健康で文化的な最低限度の生活を保障する制度の悪用

生活保護受給者に群がる、不動産業者や病院の貧困ビジネスの実態(2017年10月記事)

国民のセーフティーネットである生活保護世帯数は全国の160万世帯以上にのぼり、現在も増加しています。そのうち5割以上が高齢者の世帯で、独り暮らしの高齢者も多くいます。そんな中、生活保護受給者の、おもに「高齢者」を狙った様々な「不正行為」が発生しています。その実態についてまとめました。


はじめに

厚生労働省の実施する「生活保護制度」は、生活に困窮する方に対し、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的としており、各地域の福祉事務所の生活保護担当が担当します。

しかし、金銭による補助はその利点を悪用され、不正受給や貧困ビジネスといった社会問題・社会犯罪まで発展しています。

いま、国や自治体も、その不正受給対策・貧困ビジネス対策に乗り出しています。

ちなみに、この生活保護制度(せいかつほごせいど)は略して生保となり、否定的な意味をこめた俗語(=蔑称)として「なまぽ」と表現され、インターネット上で使われていたりします。

まずが知っておこう、「生活保護費」の基本的な算出方法

主に「8つの扶助」を組み合わせている

生活保護費は、「生活扶助」「住宅扶助」「医療扶助」「介護扶助」「教育扶助」「生業扶助」「出産扶助」「葬祭扶助」の8つをベースに成り立っており、さらにここに「〇〇加算」という、季節的なものや本人の障がいなどの状態に応じた「加算額」が加わり算出されています。

ですがこの中で、おもに毎月の「生活費」となるのは、食費などにあてる「生活扶助」と家賃にあてる「住宅扶助」の2つになります。

ここに、病院にかかるために必要な医療費にあてる「医療扶助」や介護保険料の自己負担分にあてる「介護扶助」が臨時で発生し、さらに教育扶助や出産扶助なども、どちらかというとその時期限定の臨時的な扶助といった性格のものになります。

今回は貧困ビジネスともかかわりの深い、生活費である「生活扶助」と「住宅扶助」、そして「医療扶助」について簡単に説明します。

生活扶助(せいかつふじょ)とは?

生活扶助費は、おもに2つの部分から成り立っています。

1つ目はその世帯1人ずつの「食費」など「個人」に必要な費用の合計部分です。

2つ目は「電気代」「水道代」など、ひとつの「世帯」にかかってくる光熱費部分です。まず食費部分ですが、ここは年齢に応じて金額が決められており、計算のベースになっているのは、「その年齢に必要な消費カロリー」です。


ですから、食べ盛りの10代が1番金額が高く、次が働き盛りの20~40代となっており、高齢者にはこれより低い額が支給されます。

ただ、世帯の人数分の金額を単純に足しこんでいくわけではなく、人数合計分の8割や7割など、世帯人数に応じた計算方法があります。次に光熱費部分ですが、ここはそのまま世帯人数による支給額が決められており、その額が支給されます。

ここに、11月~3月は「冬季加算」といって、いわゆる「暖房費用」が加算されます。北海道など北日本では、冬季に暖房なしでは生活できませんので、地域に応じてこの加算額が高くなっています。

住宅扶助(じゅうたくふじょ)とは?

住宅扶助は、いわゆる家賃部分にあたります。

そもそも生活保護費の金額は全国一律ではなく、地域別に国により定められています。ですから同じ年齢、同じ世帯人数でも、住んでいる地域によって金額が違います。

これは地域の「地価」や「物価」をもとに毎回国が定めており、基本は都道府県ごとになるのですが、さらに政令市(人口50万人以上の都市)と中核市(人口30万人以上の都市)は特別額を設定しており、そのようなところが全国で60都市ほどあります。

そして、同じ都道府県でも基本的に6つの「級」に分けられており、東京、大阪などの都心はほぼ1級-1、そこから郊外になるほど1級-2、2級-1、2級-2、3級-1、3級-2となります。級が下がると金額も下がります。また1級地が存在せず2級地、3級地からなる都道府県も多くあります。

さて住宅扶助ですが、これも先述したように各都道府県、各都市など住んでいる地域により支給される上限額が決まっています。参考までに独り暮らしの場合の住宅扶助額を都市別に一部見てみましょう。

参考1:都道府県別、都市別住宅扶助額

独り暮らしで1級地に住む場合の住宅扶助の上限額(平成29年現在)

