保健所では災害医療や感染症、精神保健など、専門的・広域的な業務


対物保健(地域に関するもの)

一般に生活衛生と呼ばれ、食品衛生、獣医衛生、環境衛生及び医事・薬事衛生の4分野から成り立ってます。これらは営業許可や立ち入り検査、違反施設に対する営業停止など、いわゆる「権力行政」としての権限を多く持っています。

対応する法律により資格が規定されており、食品衛生監視員、狂犬病予防員、動物愛護担当職員、環境衛生監視員、医療監視員、薬事監視員がそれぞれの業務を受け持ちます。

食品衛生監視員の勤務地、転勤、異動、キャリアパス

国家公務員の「食品衛生監視員」の場合、全国各地にある検疫所で勤務するため2年から3年ごとに転勤 があります。様々な勤務地で実務を経験し、知識やスキルを高めていけば努力次第で昇進のチャンスもあります。

一方、地方公務員の「食品衛生監視員」であれば各自治体にある保健所や地方厚生局などで勤務することになります。どの勤務地に配属されるかによって勤務体系などは大きく異なるので、昇進のペースや勤務時間などは一概には言えません。これは国家公務員が勤務する検疫所でも同じことで、朝から夕方までという一般的な勤務体系のところもあれば、昼から深夜までというように交代制を採用しているところもあります。

特に海外からの玄関口とも言える空港にある「検疫所」は年中無休で稼働しているため、そこで働く国家公務員の「食品衛生監視員」は不規則な勤務体制となっています。

ただ、最近は特に忙しい検疫所の仕事を見直す傾向があり、よほど忙しい部署を除いては定時で帰宅できるケースもあります。中には休日出勤をしなければならないこともありますが、その都度基本給とは別に手当が支給されます。公務員はこういった部分で一般的な企業よりきちんとしているので、サービス出勤などは心配しなくても良いでしょう。

国家公務員か地方公務員かによってキャリアパスは大きく変わってくるので、食品衛生監視員の仕事に興味がある場合はよく調べておきましょう。

まとめ

カロリーベースで約6割を海外からの輸入食品に依存している食糧輸入大国・日本。今や輸入食品なくして国民の食生活は成り立たないものとなっています。その中で私たち日本国民が安心して食事をとるために、食の安全性の確保は不可欠だといえます。

輸入食品監視のスペシャリストとしての専門的知識も大切ですが、輸入業者と接する機会も多いことから、コミュニケーション能力や協調性が必要であり、とっさの時の的確な判断能力も求められます。国民の「食の安全」は自分が守るという熱い気持ちを持った人が求められています。

輸入食品が増加する中で、国民の「食の安全」を確保することが検疫所の役割であり、そこで働く食品衛生監視員に課せられた使命です。国民の食の安全・安心を守るために、食品衛生の専門知識と検査能力を有する食品衛生監視員は今後も絶対に必要な存在となるでしょう。

なお、食品衛生監視員になる方法については「食品衛生監視員になるには?」記事を参考にしてみてください。

> 食品衛生監視員になるには?

本記事は、2017年8月22日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

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