2026年1月1日よりハワイ州で実行予定の新課税制度「グリーンフィー」法案は、従来とは異なる一面を持った観光税です。環境維持対策の費用を観光客にも一部負担してもらうことを目指していて、オーバーツーリズムに悩まされている日本でも検討されるべき取り組みではないかと注目しています。
ハワイの宿泊税とリゾートフィー
アメリカの観光地にあるホテルでは、宿泊代金に対し〇%という税率で宿泊税が請求されます。州の法律や郡の条例によって税率は変わりますが、例えば現在オアフ島で宿泊によってかかる主な税金は、
- 州の宿泊税トランジット・アコモデーション・タックス(TAT)10.25%
- オアフ郡の宿泊税 3%
- 一般消費税 4.712%
の3つで、これらを全て合計すると、ホテルの宿泊料金に対し約18.25%の税金が上乗せされる計算になります。ハワイ州の宿泊税率は全米の中でも非常に高い部類に入るのですが、宿泊税以外にもかかる料金があります。例えば、滞在中にレンタカーを借りれば別途の州税や利用料がかかります。また税金以外にも、リゾートライフを充実させるサービスを提供するという名目で、一泊あたり50ドルのリゾート料金が宿泊費に追加され、レンタカーを停めるのにホテルの駐車場を使えば更に30ドル追加され、毎日合計80ドル、宿泊料金が増えます。
オアフ島での買い物にかかる消費税率は4.712%なので日本の半分以下ですが、物価自体が高いので税金の安さはほとんど実感できません。レストランで食事をすると消費税のほかにチップを払わないといけません。チップの支払いはアメリカの習慣なので特に問題は感じません。しかし問題はその金額です。大抵は20%くらいを食事代に上乗せして払いますが、お会計の際に支払端末に表示されるチップの推奨金額が25%、27%、30%という場所も少なくありません。プレッシャーに負けて推奨金額のボタンを押してしまうと、最終的な支払い金額に驚くことになると思います。
観光客がハワイの環境に与える大きな負荷
もう既に約18%の税金とリゾートフィーやチップなど、様々なサービス料金が加算されているのに、更に新たな税金であるグリーンフィーを取り入れるべきだと考えるのは、グリーンフィーが単なる財源確保のための課税措置ではなく、観光客にも環境保護の責任を共有してもらうと言う、新たな観光のあり方を示す試みだからです。
ハワイ州の経済は観光業に大きく依存していて、州のGDPの約20%を占めるとも言われています。金額にするときっと何百億円にもなる大きな利益を産んでいるはずです。しかしその一方で、交通渋滞や駐車場の混雑、騒音問題、私有地への無断侵入や、ゴミの不法投棄など、地元に住んでいる人達にとっては観光業による恩恵よりも、負担ばかりが目に付くのが現状です。美しい景観や地域文化が観光資源として消費されるばかりで、自分達にはオーバーツーリズムの皺寄せだけが押し付けられていると感じれば、増え続ける観光客に対して不満の声を上げる人が出てくるのも無理はないと思います。
税金は何にどう使われるのかが肝心
そうした中で導入が決定されたグリーンフィーは、既存の宿泊税とは別会計になっていて、宿泊税の増税分となる0.75%が、ハワイの環境保全プロジェクトに充てられます。このように使い道がはっきりしているうえに、財源は宿泊施設の利用者やクルーズ船の乗客などが対象なので、住民への経済的負担は最小限に抑えられるように工夫されています。税の使い道には住民からの意見が反映されるので透明化もなされていて、オーバーツーリズムの被害を受けている住民の不満も軽減されるのではないでしょうか。
増税による懸念と課題
グリーンフィー導入後に一番懸念されているのは、増税の影響で旅行者離れが起こり、ハワイ経済への悪影響が出るのではという点です。実際金銭的負担が増える事を理由にハワイに来なくなる人はかならず出てくると思います。しかしだからと言って、このまま何も対策を講じなければ、観光で得る利益よりも、もっと大切なものを失ってしまうのではないでしょうか。
これからの時代に求められるもの
世界中の人々から愛されるハワイという場所を長期的に守り続けていくためには、地元住民や行政の努力だけではなく、観光客一人ひとりに協力を求めるという発想は、むしろ自然な流れではないかと思います。またオーバーツーリズムに悩む観光地はハワイだけではなく世界各地にあり、日本国内の観光地でもオーバーツーリズム対策が大きな課題となっているのではないでしょうか。今回のハワイ州の挑戦は、同様の課題を解決していくモデルケースとして、日本でも検討されるべきアプローチの一つではないかと思います。
まとめ
ハワイ州のグリーンフィーは、ただの増税措置ではなく、観光で得られる経済的恩恵の一部を未来への投資として還元する政策です。日本をはじめとするオーバーツーリズムに苦しむ国々には、持続的な観光のあり方を考える良い参考例になると思います。


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