はじめに
小論文・作文の書き方については、ハウツー本やインターネット上での掲載情報も多くあります。
しかし、実際に、そのような書き方に従って書いてみても、模擬試験などで思うように結果が伸びないということはありませんか?
ここでは、小論文・作文を書くにあたって、もしかしたら、「ついやってしまっていること」または「やっていないこと」についてご紹介します。
シリーズ最初の1回目は、「ついやってしまっていること・やっていないこと」(方式・表記編)です。主な内容は、小論文・作文を書く際に、文章の内容を考える前に心がけたい方式的な面での文字の表記の仕方や間違えやすい漢字などです。
小論文・作文の基本的な書き方について
小論文・作文の書き方として、たいていは、「序論」・「本論」・「結論」を基本として、「主題」→「主題の論拠」→「具体例」→「結論」の順にまとめていけば良いとされています。
しかし、小論文には、課題文を読んで要約を書き、その後、「あなたの考えをまとめよ。」と問われるものや、テーマだけ挙げられて「あなたの考えを述べよ。」とあるもの、就職用の「志望理由書」や「就職作文」など、いくつかのパターンがあり、その全てに一般的な「小論文の書き方」を当てはめるのは難しいかもしれません。
また、自分では小論文の書き方通りに書いているつもりでも、なかなか点数が上がらないということは、「何かをやってしまっている」または「何かをやっていない」と言う可能性があります。
小論文・作文の採点について
小論文・作文の模擬試験を受けると、大抵は、総合的な判定だけでなく、方式的な項目と内容的な項目とに分かれて評価されているのではないでしょうか?
また、小論文・作文の通信講座などでは、このような評価の他に、最後に文章全体を包括したコメントが書かれていたり、原稿用紙に赤字で加筆・削除(添削)されていることもあると思います。
これからシリーズ5本にわたり、小論文・作文の「方式的な面」と「内容的な面」とに分けて、説明して行きます。
小論文の方式的な面については、添削された内容を次に生かすことができれば、簡単に評価を上げることができます。
シリーズ1本目は、方式の中でも表記や間違えやすい漢字などを確認してみましょう。
小論文・作文の採点「方式」(表記)について
小論文・作文の採点「方式」その1:文字の表記
小論文・作文の方式的な採点は、文字の濃淡・外観についての項目があります。
小論文・作文で文字を書くことは当たり前ですが、実はここでも評価がつきます。この項目でランクを下げるのは勿体ないと思います。
小論文・作文で書いている文字が原稿用紙のマス目から、「はみ出ている」、「小さすぎる」、「薄すぎる」、「走り書き」で読みづらいということは、ないでしょうか?
「文字は体を表す」と言いますが、丁寧に文字を書くことは採点者への礼儀でもありますし、時には、文字が書いている人の人柄として判断されてしまうこともあります。
たとえば、文字が「はみ出ている」「走り書き」などの場合には、横柄で面倒くさがりな印象を与えますし、文字が「小さすぎる」「薄すぎる」場合には、どこか自信が無く、オドオドしている姿を連想させてしまいます。
何も、習字やペン字のお手本のような美しさは必要ありません。丁寧に楷書で書き、はねるところ、止めるところなどを忠実に守り、原稿用紙のマス目に収まるように書けば、この項目では高評価がつきます。
小論文・作文の採点「方式」その2:文字(漢字)の誤記
小論文・作文の方式的な採点は、漢字の誤字や送り仮名の誤用が減点項目となっています。
小論文・作文に限らず、常日頃から、誤字を書かないよう意識する必要はあります。特に、携帯電話やパソコンの使用頻度が高い現代ですので、読めるけど書けない…ということも多いと思います。
小論文・作文では、よくある「誤字」には実際に無い漢字を作ってしまうか、当て字を書いてしまうかですが、いずれも、よく間違えられる漢字は共通しています。下記に例を挙げてみましょう。
・よく間違えられる「漢字」の例
(1)「達」の下三本の横線を二本「幸」と書いてしまう。
(2)「勉」の「力」を「ム」と書いてしまう。
(3)「宰」の「辛」を「幸」と書いてしまう。
(4)「魅」の「ム」を書き忘れてしまう。
(5)「備」の「用」を「冊」と書いてしまう。
(6)「企」の「止」を「正」と書いてしまう。
(7)「庭」の「廷」を「延」と書いてしまう。
・熟語などの当て字
(1)じっせき
誤:実積 → 正:実績 (ノ木偏ではなく、糸偏が正解です。)
(2)せいいっぱい
誤: 生一杯 → 正:精一杯 (ビールではないので「精」が正解です。)
(3)いんしょう
誤:印像 → 正:印象 (「象」が正解です。)
(4)ごしんじゅつ
誤:護心術 → 正:護身術 (身を護る方が正解です。)
(5)はっき
誤:発輝 → 正:発揮 (手偏が正解です。)
(6)あきらめる
誤:締める → 正:諦める (しめるではないので、「諦」が正解です。)
(7)どりょく
誤:怒力 → 正:努力 (怒るわけではないので「努」が正解です。)
