地方公務員の「司書」は、地方自治体が運営する公立(公共)図書館で働く専門的職員です。正式には「図書館司書」といい、図書館資料の選択、発注からその分類、目録作成、貸出業務、読書案内など、多岐に渡る業務を行います。
本記事では、地方公務員の「図書館司書」になる方法について解説します。
地方公務員として、公立図書館で「司書」として働くポイントまとめ
「司書」といっても、私立図書館や企業内図書館等で働く司書は、公務員ではありません。
公務員として司書の職に就くポイントは、以下の2つです。
1)「司書資格」を取得する。
2) 地方自治体が実施する「免許資格職採用試験」区分の「司書」の試験を受けて合格し採用される。もしくは、地方自治体の職員として採用されたのち、各地域の公立図書館に配属される。
今回は、「司書」として公立図書館に就職する方法や、司書資格の取り方などを詳しく解説します。
自分の住む「マチ」の図書館で働きたいと思っている司書志望の方や、すでに司書として働いているけれど、公立図書館で公務員として司書の職に就きたい方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
地方公務員の「図書館司書」になるには?
公立(公共)の図書館に「司書」として採用されるには、通常、地方自治体が実施する「免許資格職採用試験」区分の「司書」の試験を受けて合格し採用される必要があります。
受験資格や内容は、各地方自治体によって異なりますが、共通するのは当然、司書の資格をもっているということ(または見込みのもの)です。
その他、過去の事例として、埼玉県の司書募集を例にすると、年齢は、19才から29才という年齢といった設定をしています。
ただし、上記のような「司書職」区分での採用を行っているのは、ごく一部の地方自治体です。ですが、公立の図書館は多くの街にありますよね。ここで働いている職員はどのように就職したのでしょうか?
実は自治体の多くは、初めから公立図書館の「司書」として職員を募集しているわけではなく、職員の中から適任者を公立図書館に配属しているのです。
つまり、多くの場合、公務員の「司書」として働きたければ、地方公務員試験の「行政職」の試験を受けて合格し、自治体の職員として採用され、その上でそれぞれの街の公立図書館に配置される必要があるということです。
公立図書館の「司書」になるために - 「司書」として採用されよう
上記で述べたように、公立図書館の「司書」として採用されるには、
- はじめから「司書」として採用される
- 自治体の職員として採用されたのち、公立図書館に配属される
の2つのパターンがあるのですが、それぞれの特徴について説明します。
公立図書館で「司書」として働く方法:はじめから「司書」として採用される
はじめから「司書」として採用されれば、すぐに司書として働くことができます。しかし、この採用方法は「競争率が高く、チャンスも少ない」ことが特徴です。
なぜかというと、こういった形の採用を行っている自治体は本当に少なく、しかも公立図書館は、「毎年新入職員が必要」という場所でもないので、毎年募集を出さない自治体がほとんどです。
たいていは欠員が出たときに求人を出す場合が多く、採用人数は若干名であり、そのため倍率は数十倍程度と非常に高くなるようです。
公立図書館で「司書」として働く方法:自治体の職員として採用される
2つ目は、自治体の職員として採用され、図書館に「司書」として配属されるパターンです。
この採用方法の特徴は、「すぐに司書として働けない」ということです。
都市部の自治体では「総合職」の採用が多いため、図書館に限らず、庁内の様々な部署に配置される可能性があります。従って、「絶対に、すぐに、他の仕事はせず、司書として公立図書館で働きたい」という人は不向きかもしれません。
なお、司書資格を持っていると図書館関係の部署に配属される可能性は高い傾向にあります。
その他の、公立図書館で「司書」として働く方法
上記の2点以外にも、公立図書館で「司書」として働く方法はあります。しかし注意点として、下記の採用では、立場は公務員ではないです。
非常勤職員として働く
1つ目は「奉仕員」などの名称で、有期で雇用されるパターンです。いわゆる「非常勤職員」と呼ばれる立場です。
勤務日数・時間は、地方自治体によって様々ですが、1日6~8時間、週4日~5日が多いように思います。給料についても、時給・日給・月給と様々なので、求人票などで確認をする必要があります。
指定管理、業務委託などで働く
