【アメリカ州制度】アメリカの縮図とされる州「イリノイ州」解説

日米安全保障条約をはじめ、日本と政治的にも、経済的にも密接な関係にあるアメリカ合衆国についての現地日本人レポートです。

今回のテーマは「イリノイ州」です。イリノイ州は、アメリカ史における数々の偉人を輩出した州ですが、特徴や歴史を通してどんなところなのか解説していきます。

アメリカ史における数々の偉人を輩出した州として、また、多種多様の民族が集結する州として知られるイリノイ州ですが、経済や人種などあらゆる面において「アメリカの縮図」とされています。

アメリカで何かしらのビジネスを始める際に必ずと言ってもいいほど「ピオリアで成功するか?」という言葉が使われます。ピオリアとはイリノイ州の中央にある街の名前で、人種、経済、年齢層、宗教などあらゆる面で様々なタイプの人が集まっているとされており、まさにアメリカの縮図なのです。

今回はアメリカの縮図とされるイリノイ州について、特徴や歴史などを交えて詳しく紹介します。

イリノイ州の特徴

2018年時点でのイリノイ州の総人口は約1280万人です。イリノイ州はアメリカ中西部にあり、人口は国内トップ5に入るほどで、様々な人種によって構成されているのが特徴です。白人が60パーセント、黒人とヒスパニック系がそれぞれ20パーセントを占めています。

日本人にとってはイリノイ州という響きよりも、同州の経済都市であるシカゴのほうが馴染みがあるかもしれません。シカゴはイリノイ州最大の都市で、ニューヨーク、ロサンゼルスに次いでアメリカを代表する第3位の経済都市です。

シカゴ市だけでハワイ州の倍の人口に相当する300万人が生活しており、2017年にはシカゴは世界7位の金融センター、世界12位の総合都市に選ばれています。イリノイ州内に限らず、シカゴは世界的にも影響を持っている都市なのです。

アメリカでトップ5に入る人口の背景には1900年代に迎えた大きな経済成長が深く関係しています。とくにイリノイ州北部の兵器製造や機械製造などの工業都市、南部の石炭などの炭坑業や農業に従事したアフリカ系アメリカ人などの移住は爆発的でした。州全体で金融、工業、農業など多様な業種が生まれたことから比例するように人口も増えたのです。

イリノイ州は経済だけでなく、政治の面でもアメリカ史に欠かせません。なかでも歴代のアメリカ大統領とイリノイ州の関係は深いものがあります。エイブラハム・リンカーンやバラク・オバマなどはイリノイ州選出の大統領で、エイブラハム・リンカーンは出生地こそケンタッキー州ですが、生涯のうち31年間をイリノイ州で過ごしており、イリノイ州の州都であるスプリングフィールドに埋葬されています。

イリノイ州民にとってエイブラハム・リンカーンへの思い入れは強く、自動車のナンバープレートには「Land of Lincoln」という言葉が刻印されているほどです。アメリカ史上最も偉大な大統領と評されることが多いエイブラハム・リンカーンはイリノイ州との繋がりが強いことを知っておくといいでしょう。

音楽などの芸術でも多様性が独自の文化を生み出し、ジャズやブルースなどもイリノイ州で独自の進化を遂げたとされています。イリノイ州は、政治、経済、文化、人種など様々なことが混ざり合う多様な州であることが特徴と言えるでしょう。

イリノイ州の歴史

イリノイ州は、1818年に21番目の州として認められました。1300年から1400年の時点でおおよそ4万人がこの地で生活していたとされており、1800年頃ニューヨークに人口が越されるまではアメリカ大陸で最も多くの人が生活をしていました。

1900年頃にはイリノイ州北部で工業、南部で農業が盛んになり、アメリカ南部で奴隷として生活をしていた人たちがこぞって移住してきました。さらに、イリノイ川を経由し、五大湖とミシシッピ川を結んだシカゴ港は海上の要となり他州や他国との繋がりを加速させたのです。このような背景が今日まで続くイリノイ州の発展に繋がっています。

そもそも、イリノイ州にはイリノイ川に沿うようにして多くのインディアン部族が生活していました。州の名称の由来にもなった「イリニ族」が1667年頃から、フランスの聖職者アルエと交易を始めたのが白人との接触の始まりです。

1682年には、アメリカ大陸東部から開拓を進めていた白人によって生活の場を奪われたインディアン達がイリノイ州まで逃げてきました。そこで生活をしていたイリニ族と、東部から逃げて来たポタワトミ族やマイアミ族などインディアン同士で争いごとが始まってしまいます。この結果、イリノイ州で生活していたイリニ族はわずか100名ほどにまで減少します。

