はじめに
公立小学校で非常勤職員として働く、女性の「学校薬剤師」によるキャリア体験談レポートです。
なお、公立小学校のため、地方公務員として勤務します。
「薬剤師」を目指した理由
進学時、担任の先生に将来について相談した際に薬学部を勧められました。
もともと化学ができる学部に興味はあったのですが、薬学の道なら就職や、長い目でみても生活に困らないと感じたためです。
「公立小学校の学校薬剤師」の仕事内容について
学校薬剤師の主な仕事内容は、色々な種類の「環境衛生検査」です。
環境衛生検査:水道水の科学検査
学校での環境衛生としてあげられるものとしては、水道水です。教職員による日常の検査以外に、薬剤師が定期的に科学検査を行います。
環境衛生検査:施設や設備の管理衛生
また、ほぼ全ての学校に設置されている水泳用プールは、生徒の汚れや汗などで、すぐに汚れます。「プール熱」など水質の汚染が原因となる病気もあり、適切な検査と水質状態を保つことは欠かせません。
水質や消毒が基準内にあることはもちろんのこと、消毒を行う付属の施設や設備についても、管理衛生を検査します。
トイレ等の排水周りは、清潔で快適な学校生活を送る上でとても重要なことで、決められた項目を検査し、環境衛生へ被害が出ないようにする事も求められます。
環境衛生検査:給食施設の管理
給食施設の管理は、学校薬剤師の仕事の中でも最も責任の大きな仕事のひとつです。
給食で食中毒が発生すると、一度に大勢の生徒や職員に被害が出てしまいます。給食施設の衛生環境を検査するだけでなく、食器や器具の洗浄の実態についても調べます。
環境衛生検査:照明と採光
周りから意外だねと言われる仕事としては、照明と採光についてです。「明るさは行き届いているか」「まぶしくないか」などの項目について、照度計で計測をします。
環境衛生検査:騒音環境
騒音環境も仕事です。騒音計を用いて、「教職員の声は聞こえているか」、「勉強の妨げになる騒音がないか」について検査します。
環境衛生検査:空気環境のチェック
冬は暖房の使用により、教室内の空気は悪化する傾向になります。空気の環境については「温度」「湿度」「ホルムアルデヒド」「ダニアレルゲン」「浮遊粉塵」等の項目をチェックします。
環境衛生検査:害虫駆除
ハエやゴキブリ、ネズミといった害虫は、病原菌を媒体し衛生環境が悪くなります。殺鼠剤や殺虫剤を使用し、駆除します。
生徒の健康相談や保健指導
「環境衛生検査」以外には、生徒の健康相談や保健指導も大事な役割です。基本的には校医が担いますが、食中毒や感染症などの症状が生徒にみられた場合には、薬剤師が担うことになります。
医薬品の管理
学校薬剤師が設置される理由であり、大切な職務として「医薬品の管理」があります。校内(科学室、保健室等)で使用する医薬品、毒物、劇物の薬品と用具が適切に管理されていることを検査しています。
近年、タバコ、麻薬や覚せい剤、違法ドラッグ、シンナーなどの薬物乱用については、低年齢化が進んでおり、学校教育で防止活動をする重要性は高まっています。薬剤師だけで対応できる問題ではありませんので、地域社会と協力連携し、危険性の共有と防止活動に取り組みます。
学習指導要領の改定に伴い、平成24年から中学3年の保健体育に「くすり教育」が導入されて以来、学校薬剤師の職務は注目を浴びているようです。
「公立小学校の学校薬剤師」の1年間の仕事の流れ
年間でスケジュールがあり、日によって出勤時間などスケジュールがかなり違います。
自身の昨年の年間スケジュールです。
4月中旬~5月中旬
飲料水検査
貯水槽、水飲み、手洗い場の衛生管理状況の検査
6月下旬~8月中旬
プール水衛生検査
(30日を超えて開所する場合は2回実施)
給食室の環境衛生検査
6月下旬~9月初旬
全国学校保健調査実施
(公)日本薬剤師会 学校薬剤師部会による調査
10月初旬~1月下旬
学校環境衛生検査
その他 随時
学校保健委員会(学校や園によって開催時期に違いあり)
くすり教室、薬物乱用防止教室、禁煙教室、など(学校や園によって開催時期、開催有無に違いあり)
児童生徒の学校生活における健康相談応需(養護教諭より)
学校環境・清潔に関しての相談応需
他
「公立小学校の学校薬剤師」の給料・残業・有給休暇について
私の場合ですが、収入は年間で15万円ほどです。年に7~11回程度の勤務になります。また、残業はほとんどありません。
学校の入学式・運動会などの行事に招待される事もあり、粗品をいただけたりします。
薬物乱用防止教室などの講習はほとんどボランティアですが、収入を求めている訳ではないため、あまり気にしていません。
この仕事で、働いているときに困ったこと
学校薬剤師として働くため、時間に融通がきく職場への転職が必要でした。
また、学校薬剤師は各学校に1人しか配属されていないため、わからないことがあった時に先輩に聞く事ができませんので、知識やスキルを常に保有した状態が求められます。
薬剤師になるための勉強の中に、学校薬剤師の仕事の項目のすべては入っていません。学校の中での業務が好きでない、やりがいを見出せないとしんどいかもしれません。
また、学校薬剤師は人員不足で、私は2校を掛け持ちしています。本当は1校につき1人いるのがよいと思いますが、私のように掛け持ちしている方も多いです。
この仕事や職場でよかったこと
金銭的なメリットを求めることは難しそうですが、感謝された時の喜びは大きいです。
学校薬剤師の場合は自ら考えていくことも課題のひとつになってきますので、向いている仕事に出会えたと思っています。
また、普段の調剤薬局の業務とは違い、基本的には一人で任される仕事ですので、他の薬剤師に干渉されることなく、自分のポリシーを貫いて仕事に集中することができます。
地域社会に貢献できることと、自身と自身の子どもが通う学校を担当することは、やりがいと喜びを感じます。
「公立小学校の学校薬剤師」の仕事エピソード
担当している学校の入学式や運動会などの学校行事に招待されることも多いです。地域に根差して子供たちの成長を見守ることができる薬剤師なのだという、この仕事ならではのやりがいや喜びを感じます。
子ども達と関わることにも抵抗がありませんでしたので、子ども達の「何してるの?」「どうやって調べるの?」の問いに答えるのが楽しいです。
学校薬剤師は、今児童分野で求められていること、これから求められる分野を直に経験できるので、薬剤師として視野を広くできるような経験を積むことができます。
子ども達と接する機会のある学校では、普段の調剤業務からは得られない感動や発見がたくさんあります。
子どもが通っている学校で、学校薬剤師をしているため、子どもの学校での様子をPTA以外で見ることができるのも貴重です。
「薬剤師」の職場恋愛について
年間で勤務日数が少ないことと、「学校につき一人の配属」になりますので、「唯一の薬剤師」ということで、教職員の方からは一目置かれます。
男性教員の方から、食事のお誘いを受けたことが一度だけありました。
私は別の職場(調剤薬局)での出会いからの結婚です。薬剤師は職場結婚が多く、私の勤務している調剤薬局でもお付き合いから結婚に至ったカップルが3組ほどいます。
薬局などでの職場結婚は比較的多い業種です。
まとめ ー「薬剤師」を目指す方へメッセージ
薬剤師という仕事は、単調になりがちですが、どんな職場でも「人と人」。
相手を深く感じ、この仕事をしてほしいと思います。頑張ってください!
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