公務員の不祥事 – 2022年2月和歌山県海南市の職員が逮捕から考える公務員の賄賂事件(2022年2月まとめ)

2022年2月、和歌山県海南市の職員が公共工事をめぐって設計業者に便宜を図る見返りに現金を受け取ったとして逮捕された収賄事件が起きました。度々問題となる公務員と賄賂の関係について整理しました。


和歌山県海南市の収賄事件

まず、和歌山県海南市の職員が逮捕された収賄事件について解説します。

和歌山県警によると、和歌山県海南市が発注した公共工事を巡って、設計業者に便宜を図る見返りに現金を受け取ったとして、収賄容疑で海南市職員の男(46)を2022年2月3日に逮捕しました。また、和歌山市の業者社長の男(48)も贈賄容疑で逮捕したようです。

その後、別の2件の工事で、上記の2人が現金約85万円を受け取っていたことが明らかになり、2人は2月24日、和歌山県警に再逮捕されています。

公務員に「賄賂」は違法です

基本的なことをおさらいしておくと、公務員に「賄賂」を送ることは、違法です。

一般の民間企業同士であれば問題にならないことも、公務員が相手だと「賄賂」になってしまうことがあるので注意が必要です。

一番悲しいのは、悪気が無いのに法に触れてしまうという事態だと思いますので、自治体や公務員を相手に仕事をするという場合には、下記の記事も参考に、気をつけて対応することをお勧めします。

【賄賂キケン!】公務員とお仕事する上で気をつけるべきこと まとめ

公務員による「汚職事件」の状況

総務省の調査によると、2019年(平成31年)4月1日から2020年(令和2年)3月31日にかけて、公務員が起こした汚職事件のうち、収賄事件は18件、全体の約22%でした。最も多い横領事件に次いで、2番目に多い汚職事件が、海南市のような収賄事件のようです。

また、上記期間中に汚職事件に関係した職員は、都道府県職員が20人、市町村職員が69人となっています。

平成30年のデータですが、都道府県職員が約138万人、市町村職員は約135万人と、全体の人数を比較するとほぼ50%ずつなのに対し、汚職事件については明らかに市町村職員の方が関係しやすいということがわかります。

より地域に密着した仕事が多い市町村職員の方が、事件を起こしやすい環境にあるということでしょうか。


公務員の汚職事件の件数、団体数、関係職員数
出典)汚職事件について

▼参考URL:総務省|平成30年地方公共団体定員管理調査結果の概要(外部サイト)

公務員の収賄事件

海南市の収賄事件に関連して、近年発生している公務員の収賄事件についてご紹介します。

農水省・元農水相が大手鶏卵業者から年間200万円を6年間受領した収賄

大手鶏卵業者「アキタフーズ」の秋田前代表が、合計で1800万円にものぼる賄賂を吉川貴盛・元農林水産相に渡したとされる贈収賄事件をめぐって、前農林水産相の西川公也・元衆院議員も、同じ企業から毎年200万円を約6年間にわたって受け取ったと認めたという事件です。

西川元農水相は、「賄賂に当たる可能性がある」と考え、政治資金収支報告書には記載しなかったとも供述したといい、賄賂の可能性に気づきながらも受け取りを繰り返していたようです。

朝日新聞によれば、アキタフーズ秋田前代表からは、賄賂と一緒に「多種多様な要望」を受けたといい、実際に賄賂の見返りとして、養鶏業界に有利になるよう、業者に不利益になるような法整備に反対する、政府機関に要望を伝えるなど、さまざまな働きかけをおこなっていたようです。

▼参考URL:朝日新聞|「賄賂の可能性」 西川公也元農水相受領認める 年200万を6年間(外部サイト)

岐阜県岐阜市の水道汚職、加重収賄事件

岐阜県岐阜市では、水道工事についての収賄事件が発生しています。

事件の内容は、当時、上下水道事業部施設課管理監だった大野被告は、2019年9月、岐阜市の配水管敷設工事の入札で澤田被告の業者に落札させようと、秘密事項である最低制限価格を澤田被告に教えたというものです。

大野被告は、謝礼と知りながら自宅のマンホールの修繕工事代金6万4800円の支払いの免除を受けたということで、事実上6万4800円の賄賂を受けたことになっています。

また、2021年8月に澤田被告が落札した工事でも、工事の情報を不正にやり取りしていたとされています。

▼参考URL
中日新聞|岐阜市水道汚職、有罪 加重収賄、元市職員に地裁判決
(https://www.chunichi.co.jp/article/414771)

岐阜新聞|元市職員と元工事会社社長に有罪判決 岐阜市水道汚職
(https://www.gifu-np.co.jp/articles/-/41284)

兵庫県尼崎市の水道汚職、加重収賄事件

兵庫県尼崎市でも、配水管敷設工事について公表されていない秘密事項の設計金額を業者側に教えた見返りとして、現金180万円を受け取った尼崎市水道建設課の26歳の技術職員が逮捕されました。

さらに、同じ水道建設課の33歳の職員も別の工事で、この業者から現金30万円や、イタリア製ブランドの高級財布を受け取った容疑で逮捕されました。

業者側にも逮捕者が出ており、贈賄・官製談合防止法違反・入札妨害容疑で市内の土木工事会社社長と経理・契約担当の女性社員が逮捕されています。


残念ながら比較的若い職員が逮捕される事件だったようです。

▼参考URL:ラジオ関西トピックス|「秘密の設計金額教えたら、お金が手に…」現金180万円賄賂判明 尼崎市・贈収賄事件 捜査終結(外部サイト)

公務員ではないけれど、話題になった「日大理事長の収賄、脱税事件」

公的な立場の人物による大規模な収賄、脱税事件について、話題になったのが日大理事長の事件です。

日本大学の田中前理事長は、背任事件で起訴された大阪市の医療法人の前理事長や日本大学の元理事から受け取ったリベートなど、およそ1億1800万円の所得を隠し、2020年(平成30年)と2021年(令和元年)の2年間に、合わせて5200万円を脱税したとして所得税法違反の罪に問われています。

》参考URL:NHK|日大 田中前理事長 脱税の罪 来月15日に東京地裁で初公判
(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220118/k10013436461000.html)

まとめ

このページでは、和歌山県海南市で発生した公共工事をめぐる賄賂事件に関連して、公務員への賄賂は違法になるという注意事項を改めてお伝えするとともに、近年で発生した公務員の他の収賄事件に次いてもご紹介しました。

国家公務員が絡んだ元農水相の事件では、法律の制定に関して便宜を図ったり、政府機関への業界からの要望を伝えるなど、見返りも金額も大規模な賄賂が目立ちました。さらに、歴代の大臣に賄賂が渡されていたという、悪しき慣習も明るみに出たようです。

また、各市で発生した汚職事件については、いずれも公共工事をめぐって、業者が入札できるよう秘密の最低入札価格を伝えるなど便宜を図ることで見返りを受け取るといった内容でした。1件1件の金額や物品の内容こそ農水相の事件には及びませんが、同様の事件が全国の自治体で多発していることがわかります。

また、尼崎市では若い技術職員が生活費の足しのために情報を流したとも報じられており、若い職員がこのような事件に巻き込まれないような取り組みも必要になってきそうです。

本記事は、2022年2月28日時点調査または公開された情報です。
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