公正取引委員会事務総局とは?
公正取引委員会は、委員長と4人の委員で構成される、一般に「行政委員会」と呼ばれる合議制の組織です。委員長及び委員は、財務官僚、裁判官、検察官、学者、公正取引委員会事務総局の出身者で構成されます。
この行政委員会は、いわゆる「上の組織」がなく、どこにも指揮命令されず、独立して権限を行使することができます。
とはいっても、委員会自体はたったの5人で構成されています。これでは、たくさんの事件を扱うことはマンパワー的に不可能です。
そこで、公正取引委員会「事務総局」と呼ばれる組織が委員会の下に置かれており、実務面でのサポートをしています。職員数は、平成28年度末の時点で840名になっています。
公正取引委員会事務総局の取り扱い業務とは?
公正取引委員会は、独占禁止法を運用するために設置された機関です。独占禁止法は「どっきんほう」という略称で呼ばれることが多いのですが、要は市場の公正な競争を害する行為を防止・是正することが目的の法律です。
カルテル、談合を取り締まったり、大企業同士が企業合併するなどして「一強」になってしまい、業者同士の競争がなくなってしまわないよう事前に審査したりしています。
具体的にいうと、例えばある地方公共団体がある施設の建築をしようとしているとき、気になるのは、誰が一番安く丁寧にやってくれるかです。業者側も、自分が受注するためには、ほかの業者よりも秀でている部分をアピールして仕事を取らなければ仕事が
取れず、売り上げが出ません。
そういう状況では、各業者は、「人員の多さ、仕事の早さ」をアピールしたり、「仕事のクオリティ」をアピールしたり、「価格の安さ」をアピールしたりと、様々な方法で他の業者よりも優秀であるように努めます。
こういった業者側が努力して競うことを「競争」と呼ぶわけですが、ある業者が、「今回はうちが一番安い値段であの地方公共団体にアピールできるよう、裏で調整させてもらえないか。次はB社、その次はC社、その次はD社が最安値になるように、うちは高値で設定するから。」と申し述べ、それにほかの業者も同意したらどうなるでしょう?彼らは価格や品質、納品速度などで努力する必要なく仕事を確保できることになります。それも、そんなにディスカウントせずに済んだ値段で。
公正取引委員会は、こういった競争に悪影響を及ぼす行為を防止・是正すべく、このような違反行為に対して是正させる命令(排除措置命令)を出したり、課徴金を課したりする業務を担っています。
その他、独占禁止法の下位法である下請法の運用も担当しています。下請法とは、大きな規模の会社が下請けを担当してくれる小さい会社に対して、既に注文をしておきながら急に取り消して返品してきたり、当初提示していた価格を突然理由もなく変えたりするなどして下請会社に不利益を与えるのを防ぐ法律です。公正取引委員会の重要な役割の一つになっています。
公正取引委員会事務総局の人員構成
公正取引委員会事務総局の人員構成は、様々です。大半は、いわゆる国家公務員試験(国家総合、国家一般(大卒・高卒))の合格者で構成されています。かつては、国家公務員Ⅰ種からⅢ種と呼ばれており、内部でも未だにそういう呼び名で呼ばれています。
国家総合は、かつては国家Ⅰ種と呼ばれる最も難関な試験を通った者で、いわゆるキャリア組になりうる人達を指します。昔は大学の新卒が多かったのですが、ロースクールができてからは、ロースクール出身の人も増えてきています。
国家一般(大卒)は、かつては国家Ⅱ種と呼ばれていました。国家Ⅰ種と同じようなキャリアコースは歩めませんが、勤続年数を重ねていけば、中間管理職になることができます。完全な私見ですが、個人の資質的には、Ⅱ種の人にもⅠ種の人より秀でている人が何人もいらっしゃいました。
国家一般(高卒)は、その名の通り、高卒の人でも受けることができる試験です。そんな若い人もいるのか、十代にして国の機関で働いているのか、と大変驚きました。
また、資格としては同じですが、他の省庁から人事交流という形でいらしている方々もいます。省庁が違うと雰囲気もかなり違うようで、話を聞くのは非常に面白いです。
その他、エコノミストとして経済学者を雇ったり、電子証拠の収集解析を担当する能力のある人を監査法人から雇ったりもしています。エコノミストの主な役割としては、経済分析を担当することです。経済分析は、平成28年度の時点では、主として企業結合の分野で利用されています。例えば市場シェア10%の企業と20%の企業が合併して30%の規模の会社になったとき、市場にどんな影響があるのかが重要になります。将来のことなので検証が困難なのですが、そこを合併前にいろいろな手法・計算を用いて検討するのが経済分析です。こういった高度な検証が必要なため、エコノミストが活躍する場でもあります。
また、法律を扱う仕事でもありますので、法律家の活躍する場でもあります。例えば、検察庁から出向できている人がいたり、弁護士事務所勤務をしていた弁護士がきていたりします。これらの人々は「任期付き」の公務員という形になっており、通常は2~5年で任期が切れます。ただ、職務内容や職務環境を気に入り、弁護士事務所を辞めるなどして公正取引委員会事務総局の職員に転職する人もいます。
審査局の業務内容
実は公正取引委員会事務総局の業務内容は多岐にわたり、所属部署によって大きく変ります。大きく分けると、総務や人事を司る「官房」と、企業結合やガイドラインの作成改訂を担当する「経済取引局」と、談合やカルテルの摘発を行う「審査局」の3つに分かれています(おおざっぱな説明ですので、詳細は、公正取引委員会の組織図等をご覧ください。)。
