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【目指せ!教授】大学教員になるために知っておくべき知識

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教員の新たな職階と役割

大学にお勤めの方以外では、大学における教職員の構成やその役割などを明確に知り得る方はなかなかいないかもしれません。近年、大学教員も名称が変化してきており、以前とは異なるイメージになってきています。教員の資格審査や規定なども従来の学校側に裁量権があったものから、今では文部科学省の厳しい管理のもとで認可されるようになってきています。例えば、助教授といわれた職階は、もはやなく准教授となり、助手は助教という名称に変化してきており、一般的には未だに「助教授?」「助手?」と呼ばれる方もいます。

学校教育法においては、教育機関を大きく分けて2つに分類しています。教員の職階の体系は大きく分けて、高等教育以外の教員(就学前教育、初等教育、中等教育及び特別支援教育)の体系と、高等教育を行う学校として「大学(大学院、短期大学を含む)」及び「高等専門学校」における体系の2種類が定義づけられています。この他にも、大学共同研究機関法人などや、学位を取得できる省庁大学校も該当するようです。さらに専門学校の専門課程も高等教育機関として位置付けられることもあります。

准教授と助教はどっちが上?大学の職階を押さえよう

大学などの高等教育機関における主な職階は、学長、副学長、学部長、教授、准教授、講師、助教、助手などが一般的です。また大学によっては、「特任講師」や、助手より下位に位置する補助員として「教務補佐員」、「教務助手」、「実務助手」といった名称の職員が置かれる場合もあるほか、理事長、副理事長なども学校経営者として存在していますが、これらは学校教育法に定められた職階ではありません。

ちなみに、高等教育機関というのは、大学、大学院、短期大学、高等専門学校、専門学校(専修学校専門課程)が該当します。

高等教育機関における授業担当の職階

高等教育機関における授業は、主に教授・准教授・講師が担当することになります。一方で、演習、実験、実習は、教授、准教授、講師の指導の下、実際は助教が担当することもありますが、あくまでも基礎的な実験や演習内容においてのみといえます。卒業研究や卒業論文の指導は教授、准教授、講師が担当し、大学院などの教育は、学校によっても異なりますが、教授、准教授を中心として、一部を講師が担当するということも多いようです。

従来の大学教員規定によると、大学の教職員のうち教員の基本的な職は、教育研究を主たる職務とする教授と准教授の2種類の職が規定されており、大学の判断として講師を置くことができるようになっていました。そして従来までは、理学系、医学系、工学系などの分野においては、実験や装置などの管理や教授、准教授のサポートをするための「助手」が置かれており、特に医学系では、「助手」の割合が50%ほどにも上っているなど、その存在の明確化や位置づけが問題となっていました。この「助手」という立場は結構曖昧なものとなっており、教育研究を主たる職務とするのか、教育研究補助を主たる職務とするのかが明らかになっておらず、学校や教授などの都合によって何でもさせられているという不合理なものでした。そこで、文部科学省ではこの制度を改正し、この「助手」の役割を明確にし、新たに自ら教育研究を行うことを主たる職務とする「助教」を位置づけ、今後の大学における教育研究を主たる職務とする職として「教授、准教授及び助教」の3種類の職が定義付けられています。また、教育研究の補助を行うことを主たる職務とする職として「助手」を定めるとしていますので、「助手」は消滅した訳ではありません。

大学教員になれる人の規定数

大学の場合では、経営上専任教員を単純に増やせない事情もあり、大学経営者によっては、厳しい管理体制を敷いている学校も多数あります。大学教員の数は、文部科学省によって適正管理されており、大学の都合で教員の数を制限することはできません。

大学の教員数については、大学設置基準が明確に定められており、「大学を設置する上での必要な最低限の基準」(大学設置基準第1条)を定めた省令といえます。必要最低限度の基準ですので、その基準より低下させることはできないため、その基準以上を目指すことが必要となります。

大学設置基準の第13条では、「大学における専任教員の数は、別表第一により当該大学に置く学部の種類及び規模に応じ定める教授等の数(共同学科を置く学部にあっては、当該学部における共同学科以外の学科を一の学部とみなして同表を適用して得られる教授等の数と第四十六条の規定により得られる当該共同学科に係る専任教員の数を合計した数)と別表第二により大学全体の収容定員に応じ定める教授等の数を合計した数以上とする。」とされています。つまり「学部の種類と規模に応じた教授の数」と、「大学全体の収容定員に応じ定めた教授等の数を合算した数以上の教員」が必要になります。

例えば、ある大学(A)は収容定員が1,200人で、1学部(2学科)の構成それぞれに定員が100名とした場合に、その学科が社会学科、経済学科、経営学科の構成であった場合の教員数は次のような計算となります。

