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「超過勤務の刑務官」- 幹部より手取りが多い刑務官の裏事情

超過勤務いわゆる残業が多少どころか、とても多い「刑務官の実態」についてのコラムです。その手当がほしいばかりに、一般職員以上の役職の副看守長以上の階級は対象外で、なりたがらないというわけです。記事は、刑務官など矯正職員歴37年、元・国家公務員の小柴龍太郎さんが執筆。

2017年06月15日更新

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目次
超過勤務が多少どころかとても多い「刑務官の実態」
刑務官が扱うのは「人間」である
副看守長以上の階級で役職につくと、手当の恩恵は受けられません
まとめ
「超過勤務の刑務官」- 幹部より手取りが多い刑務官の裏事情

刑務所で勤務するようになってほどなく、「超過勤務の刑務官」という言葉を耳にしました。

それだけを聞くと「刑務官は超過勤務が多い」とマイナスのニュアンスが感じられますが、実は「刑務官は超過勤務手当が多い」という意味なのです。つまり「刑務官って手当がもらえていいよなあ」というプラスの雰囲気を持った言葉なのです。

公務の世界では、基本的に超過勤務をしなくても仕事が回るようになっています。超過勤務はあくまで例外で、勤務時間内にどうしても仕事が終わらなかった場合にやむなく時間外に勤務するということになっています。

といってもこれは理屈の世界で、実際のところは多少の超過勤務は日常的にあると思っていていいでしょう。

超過勤務が多少どころかとても多い「刑務官の実態」

しかし刑務官の場合には、この超過勤務が多少どころかとても多い。常態的に多いのです。その背景には、刑務所には1日中受刑者がいて、それが1年365日続き、彼らが寝ていても刑務官は巡回などの勤務に就きますが、一方で刑務官の数が不足しているという背景があります。そのために、どうしても時間外勤務に従事して、勤務をつなぐ必要があるのです。

仮に1分でも、誰も勤務していない時間帯があることは刑務所では許されません。そういう隙間を埋めるためにほかの刑務官が超過勤務をせざるを得ない。そのような構造なものですから、財政当局もそれを理解してくれて超過勤務手当の予算をくれる。予算があるから働けば金が入る。このようなことになっているのです。

刑務官が扱うのは「人間」である

「刑務所は生物(ナマモノ)を扱う。一般官庁は干物(ヒモノ)を扱う」と言った人もいます。刑務所は生きた人間を扱うが、普通の官庁は文書を扱うくらいの意味です。文書なら明日やっても大丈夫なこともありますが、人間はそうはいきません。「今日は刑務官の数が少ないので1食抜きにしまーす」などと言ったら暴動になります。

また、刑務所では時々ハプニングがあります。例えば木工場(「工場」とは受刑者が働く作業所のこと)から金づちが1本無くなったとします。そうすると刑務所ではそれが見つかるまで徹底して探します。金づちは凶器になり得ます。それが無くなったということは、受刑者がそれを隠し持っていて誰かを襲うかもしれません。そんなことをされてはたまりません。そこで徹底して探す。工場の中はもちろん、受刑者全員の身体検査や持ち物検査、それでも見つかなければ部屋の畳を上げたり便器の中に金属探知機を入れたりして調べます。

こうなると大量の職員を動員しなければなりませんから、結果として職員の超勤は大幅に増えます。刑務官はヘトヘトになりますが、奥さんはニコニコとなります。月給日になるといつもより多くお金が入るからです。

このような事情がありますので、刑務所が平穏無事に過ぎていくと奥さんの顔は次第に暗くなっていくのです。

副看守長以上の階級で役職につくと、手当の恩恵は受けられません

ただし、この超過勤務手当の恩恵を受けられるのは一般職員に限られます。

階級でいうと副看守長以下。看守長以上の階級で役職に就いている刑務官には出ません。これら幹部にはいわゆる管理職手当(俸給の特別調整額)が出ており、時間外勤務は織り込み済みとされているからです。結果、幹部より一般職員の方の月給が多いという逆転現象が起きます。特に若手の幹部の場合は管理職手当が少ないのでその差が顕著です。幹部がカローラに乗り、部下がベンツに乗っているなどというのは珍しいことではありません。

まとめ

このようなことがあるものですから、刑務官は出世を望まない(幹部になりたがらない)という別の困った現象も生じているのです。

(小柴龍太郎)

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