都道府県
北海道 29,000円
千葉県 46,000円
東京都 53,700円
京都府 40,000円
大阪府 39,000円
広島県 35,000円

特別額を設けている各都市の住宅扶助額(平成29年現在)

都道府県
札幌市 36,000円
仙台市 37,000円
柏市 41,000円
横浜市 52,000円
京都市 40,000円
大阪市 40,000円
広島市 38,000円
福岡市 36,000円

参考2:ある独り暮らしの受給者の、ひと月の生活費

さらに参考までに、先述した生活扶助と住宅扶助を合わせた68歳・独り暮らしの受給者のひと月の金額を見てみましょう。ここでは住んでいる地域別に3パターンを例示します。

1級地-1
生活扶助 80,870円
住宅扶助 53,700円
合計 134,570円
2級地-1
生活扶助 73,190円
住宅扶助 43,000円
合計 116,190円
3級地-1
生活扶助 68,390円
住宅扶助 32,000円
合計 100,390円

以上が生活費として支給される一例です。後述しますが実はこの生活扶助費や住宅扶助費を狙った悪徳業者が、一部で不正に本人の保護費を搾取する事案が発生しています。

医療扶助(いりょうふじょ)とは?

つづいて医療扶助について説明します。医療扶助は名前のとおり本人が病院などを受診する医療費にあてるものです。

生活保護受給者でも、働きながら生活保護を受けていて会社の健康保険証を持っている場合は、当然そちらを優先に支払ってもらいます。自己負担部分を生活保護の医療扶助で支払います。

しかしほとんどの受給者は、医療費は100%医療扶助で支払われています。

医療扶助は本人への現金支給ではなく、「医療券」「調剤券」という「紙」を福祉事務所が発行し、これを本人が生活保護法による指定を受けた病院の窓口に持参して診察を受けるというものです。

医療券は、〇〇円分という「金券」のようなものではなく、券に書かれているのは単に本人の生活保護の受給者番号など必要事項だけです。


つまり病院に、「この人は生活保護受給者なので、受給者番号をお知らせします。ですので医療費は本人ではなくこちらの福祉事務所にその番号で請求してください。」とその紙をもって知らせているのです。

こちらも後述しますが、この「医療扶助」の制度が一部の医療機関で不正請求の温床になっています。

生活保護受給者にかかわる貧困ビジネス

高齢者は狙われている

生活保護の受給者は、半数以上が高齢者です。また今後の高齢化社会に向けて、ますます高齢受給者の割合は増加すると思われます。

一般的に高齢になれば判断力も鈍り、また最新の社会システムについていけないので誰かに頼りたくなるものです。

生活保護受給の高齢者においても、彼らの中には幼少期に親とも離れ、学歴を得ることもできず生きるために単身で都会に出てきた者も少なくなく、高齢になり働けなくなったところに、貧困ビジネスの影が忍び寄ります。

「福祉の手続きはこちらへ」「福祉受けられます」の貼り紙

今まで現役で働いてきたが高齢で働くことができなくなり、急に家賃も払えなくなったとき、人はどうするでしょうか。頼れる身内がいればいいのですが、何十年も前に音信不通になっており知人は誰もいません。

そんな住むところにも困っている状態のときに、あるアパートに目立つ貼り紙がしてあります。「福祉」という文字が大きく書かれ、「福祉の手続きはこちらへ」「福祉でここに住めます、すべての手続きを行います」などということが書かれています。

一般に、高齢者は「役所」と「民間」の区別はついていません。これは役所の主催だ、これは一般人が勝手に行っているだけだ、という判別はなかなかできません。とにかく目の前にあるのは、「ここに頼めば福祉(生活保護)を受けられて住む家にも困らない」という事実だけです。

与えられるのは冷めた弁当のみ

貼り紙を見た高齢者が近づくと、賃貸住宅業者は言葉巧みに生活保護を申請するようにすすめます。生活保護を受ければこのアパートにも住めるし、食事も病院にも困らない、と保護申請に誘導します。

高齢者の中には学歴もなく、悪気がなくとも知識もないため言われるがままに動いてしまう人も少なくありません。

そして生活保護申請はあくまで本人申請が基本ですから、業者に教えられたとおりに保護の申請に福祉事務所に出向きます。

業者は自己物件の家賃額を住宅扶助で支給される限度額部分ちょうどに設定していることが多く(大阪市なら40,000円など)、しかしその額も特に昨今の一般的な賃貸住宅の賃料からいうと高額ともいえず、一見妥当な額であるため、その業者のアパートに住むことで生活保護が開始されるのです。

