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地方議会の5割の議員は兼業? - 地方における「複業化」について

人口は地方から都市部に流入する傾向があり、地方では働き手がいない状態が深刻化しています。このような人手不足の地域では、1人の人が複数の役割を行うことが求められます。これを「複業」と呼びます。

本記事では地方における複業化と公務員はそれにどのように向き合えば良いのかについて考察します。

2018年12月28日更新

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目次
はじめに
地方議会の5割は兼業議員?
地方公務員は複業可能なのか?
地方における人手不足について
まとめ
地方議会の5割の議員は兼業?-地方における複業化

はじめに

人口は地方から都市部に流入する傾向があり、地方では働き手がいない状態が深刻化しています。このような人手不足の地域では、1人の人が複数の役割を行うことが求められます。これを「複業」と呼びます。

そして、「複業」は一般人だけではなく、今後公務員にも強く求められると考えられます。本記事では地方における複業化と公務員はそれにどのように向き合えば良いのかについて考察します。

(※ちなみに副業とはあくまでも主要な業務のサブとしての業務の事を指し、複業と記載した場合はそれぞれの仕事に関する主副の関係はありません。本記事ではあえて、仕事の主複の優先順位付けをする必然性は徐々に無くなっていくだろうという立場から、一部を除いて「複業」で表記を統一します。)

地方議会の5割は兼業議員?

公務員の世界において最も複業化が進んでいる職種の1つが地方議会の議員です。まずは「地方議会議員」の兼業について焦点を当てて説明します。

地方議会における兼業議員の比率

全国市議会議長会という組織が毎年調べている「市議会議員の属性に関する調」という調査があります。これはその名の通り全国の市議会議員がどのような属性を持っているかという調査で、議員の年齢や性別、在職年数などについて調査しています。その中の調査項目の1つに議員の兼業状況というデータがあります。

2018年8月の調査データによると、全国の「市議会議員」の数は約19,000人でそのうち、43.9%は専業議員です。そして、兼業議員が45.1%、その他の議員が11.0%となっています。その他には各市議会事務局が議員の職業を把握していない場合が含まれているので、実質的に兼業議員と専業議員の数は約半数ずつであると考えられます。

ちなみに、兼業している業種として多いのは、農業・林業12.0%、卸売・小売業6.0%、建設業4.1%となっています。この傾向は一貫しており、地方議会においては長らく兼業議員が多くの割合を締めています。

*市議会議員の属性に関する調 全国市議会議長会
http://www.si-gichokai.jp/research/zokusei/index.html

なぜ兼業の議員が多いのか

兼業議員が多い理由についてはいくつかの理由が考えられます。

まず、「市議会議員」として立候補できるのは会社経営者やフリーランスの自営業の割合が多くなります。サラリーマンやOLの場合、選挙のために長期間休職するのは困難で、仕事を辞めてまえ立候補しようというインセンティブは湧きにくいです。よって、自由に時間を使える経営者やフリーランスの方が立候補しやすい環境があります。そして、これらの職業は自分で時間さえコントロールすれば議員活動と両立することができるのでそのまま働く人も多いです。

また、「市議会議員」だといっても、1年中議会に拘束されるわけではありません。議会に拘束されているのは、1年間のうち数か月だけで、1年の半分以上は自分の仕事をしたり、選挙対策をしたり自由に時間を使えます。よって、他の職業よりも兼業しやすい傾向があります。

さらに議員の仕事は安定しません。いくら長い間真面目に仕事をしていても、選挙で当選できなければ失職してしまいます。そして、今の日本において、40代や50代からの再就職は非常に厳しくなります。よって、失職したときのリスクヘッジとしてそのまま元の仕事も確保しておく議員もいます。

ちなみに、議員報酬が少ない地域ほど議員の兼業率が増加します。例えば、2018年11月に神戸新聞が発表したデータによると、兵庫県内の市町村議会について議員報酬が少ない地域ほど兼業議員の割合が多くて報酬が一番多い神戸市で月額報酬93万円兼業率29%、2番目に報酬が少ない香美町では月額報酬21万円で兼業率100%となっています。さらに議員報酬は人口規模とも連動していて、人口規模が少ない12市町村の兼業率は59.8%とその他の29自治体の兼業率39.1%を大きく上回っていることが報告されています。

市議会議員は兼業可能なのか

ちなみに、公務員の場合は兼業が禁止されていることが多いですが、議員の兼業は法律で禁止されていないのでしょうか。地方自治法92条の2で地方議員の兼職について規定されていますが、そこで禁止されているのは議会に参加する自治体からの業務の請負に関連するだけで、基本的に兼業が容認されています。

それどころか、兼業議員に配慮しようする地方自治体もあります。例えば長野県喬木村の議会では2017年12月定例会から、兼業議員が参加しやすいように議会は平日夜や休日に開催するようにしました。喬木村では議員報酬は月約14万円で、ほとんどの人が議員と掛け持ちで他の仕事もしているために、兼業議員に配慮して議会の開催時間を決定したのです。

地方公務員は複業可能なのか?