1673年の時点でこの地を探検していたフランス人宣教師のジャック・マルケットとフランス系カナダ人探検家のルイ・ジョリエによって、この地はフランス植民地帝国の一部となりましたが、おおよそ100年後の1763年にはイギリスの領土になります。

1783年、アメリカ独立戦争に勝利したアメリカはイギリスからイリノイの土地を取り返し、イリノイ準州の前身となる北西部領土として扱い、1809年には準州、1818年には21番目の州として認めました。

その後、イリノイ州南部から開拓が始まり、このエリアで生活をしていたインディアンは一掃されてしまいます。そのなかにはアイオワ州に避難していたイリニ族少数も含まれていましたが、1832年のブラック・ホーク戦争でアメリカ軍によって制圧、追放され、イリニ族は再び故郷に戻ることはありませんでした。

1854年、この地のインディアンはオクラホマ州に強制移住させられ、今日でもアメリカ政府はイリノイ州にはどのインディアン部族も存在しないと決め、インディアン保留地の確保や、子孫がインディアン・カジノを運営することを認めていません。

州に昇格後は、現在までに3人の大統領を選出してきた歴史があり、16代目のエイブラハム・リンカーン、18代目のユリシーズ・グラント、44代目のバラク・オバマがイリノイ州を政治拠点にしていました。アメリカでは、史上最高のリンカーン大統領と、史上最悪のグラント大統領が引き合いに出されることがあります。

このようにイリノイ州は、古くから多くの人が生活をしていましたが、白人の開拓によってインディアンが犠牲になったり、過去にはフランスとイギリスの領土だったことなど複雑な部分もあることを知っておくといいでしょう。

イリノイ州の政治情勢

イリノイ州は2012年、2016年の大統領選で民主党を支持しています。州屈指の都市であるシカゴでも民主党の方が支持されており、工業地帯の北部や田園部の中部では共和党が支持される傾向があります。

これまでにアメリカの上院議員に選ばれたアフリカ系アメリカ人議員6名のうち3名はイリノイ州から選出されています。過去に大統領を輩出してきた政治色が強いイリノイ州ですが、州政府では汚職が蔓延しており、いまだに収賄などが慣行されている一面もあります。

イリノイ州の経済

2018年時点、イリノイ州の失業率は4.8パーセントで、アメリカの平均値よりもやや高い数値です。イリノイ州全体では工業、農業、金融など様々な職種があるものの、いずれも専門性が高く州民が働くには敷居が高いとされています。

近年では風力発電、バイオ燃料など次世代エネルギー産業が盛んになっており、2025年までに州内のエネルギー25パーセントを再生エネルギーで賄うという目標を立てています。アメリカのなかでも珍しく、再生エネルギー産業への取り組みが進んでいる州のひとつと言えます。

イリノイ州は、アメリカ全州のなかでも最も原子力発電量が大きい州としても知られており、2008年にはイリノイ州の半分の電力は原子力で発電されたほどです。

イリノイ州の税金

2018年時点で、イリノイ州の消費税は8.70パーセントです。州税が6.25パーセント、地方税の平均が2.45パーセントという内訳です。消費税は一般商品と食料品や医薬品などのふたつに分類されており、食料品や医薬品は1パーセントのみです。所得税は確定した利益に対して一律で3パーセント課せられます。

アメリカ中西部のなかでも税金が高い州として知られており、周囲の州よりも消費税は最大で3パーセント以上の開きがあります。

イリノイ州の銃や薬物問題

イリノイ州では、医療目的に限りマリファナが解禁されています。中西部ではイリノイ州だけが医療目的に限りますがマリファナを入手可能です。イリノイ州は銃に対する取り組みが厳しく格付けでは「B+」の評価です。州民10万人に対し、銃による犠牲者数は9.5人と低い割合です。

イリノイ州の教育または宗教事情

イリノイ州にはシカゴ大学やノースウェスタン大学などがあります。シカゴ大学では、州が注力しているエネルギー産業に関わりが強く、シカゴ大学のキャンパスには原子炉があり、過去には世界で初めて臨界に達した「シカゴ・パイル1号」がありました。後に、長崎に投下されることになる原子爆弾のプルトニウム239の開発に使われていました。

イリノイ州の宗教はキリスト教が最も多く、カトリックとプロテスタントに二分されています。シカゴを中心にして、ヒンドゥー教、ユダヤ教、イスラム教など様々な宗教があり、イリノイ州がアメリカの縮図と言われる所以にもなっています。

まとめ

イリノイ州は、現代ではアメリカの縮図と呼ばれていますが、むかしから多くの人が生活をし、文明が栄えていた場所でした。白人による開拓、南部からの奴隷移住、経済成長など多くの要因が混ざり合っていまの姿になっています。

本記事は、2018年8月14日時点調査または公開された情報です。
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イリノイ州
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