筆者が所属していたのは審査局でしたので、ここで少し審査局について詳しく述べていきます。
組織図からも分かる通り、審査局は「管理企画課」の下に6つの組織、「第一~五審査長」の下に「第一~四上席審査官」、「訟務官」という組織があります。
「第一~五審査長」と「第一~四上席審査官」は、「原課」と呼ばれており、五人の審査長と四人の上席審査官が率いる9つのチームがあります。そして、これらの各チームが独立して案件を担当しています。
つまり、何らかの端緒により違反している可能性を掴んだ場合、どこかの原課がその案件を担当することになります。担当課は、事前の調査や立入検査の指揮を担当したり、排除措置命令等を作成したり、命令後に企業側から争われた場合にはその対応もする、といった感じで、本当に全ての手続きを担当する、という感じです。
ただ、命令後に企業側から争われた場合には、裁判所に行かなければなりません。企業側には勿論弁護士が付きます。そこで、裁判で争うための専門チームとして、「訟務官」が設けられており(昔は審判上席という名前でしたが、法改正により審判が廃止されて裁判をしなければならなくなった関係で、名称が変更されました。)、この部署では争われてしまった案件の訴訟対応をしたりしています。
管理企画課は、その他の審査に関する業務を担当する、という感じであり統一的に説明しにくいですが、いわゆるタレコミがあった場合にそれを精査する部署があったり、審査に関するガイドラインの作成等を担当する部署があったり、課徴金減免制度を担当する部署があったりします。
公正取引委員会事務総局職員の一日
09:30 出勤 メールチェック
10:00 課内のチームで打ち合わせ
11:00 打ち合わせに従いTo doリスト、スケジュールの作成
12:00 昼休み
13;00 To doの作業を開始(証拠データの確認、ヒアリング事項の作成、内部稟議用資料の作成)
15:00 関係者とのヒアリング
17:00 上司を交えた報告、今後の進行の決定
18:15 定時
昼食についての補足
公正取引委員会事務総局は、霞が関駅が最寄りで、日比谷公園の目の前にあります。逆に言えば、お店が立ち並んでいるエリアにないので、昼食時には、お弁当を作って持参してくるか、地下の食堂で食べるか、地下のコンビニか弁当屋さんで買って食べるか、他の省庁の食堂まで少し出かけるか、虎ノ門や日比谷まで遠征して1時間きっかりに間に合わせるべく急いで食べて帰るか、といった感じです。
帰宅時間についての補足
私の部署では、比較的、定時すぐか、定時の1~2時間後に帰る人が多かったように思います。しかし、所属課の長の個性によっても、帰りやすさが違ったりします。特に公務員は2、3年で異動することが多いため、同じ部署でも上司が異なれば帰宅時間が異なる、という傾向はみられました。
ただ、そこはやはり国家公務員です。ほとんどの上司は部下の働き方に注意を配っており、やむを得ないときは残業代を払って残ってもらいますが、残業時間に偏りが出ないように配慮しています。
有給休暇制度、その他のワークライフバランスに関する試みについて
「年休」と呼ばれております。残念ながら、全ての日数を消化できる人はおらず、翌年に繰り越している人がほとんどでしたが、上司もなるべく多く休みをとらせるよう呼びかけをしていました。
特筆すべきは、一日休、半日休にこだわらず、時間で休みが取れたことです。例えば、ちょっと用があって一時間遅れてしまう、とか、今日はほんの少し早く帰りたい、というときは、定時の前後に一時間休みを付けることができます。
また、友人や親が東京に遊びに来ているとか、もうすぐ地方に異動してしまう同期とお別れランチがしたい、といったときには、お昼休み周りに1時間か2時間の年休を付ければ、ゆっくりランチを楽しむことができます。
その他、夏休みは3日の夏季休暇がありますが、これに年次休暇2日を合わせてとり、土日を含めて9日間の休暇が取れるように配慮する試みもありました。
その他、上司が月に一回はテレワークをすることや、夏場は一時間早く出勤して「ゆう活」すること、プレミアムフライデーを楽しむこと、など、話題になった省庁の取り組みは一通り取り入れられています。
まとめ
以上のように、ライフワークバランスもすごく考慮された良い職場であり、仕事内容も市場の公正な競争を確保するという大義の下に動くダイナミックな業務です。大型家電量販店を相手取ったり、近時は芸能界にも切り込むといった華々しい報道もありますし、その存在感も次第に増してきています。
ぜひ、選択肢の一つとして入れてみてはいかがでしょうか。
コメント
コメント一覧 (2件)
下請法を勉強させて頂きましたが、それには該当しませんが、私の場合は少し仕事をしている程度ですが、仕入先の会社が今月大きな企業と合併し、先日発注したところ今まで仕入れていた価額の2割7分強増しであれば出荷しますがとの事でした(お得意様えの出荷は保留中です)・・・・・以上のような事案でも相談に乗って頂けますか?乗って頂けるようでしたら熟慮したいと思いますが如何でしょうかお尋ねします。宜しくお願い致します。初めての送信ですが?
コメントありがとうございます。
申し訳ございませんが、弊社はメディアとして記事を提供しており、個別のご相談についてはお答えできない場合がございます。(今回についてはお答えが難しいです。)