(8)せいりょくてき
誤:勢力的 → 正:精力的 (「せいりょく」部分は同音異義ですが、「精力」が正解です。)
(9)ささえる
誤:在える → 正:支える (なぜこうなったのでしょう?「支」が正解です。)
(10)けっして
誤:結して → 正:決して (結論ではないので「決」が正解です。)
(11)せっきょくてき
誤:績極的 → 正:積極的 ((1)の逆で、糸偏が正解です。)
(12)こうぎ
誤:講議 → 正:講義 (間違えやすいですが、「義」が正解です。)
(13)にんたい
誤:認耐 → 正:忍耐 (認めるではなく、「忍」が正解です。)
(14)きょり
誤:巨離 → 正:距離 (足偏が必要ですので、「距」が正解です。)
(15)じしん
誤:自心 → 正:自信 (心ではなく、「信」が正解です。)
(16)かつやく
誤:活役 → 正:活躍 (役者限定ではないので、「躍」が正解です。)
(17)せかいかん
誤:世界勧 → 正:世界観 (勧めるではなく、「観」が正解です。)
(18)かんしょう
誤:歓賞 → 正:鑑賞 (歓ぶではなく、「鑑」が正解です。)
(19)せんぱく
誤:船拍 → 正:船舶 (手偏ではなく、舟偏が正解です。)
(20)しいく
誤:仕育 → 正:飼育 (育てる仕事の「飼育」が正解です。)
(21)もつ
誤:持つ → 正:待つ (やりがちですが、「待つ」が正解です。)
(22)せんもん
誤:専問 → 正:専門 (間違えやすい熟語です。また、「専」の右上に「`」を打たないよう注意しましょう。)
(23)どんよく
誤:貧欲 → 正:貪欲 (一見似ていますが、「貪」が正解です。)
(24)かんぺき
誤:完壁 → 正:完璧 (土ではなく玉なので、「璧」が正解です。)
(25)ひつよう
誤:必用 → 正:必要 (用いるではなく、「要」が正解です。)
(26)かんたん
誤:簡巣 → 正:簡単 (木ではなく十なので、「単」が正解です。)
(27)しょうじん(します)
誤:精神 → 正:精進 (同音意義ですが、意味で「精進」が正解です。)
(28)いっち
誤:一到 → 正:一致 (偏は同じですが、「致」が正解です。)
(29)かんきょう
誤:還境 → 正:環境 (しんにょうではなく、王偏の「環」が正解です。)
(30)ひなん
誤:避勤 → 正:避難 (一見、似ていますが、「難」が正解です。)
(31)まぢか
誤:真近 → 正:間近 (間違えやすいですが、「間」が正解です。)
(32)じっさい
誤:実祭 → 正:実際 (阜偏が必要なので、「際」が正解です。)
(33)てきかく(に指示する)
誤:適格 → 正:的確 (同音異義語なので、意味を覚えましょう。的を外れていない意味なので、「的確」が正解です。)
(34)しょうかい
誤:招介 → 正:紹介 (手偏ではなう、糸偏が正解です。)
(35)じょじょ
誤:除々 → 正:徐々 (阜偏ではなく、行人偏なので、「徐」が正解です。)
(36)しょうとつ
誤:衡突 → 正:衝突 (紛らわしいですが、大ではなく土なので、「衝」が正解です。)
(37)きょうちょう
誤:共調 → 正:協調 (意味は合ってそうですが、「協」が正解です。)
(38)まけ
誤:敗け → 正:負け (同上です。「負」が正解です。)
(39)しゃっきん
誤:惜金 → 正:借金 (立心偏ではなく、人偏なので、「借」が正解です。)
(40)しゃそく
誤:社足 → 正:社則 (「規則」のことですので、「則」が正解です。)
(41)かてい
誤:週程 → 正:過程 (読み方から考えても、「過」が正解です。)
(42)こうにゅう
誤:講入 → 正:購入 (言偏ではなく、貝偏なので、「購」が正解です。)
(43)こうちく
誤:講築 → 正:構築 (言偏ではなく、木偏なので、「構築」が正解です。)
(44)ていたい
誤:低退 → 正:停滞 (滞るイメージなので、「停滞」が正解です。)
以上が、実際に、多数の答案に書かれていている熟語などの誤字です。
紛らわしい文字も多いので、もし、あなた自身も「やってしまっているかも…」と思ったら、確実に正しく書けるようにしておきましょう。
小論文・作文対策1のまとめ
いかがでしたか?
文字が薄かったり、作文用紙からはみ出ている答案はランクが下がることがあります。また、うっかり間違えそうな漢字も多かったと思います。
小論文・作文対策1「方式・表記編」は、「ついやってしまうこと」の方が多いと思います。
小論文・作文を書く上で、「方式・表記編」は、「スタートライン」です。スタートでつまずいてしまうと、これから先の道中は「いばらの道」になると言っても過言ではないでしょう。
逆に言えば、意識して書くだけで直ぐに成果も出ますので、ついやってしまわないよう、気をつけて書くようにしましょう。
次回は、小論文・作文対策2「ついやってしまっていること・やっていないこと」(方式・ルール編)です。
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