司書の資格とは?持っていないと図書館で働けないもの?
司書の仕事内容について、文部科学省は以下のように定義しています。
司書は都道府県や市町村の公共図書館等で図書館資料の選択、発注及び受け入れから、分類、目録作成、貸出業務、読書案内などを行う専門的職員です。
- 出典
- 司書についてー文部科学省
司書とは、固い表現ですが、要するに「図書・図書館についての専門知識があって、資料を揃えたり、レファレンス(資料についての問い合わせ)に対応している人」を指します。司書資格は、これらの業務を全うするために必要な知識・技能を持っていることを証明するものです。
実は司書資格は「これが無ければ図書館で働いてはいけない」というものではありません。市区町村の職員として採用され、異動を繰り返す中でたまたま図書館の配属になることがあります。大学図書館などでも、大学職員の総合職として採用され、たまたま図書館の事務方を担当する場合もあります。とはいえ、公共サービスとしての図書館を理解する上で、司書資格の勉強はとても役に立つものですし、専門職採用の必須条件となっている自治体もありますので、ぜひ取得しておきたい資格です。
司書として勤務するには、基本的に各自治体・学校の採用試験を通過する必要がありますので、注意してください。
また、小中学校の図書室に勤務する「学校図書館司書」の資格については、通常の司書資格にプラスして、教員免許の取得や司書教諭としての講習を受ける必要がありますので、今回は特に触れないこととします。
インターネットの時代になっても、司書は必要?
ところで、「今はインターネットがあるし、本のエキスパートである司書は不要になりつつあるのでは?」という疑問を持ったことはありませんか?一般的な検索サイトを用いれば誰でもある程度の調べ物はできるので、専門職など不要なのでは、という考え方もあるでしょう。
司書が特別なのは、「出典を明記できる情報」を、「的確な方法で引用する」方法を熟知している点です。紙の媒体を得意とする傾向はあるものの、やることはインターネットであろうが関係ありません。
インターネットで検索していると、専門家が書いたのではない記事や、ソースのはっきりしない情報を目にすることはありませんか?論文など、世間に発表する資料を作る際には「ソースが明確であること」はとても大事なはずなのに、インターネット上の情報は玉石混交で、ソースが不明確なものも数多くあります。そんな中から、「きちんと使える情報を拾い集める」ことは、実はとても高いスキルを要求されるのです。
司書資格の講習を受けていると、辞書、辞典類の取り扱いについて多く学びます。それと同時に、大学や研究機関の出す論文や、新聞記事など、パソコンを通して様々なデータベースを用いる方法についても講習があります。また、古書や貴重書はデジタル化が進んでいるので、現物を取り寄せなくてもWEB上で閲覧ができたりします。各種ツールを使い分け、利用者に的確に提供できるのが、一人前の司書と言えるでしょう。
そのため、司書はパソコンの操作に長けている必要があります。タブレットなどのデジタル機器を利用する場合もありますし、技術的発展にキャッチアップしようと思えば、勉強が終わることはありません。「資格さえ取得すればいいんだ」ではなく、その後も自主的に勉強を続けることは、より司書としてのレベルを上げることになります。
司書資格取得までの道筋は?
司書資格は大学時代に取得するのが一般的です。しかし通っていた大学で講義が開催されていなかった、社会人になってから司書を目指そうとしているなど、社会人になってから資格取得を目指す人も多くいます。
司書資格をとるために必要必要となる科目、単位
司書の資格をとるために必要なのは、図書館法に基づいて開講される13科目の講義を履修し、24単位を取得することです。
必須科目である「図書館概論」や「生涯学習概論」、「児童サービス論」などに加えて、選択科目である「コミュニケーション論」や「図書文化史」などからいくつか履修するという形です。選択科目の開講状況は大学によって異なりますので、入学する大学のシラバスを確認してください。
社会人になってからの資格取得のためには、大学で開催される講習を受け、試験や実習を経て単位を取得する必要があります。大学に入り直す、と聞くとハードルが高いかもしれませんが、「科目等履修生」という形で社会人にも門戸を開かれています。入学の際の選考はもちろんありますが、多くの場合は作文など簡易な試験で入学できます。何百万円もかけなくても大学の講義を受けることができるので、気負わずにチャレンジしてみてください。
講習実施大学は年度によって変更があるため、最新の情報を確認してください
大学時代に取得した単位はありませんか?