※生活保護は「居宅保護」といい、住宅に住んでいる人しか申請できません。野宿者の場合はまず「住む家を探してから申請」ということになります。役所がこの住居探しを手伝うことはあります。

こうして生活保護費を受給するようになった高齢者は、住宅扶助として支給された部分は業者に「家賃」として毎月支払います。これだけなら通常の賃貸業者と変わらないかもしれません。

しかし業者は、本人の「生活扶助」部分にも手をつけます。つまり、毎月本人が福祉事務所から受け取る生活保護費すべてを「預かり管理する」と称して搾取するのです。本人には一円も渡りません。

そしてひどいところでは本人に一日たった一食だけ冷めた仕出し弁当を与え、食事は一日でそれのみです。

こうした生活保護受給者ばかりを狙って住まわせる業者は後をたたず、そこに住んだ高齢者は皆、一日1回ドアの前に置かれた冷めた弁当だけを食べ、何か買うこともできないのです。

しかし本人たちには判断力もなく、そもそも業者のことを、生活保護の申請手続きからすべてにおいて世話になっている「後見人」「世話人」のように錯覚していることも多く、また何か言えば恫喝されることもあるためこのことを福祉事務所にも伝えず、明るみになっていないケースも存在するのです。

堂々と役所を恫喝する業者も

こうしたことだけにとどまらず、賃貸業者が明らかに反社会的勢力のような出で立ちで福祉事務所に現れ、ケースワーカーに対し「保護受給の○○さんがうちの管理物件でボヤ火災を起こした。一千万円払え!」などというようなケースも発生しています。


当然このような事案には毅然とした態度で対処しますが、先述した保護費の搾取についても業者は巧みな「言い訳」を用意している場合も多く、「○○さんが今月は水道代を浪費したためその分を保護費から支払ってもらっただけだ。」とか「うちの物件は光熱費が一律でいくらと決まっている。高額に見えるかもしれないが、大量に浪費した月でも一定額しか取っていない。」などというものです。

そこに加えて福祉事務所側にこれまであまり調査の権限がなく、一部あっても強制力がなくいたちごっこになっているのが現状でした。後述しますがこの数年で対処法が確立されつつあります。

医療扶助をめぐる医療機関の不正請求

医師の意見は絶対という前提の危うさ

日本では特にそうですが、「医療」や「健康管理」等については完全に医師がその分野の頂点であり、誰も異論を唱えることができない風潮があります。

もちろんその分野の頂点であることに間違いはないのですが、「絶対的な権力」を持っており、唯一議論できるであろう同業の医師は互いにかばい合う風潮があることも否めません。

ですが同時に医師には強い「倫理観」があるものとされており、それゆえに医師には厚い信頼が寄せられているのが大前提です。

ところが生活保護の世界では、この前提がくつがえされる、あってはならない事案も多数発生しています。

生活保護受給者の医療費は基本的に全額が国と自治体から病院に支払われます。

ということは、病院(医師)の側からしてみると、医療費を取り漏れる心配がない、「確実に医療費を取れる」、ありがたい「ビジネス」でもあるのです。

実際にどんな事例があるのか?

生活保護受給者で通院するのは、大半がやはり高齢者です。判断力のないまま、近所のクリニックや病院に「これからも通院するように」と告げられれば、治療が必要なのだと思い、当然通院してしまいます。

しかし実際には、本人には必要のない検査を行ったり、必要以上に何度も治療を行ったり、またあろうことか本人には不要の「外科手術」を行った医療機関も発覚しています。

そうして計上した医療費を、「レセプト」と呼ばれる、医療行為の内容を月ごとに記載した書類を作成して医療費を不正請求しているのです。

「過剰診療」と「架空請求」

不正の種類には2種類あり、先述したように不要な診療を何度も行い、その金額をすべて請求する過剰診療と、さらに悪質なのは、本人にまったく行っていない検査や手術、治療を行ったように装い、医療費の架空請求を行うものです。

