【国家公務員】「裁判所職員」の職種の1つ「裁判所事務官」
「裁判所事務官」は国家公務員特別職の裁判所職員の一員です。「裁判所職員」の他の職種としては「家庭裁判所調査官」「裁判所書記官」などがあります。
裁判所職員のうち、「裁判所事務官」は新卒の新職員の採用試験を行っている点が特徴的だと言えます。今回は「裁判所事務官」の採用試験についてご紹介します。
「裁判所事務官」の「総合職」と「一般職」
「裁判所職員試験」には「総合職試験」と「一般職試験」があり、「裁判所事務官」については「総合職」と「一般職」のどちらも採用があります。
「裁判所事務官」の「総合職」について
「裁判所事務官」の「総合職」の採用試験は「裁判所職員総合職試験」として実施されます。「総合職試験」では「裁判所事務官」と「家庭裁判所調査官補」という試験区分があるのですが、受験できるのはどちらか1職種のみで、併願はできません。
ただし「裁判所事務官」の「総合職」の受験者は、「一般職」との併願が可能な「特例制度」があります。「総合職」の受験者は「特例制度」に申し込んだ上で「一般職」の受験に必要な試験種目に回答すると、「一般職」の受験者としても扱われます。
「総合職」はいわゆる「キャリア官僚」の立場であり将来の幹部候補として採用されます。
「裁判所事務官」の「一般職」について
「裁判所事務官」の「一般職」の採用試験は「裁判所職員一般職試験」として実施されます。裁判所職員で一般職の試験区分があるのは「裁判所事務官」のみです。
「裁判所事務官」の「一般職」は「総合職」に比べて、定型的な事務を担当する俗に「ノンキャリア」といわれる立場であり、採用人数は比較的多い傾向にあります。
「裁判所事務官」になるには?ー採用試験の概要
「裁判所事務官」になるには、「裁判所職員総合職採用試験」もしくは、「裁判所職員一般職採用試験」のどちらかに合格する必要があります。
「総合職」については30歳未満で、大学院修了及び修了見込みの方が受験できる「院卒者区分」と、21歳以上30歳未満の方、または21歳未満で大学卒業及び卒業見込みの方が受験できる「大卒程度区分」の試験区分があります。
「一般職」については「大卒程度区分」と「高卒者区分」の試験区分があります。「大卒程度区分」では、大卒者または短期大学卒業程度の方が受験できます。「高卒者区分」では高卒の方が受験できます。
それ以外の方でも、最高裁判所が認める場合には受験が可能な場合もあります。
また、「裁判所事務官」については「総合職」と「一般職」を併願できる「特例制度」がありますので、制度をうまく利用し、「裁判所事務官」になる可能性を広げることもできます。
「裁判所事務官」の総合職と一般職、それぞれの採用試験についてご説明します。
【裁判所職員総合職】「裁判所事務官」の採用試験概要
「裁判所職員総合職」のうち、「裁判所事務官」の採用試験の概要についてご紹介します。
「裁判所事務官(総合職)」の採用試験内容
総合職の「裁判所事務官」の採用試験区分には、受験者の学歴ごとに「院卒者区分」と「大卒程度区分」があります。「院卒者区分」と「大卒程度区分」の試験日は基本的に同じ日に設定されています。
「裁判所事務官(総合職)」の採用予定数
「裁判所職員総合職」の「裁判所事務官」の採用予定数は、高等裁判所ごとの管轄エリアごとに決まっています。
なお、2019年度(令和元年度)の採用予定数は下記の通りです。
「東京高等裁判所管轄エリア」では「院卒者区分」が「2名程度」、「大卒程度区分」が「5名程度」です。
「大阪高等裁判所管轄エリア」では「院卒者区分」が「2名程度」、「大卒程度区分」が「3名程度」です。
「名古屋高等裁判所管轄エリア」では「院卒者区分」が「1名程度」、「大卒程度区分」が「2名程度」です。
「広島高等裁判所管轄エリア」では、「院卒者区分」が「1名程度」、「大卒程度区分」が「2名程度」です。
「福岡高等裁判所管轄エリア」では「院卒者区分」が「1名程度」、「大卒程度区分」が「3名程度」です。
「仙台高等裁判所管轄エリア」では「院卒者区分」が「1名程度」、「大卒程度区分」が「1名程度」です。
「札幌高等裁判所管轄エリア」では「院卒者区分」が「1名程度」、「大卒程度区分」が「1名程度」です。
「高松高等裁判所管轄エリア」では「院卒者区分」が「1名程度」、「大卒程度区分」が「1名程度」です。
以上のように、「裁判所職員総合職・裁判所事務官」の採用予定数はエリアによって違いがありますが、いずれも採用予定数は5名以下であり、狭き門だと言えます。
「裁判所事務官(総合職)」の過去の合格者数
