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【大学を考える その1】大学の就職支援機能(大学生の就職対策)

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目次

大学による大学生の就職対策

社会状況が刻々と変化し、毎年「売り手市場」や「買い手市場」の変遷を乗り越え、各社は「将来を託せる人材」「企業を成長させてくれる人材」に出会いたいと、こだわりを持って採用活動に当たっています。経団連や大手企業が就職協定という取り決めによって「採用活動の解禁もなんのその」で、3年次の後半からすでに内定を勝ち取っている学生も少なくありません。そういった長期間の囲い込みからの厳選採用や、就労環境や業務の多様化に伴い、就職戦線は益々厳しい環境下にあります。

そのような中で、各大学も就活を成功に導くための様々な準備プログラムを用意しています。キャリア支援センターなどを設定することで、専門のスタッフが学生の相談に対応するだけでなく、講義の中にも就活対策プログラムが設けられている学校も少なくありません。

いずれにしても、学生が就職活動を円滑にかつ積極的に展開できるよう、企業情報や採用活動における各種試験対策を含めた雇用慣行の基礎知識、自己分析や自己PRの方法、志望動機の書き方、業界・業種研究、社会人としての基本マナー、グループワークや集団試験対策など、就職活動に臨むにあたっての数々の対策や準備を進めていきます。また、企業の採用担当者を招聘するなどのほか、学内における就職セミナー開催や、就職フェアの開催など、きめ細かな就職準備が用意されています。

そこで、今回は、大学について、大学における就職活動支援機能をフォーカスして、考察していきます。

就職のプロ集団「キャリア支援センター」

大学の就職活動サポート機能といえば、必ず取り上げられるのがキャリア支援センターです。学校によっては、キャリアサポートセンターやキャリア支援課などという名称が用いられる場合もあります。とにかく就職に関することであれば、「まずキャリア支援センターへ出向くこと」と言われるほど、その機能は就職活動に関する全てをカバーするものとして明確に位置付けられています。

キャリア支援センターの設置目的は、単なる就職斡旋業務ではなく、就職支援や学生の適性、企業情報や採用情報の開示や学生の適正に応じた就職先の選定やパーソナリティに合った企業適正を見出すなど、将来を見据えたキャリア支援を行うことです。

平成26年度の新社会人においては、新入社員の23.8%の割合が3年以内に離職するという結果が出ています。(図表1)つまり1/4近くの新社会人の方々が、何らかの理由で離職することになるのです。理由は様々でしょうし、企業環境が自分の価値観と異なるという状況であれば、離職することも特段問題はないと思われるのですが、できれば一度入社したならば何とか新たな技術や業務実績を積み上げてから離職するべきといえます。

社会人最初のストレスに耐えかねて、逃避するような離職は企業にとっても、離職者本人にとってもマイナス以外の何者でもありません。学校サイドからすれば、適合性を見誤ったことになり、次年度の就職活動に支障をきたしかねません。そういった原因となる企業適合性におけるミスマッチを最小限度に抑えるためにも、キャリア支援は重要であるといえます。

また、常勤で配置されているキャリアカウンセラーなどによって、3年次よりフォローしていくことになります。できる限り早期からの就職活動に向けて、個人のパーソナリティを理解するほか、希望する業界や希望職種を把握し、学生との適合性をみるためです。

また、ゼミの担当教員と緊密に連携することで、就職活動に関する学生の動向の把握や、就職対策講座などの連絡を行います。直接相談のほかにも、数多くの就活関連プログラムや各種資料、充実した就職サポートを行うための業務は全てこのキャリア支援センターが主体的に行われます。このように今や大学には必ず存在する重要な部門となっています。

(図表1)新規大学卒業者の(大分類)産業分類別 H26年度卒業3年後の離職率の推移


産業分類別 H26年度卒業3年後の離職率の推移

この学生サポートに当たるスタッフは、専門の資格を有しているケースが多く、キャリアカウンセラー、キャリア・コンサルタント、産業カウンセラーなどの有資格者を配置する学校も多く見られます。

CDA:キャリアカウンセラー(キャリア・コンサルタント)は、個人の興味、能力、価値観などの特性をもとに、個人にとって望ましい職業選択を援助し、自らを高めていけるようにするキャリア形成の専門家です。キャリアカウンセラーの実務家向け資格CDAは、厚生労働省キャリア・コンサルタント能力評価試験に対応した資格です。

また、キャリア・コンサルティング技能士(国家資格)は、労働者の有する技能の程度を検定しこれを公証する国家検定制度で、働く人々の技能と地位の向上を図ることを目的としており、職業能力開発法に基づいて実施されます。

産業カウンセラーとは、主に企業で働く人とその家族を対象に、自立支援を行う人たちが持つ資格です。1992年から2001年までの間は産業カウンセラー試験が旧労働省認定の技能審査で公的資格となっていましたが、2001年をもって技能審査から除外されたため、以降は民間資格となっています。

こういったプロの方々が、日々学生のサポートを行なっているのです。また、体制を充実させている学校では、各学科の専門家を設置し、可能な限り学生が希望する進路へ導くよう配慮されている例もあります。