2つ目は、企業やNPOに就職し、公立図書館に派遣されるパターンです。最近は市区町村の図書館の運営を民間に委託している自治体も多く、それを受託している企業やNPOに所属することで、公立図書館の司書の仕事に就くことができます。
確実に図書館で仕事ができる一方で、雇用形態としては公務員ではないので、安定性に欠けるのがデメリットです。
公立図書館の「司書」になるために - 司書資格を取ろう
上記でも述べたように、公立図書館で「司書」として働くには、「司書資格」を有していることが必須になります。この司書資格は国家資格の一つであり、文部科学省が管轄の資格です。
この司書資格を取得する方法は大きく分けて3つあります。
1つめは、大学や短大で司書養成科目の単位を修得することです。2019年4月1日の時点で、「司書養成科目」の単位を修得できる大学や短大は203校あります。
2つめは、大学や短大を卒業した後、司書講習を受ける方法です。司書講習では、大学で4年間かけて習得する「司書養成科目」の単位と同じ単位数を、2か月で習得することになります。
3つめは、高校卒業後にまずは「司書補講習」を受けて「司書補」となり、その後3年以上の実務経験を経て、上記で説明した「司書講習」を受講する方法です。この方法であれば、大学や短大を卒業していなくても、司書資格を得ることができます。
公立図書館の「司書」の待遇
次は、公立図書館の司書の待遇について説明します。
公立図書館の「司書」の給与について
公立図書館の司書の給与は、雇用形態によって差があります。
常勤職員として働く場合は、図書館職員であると同時に公務員でもあるので、給与は公務員法に基づいて定められています。地方公務員の場合、平均月給が35~37万なので、公務員として公立図書館で働く場合も、同程度と考えていいでしょう。
一方、非常勤職員として働く場合は、勤務日数にもよりますが、月給12万〜18万円、年収にして300万円前後が平均だといわれています。
指定管理、業務委託などで働く場合は、企業やNPO、つまりは雇い主によって給与に差があるので、一概には言えませんが、やはり月給12万〜18万円が多いとされています。
公立図書館の「司書」の休日について
上記いずれの雇用形態にしても、司書の待遇として留意する必要があるのは、休日の扱いについてです。
自治体にもよりますが、最近は土日祝日も開館している図書館が多く、年末年始やお盆も休みがない館も増えています。たいがいは互いに協力し合いながら休む日を調整するのですが、ご家族との予定が多い方などは、祝日などに休みづらい可能性があることを事前に考慮した方が良いでしょう。
さいごに - 公立図書館の役割を知ろう
公立図書館の「司書」になる方法を説明する前に、まずは、公立図書館の役割について知ってください。
公立図書館は、学校の図書館や企業内などにある図書館と違って、老若男女様々な人が利用します。公立図書館では、本の貸し出し・返却はもちろん、子ども向けのお話会や読書会、地域の歴史に関するイベントなども開催されているので、参加したことがある方も多いのではないでしょうか。
館内を見回せば、年齢、性別、職業など様々な人が利用している公立図書館ですが、そんな環境を保つために、公立図書館では下記のような宣言をしています。
すべての国民は、いつでもその必要とする資料を入手し利用する権利を有する。
出典:図書館の自由に関する宣言
この宣言に基づき、公共図書館はどのような人でも区別なく資料を提供しています。
例えば大学図書館なら「学費を払っている人」を基本的なサービス対象として「限定」していますよね。公共図書館は、「その地区に在住・在勤・在学の人しか借りられない」などのルールはあるものの、図書館に入って資料を手に取ることは誰でもできるわけです。そんなのは当たり前と思うかもしれませんが、実はこれは、人類の長い歴史の中で培われたきた、大事な環境です。
公立図書館で「司書」として働く人は、来館者にただ本の貸し借り作業をするのではなく、人々が「知」にアクセスできる環境を守る役目を負っていることを意識する必要があります。
「図書館の自由に関する宣言」は、図書館サービスの根幹を成す大事なものなので、ぜひ目を通してみてください。
》参考:http://www.jla.or.jp/library/gudeline/tabid/232/Default.aspx
まとめ
以上、「【知の案内人】公立図書館の「図書館司書」になるには?」でした。
公立図書館の司書を目指している方は、ぜひこの記事をご参考ください。
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