「裁判所職員総合職・裁判所事務官」の2018年度と2017年度のエリアごとの実際の合格者数を、ご紹介します。
「裁判所事務官(総合職)」東京高等裁判所管轄エリア合格者数
東京高裁エリアの「裁判所事務官(総合職)」について、2018年度の「院卒者区分」の合格者は「4名」で、倍率は14.8倍でした。「大卒程度区分」の合格者は「8名」で、倍率は21.1倍でした。
2017年度の「院卒者区分」の合格者は「2名」で倍率は45倍でした。「大卒程度区分」の合格者は「10名」で倍率は16倍でした。
「裁判所事務官(総合職)」大阪高等裁判所管轄エリア合格者数
大阪高裁エリアでの「裁判所事務官(総合職)」について、2018年度の「院卒者区分」の合格者は「4名」で倍率は6.8倍でした。「大卒程度区分」の合格者は「2名」で倍率は41倍でした。
2017年度の「院卒者区分」の合格者は「1名」で、倍率39倍でした。「大卒程度区分」は合格者が「0名」でした。
「裁判所事務官(総合職)」名古屋高等裁判所管轄エリア合格者数
名古屋高裁エリアでの「裁判所事務官(総合職)」について、2018年度の「院卒者区分」の合格者は「0名」でした。「大卒程度区分」の合格者は「1名」で、倍率は41倍でした。
2017年度の「院卒者区分」の合格者は「4名」で倍率が3.5倍、「大卒程度区分」の合格者は「1名」で、倍率は35倍でした。
「裁判所事務官(総合職)」広島高等裁判所管轄エリア合格者数
広島高裁エリアでの、「裁判所事務官(総合職)」について、2018年度の「院卒者区分」の合格者は「0名」、「大卒程度区分」の合格者は「1名」で倍率は25倍でした。
2017年度の「院卒者区分」の合格者は「0名」、「大卒程度区分」の合格者も「0名」でした。
「裁判所事務官(総合職)」福岡高等裁判所管轄エリア合格者数
福岡高裁エリアでの、「裁判所事務官(総合職)」について、2018年度の「院卒者区分」の合格者は「2名」で倍率は6倍でした。「大卒程度区分」の合格者は「0名」でした。
2017年度の「院卒者区分」の合格者が「4名」で倍率は4.5倍、「大卒程度区分」の合格者が「1名」で倍率は73倍でした。
「裁判所事務官(総合職)」仙台高等裁判所管轄エリア合格者数
仙台高裁エリアでの、「裁判所事務官(総合職)」について、2018年度の「院卒者区分」の合格者は「2名」で倍率が「2.5倍」、「大卒程度区分」の合格者は「0名」でした。
2017年度の「院卒者区分」の合格者が「1名」で倍率は4倍、「大卒程度区分」の合格者は「1名」で倍率が41倍でした。
「裁判所事務官(総合職)」札幌高等裁判所管轄エリア合格者数
札幌高裁エリアでの、「裁判所事務官(総合職)」について、2018年度の「院卒者区分」の合格者は「0名」でした。「大卒程度区分」の合格者は「2名」で倍率は「2.5倍」でした。2017年度の「院卒者区分」の合格者が「0名」、「大卒程度区分」の合格者が「1名」で倍率が5倍でした。
「裁判所事務官(総合職)」高松高等裁判所管轄エリア合格者数
高松高裁エリアでの、「裁判所事務官(総合職)」について、2018年度の「院卒者区分」の合格者は「0名」、「大卒程度区分」の合格者は「1名」で倍率は23倍でした。
2017年度の「院卒者区分」の合格者が「1名」で倍率は2倍、「大卒程度区分」が「1名」で倍率は19倍でした。
「裁判所事務官(総合職)」の受験資格
「裁判所職員総合職」の「裁判所事務官」の受験資格は、「院卒者区分」では「1989年(平成元年)以降に生まれた者」で、「大学院の修士課程、または専門職大学院の課程を修了した者、もしくは2020年3月までに修了見込みの者」です。
「大卒程度区分」の受験資格は、「1989年(平成元年)の4月2日から1998年(平成10年)の4月1日までに生まれた者」もしくは「1998年(平成10年)4月2日以降に生まれ、大学を卒業した者、または2020年3月までに卒業見込みの者」です。
また、いずれの受験区分でも「最高裁判所が受験資格と同等の資格があると認める場合」には、受験できることがあります。
「裁判所事務官(総合職)」の試験内容
「裁判所事務官」の試験は、「院卒者区分」「大卒程度区分」が同じ日程で実施されます。試験時間については、「院卒者区分」と「大卒程度区分」では異なっており、さらに「院卒者区分」で「特例制度」を利用する受験者も試験時間が異なる場合があるので、その年の受験案内等でよく確認してください。
「院卒者区分」の試験内容
2019年度(令和元年)の「裁判所職員総合職・裁判所事務官」の「院卒者区分」での採用試験の内容についてご紹介します。