教員が関わって就職活動を進める「就職委員会」

卒業後に進む人生を左右する就職活動において、大きな影響をもたらす可能性があるのが教員です。実は、多くの大学では教員は就職に関わることがありません。それは、研究者として長年その道を極めてきたような教員は、社会との接点が少なく、特に企業との関わりを積極的に構築しているのは、積極的に社会との関わりをもって研究活動を進めている教員か、オーナー系の大学で、就職活動に対する明確なアプローチやサポートを教員に義務付けているような大学です。例えば教職員(協働)によって組織される就職委員会が中心となって、すべての学生の希望や上位企業への就職実績の積み上げを基本として、就職率を向上させるために支援していく例もあります。また、理事会・評議員会、同窓会・後援会などの協力体制で求人情報を集めたり、OBやOGなどに依頼したりするなど、あらゆる手を尽くして手厚く就職支援を行います。

特に専門性の強い学部や学科を持つ場合には、専門職者の就職先を確保するのが極めて難しく、全く異なる業界への就職が多くなってしまうと、その実績はすぐに負の評判となって拡散し、学生募集に強く影響してくる可能性があります。したがって、専門教員のアシストやサポートなどが極めて重要になります。きめ細やかな支援体制が、就職決定率を100%という結果に結びつけていきます。

大学における駆け込み寺の「就職相談室」

就職相談室には就職相談員(職員・教員)が輪番で常駐し、学生の求めに応じて学生の就職に関する相談に応じます。就職相談室には、就職に関する最新の情報やデータが用意されていますが、ここへ相談に来る学生の多くは、専門性に関する疑問・質問、進むべき進路に迷う学生の相談になります。さすがに専門性の高い部分は、いくら就活のプロといえども踏み込めない領域となっています。

例えば看護職・栄養士職の求人や、工学、理化学系なども特殊性があるため、進路には強く悩むところとなります。中でも同窓会・後援会との連携協力、教職員による求人先開拓も求人の充実化を進めることになるのです。特にOB・OGなどいった方との連携は重要であり、所属する企業では、今年の募集状況はどうか、どのような人材を強化したいのか、どのような準備が必要なのかといった情報を入手し、就活対策として準備することができるため、このような連携は情報源として重宝されています。

どこの大学でも3年生になると「求職登録票」や「進路希望アンケート」などを作成し、記された「希望業界」や「希望職種」、「希望勤務地」などの内容を把握し、要望に応じて学生にアドバイスをしていきます。

就職活動において最低限知っておくべき「ルール」や「常識」、身につけておくべき「マナー」や「知識」といった指導の他に、実践教育の場を設定して徹底していきます。また、就職に関するタイムリーな情報を学生に配布しているところもあります。

さらに踏み込んでサポートしている学校では、卒業後もサポートをし続けているところもあります。高い専門性の分野では、タイムリーな求人が就活時期に関わらず入って来ることもあります。そういう場合には、学校もOB・OGの情報を駆使し、適正な人材を紹介していくことで、企業との信頼関係を築いていくわけです。

重要な知識・技術の習得を支える教務課

教務という部署は、大学の全カリキュラム構成や教務内容の全てを管理し、学生が各学年でどのように科目を履修するべきか、またはどういった手順で履修し単位を取得するかといったアドバイスをします。多くの学生は、学校の中でもっとも関わりを持つことになる部署といえます。

つまり、大学を卒業するための方法を具体的にサポートしてくれるのが教務課ということになれば、教務課も就活を進める上で重要な役割を果たすことになります。「卒業見込み」が出なければ、就職活動も進められませんし、いつまでに何を取っておかなければ間に合わないなどの状況判断は、教務課のアシストが必要になる場合もあるのです。また、成績証明書の発行など各種書類の発行は全てこの部署が行うわけです。そう考えると、卒業してからもしばらくはお世話になり続ける部署であり、学校生活における主要な相談事を一手に引き受けているのも教務課です。

就職活動には直接関わることはありませんが、資格関連情報や不足単位、取得日時や書類の発行、書類発行のタイミングなど、多くの知識や情報を把握し、的確な指示が下されますので、学生は素直に従う数少ない部署になります。


こうして、各大学においては就職支援の体制が整えられていることが分かりますが、これらを支えるスタッフの存在が非常に重要なポイントとなっています。

しかし、国公立大学の場合に大学職員となるには、「国立大学法人等職員採用試験」に合格する必要があり、次いで各大学における二次試験に合格しなければなりません。国立大学法人等職員採用試験の内容は、公務員試験に準じたものであり、安直になれるわけではありません。

最後に 国立大学法人の職員は人気職種!

この国立大学法人の職員は人気があり、採用試験対策の講座が予備校で開設されるほどであり、通常の役人になりたいというニーズは年々上昇を続けていますが、同様に学校職員に対するニーズも相当数に上ります。国立大学法人職員の募集は、欠員ありきの採用となるため、募集告知が出るのをじっと待つ必要があります。

また、私立大学の職員を目指す場合には一般企業と同様であり、求人の募集に応募して面接を受けるというケースが一般的です。

一般的な傾向としては、私学の方が就職対策要員の確保を積極的に進めているように感じます。産業カウンセラーやキャリアカウンセラーなどは、国立大学で採用するのは困難となります。それは、国立大学法人等職員採用試験の受験には年齢制限が設けられており、30歳未満でなければ受験できないからであり、なかなか専門家採用は叶わない可能性があるからです。

国立大学は私立大学よりも就職率は高くなるため、あえて積極的な就職支援を行わなくてもアドバンテージを持っているためか、さほど窮屈な就職支援は実施していないようです。

少子高齢化社会の到来による実質的な学生募集数の減少傾向への対応を含め、大学の健全成長を見込むのであれば、就職支援と実質的な就職実績を積み上げていくことが重要であり、まさに大学はレッドオーシャン対策が必要となっているのです。

本記事は、2017年5月18日時点調査または公開された情報です。
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この記事を書いた人

公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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