幹部自衛官の養成教育機関「防衛大学校」に入学・入校するには?

「防衛大学校」は、陸上自衛隊や海上自衛隊、航空自衛隊の幹部自衛官になるための教育訓練を行う学校です。

本記事では、「防衛大学校」とはどのような学校なのか、また、「防衛大学校」へ入学(入校)する方法などについて解説します。


はじめに - 「防衛大学校」とは?

まずはじめに、「防衛大学校」について説明します。

「防衛大学校」は、陸上自衛隊・海上自衛隊・航空自衛隊の幹部自衛官を目指す人のための教育訓練を行う学校であり、それに必要な研究等も行っている、防衛省の施設等機関です。

略称は「防大」または「防衛大」であり、本校舎は神奈川県横須賀市にあります。

▼参考URL:防衛大学校公式ホームページ
https://www.mod.go.jp/nda/

幹部自衛官になるための方法は大きく3つある

自衛隊における幹部とは、准尉~幕僚長までの階級に当たる隊員のことを指し、17ある階級のうち8階級が幹部の分類に属します。

指揮官として部隊を統率する幹部は、強い責任感と実行力が常に求められ、リーダー的存在として部隊にはなくてはならない存在します。2016年3月31日現在、陸海空合わせた自衛官の総人数230,000人のうち、幹部自衛官は約42,000人、全体の約2割を占めています(防衛省公式HPより)。

そんな幹部自衛官になるための方法には、大きく分けて以下の3つの方法があります。

1)自衛隊入隊後、部内幹部候補生採用試験に合格すること
2)一般幹部候補生試験に合格すること
3)防衛大学校(または防衛医科大学校)に入学(入校)すること

幹部自衛官は、努力次第では中卒でも大卒でも学歴に関係なく、言ってしまえば誰でも目指すことが可能です。

しかしながら幹部自衛官になるための道のりは長く、一筋縄ではいかないもの。一方で若いうちから「幹部自衛官になる」という明確な目標があるのであれば、「防衛大学校」に入校することが一番の近道と言えます。

「防衛大学校」に入学(入校)するには?

「防衛大学校」に入学(入校)するためには、防衛大学校学生採用試験(入試試験)に合格する必要があります。入校後は国家公務員として「課業(業務)」を務めるため、いわゆる国家公務員試験に相当します。


この試験は、日本国籍を持ち、高等学校を卒業した人であれば誰でも受験可能ですが、21歳未満(すでに自衛官である者については、23歳未満)という年齢制限があります。

防衛大学校学生採用試験(入試試験)には、「一般試験(前期・後期)」の他に、「推薦採用試験」と「総合選抜採用試験」の合計3種類あります。

1)一般(前期・後期)
2)推薦採用試験
3)総合選抜採用試験

いずれも学力試験、口述試験、身体検査などがありますが、総合選抜では加えて適応能力試験や基礎体力試験などが設けられています。

試験を経て、無事合格となると、防衛大学校本科学生として採用され、入校します。国家公務員として学生手当といういわゆる給料をもらいながら、定められた訓練課程・教育課程を経て、幹部の道へと進みます。

なお、試験内容をはじめとした情報については、一般(前期・後期)・推薦・総合選抜と、それぞれの方法で時期や願書の締切なども異なるので、ご自身の目で必ず確認されるのをおすすめします。

▼参考URL:
防衛大学校|学生受験要項
https://www.mod.go.jp/nda/admissions/requirements.html

防衛大学校|防衛大学校入試の全体像
https://www.mod.go.jp/nda/admissions/examination.html

「防衛大学校」の採用試験のうち、「一般試験」について

「防衛大学校」の採用試験のうち、「一般試験」は、いわゆる一般的な大学入試などのような試験です。

第1次試験は学力試験と小論文試験があり、学力試験はマーク式です。第2次試験では、個別面接と身体検査が行われます。

「防衛大学校」の採用試験のうち、「推薦採用試験」について

「防衛大学校」の採用試験のうち、「推薦採用試験」は、在籍する高等学校からの推薦による試験です。

推薦を受けるには条件があり、成績優秀かつ生徒会活動、部活動等で顕著な実績を収めた学生が対象です。

「防衛大学校」の採用試験のうち、「総合選抜採用試験」について

「防衛大学校」の採用試験のうち、「総合選抜採用試験」は、自己推薦とも呼ばれ、各種活動を主体的に取り組み、その活動を通じて学んだことを防大生及び幹部自衛官として活かすことのできる者が対象です。

