【国立では6番目の美術館】国立映画アーカイブについての学芸員のコラム

日本で唯一の国立映画専門機関である国立美術館「国立映画アーカイブ」について学芸員にコラムにしてもらったものを掲載します。


はじめに

本ページでは、学芸員に、国立美術館「国立映画アーカイブ」ついてや学芸員全体についてコラムにしていだきました。

国立美術館「国立映画アーカイブ」とは?

「国立映画アーカイブ」の使命は、映画フィルムの保存と修復の技術を学びながらその専門機関でも勤めることも可能とした意思とアナログとデジタル双方の保存と課題、現場での作業がどんな環境下で活動しているかを社会に伝えることです。

▼参考URL:国立映画アーカイブ公式サイト
https://www.nfaj.go.jp/

国立映画アーカイブでは、日本の映画フィルムを後世に伝えるべく、保存と修復を踏まえた活動をしています。

また、デジタル技術の進化と共に各映画館ではデジタルのプロジェクターを導入することによって、映画フィルム産業は大きく衰退すると同時にフィルムそのものの需要の低下しながら時代はアナログからデジタルへと移行しています。しかし、デジタル保存は再生読み込みの課題とその費用が大きいため、これにより近年はアナログのフィルム事態には保存性が高い事が再認識されており、国の機関を問わず日本ではNPOなどの団体がフィルムの保存とその楽しさを伝える活動が増えています。

しかし、全国の文化施設に保管する16ミリや35ミリのフィルムは予算の関係上、デジタル保存が出来ず、担当職員が不在という事態の中でフィルム消滅の危険性は年々高まりつつあります。これにより、フィルムを専門知識を増やすべくワークショップなどの展開が今後も広がり、社会貢献をしていく取り組む必要があります。

「国立映画アーカイブ」で学芸員の1日の仕事の流れ

「国立映画アーカイブ」で働く学芸員の1日の仕事の流れは、基本的に各美術館と同様に朝9時(または9時前に出勤)してメールチェック、小会議、収蔵品の管理と研究をして、終業18時(残業あり)することは同じです。

しかし、年々国からの予算削減と学芸員不足、さらには指定管理者制度の導入により1日の流れは今後も変化しつつあります。指定管理者は色んなお客様が施設に来てもらうよう企画運営と実効性が求められるのに対し、指定管理者は施設内の収蔵物を有効活用できず、それは学芸員が任せられることとなっています。

海外との違いは、運営、予算管理、宣伝、ワークショップ、運搬などそれぞれ専門チームがあります。また、組織力と財源の強いところではデジタルアーカイブを活かし、商業目的でなければ無料配布をしています。

これに対し、日本の学芸員は全て1人に任せきりの状態であり、辞めていくことも珍しくありません。収蔵物の修復では、一部の施設にボランティアを設けるところもありますが、全体的な改革の必要があります。

学芸員の給料・残業・有給休暇について考察

実際に勤めてはいないので分かりませんが、現在のところ月19~21万円、社会保険完備はあります。国立映画アーカイブでは最近だと時給1900円超の募集が行われていました。これは学芸員ではなく、事務などのアルバイトと思ってください。


非常勤職員が多くなる中、これまで勤めてきた職員がせっかくの知識と研究を持っていたにも関わらず不在となってしまう事態は避けなければなりません。

また、国からの予算削減もあるので今後の雇用は厳しくなる傾向です。

学芸員の仕事で、働いているときに困ったこと

日本の博物館史は、コレクション目的が多く、「展示」と「宣伝」という呼びかけが極めて弱く単に保管されているだけの意識で終えています。このため、多くの人達が来場してもらえるように、時代のニーズに合わせております。

例えば「『戦国BASARA』と備前長船刀剣博物館の企画展」は若者(とくに女性陣)が来館して興味を持っていただくことに大成功を収めました。このきっかけで各戦国武将たちのコスプレと歴史を知ってもらうことで幅広い世代をつくることもある意味ひとつの良い方法と言えます。主なターゲットは何かを作るには、学芸員が外の様子を観察して行う視野を広げていくことも大切な仕事です。

地方の学芸員について

地方の学芸員は、地域ぐるみを活かしてコミュニティを作ります。そのため、今まで知らなかった情報と新しい話題を取り上げることで今後の博物館の運営につながることもできます。

展示の内容については、ボランティアをすることもありますが、それも大切な繋がりであることは変わりありません。仲間をつくることがいちばん大切なことです。学芸員のひとり一人の明るさが見えて、お互いに協力し合うことで今後の博物館に大きな期待を作らせることです。

学芸員としての仕事エピソード

私の場合、両親が地元の博物館館長とそちらの学芸員と何人も交流があって、自分が学芸員資格の勉強を目指している時期には地元の文化施設の課題や取り組みをリポートすることができました。お忙しいので全面的な協力はできないのですが、写真資料の保存と保管場所を尋ねる際は丁寧に教えてくださいました。

アルバムには酸性紙が使われており、常に冷房の効いた部屋に事務のロッカー棚に保管しているそうです。それまで自分が想像していたのと違っていて、「これが現実なのだ」とひとつ一つ知っていくこともできました。資格を取るためには、現場の様子を知ることが大切です。

学芸員の職場恋愛について

残念ながら私が知る限りでは何人かの学芸員さんは独身または奥様とお子さんが居る方もございます。

学芸員さんではありませんが、IMAGICAのシンポジウムで知り合えた方からのメールで最近育児休暇をとることが出来て10月に職場復帰する、とありました。この質問がどういう意図で聞かれたいのかは少し不思議な点もありますが、学芸員の中での職場恋愛というのは極めて低いと思います。

海外なら少し魅力的な話があったら嬉しいですね。日本は大変忙しい国なので学芸員さんが自分から家族の話をしてくれたらその場で「情報」を知ることとなりますが、あまり無いですね。現役の学芸員でもこの質問を答えられることは葛藤がありますし、私が代理にお答えしました。

まとめ -「学芸員」を目指す方へメッセージ

前の回答でもお答えしましたが、国からの予算も削減されて、学芸員不足の事態の中で、まして外国人観光客も増えているので仕事量は倍増しています。孤独を抱えている方もいらっしゃるそうですし、中に籠らず外の空気を吸って流行りの物を少しでも知っておきましょう。

岡本太郎は今でも若い年層には人気です。外国人は日本ならではの古さを知りたがっているので施設の目玉となるものを「インスタ映え」するのも面白いでしょう。

本記事は、2021年3月8日時点調査または公開された情報です。
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