公正取引委員会は、内閣府の外局として位置づけられている独立した委員会です。「公取」と省略されて呼ばれることもあります。
公正取引委員会自体は、1人の委員長と4人の委員の計5人で構成されています。当然、たった5人ではマンパワー的に足りませんので、委員会を実務的に支えるのが公正取引委員会事務総局です。詳しくは、下記ページにてご確認ください。
今回は、そんな公正取引委員会事務総局の、「地方事務所」についてご紹介します。
各事務所の所在地について
公正取引委員会事務総局(以下、地方事務所との対比のため、「本局」といいます。)は、東京都千代田区の霞が関にあります。公正取引委員会事務総局に勤務する職員の大半がこちらに集結して公務に従事しています。
しかし、公正取引委員会の規制対象である事業者は、当然のことながら東京に集中して存在してくれているわけではありません。日本列島の北から南まで、日本各地に本店・支店を設置して事業活動を行っております。このような日本中に存在している事業者を取り締まるためには、東京を拠点にして活動するだけでは不十分なのです。
そのため、公正取引委員会は、各地方ごとに地方事務所を設けています。
こちらをご覧ください。
北から南にみていきますと、北海道事務所(札幌市)、東北事務所(仙台市)、中部事務所(名古屋市)、近畿中国四国事務所(大阪市)、近畿中国四国事務所中国支部(広島市)、近畿中部四国事務所四国支所(高松市)、九州事務所(福岡市)があることになります。
なお、沖縄には、内閣府沖縄総合事務局総務部公正取引室という名称の組織があります。他の地方事務所と名称の雰囲気がだいぶ異なっています。それもそのはずで、厳密にはこの沖縄の公正取引室は公正取引委員会事務総局内の組織ではなく内閣府の組織なのです。沖縄県における公正取引委員会の事務を処理するために、内閣府沖縄総合事務局に、「公正取引室」を置かせてもらっている、という建付けになっています。したがいまして、組織の差はあるものの、基本的には他の地方事務所と同様の業務を担っているということになります。
地方事務所の人事採用について
内定までのステップ
公正取引委員会事務総局の職員として採用されるためには、人事院の実施する国家公務員採用試験に合格する必要がありますが、それだけでは足りず、その後に各省庁の採用面接を受ける必要があります。
ここでいう各省庁の面接は、本局での面接を想像しがちですが、各地方事務所でも面接を実施しています。公正取引委員会のウェブサイトを見ていただければ分かりますが、地方事務所ごとにそれぞれ職員の採用をしております。
こちらのリンクの下部をご覧ください。
▼公正取引委員会 採用情報
http://www.jftc.go.jp/soshiki/recruit/index.html
具体的に、例えば中部事務所の採用情報ページを見てみましょう(他の事務所も基本的には同じですが、若干異なる点があるので、具体的に興味のある地方事務所がある方はそこのウェブサイトをご確認ください。)。
ここでは、採用内定までのプロセスとして「国家公務員試験受験→官庁訪問→内定」という大きなタイムラインが書かれています。
官庁訪問は、公取での就職を希望する方のために、実際に公正取引委員会で働いている職員と直接対話をし,公正取引委員会の業務や職員の生活などについて十分に知っていただくために実施しているものです。
また、官庁訪問の段階に進む前に、そもそもどんな業務なのかを一般的に知ってもらうべく、業務説明会というものも実施されています(業務説明会には、人事院が主催の官庁合同業務説明会と、公正取引委員会が主催する個別業務説明会の2種類があります。)
そのため、実際に真剣に就職を考えている人の動き方としては、「国家公務員試験受験→官庁合同業務説明会→個別業務説明会→官庁訪問→内定」という流れになろうかと思います。
これらの業務説明会と官庁訪問は、例えば中部事務所の採用情報ページにもあるとおり、本局以外に、地方事務所でも実施されています。地方事務所採用を望む方は、いちいち東京まで出る必要はありません。
採用対象者
地方事務所の採用情報ページでは、官庁訪問の対象者を、「国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)(行政)の第二次試験合格者」としています。
つまり、国家一般(かつての国家Ⅱ種)の方が対象になります。国家総合(かつての国家Ⅰ種)の方は、やはり官僚候補ですので、本局採用・勤務ということになります。
公取内部では、地方事務所で採用された方のことを「地方採用」と呼んだりもしています。
地方事務所での本局勤務の採用
ちなみに、近畿事務所の採用情報ページには「採用地は,近畿中国四国事務所(大阪市),本省(東京都)。」とあり、九州事務所の採用情報ページにも「(採用地は,九州事務所(福岡市)又は本局(東京都))」とありますとおり、地方事務所で採用されて本局に勤めるということも想定されています。