「防衛大学校」側は、大学教育を受けるに足る一定以上の学力の有無を評価するとともに、校内での宿泊を通じて能力・資質・特性を多角的・総合的に評価します。

「防衛大学校」のオープンキャンパスについて

「防衛大学校」では、年に数回のオープンキャンパスはもちろん、春から夏の一定期間において、防衛大学のキャンパス見学もできます。


「防衛大学校」への入校を希望している人で、構内の様子を実際に肌で感じたいという人は、ぜひ申し込んでみてはいかがでしょうか。

なお、入学試験の募集要項やオープンキャンパス情報は、随時公式ホームページで確認することができます。

▼参考URL:防衛大学校公式ホームページ
https://www.mod.go.jp/nda/

「防衛大学校」の特徴6つ

次は、「防衛大学校」の特徴について説明します。

「防衛大学校」という名前は聞いたことはあっても、詳しいことまでは分からない人も多いはず。ここでは基本的な概要についてご紹介していきたいと思います。

「防衛大学校」の特徴その1:学費免除・手当支給の4年生の大学校

防衛大学校は神奈川県横須賀市に位置する、幹部自衛官を目指す人のための4年生の大学校です。休日に横須賀の街を歩いていると、必ずと言っていいほど防衛大学の制服を着た学生をよく見かけることがありますが、防衛大学は風光明媚な横須賀の中でも景色が一望できる丘の上に所在しています。

防衛大学校は、将来自衛官を希望する若者が目指す大学校です。防衛大学校の募集要項によると、入学資格は18-21歳までの男女が指定されています。またすでに自衛官であったとしても、23歳までなら受験することが可能です。

防衛省に属する機関の一つでもある防衛大学校では、学生は「特別職の国家公務員」という位置付けとなります。そのため、授業料をはじめ、衣類、食事、居住などに掛かる費用は国費でまかなわれ、これに関わる自己負担はゼロ。また毎月学生手当として103,000円、さらには6月・12月に期末手当が支給されます。勉学に励みながら手当が支給されるというのは、他の一般の大学と大きく異なる特徴と言えると思います。

そんな防衛大学校では、幹部としてのキャリアが確実に積めることに加え、通常の大学同様に学士の称号も授与されます。ちなみに2017年4月5日現在、防衛大学校には2017名の学生が在籍しています。

「防衛大学校」の特徴その2:4年間の集団生活で、幹部自衛官としての資質を磨く

晴れて「防衛大学校」に入学すると「学生舎」と呼ばれる学生寮で4年間、仲間と衣食住を過ごすこととなります。

寝室、自習室、シャワー室、洗濯室など、様々な空間を共有することは、集団生活の基礎を確立するだけでなく、将来幹部自衛官として必要となる資質が磨かれるのだそうです。

それでも、規則正しい生活を強いられることになる防衛大学での生活は、最初は戸惑う学生も多いのだとか。また限られた時間で、与えられたタスクをこなさなければならない時間管理の難しさもあってか、苦労して入学した防衛大学を1年足らずで後にする学生も少なくないそうです。

しかし日を重ねるごとに、自律心が養えたり、仲間との絆が生まれたりと、大変なこと以上に得るものがたくさんあるということも事実。部隊を統率するために必要なハートの強さは、厳しいながらも価値のある防衛大学での生活によって培われる、と言っても過言ではありません。

「防衛大学校」の特徴その3:2種類の専攻と14の学科がある

防衛大学の入学試験時には、人文・社会科学と理工学の2種類の専攻のいずれかを選択し、入学の日を迎えることとなります。そして入学してから1年間は、教養科目を中心に学んだり、陸海空の研修に参加したりと忙しい毎日を過ごします。そして1学年が終わりに近づく頃、人文・社会科学は3学科の中から、理工学は11学科の中から一つ選び、専門分野についてさらに詳しく学んでいきます。

もちろん4年間を通して、戦闘訓練や射撃訓練といった自衛官として必要な基礎も習得します。自身が興味を持つ分野と幹部自衛官として必要な知識の両方が学べるのは、防衛大学の魅力の一つでもあります。ちなみに、実際の訓練項目は週に数時間と限られているものの、7月の定期訓練時期となると、1ヶ月間は訓練漬けの毎日となります。

「防衛大学校」の特徴その4:2年時に陸海空のいずれかを選択

幹部自衛官としての資質を学ぶ防衛大学ですが、入学したての頃は、実は全員が陸海空のどれにも属していないのだそうです。

先述した通り、入学してから1年間は教養科目を中心に学んでいきますが、2学年に進級するタイミングで、自身の希望と照らし合わせながら陸海空のいずれかが決定されます。

陸海空のどれに属すかは、基本的に自衛官として退職するまで変わらないもの。だからこそ自身の区分が決定するこのタイミングは、大学生活の中でもインパクトの強い瞬間でもあるそうです。