これは大変悪質で、医療法人ぐるみで架空請求を繰り返し、理事長らが逮捕されている事案も発生しています。しかしそれらは氷山の一角といってよいでしょう。

生活保護においては医療扶助が年々増加し国や自治体の財政を圧迫していますが、たちの悪いことに医療費については本人をほぼ通さずに支払う形になっているので、高額な医療費について本人が目にすることもなく、逆に、「あの先生はよく診てくれてありがたい」と思っている受給者もいるほどです。

その対策として数年前より、本人あてに医療費支出額の通知書類を配布するようになったのですが、あまり効果は得られていません。

後述しますが、現在ではさらなる対策が取られています。

役所に抗議する医師も

福祉事務所として不正診療を見抜く手立ては、「レセプト」のチェックと「本人への事情聴取」しかないのが実態です。

まずレセプトは頻繁にチェックしており、ここで明らかに「一般の患者」と「生活保護の患者」に対する一件あたりの医療費に差がみられるものを拾い上げていきます。

生活保護受給者にだけ高額な検査、治療を頻繁に行っているものは目につきやすく、疑義があれば受診している本人を福祉事務所に呼んで確認したりします。すると本人はそもそも何も自覚はないので素直に、「先生が必ず毎日来るように言った。」「自分は手術はいらないと言ったのに、必要だからといって手術した。」などと答えます。

その場合福祉事務所から担当医師に問い合わせの電話をしたりするのですが、ここで医師はまっとうな説明をするでもなく、いわゆる「逆ギレ」状態でまくしたてる医師もいます。


「この患者にはこの手術は必要であり、実施しなければ手遅れになるから行ったまでだ。」「毎日来いとは本人に言っていない。本人が来院して症状を訴えるから治療しただけだ。診療の妨害をするな。」などと言われれば、福祉事務所は医療行為そのものについての審査ができるはずもなく、明らかに詐欺行為等でなければグレーゾーンのものを判定することができないのです。

またこれも悪質ですが、先述した架空請求についても、本人は月1回しか通院していないにもかかわらず、なぜか月10回受診したことになっており、この場合も本人から「そんなに何度も行っていない。先月は1度受診しただけ。」との偶然の申告から発覚するようなものも見受けられます。

また数年前、あろうことか病院側が生活保護受給者たちの保護費をすべて管理し、何らかの名目で搾取していた事案も発生し、関係者は逮捕されています。

このように生活保護の現場では、悲しいことに「医師の倫理観とは何なのか」を考えさせられる場面に遭遇することも少なくありません。

医師だけではなく、整骨院でも

実は「医療扶助」は、病院だけではなく、「柔道整復」(いわゆる整骨院での施術)、「あんま・マッサージ」、「はり・きゅう」の施術機関でも支給されます。

ただし、支給対象となる施術内容は決められており、柔道整復なら「外傷性骨折、脱臼、打撲や捻挫への処置」、あんま・マッサージなら「身体の麻痺や筋委縮などを緩和させるためのマッサージなど」、はり・きゅうなら「神経痛やリウマチなど慢性病であって、医師による適当な治療手段がないもの」となっています。

肩こりや腰痛、予防のためのマッサージなど、単なる慰安目的の施術では当然支給されません。

また施術を行うためには「医師の同意書」が必要な場合がほとんどです。(必要ないものもあります。)

ところがここでも全額医療扶助が支給される制度を悪用し、単なる「肩こり」への施術を行っただけのものを、「骨折後の処置」としたり、また慢性病の患者に対しても必要以上に頻繁に施術を行うなどの行為が一部で横行しています。

さらにここでも架空請求で月に数回しか施術を受けていない患者に対し、多いものでは月に20回もの施術を受けたように装い何十人分もの高額な施術費を請求していた事案も発生しています。

そして福祉事務所や国から調査が入った場合には、「生活が苦しく、初めから目標額を定めてその額に達するまで架空請求を行った」と話すなど、税金を食いものにする一部の施術者がいることも事実なのです。

本当に悪質なのは、生活保護受給者を利用するまわりの人間

このように、生活保護を受給している高齢者を狙った貧困ビジネスは実に悪質で、その悪質さは本人に判断力がないところにつけ込み、巧みな言葉で誘導し、本人も知らないところで保護費を搾取するところにあります。これは国や自治体から国民の「税金」を搾取していることになるのです。

さらにたちの悪いことに、生活保護受給者が保護費の不正受給をしていたことがひとたび発覚すれば大きなニュースになりますが、病院などの医療費水増しなど、明らかな逮捕事案でないグレーゾーンの場合はおもてに出ることもなく、そのまま平然と診療を続けているところもあるということです。