まず、「第1次試験」では多肢選択式の「基礎能力試験」と、多肢選択式の「専門試験」があります。「基礎能力試験」では「公務員」として必要な基礎的な能力について問われ、知能分野から27題、知識分野から3題の出題があり、試験時間は2時間25分です。
「裁判所一般職」と併願する「特例制度」を利用する受験者は、さらに知識分野から10問出題があり、追加して回答する必要があるため、試験時間も追加されて3時間の試験となります。
「専門試験」では「裁判所事務官」に必要な専門知識として、科目と出題数は「憲法」から7題、「民法」から13題、そして選択式で「刑法」または「経済理論」を当日選び、10題解答します。試験時間は1時間30分です。
「第2次試験」では、特例制度使用希望者のみ、1時間の「論文試験」があります。そして、「裁判官事務官」として必要な専門的知識を確認するため、記述式の「専門試験」と、記述式の「政策論文試験」があります。
「専門試験」では科目として「憲法」「民法」「刑法」からそれぞれ1題ずつ、そしてどちらか1題選択できる「民事訴訟法」と「刑事訴訟法」のから1題なので、合計4題出題されます。試験時間は「憲法」と「訴訟法」のどちらか1題については1時間ずつ、「民法」と「刑法」は合わせて2時間です。
第2次試験の最後には面接での「人物試験」があります。
最終試験の第3次試験でも面接での「人物試験」があり、最終合格者が決定されます。
「大卒程度区分」の試験内容
2019年度(令和元年度)の「裁判所職員総合職・裁判所事務官」の「大卒者区分」での採用試験の内容についてご紹介します。
まず「第1次試験」では、多肢選択式の「基礎能力試験」と、多肢選択式の「専門試験」があります。「基礎能力試験」では、院卒者区分より全員10問多い合計40題に解答する費用があります。出題の内訳は、知能分野から27題、知識分野から13題で、試験時間は3時間です。
「専門試験」では、院卒者区分と同様、必須解答の科目が「憲法」の7題と「民法」の13題です。選択科目として「刑法」または「経済理論」から10題解答しますが、どちらを選択するかは当日問題を見てから決めることができます。試験時間は1時間30分です。
次に「第2次試験」では、一般職と併願する特例制度希望者のみ1時間の「論文試験」があります。そして、記述式の「専門試験」が計4時間と、「政策論文試験」が1時間30分の試験時間でそれぞれ行われます。
「専門試験」での出題科目は院卒者区分と同様、必須科目が「憲法」「民法」「刑法」、選択科目が「民事訴訟法」または「刑事訴訟法」です。
「政策論文試験」では、組織運営上の課題の理解と、その解決策の企画立案についての能力を問うような問題が出題されるようです。
第2次試験については、個別面接による「人物試験」で終わりです。
最終試験である第3次試験では、さらに集団討論及び個別面接による「人物試験」が行われ、最終合格者が決定します。
「裁判所事務官(一般職)」の採用試験概要
「裁判所職員一般職」の「裁判所事務官」の採用試験の概要についてまとめます。「一般職」の「裁判所事務官」の試験区分には「大卒程度区分」と「高卒程度区分」があります。
「裁判所事務官(一般職)」の採用予定数
「裁判所職員一般職」の「裁判所事務官」の採用予定数は、高等裁判所ごとの管轄エリアごとに決まっています。
「大卒程度区分」の採用予定数
2019年度(令和元年度)の「大卒程度区分」の採用予定数は、「東京高等裁判所管轄エリア」では「180名程度」です。
「大阪高等裁判所管轄エリア」では「55名程度」です。
「名古屋高等裁判所管轄エリア」では「30名程度」です。
「広島高等裁判所管轄エリア」では「25名程度」です。
「福岡高等裁判所管轄エリア」では「35名程度」です。
「仙台高等裁判所管轄エリア」では「15名程度」です。
「札幌高等裁判所管轄エリア」では「15名程度」です。
「高松高等裁判所管轄エリア」では「10名程度」です。
以上のように、「裁判所職員一般職・裁判所事務官・大卒程度区分」の採用予定数はエリアによって違いがありますが、いずれも総合職に比べると採用数は比較的多いようです。
「高卒者区分」の採用予定数
2019年度(令和元年度)の採用予定数はまだ発表されていません。裁判所職員一般職の高卒者区分の試験については、毎年7月頃に申込が開始され、秋に試験が実施されます。
「裁判所事務官(一般職)」の過去の合格者数
「裁判所職員一般職・裁判所事務官」の2018年度と2017年度のエリアごとの実際の合格者数を、「大卒程度区分」と「高卒者程度区分」、それぞれご紹介します。