「市議会議員」は数ある職業の中でも複業が盛んですが、一般的な地方公務員の場合、複業は原則禁止となっています。ただし、一部で複業を解禁しようという流れもあります。

公務員と複業の関係について説明します。

公務員は原則的に複業禁止

まず、一般的な地方公務員は原則として複業が禁止されています。地方公務員法38条で任命権者の許可が無しに営利企業に勤めたり自営業をしたり、そこから報酬を受け取ってはいけないという旨の規定があります。

ただし、何を持って報酬を得ているのか、どのような仕事ならばこの規定に抵触しないのかは判例の積み重ねがあります。例えば、本を出した時の印税や講演料などは一定の手続きを踏めば、地方公務員法38条の報酬に当たらずに処理できるとしている場合もあります。

公務員に「副業」は解禁されるのか

2018年の働き方革命において「副業解禁」が1つのキーワードになり、民間企業でも複業を容認する企業も現れました。しかし、公務員は法律による規制がある以上、民間企業のようには簡単に複業化することはできません。

ただし、法律に抵触しない範囲で、公務員の複業化をサポートする自治体は徐々に現れています。例えば、神戸市では2017年4月から地域貢献応援制度という制度を作って、公共性の高い仕事に関しては報酬を貰っても、公務員と兼業できるようにルールを整備しました。これに続いて奈良県生駒市なども、一定の制限の元で複業を制度化しています。

なぜ複業しても良いのか

これらの自治体が公共性の高い仕事に関して公務員との複業を容認しているのにはもちろん理由があります。

全国に先駆けて複業を解禁した神戸市の場合は、公務の公正を損なわないようにコントロールすれば、職員の複業は資質や能力の向上につながるのではないかと考えて複業を解禁しました。

このような考え方は、複業を推進している民間企業にも見られることができ、一律に複業を禁止するのではなく、決められた範囲内で職員の複業を認めようというのが社会的なコンセンサスになりつつあります。

地方における人手不足について

このように民間だけではなく、公務員においても副業を徐々に解禁しようという流れがありますが、この傾向は今後も加速していくと考えられます。

地方の実態

地方において人気の仕事の1つが公務員です。地方において相対的に高収入で仕事が安定しているのが公務員であることが多いからです。地方で公務員にならなかった場合は地元に就職する場合もありますが、都市部で就職したり、大企業の総合職として地方から離れたりすることも多いです。

よって、地方では生産年齢人口が都市部に流出して減少する傾向にありますが、地域住民の生活を維持するためには、最低限の仕事は誰かがこなさないといけません。例えば、採算が取れないからと言って、町から新聞屋さんが撤退してしまえば町の住民は新聞を読めなくなりますし、雪かきなども同様です。このように地方においては単体としては1人の人を雇うほどの市場規模は無いけれども、生活のために欠かせない仕事がたくさん発生します。消防団やお祭りのボランティア、自治会など地方の生活には助け合いが必要になります。

つまり、人口が少ない地方においては住民一人一人に求められる役割が多様化されます。そのため地方の民間企業や住民においては「複業化」が進行しています。

公務員も複業化する?

公務員については法律の規制があるので、いくらでも営利的な複業化しても良いというわけではありませんが、それでも色々な住民の1人として地域に貢献することが求められています。住民がとても少ない地域においては平日公務員だけれども、土日は実家の農作業を手伝ったり、消防団の会合や地元のお祭りにボランティアとして参加したりしているという公務員の方も多いのではないでしょうか。

つまり、法律によって規制されているけれども実態としては公務員に求められる役割は多様化していると言えます。今後、公務員にどの程度の複業が認められるかは推移を見守る必要がありますが、公務員であっても地域において複数の役割を果たさなければならないという自治体は増えると考えられます。

まとめ

以上のように地方における複業化について説明してきました。地方から地域の活動の担い手となる生産年齢人口が減少していることもあり、地方の若者にはさまざまな役割が求められます。公務員は法律によって複業が禁止されているので、民間企業ほど複業化が進んでいませんが、一部の自治体では報酬を受け取ることのできる複業も一定のルールに範囲内で解禁されています。

つまり、人口規模が小さい地域においては、公務員は公務だけしていれば良いというわけではなく、公務の他にも何らかの活動によって地域に貢献していかなければならないようになると考えられます。

ちなみに、市議会議員は色々な職業の中でも最も複業率の高い職業で、議員の約半分は議員以外の仕事を掛け持ちしています。これは、市議会議員の生活資金の確保という側面もありますが、民間企業などで経験を積んで来た人材が地方議会に参加することによって地方の生活に即した政策を行えるというメリットもあります。

法律の規制上、公務員が市議会議員のように民間などで経験を積んで生活やビジネスの実態をよく知った上で、公務を行うのは困難ですが、複業が認められてば民間の仕事から学んだ視点や考え方を公務に還元しやすくなると考えられます。

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