【ABC大学】
・1学部2学科 入学定員200名、収容定員 800名
(内訳)
・経済学科入学定員100名、収容定員 400名
・経営学科 入学定員100名、収容定員 400名


の場合
(経済関係10名 + 経営学関係10名) ÷ 2 = 10名
別表2の収容定員に応じ定める専任教員数から、22名

→ 合計 22名

別表第一 学部の種類及び規模に応じ定める専任教員数 (第十三条関係)
イ 医学又は歯学に関する学部以外の学部に係るもの

地方公共団体の総職員の推移

別表第二 大学全体の収容定員に応じ定める専任教員数 (第十三条関係)

大学全体の収容定員に応じ定める専任教員数

一応これらが、基本的な計算のもとになるのですが、このほかにも「教職課程」などを設置していれば、さらに相応な人員数が必要になりますし、総数うちの半数は教授であることが規定されていますので、結構面倒な調整が必要になります。

また、学校によって教員が担当する時間数(コマ数)がおおよそ規定されていますので、設定される授業や講義数をその人数で担当しなくてはなりません。不足する分は非常勤講師などで埋めていくことになります。

大学経営上における都合で生まれる職階や役割

通常、講師は教授や准教授の下という職階となっており、その講師にも専任と、必要なコマだけの授業を行う非常勤講師がいます。常勤の講師は「専任講師」や「常勤講師」と呼ばれ、非常勤講師は「兼任講師」や「嘱託講師」とも呼ばれています。常勤講師と非常勤講師は、大学の教員として常に勤務しているか否かと捉えられている方も多いのですが、専任講師は昇進という道がありますが、非常勤講師の場合は昇進という道は用意されていません。つまり、努力によって大学教授までの道が開かれているかどうかということや、非常勤は複数の大学で教鞭をとらなくては生活が維持できないといった厳しさがあります。

また、近年「任期付」の教員やポスドクといった研究者の採用が多くなってきています。
「任期付」に関しては、「大学の教員等の任期に関する法律」というかたちで規定されており、任期付の教員を任用する場合においては、「先端的、学際的又は総合的な教育研究であることその他の当該教育研究組織で行われる教育研究の分野又は方法の特性に鑑み、多様な人材の確保が特に求められる教育研究組織の職に就けるとき。」、「助教の職に就けるとき。」、「大学が定め又は参画する特定の計画に基づき期間を定めて教育研究を行う職に就けるとき。」といった場合に任期を定めることができるとされています。

つまり、「多様な人材の確保が特に求められる教育研究組織の職」か「期間を定めて教育研究を行う職」もしくは「助教」の職を基本としていますが、実際は少々事情が違っているようです。多くの大学で採用されている「任期付」は、人件費削減対策として多用されており、その現実が教員採用を一層狭き門としてしまっています。

ある大学では、採用時に「任期なし」の条件だったものが、採用された瞬間に条件が変わり、「任期付」になってしまったとか、採用10年目に急遽「任期付」となってしまったという例も聞こえてきます。こういったケースの多くは、経営者サイドの思惑が関係しているようです。一度安定感を持つと余計なことをしたがらなくなる教員は少なくないため、常に競争原理が働く学生募集関連業務やオープンカレッジなどに対して全く協力姿勢をもたない教員などは、学校側もやる気のあるフレッシュな教員に入れ替えていきたいという経営視点での判断によるものと判断できます。学生には人気がなく、講義の履修数も伸び悩み、常に少人数の授業となっている場合には、授業単価の引き下げを図るといったことも数多く耳にします。単純に履修数が人気のバロメータとなるか、であるとか、必ずしも少人数の科目が問題とはならないと思いますが、常に問題意識を膨らませる経営サイドが、我慢の限界を超えてしまうこともあるのは事実でしょう。

この「任期付」は、教員を常に不安定な状況に置くことになるため、多くの学校にとっては、ある意味でのリスクヘッジになっているとはいえ、多くの問題点が指摘されています。

また「ポスドク」も同様です。ポスドクとは「ポストドクター」の略であり、博士号取得している若手研究者のことを指し、「期間限定研究者」というポジションを示しています。

米国などにおいて、研究者の身分としては広く認識されており、重要な次世代の研究者として期待されています。実際のところは、余る博士取得者の就業先を確保するといった趣旨もあるようですが、ポスドクは、研究結果を生み出すことで給料を得ることになるため、「研究専従者」として働く研究者という位置づけとなります。しかし、福利厚生の面でも正規雇用との差が大きく、健康保険もつかない研究者の割合は全体の1割以上も存在するとされ、手当などがつかない研究者が3割にもなるという厳しい現実があるのです。こうした研究者は明日の保証もなく、通常の日勤で働いても生活を維持するのが困難な状況であるとされ、中には生活保護の水準にも満たない給料しか得られない研究者も多いといわれています。