「防衛大学校」の特徴その5:留学制度や留学生受け入れによる国際交流がさかん

海外の士官学校への留学制度も充実している防衛大。アメリカ、イギリス、インド、シンガポール、韓国などの士官学校へ、1-3週間の短期または約4ヶ月の長期で留学することができます。また主に東アジアを中心に、留学生の受け入れもさかん。2017年4月5日現在では、留学生は92名在籍しており、全体のおよそ5%を占めています。


そんな防衛大では、授業という限られた時間だけでなく、朝から晩まで、毎日の生活を留学生と共に過ごします。こうして当たり前のように行われる国際交流は、幹部自衛官に求められる国際的視点、さらにはコミュニケーション能力の育成に重要な役割を担っています。

「防衛大学校」の特徴その6:専門分野に磨きをかけるため、研究科に進む卒業生もいる

防衛大を卒業する学生のうち約9割は幹部自衛官としてのキャリアを積みますが、残りの約1割は、さらに専門的な知識を習得するために、大学院に相当する「研究科」に進むそうです。

研究科は「総合安全保障研究科」と「理工学研究科」の2つの学科で構成されており、装備開発や安全保障のための実践的問題解決といった分野を学ぶこととなります。前期・後期の過程が終了後、論文の審査と試験に合格することで修士さらには学士の学位が授与されます。

「防衛大学校」の女子学生について

最後に、「防衛大学校」の女子学生について説明します。

「防衛大学校」の学生は、圧倒的に男子の割合が多く、男女比は9:1、もしくは8:2程度であり、圧倒的に女子学生の数が少ないです。1学年の数は約480名、うち、女子学生の募集定員は60名程でした。

ですが、令和3年度入学の採用試験から、防衛大学校本科学生(女子)募集定員が10名増員され合計70名となりました。

「防衛大学校」は自衛隊員になるための学校であり、厳しい訓練を行うので、男性の方が有利となる場面は多々あります。ですが、その中で活躍している女性も数多くいますし、「防衛大学校」には女性の教官もいます。

昔とは異なり、今では多くの女性が自衛隊員として各地で活躍しています。海外派遣されて発展途上国で任務にあたる女性自衛官も少なくありません。

それは幹部自衛官も同じで、「女性だから幹部自衛官になれない」という時代ではありません。実際に、女性が自衛隊員として活躍できるよう、自衛隊の組織としても、女性が仕事を長く続けられるための取り組みに力を入れ始めています。

「防衛大学校」の講義・訓練について

「防衛大学校」では、体力的な訓練ばかりではなく、多くの大学のように「教養科目」や「基礎科目」などの授業を行います。国際社会で活躍するため、英語・ドイツ語・フランス語をはじめとした「外国語」の科目も必修です。

訓練では、「共通訓練」と呼ばれる各個戦闘訓練、小銃、野外勤務などの訓練のほか、陸上要員訓練、海上要員訓練、航空要員訓練等が行われます。

詳しくは以下の記事をご参考ください。

》防衛大学校の学生の仕事内容について - 防衛大学校での1日

将来の幹部自衛官を育成するための学校である「防衛大学校」通称「防衛大」。ここに所属する学生の身分は、「国家公務員」であり、学費は無料、給料を支給されながら勉学に励むことになります。今回は、「防衛大学校の学生の1日」についてまとめました。

「防衛大学校」の給料である「学生手当」について

通常、学校といえば学費を払って勉強することろですが、「防衛大学校」では学費はかからず、「学生手当」が支給されます。

詳しくは以下の記事をご参考ください。

》【学費無料】防衛大学校の学生の学費・給料・ボーナス・寮生活まとめ

学生だけど公務員、という身分で給料が支払われる「防衛大学校」の学生の気になる初任給やボーナスなどの給料情報をはじめ、寮生活となる学生生活について、食堂の利用などの福利厚生も含めてご紹介します。朝6時にラッパの音で一斉起床するところから始まる、防衛大生特有の共同生活環境についても解説します。

まとめ

以上、幹部自衛官の養成教育機関「防衛大学校」に入学・入校するには?でした。

一般の大学や短大とは形態が違うので、イメージしにくい部分もあるかもしれませんが、将来は確実に幹部自衛官として働きたいと考えているのであれば、「防衛大学校」に入学・入校することは、その一歩に繋がります。


「防衛大学校」に入学する意思がある方は、ぜひ本記事を参考にしてください。

本記事は、2017年4月13日時点調査または公開された情報です。
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