各地方事務所によっても、また年によっても状況が異なる可能性がありますので、お住いの近くの地方事務所に問い合わせてみるのが確実かと思います。きっと親切に相談に乗ってくれるはずです。
地方事務所勤務の職員と本局勤務の職員の関係
上記のとおり、採用方法には本局採用と地方採用の二つがありますが、地方事務所で働いている職員が全て地方採用の職員かというと、そうではありません。
いわゆるキャリア組と呼ばれる国家総合の方々は地方事務所にはいきませんが(代わりに他省庁や海外留学に行ったりします。)、本局採用の国家一般の職員は、地方事務所への異動があります。そのため、本局の職員であっても、「〇〇さんには△△事務所にいたときにお世話になった。」というようなエピソードを聞く機会がたくさんありました。
反対に、地方採用でいながら、本局で勤務している職員もいらっしゃいます。こちらも異動の一環です。本局での仕事はやはりハードですし、事務総局の幹部が勢ぞろいしているのも本局ですので、優秀な方が引き抜かれているという話も聞きました。私の印象としても、優秀な方が多かったように思います。
また、新人のときばかりではなく、管理職になって地方事務所の幹部として地方に行く方々もおられます。管理職くらいの期の方であれば、過去に地方から来ていた人と同じ部署で働いたことがあったりして、数年ぶりの再会ということもあり得ます。
何年たっても縁を感じることができるのは、なかなか得難い経験だと感じました。
このような本局と地方の交流ですが、私の周りでは、地方事務所に勤務していたときの思い出を楽しそうに語ってくれる方がほとんどでした。異動がなければ知り合うことがなかった地方事務所の職員との縁ができたり、地元で育った職員から素敵なお店を紹介してもらったりと、掛け替えのない時間を過ごしておられたようです。
ちなみに、「縁」繋がりですが、本局採用と地方採用とにかかわらず、最初は一緒に本局で初任者研修を受けることになります。そのため、本局で同じ釜の飯を食うことになり、この時期に「同期の絆」が形成されていきます。
本局採用の人が将来異動した際に久々に再会したり、本局と地方事務所合同の業務で再会したりと、なんだかんだで繋がり続けるのは同期ならではの良さだと思います。
地方事務所と本局との業務上の関わり方
上で述べたように、人事異動として地方事務所と本局が関わることがありますが、もちろん、業務上の関わりもあります。
例えば、地方に地盤を築いた事業者が行った談合事案などでは、どこに重要な証拠があるでしょうか?もちろん、その事業者の所在地にあります。
こういった事件を摘発する際には、その地方に行って事業所に立ち入り検査をし、証拠を確保し、その後も事業者の営業担当者など多数人から事情聴取をするなどしていく必要があります。
そうなると、東京にある本局の人よりも、近くに事務所を構えている地方事務所の人が主担当になった方が効率的なことは明らかです。
このため、例えば地方談合などの事件では地方事務所の職員が主担当になるわけです。ただ、公正取引委員会事務総局の職員は、あくまで「委員会」のサポート役です。最終的には、集めた証拠等を基にして、公正取引委員会にご判断をいただかなければなりません。
また、いきなり委員会での審議に行けるわけではなく、本局の事務総局の幹部のチェックも通らなければいけません。そして、委員や幹部がいるのは東京にある本局です。
そのため、事件の主担当となった地方事務所の職員は、決裁時期になるとかなり頻繁に東京に来ることになり、特に忙しい時期には東京で数週間ホテル住まいをして本局に通勤したりしていました。
また、例えば談合案件に対して排除措置命令等を出したところ、事業者側から争われた場合には、その後の審判・訴訟手続きにも地方事務所が関わることになります。そのため、審判期日・裁判期日には地方から上京して出席し、時には証人尋問を担当することさえあります。
委員の地方事務所出張
ときに、委員長や委員が地方事務所に出張することがあります。
そうなると、地方事務所は大騒ぎです。委員長、委員なんていう方々は、事務総局にとって最も位の高い方々ですから、やはり丁重におもてなしする必要があります。
とはいっても、委員長や各委員は、非常に良い方ばかりで、温かく、そして楽しく話をしてくださいます。そもそも、委員長や各委員は公取組織の外部出身の方が大半です。
そのため、委員側にしてみても、長い間上下関係にあった部下、という感覚ではなく、自分を新たに温かく出迎えてくれた組織、という感覚があるのかもしれません。
まとめ
今回は、公取の地方事務所について、その採用事情や本局職員との関係・関わり方について見てきました。
地方採用でも東京に出張する機会もありますし、異動して東京勤務、ということもあり得ます。
基本的には地元で働きたいけど、そういう刺激も欲しいな、という人はぜひ、選択肢の一つとして入れてみてはいかがでしょうか。
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