東京高等裁判所管轄エリア合格者数
東京高裁エリアでの、「裁判所事務官(一般職)」について、2018年度の「大卒程度区分」の合格者「480名」で、倍率は6.6倍でした。「高卒者区分」の合格者は、「30名」で、倍率は20.7倍でした。
2017年度の「大卒程度区分」の合格者は「350名」で倍率は8.7倍でした。「高卒程度区分」の合格者は「28名」で倍率は22.9倍でした。
大阪高等裁判所管轄エリア合格者数
大阪高裁エリアでの、「裁判所事務官(一般職)」について、2018年度の「大卒程度区分」の合格者は「130名」で倍率は12.4倍でした。「高卒者区分」の合格者は「11名」で倍率は36.5倍でした。
2017年度の「大卒程度区分」の合格者は「135名」で、倍率11.3倍でした。「高卒者区分」は合格者が「10名」で、倍率は46.4倍でした。
名古屋高等裁判所管轄エリア合格者数
名古屋高裁エリアでの、「裁判所事務官(一般職)」について、2018年度の「大卒程度区分」の合格者は「150名」で、倍率は7.5倍でした。「高卒者区分」の合格者は「15名」で、倍率は15.1倍でした。
2017年度の「大卒程度区分」の合格者は「115名」で倍率が9.5倍、「高卒者区分」の合格者は「12名」で、倍率は19.7倍でした。
広島高等裁判所管轄エリア合格者数
広島高裁エリアでの、「裁判所事務官(一般職)」について、2018年度の「大卒程度区分」の合格者は「110名」で、倍率は5.6倍でした。「高卒者区分」の合格者は「10名」で倍率は31.1倍でした。
2017年度の「大卒程度区分」の合格者は「104名」で、倍率は5.0倍、「高卒者区分」の合格者は「15名」で、倍率は17.5倍でした。
福岡高等裁判所管轄エリア合格者数
福岡高裁エリアでの、「裁判所事務官(一般職)」について、2018年度の「大卒程度区分」の合格者は「100名」で倍率は11.3倍でした。「高卒者区分」の合格者は「25名」で、倍率は39.3倍でした。
2017年度の「大卒程度区分」の合格者が「85名」で倍率は13.5倍、「高卒者区分」の合格者が「12名」で倍率は81.4倍でした。
仙台高等裁判所管轄エリア合格者数
仙台高裁エリアでの、「裁判所事務官(一般職)」について、2018年度の「大卒程度区分」の合格者は「66名」で倍率が8.4倍でした。「高卒者区分」の合格者は「10名」で、倍率は26.4倍でした。
2017年度の「大卒程度区分」の合格者が「81名」で倍率は7.1倍、「高卒者区分」の合格者は「5名」で倍率が39.6倍でした。
札幌高等裁判所管轄エリア合格者数
札幌高裁エリアでの、「裁判所事務官(一般職)」について、2018年度の「大卒程度区分」の合格者は「45名」で、倍率は3.1倍でした。「高卒者区分」の合格者は「8名」で倍率は「15.0倍」でした。
2017年度の「大卒程度区分」の合格者が「41名」で倍率が3.6倍、「高卒者区分」の合格者が「5名」で倍率が50.6倍でした。
高松高等裁判所管轄エリア合格者数
高松高裁エリアでの、「裁判所事務官(一般職)」について、2018年度の「大卒程度区分」の合格者は「50名」で倍率は9.3倍でした。「高卒者区分」の合格者は「13名」で倍率は12.6倍でした。
2017年度の「大卒程度区分」の合格者が「50名」で倍率は8.2倍、「高卒者区分」が「8名」で倍率は17.9倍でした。
まとめ
このページでは、「裁判所職員」の採用試験のうち、「裁判所事務官」の試験概要についてまとめました。「裁判所事務官」には「総合職」と「一般職」があります。
「総合職」については「院卒者区分」と「大卒程度区分」の試験区分があります。
「一般職」については「大卒程度区分」と「高卒者区分」の試験区分があります。「大卒程度区分」では、大卒者または短期大学卒業程度の方が受験できます。「高卒者区分」では高卒の方が受験できます。
それ以外の方でも、最高裁判所が認める場合には受験が可能な場合もありますので、裁判所のホームページや受験案内等で確認してみましょう。
また、「裁判所事務官」については「総合職」と「一般職」を併願できる「特例制度」がありますので、制度をうまく利用し、「裁判所事務官」になる可能性を広げてみてはいかがでしょうか。
参考:裁判所ホームページ
http://www.courts.go.jp/saiyo/index2.html
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