しかしここ数年、このような事案が頻発し、不正の手口等も分析され明らかになりつつあるので、国や地方自治体はあらゆる手段で不正を取り締まる対策を新たに講じています。

では実際にどのような対策が取られているのか、具体的にみていきましょう。


国や自治体による、貧困ビジネス対策

生活保護法の一部改正

平成26年より、生活保護法の一部を改正する法律が施行されました。

これにより、生活保護法は60年ぶりに見直され、その中で福祉事務所の「調査権限」が拡大されました。

従来は福祉事務所が本人の不正受給に対し調査を行うことが難しかったものが、調査のための照会先(本人の資産や収入を調べるため情報提供をしてもらう関係各署を指します)に回答を義務づけることにより、踏み込んだ調査が行えるようになりました。(今までは福祉事務所への回答義務がありませんでした。)

実は貧困ビジネスでも、業者が本人を使って保護費の不正受給をさせるなどの事案が発生しており、これに対する調査も以前よりしやすくなったのです。

またこの改正で、生活保護法の指定医療機関制度の見直しを行い、以前は指定されれば「無期限」であったものを、有効期間(6年)を設けてその後は更新制とし、指定医療機関となるための要件も明確にしました。(以前はあいまいでした。)

また、もしも医療費の請求に関して不正があったときは、指定を即刻取り消すこととなりました。

さらにこの改正で国(地方厚生局)が直接、指定医療機関に指導を行えるようになり、そのための専門職員も配置されることとなりました。

これにより国をあげて医療機関に対し積極的に調査、指導を行うこととなったのです。

自治体での取り組み

自治体では現在新たに不正受給・不正請求専門の対策部署を設置し、専任の職員が日々調査を行っています。

ある自治体の一例としては、調査の過程で賃貸住宅において一般の人には「敷金・礼金ゼロ」で貸している物件を、生活保護受給者にのみ敷金・礼金を請求していた事案が発覚しました。

これに対しては厳正に対処し、今後一切の敷金・礼金を支給しないこととしています。

また、別の物件でも立入調査を行い、劣悪な住環境に住まわせて本人の健全な生活をおびやかす恐れのあるものも多数発覚し、今後このような物件に住居として入居する場合、生活保護決定は一切行わないこととしました。

また保護受給者を利用して住宅扶助を水増しさせる詐欺を行った業者を特定し、告訴した自治体もあります。

さらに、医療扶助に関する不正についても、専任の職員による調査で、本人は通院することが体力的に可能であるのに病院側が自宅に訪問して診察した形を装い「訪問診療料」を取っていたり、病院に来ていないのに何度も通院していると装い、医療費を架空請求する、また同様の手口で歯科での架空請求までもが発覚しており、これらに対しても医療費の全額返還と指定の取り消しなど行政上の措置を行い、悪質なものは告訴するなど、厳正に対処しています。

また自治体の福祉部門のみならず、区長レベルの管理職や財政担当者からなる「専門会議」を定期的に実施している自治体もあり、今後の課題についても「全部署をまたいだ市全体としての大きな課題」として議論されています。

その中でやはり生活保護受給者を多く抱える自治体は、「生活保護で起きるリアルな問題点は現場が一番よく知っており、その現場の声を聞いて現状をふまえた対策をしてほしい」ということを訴えるため、国に要望書を提出しています。

たとえば大阪市などは医療扶助について全額支給ではなく、本人や医療機関に金銭感覚を持たせるためにも「一部自己負担額の導入」などいくつかの提案をしています。

まとめ

生活保護法が60年ぶりに一部改定され、さらに国はここ数年で段階的に保護費の引き下げを行いました。

しかし生活保護費はいまだ国や自治体の財政を圧迫しており、国全体で2~3兆円規模、また保護率の高い大阪市の生活保護費も2,900~2,800億円で推移しています。

今後も、必要な人には確実に保護を実施することを大前提としながら、一方で不正受給や不正請求に対しては徹底的に対策を強化し、不正な保護費の流出を阻止することが課題となるでしょう。

また国としても生活保護制度のあり方について現段階でさらに検討しているところであり、近々新たに制度についての大幅見直しもあるかもしれません。今後もさらに生活保護制度の動きに注目していきたいと思います。

(2022年8月1日:更新)

本記事は、2017年10月8日時点調査または公開された情報です。
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