このようにポスドクは、将来の保証はありません。いくら博士号を取得していても受け皿となる大学や研究機関におけるポストが増えないために、多くのポスドクが正規の研究職に就くことができていないのです。また、「任期付」教員と同様にポスドクという仕事には契約期間の制限が設けられており、多くの場合「契約の更新がない」という問題点があります。

やっとポスドクとなっても、その瞬間から離職へのカウントダウンが始まるという状態であり、安心して研究活動を進めることはできません。この制度は博士の重要性を根底から覆すことにつながるものと危惧されています。国は、1991年にポスドク増加政策を打ち出しましたが、就職対策や正規研究者への道を確保するなどの総合的な戦略が曖昧だったために、この政策は大失策に終わり、研究者の飼い殺し状態や単なる低賃金労働者を増加させる結果となってしまいました。


現実問題として、大学の設置基準に適合させ、大学の競争力を向上させていく対策などはどの大学でも厳しさを増すばかりであるとは思いますが、設置基準を満たした状況下での教員補充には積極的ではなく、不足分は非常勤で補うという姿勢には変化は見られません。

そう考えると教員の補充は、既存教員を守るために非常勤対応となってしまっている側面もあるように見えてしまいます。

今後はますます少子化の波に揉まれ、全国の大学は学生の定員割れに対する対策や安定した学生募集を目指すため、より優秀な教員を確保し、かつ高効率な教員の採用を実現しなくてはなりません。数少ないポストを奪い合う専任教員への道は厳しくなるばかりといえるかもしれません。

まとめ – 今後における教育環境の方向性

財務省は、来るべき少子化対策として、少子化に伴う教員数の削減を打ち出してきており、これらは極めて合理的な考え方であるという見方を示してきています。それに対し、文部科学省は緊急提言として、「厳しい財政状況を踏まえ、限りある財源を有効に使うことは必要であるが、教職員定数の機械的な削減という主張は、今後の日本社会の発展のために、子供の実態や学校現場・地方の実情に応じて教育が果たさなければならない役割についての認識が全く窺えないばかりか、各学校の厳しい実態を無視した、あまりにも非現実的なものであり、結果として“一億総活躍社会”や“地方創生”を支える人材育成を不可能とするものである。」という見解を発表しています。

これには、少子化が進む一方、児童生徒への指導は近年困難化している状況にあり、「子供の貧困と教育格差の拡大」、「障害の状態に応じた特別な指導を必要とする児童生徒の著しい増加」、「日本社会への適応に課題がある外国人児童生徒の増加」、「いじめ・不登校・暴力行為などの生徒指導上の課題の更なる深刻化」など、これらの多様な課題を抱える子供たちが社会で活躍できるようにするための指導体制の整備は一刻の猶予もならないとし、今後変化の激しい社会の中で生きていくためには、実社会や実生活の中で知識を活用し、自ら課題を発見しその解決に向けて主体的協働的に取り組む力が求められており、いわゆるアクティブ・ラーニングの視点からの学習・指導方法の革新が必要であるという根拠が示されています。加えて、日本の教員は世界で最も長時間の勤務を行っており、教員業務の質量双方の増加は時間外勤務の増加と研修時間の減少を招いており、学校がこのような新しい改革に機動的に取り組むことを難しくしているという現実問題から、審議会では、このような喫緊の教育課題に対応し、教育改革を学校が真に実行できるようにするため、加配定数を含む教職員定数の充実を強く求めるというものでした。

このような背景からすれば、しばらくは文部科学省からの「教育現場における定員削減」という圧力を受けることはないと思われますが、大学の教育環境に対する改善方針が次々に出されてきていますので、全く気を許している余裕はありません。

また経営サイドからの高効率化という流れは収まる気配も感じられないどころか、経営の適正化という名目によって教員給料の縮減化という荒波も襲ってきています。一人の教員が受け持つコマ数には制限こそありませんが、6~7コマ/週ほどの担当が平均的とすれば、最も厳しいところでは15コマ/週という例も少なくありません。これでは研究活動などに費やす時間にも制約が出てくるため、こういった流れに乗れない任期付教員は、失職の憂き目に会うことにもなりかねません。

こうした厳しい大学の教育環境の潮流は、ますます強い激流となって襲いくる予感さえするのは私だけではないと思います。

本記事は、2017年5月7日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

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この記事を書いた人

公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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