はじめに
「大阪府」の「保健所」で働く獣医師(女性)によるキャリアレポートです。
- レポート者のプロフィール
- 公務員としての職業・勤務先:獣医師(保健所勤務)
性別:女性
雇用体系:正規雇用
所有資格:獣医師免許、自動車運転免許
「保健所で働く獣医師」を目指した理由
学校や別の職場で得た専門技術を活かせる業務があったからです。 子育てとの両立もしやすいのではないかと考えたのも理由のひとつです。
「保健所で働く獣医師」の仕事内容について
保健所に勤務する獣医師の仕事は主に食品分野と動物分野に分けられます。
食品分野では、食品衛生監視員という立場に任命され、食べ物にまつわる健康被害をなくすために働きます。具体的には新しくオープンする飲食店が衛生的に食事を提供できるか店に行って調べたり、異物混入や食中毒を疑う届け出があれば調査をして被害が拡大しないよう措置をとります。また、日本での使用が禁止されている添加物を含む輸入食品がすでに流通してしまっている時にはそれらの食品の回収に走ることもあります。
動物分野では、動物愛護監視員として野犬や野良猫、その他動物の保護や動物飼育の啓発活動を行います。この場合、行政の役割は動物を介した感染症や事故などの健康被害を防ぐことにあります。
その他、環境分野もあり、そちらは主に薬剤師が就くことが多いのですが獣医師も配属されます。
私の働いていた職場では食品と環境の分野は兼務で動物分野だけ分かれていましたが自治体によってさまざまです。
「保健所で働く獣医師」の1日の仕事の流れ
8時 出勤のため自宅を出る。(電車通勤)
8時30分 職場到着
9時 始業 ~9時20分 これから行く飲食店立入調査のための書類準備
9時30分 飲食店到着(自転車移動) 立入調査実施
9時45分 次の飲食店到着(自転車移動) 立入調査実施
10時30分 職場に戻る 立入調査後の書類作成、事業者などに仕事上の電話をする
12時 昼食(45分)
12時45分 窓口担当 飲食店のオープン手続きや、イベント出店の相談などに対応する 窓口業務の合間に書類処理
17時30分 終業 (以降、時間外当番の日)
17時30分~ 職場の電話を持ち帰り自宅待機
20時 体調不良を訴える電話をとる 状況を聞き取り他の当番に情報共有
22時 本日中にできる対応を終える
「保健所で働く獣医師」の給料・残業・有給休暇について
月給は約30万円(額面、残業代・交通費込)、ボーナス平均4.2ヶ月分で、年収約500万でした。
残業代も市民の税金から出ますので時間外でないとできない業務のみ残業します。有給休暇は比較的とりやすかったです。
この仕事で、働いているときに困ったこと
基本的に規制業務なので事業者が新しい試みを相談してきても「何ができるか、どうすればできるか」ではなく「それはルールに違反しないか」という視点で見なければなりません。ルールつまり法令を逸脱する場合は事業者に考え直してもらうのですが、根拠となる法令が時代にそぐわないこともあります。
また法令はケースバイケースに対応できるようグレーな表現も多くあります。法令の解釈はケースバイケース、でも公平に、といったバランスに苦心しました。
この仕事や職場でよかったこと
有給休暇はとりやすかったです。有給休暇はきちんととろうという風潮でしたので業務に影響しないかぎり気を遣うようなことはありませんでした。
また、市勤務だったのでどこへ異動になっても通勤時間はさほど変わらず便利でした。
入院で長期休職しましたが休職期間中も収入が保障されていて助かりました。保障には期間に制限があり収入も休職前の6~7割ですがありがたいと思います。職場復帰もなかなか手厚いログラムがあり身体的、精神的負担も少ないと思います。
「保健所で働く獣医師」の仕事エピソード
食事に異物が入っていたかもしれないことをきっかけにお客とお店がトラブルとなり、その対応をしたことがありました。届け出を受けた時点で当事者どうしでは解決できる状況ではなく行政が間に入ることになったのです。
行政主導で調査をすすめて一段落したのち、お客がその後もお店を好意的に利用していることがわかりました。もしかしたらあのまま足が向かわずお店を使わなくなっていた可能性もあったのに、いっそう店を好きになっていた姿をみて、お客とお店両方にとっていい方向へ着地することができたと思いました。そのとき、いい仕事だったなと感じました。
「保健所で働く獣医師」の職場恋愛について
職場恋愛は自由でした。私の職場は専門性が高く薬剤師と獣医師、一部事務職といった環境で人の流動性は高くありませんでしたが、職場恋愛、結婚者は多くも少なくもなくといったところです。
職場以外のことは推測の域をでませんが、他職種との接点があるサークル活動や他自治体との勉強会などで出会いがあるかもしれません。私の周囲は学生時代の知り合いや職場とは関係のないところで出会った人のほうが多かったです。ちなみに私も職場とは関係がありません。
まとめ ー「保健所で働く獣医師」を目指す方へメッセージ
獣医師としては花形の職業ではありませんが、やりがいのある仕事だと思います。
コメント
コメント一覧 (1件)
勝手に保健所の仕事とは、ただ単に野良犬・野良猫の捕獲や収容、最悪は殺処分をするような場所と思っていました。ですがこの記事を読み、保健所で働く人の中に獣医師がおり、その獣医師の仕事も動物だけではなく食品分野があるということを知りました。
勝手に獣医師とは「動物相手に処置する仕事」と思っていましたが、その食品分野とは新規オープンの飲食店が衛生的に食事を提供できるかや、異物混入・食中毒等の調査など自分が思っていた「獣医師」という仕事を改めて知れる記事だと思いました。