一部の単位を大学時代などに取得していれば、これから勉強するのは残りの科目だけで良くなる場合があります。また、図書館司書としての実務経験や、社会教育主事・学芸員のための講義や実務経験が、単位として認定されることもあります。心当たりのある方は、大学時代に受けた講義を振り返ってみたり、自身の実務経験が該当するかどうか調べてみると良いでしょう。
社会人から司書資格を取得を目指す2つの方法
資格取得のための学習方法としては、以下の二つがあります。
(1)短期集中で通学をするパターン
(2)時間をかけて通信教育をするパターン
途中で挫折してしまい資格がとれなかった…ということがないように、それぞれのメリット・デメリットをよく理解して、自分のライフスタイルにあった学習方法を選択してください。
(1)短期集中、大学に通学して司書資格を取る
大学に通学し、講義を受けたり実技の講習を受けたりすることで、司書資格が取得する方法です。司書講習は、一般の大学生が夏休みの間、空いたキャンパスを利用して開催されることが多く、講習期間は2~3ヶ月ほど。土日を除いた週5日、朝9時頃から夕方5時頃までを大学で過ごすことになります。数時間の講義を受けた後にテストを受け、理解しているかの確認を行うというのが基本的な流れです。
費用については、受講料とテキスト代、単位の認定試験の受験料などを合わせて12万~15万円程度が相場です。これに大学入学のための検定料、通学のための交通費などが足されますので、留意してください。
通学での資格取得に向いているのは、
〇 短期間に集中して学習したい
〇 学習の費用を安く抑えたい
〇 自宅で学習を継続するのが苦手
といった方々です。特に勉強中に挫折してしまいそうな人は、短期間の通学だとやる気を維持できる可能性が高いので、確実に資格を取りたい場合は通学が良いでしょう。受講生は周りに大勢いるので、分からない部分を教え合ったり、情報交換したりするのが容易なのがメリットです。
一方でデメリットとしては
▲ 日中は講義があるため、仕事や家事などを休まなければならない
▲ 通学可能な範囲に受講できる(司書講習を開催している)大学が立地していなければならない
といったことが挙げられます。日中、大半の時間を大学で過ごすことになりますから、相当の覚悟や準備、経済的な余裕を持っておく必要がありますね。
(2)じっくりマイペースに、通信教育で司書資格を取る
金銭面・時間的な負担を軽くしたい人には、通信教育がおすすめです。テキストを使って自習し、内容を理解できているかを試験で確認して、単位を取得できるというのが全体の流れです。
通信教育とはいえ、テキストではなく講師に直接習う「演習科目」や、単位認定の試験などで、通学(スクーリング)が必要な場合もあります。その時だけ大学や試験会場に足を運ぶこともありますし、最近ではビデオチャットで受講・受験させてくれる大学もありますので、各学校の講義内容を確認してみてください。「少しなら通学しても良い」のか、「完全に通信教育だけで資格を取得したい」と考えるのかによって、選ぶ大学が変わってきます。
費用は大学によってかなりばらつきがあり、13万~30万円程度となっています。入学の際の検定料やテキスト代などが別途必要となる点は、通学する場合と変わりありません。
〇 空いた時間を使って学習を進めることができ、仕事や家事と両立可能
というのがやはり最大のメリットで、計画性に自信があるという方には、通信教育をおすすめします。
一方でデメリットとしては、
▲ いつ、どの科目を勉強し、試験を受けるのか自分でスケジューリングする必要がある
▲ 通学に比べて、資格取得までに時間がかかる(最低でも半年以上)
▲ 途中で挫折してしまいやすい
という点が挙げられます。
受講料などを払ったものの、結局資格が取れなかった…では意味がありません。少しずつでも着実にテキストを読み、試験をこなすことができなければ、通信教育での資格取得は難しいでしょう。
まとめ
司書資格を取得するまでのイメージは掴めましたか?
資格の取得にはそれなりの費用と時間がかかります。特に働きながらの勉強となると、家事や趣味にかける時間が圧迫され、それなりの負担感も生じるでしょう。
一方で、会社以外の場所で、新しい知識を学んだり、勉強する仲間ができたりすることは、これまでになかった刺激になります。特に司書資格を学ぶ人は老若男女問わず多くいますので、幅広い世代の方と知り合うきっかけになります。司書資格の取得という共通の目標があるので、親しくなりやすいというのもポイントです。
司書資格を取得するには、講義の受講料、テストの受験料、テキスト代についても考えなければなりません。忙しい合間を縫って学習するのも大変なことですが、それによって得られるものは大きいですよ。確実なプランニングと計画通りに進める実行力が試されますので、入念に準備をし、学習を始めてください。
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