「エコバッグ」をめぐる正しい理解と誤解。環境省の立場は?(2019年の記事)

皆さんがなんとなく実践している「エコ活動」のひとつに、買い物での「エコバック」使用があります。

今回は、「エコ活動」のひとつである、買い物で「レジ袋」を使わずに「エコバック」を利用する「マイバック持参運動」について、「#一般人の方が時々誤解しておられること」として発信された問題をご紹介します。


はじめに

公務員にとって業務上で関わる人も多いのが環境問題だと思います。「環境問題」といっても様々ありますが、「ごみ問題」については環境省はもちろん、各地方自治体はごみ処理を担当する現場の最前線でもあり、「国家公務員」と「地方公務員」どちらにも共通の課題と言えます。

ごみ問題の解決には、国民や住民の理解と協力が不可欠ですが、実は人々が良かれと思って、なんとなく実践している「エコ活動」についても、本当に「エコ」と言えるのか、科学的根拠を問う声もあります。

今回は、「エコ活動」のひとつである、買い物で「レジ袋」を使わずに「エコバック」を利用する「マイバック持参運動」について、「#一般人の方が時々誤解しておられること」として発信された問題をご紹介します。

「レジ袋」の有料化が進んでいる

近年スーパーなどが盛んに実践しているのが「レジ袋」の削減です。自治体によっては「レジ袋」を有料化することを条例で義務付けているところも出てきており、東京都杉並区では2008年から自主的に「レジ袋」を有料化し、「レジ袋」の利用率が下がるなど一定の成果を上げているようです。

従来、「レジ袋」はごみ袋や汚れ物を入れたりして再利用している家庭も多く、生活の必需品とも言える存在でした。しかし、「レジ袋」を製造する過程で石油資源を大量に消費することや、昨今では「レジ袋」などのプラスチックごみによる海洋汚染の深刻化が世界的な問題となっており、レジ袋のみならずプラスチックごみ全体の削減が急務という考え方が広まっています。

国連環境計画(UNEP)の調査では、日本は世界でもアメリカに次ぐ2番目に一人当たりの「プラスチックごみ」の排出量が多い国のようです。「レジ袋」などの「プラスチックごみ」は資源としてリサイクルも進んでいるのですが、特にレジ袋についてはリサイクルされずにリサイクルシステムをすり抜け、汚染問題につながっているとも言われています。「レジ袋」については利用そのものを減らすことが、ごみ削減につながると考えられています。

環境省も「レジ袋有料化」で「レジ袋削減」を目指す

環境省は2020年にスーパーやコンビニなど国内のすべての小売店を対象に、レジ袋有料を義務化しようという準備が進められています。2018年には、2020年に「容器包装リサイクル法」を改正することも視野に入れ、環境省による素案が発表され、具体的な数値目標としては、「レジ袋」を含む使い捨てプラスチックごみの排出量を2030年までに25%削減するなどの案が盛り込まれました。

環境省自ら「レジ袋を有料化すべき」との発言もあり、日本政府としては海洋汚染防止のためにプラスチックごみ削減に向けて、国内外にアピールしていきたいようです。

環境省では、子供向けと大人向けの小冊子を作るなどして、レジ袋削減を呼びかけています。

環境省ホームページ>「容器包装リサイクル法:小冊子まなびあいブック」
https://www.env.go.jp/recycle/yoki/b_2_book/index.html

「#一般の人が誤解しておられること」とは?

「レジ袋」の代替品として登場したのが、「エコバッグ」や「マイバッグ」などと呼ばれる、ポリエステル製やナイロン製などの買物用カバンです。


ツイッターなどSNSで発信される「#一般の人が誤解しておられること」というハッシュタグ付きで紹介されたのは、1枚の「レジ袋」より1枚「エコバック」を作る方が、より多くの石油を消費することを、多くの人が知らずに誤解しているのではないか、という指摘でした。

その主張は「エコバックを使ってレジ袋を断れば資源の節約」になるという考え方は誤りで、「エコバックを作る方が石油資源を大量に消費する」というのが正しいというものです。

たしかに、「レジ袋」を作るために使用されるのは石油の「カス」の部分で、どちらにせよ出てしまうため、石油全体の消費量にはあまり影響しないという専門家もの指摘もあります。一方で、レジ袋の代替品として提案されている「エコバッグ」は、石油の「カス」では作れず、より多くの石油を消費することになってしまうようです。

つまり、「エコバッグ」を使って「レジ袋」を断れば、すべてが資源の節約につながり「エコ」であるのかというと必ずしもそうではありません。「レジ袋」の代わりに石油製品である「エコバッグ」を新たに大量に生産したり、それを数回使っただけですぐ買い換えるなど何枚も購入したりするのは「エコ」とは言えないようです。

本当に「エコ」な「エコバック」の使い方とは?

素材にもよりますが、1枚の「エコバック」を製造するのに使う石油の量は、「レジ袋」を10枚から20枚製造するのに使う石油量に相当するとも言われています。「エコバッグ」を20回使えば、「レジ袋」よりも「エコ」だという考え方もあるようですが、どちらもプラスチックごみの一部である以上は、廃棄する時に気をつけないと海洋汚染につながってしまうおそれがあります。

先ほどもご紹介した環境省の小冊子「まなびあいブック」では、「レジ袋」の代わりとして「風呂敷」の活用方法を紹介するなど、「エコバック」以外の代替策も提案しています。

まとめ

今回ハッシュタグを用いて「#一般人の方が時々誤解しておられること」として発信されたのは、「エコ」だと信じられている行動が、じつは「エコ」ではない可能性があることへの問題提起だったように思います。

環境省が発信するように、環境保全のため、「プラスチックごみ」の削減そのものが必要なことについては異論は無いと思われますが、「レジ袋」の代替品については何が適切なのか、今後も検討が続けられると思います。

例えば「レジ袋有料化」に伴って、小売店が石油を使うような素材や、廃棄方法を間違えると海洋汚染につながるような素材で、店舗オリジナルのエコバックを、利益率を上げるために大量生産し、消費者が使い捨てにしてしまうとか、売れ残ってしまった在庫を大量処分するようなことがあっては、「レジ袋」を使う場合と何も進歩がありません。

このような問題点があることも分かった上で、まずは「レジ袋有料化」によって「レジ袋」の使用がそのもの削減され、日本の「プラスチックごみ」が削減されるのかどうかが、世界的にも注目されていると言えます。

本記事は、2019年1月24日時点調査または公開された情報です。
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