トランプ政権に変わり、不法移民の強制送還がかなりスピーディに行われています。しかしその一方で、非人道的とも言える取り締まりに抗議の声も上がっています。
「移民のいない日」抗議デモ
不法移民が多くいるカリフォルニア州、特にロサンゼルスでは、トランプ大統領による不法移民の取り締まり方に抗議するデモが連日のように行われています。2月3日にロサンゼルスで起こった抗議デモは「移民のいない日」と名付けられ、中南米出身者を中心とした数千人の抗議者が路上を占拠し、一時車両が通行できなくなり通行止めになった場所もありました。
このような移民取り締まり政策に抗議するデモは、ロサンゼルスだけではなく全国各地至る所で行われていて、時にはプラカードや国旗、カカシのような人形が燃やされるなどの過激な抗議行動が起こる場合もあります。デモ隊と警官隊が睨み合い、一触即発の状況にもなっている様子は、まるで2020年頃に行われていた黒人に対する暴力や人種差別に対する抗議運動、BLM運動を彷彿させます。
トランプ政権下でより一層二極化するアメリカ社会
このような激しいデモ更新が各地で行われるのは、国内の不法移民擁護派と排斥派の分断がより一層進んだ結果だと思われます。不法移民擁護派の人達は、不法滞在者の多くは犯罪を起こした事がなく、ただ家族のために懸命に働こうとアメリカに来たのだと言い、合法非合法を問わず、移民はアメリカ人から職を奪おうとしているわけでもないと訴えます。また在留資格を持っていなくても、真面目に働いて税金を納めている以上、国民として扱うべきだと主張します。
それに対し移民排斥派の人達は、不法に入国している事自体が犯罪であるわけなので、滞在中にいくら犯罪を犯したことがなくても、ルールを守って入国していないことが問題であることを忘れてはいけないと言います。この意見に関しては、移民に対して否定的な感情を持っていない人達からも多くの賛同が得られています。
不法移民には反対だけれども強制送還には賛成しない人達からは、不法移民を強引に取り締まるのではなく、彼らの合意の上で一旦母国に帰ってもらい、もし彼らがまたアメリカに戻りたければ、今度は必要な手続きを行なって合法移民としてやってくればいいと言う意見も上がっています。不法滞在する側も、強制送還を恐れながら暮らす必要やアメリカ国籍の家族と一緒に暮らせなくなる心配をすることもなく、合法的に滞在したいと望んでいるのは間違いありません。
移民政策の正解はどこに
もし全ての非合法移民が同意してビザの手続きを正しくやり直せれば、それが一番の正解になると思われます。しかしそれができるのは国側がきちんとしたルールを提示した場合のみではないでしょうか。2月19日のニュースでは、トランプ政権が中南米とウクライナからの全ての移民申請を、何の前触れもなく一時停止したことが報じられました。これには政情不安などが理由で帰国が困難な亡命希望の外国人も含まれています。今まではTPS制度によって強制送還から除外され、アメリカ国内で亡命の申請が通るのを待っていた人達にも、強制送還の対象になる可能性が出て来ました。
今アメリカでは、トランプ氏の大統領令によって、突然のルール変更が幾度も繰り返されています。あまりに頻繁なルール変更に、合法・非合法を問わず全ての移民とその家族が次は一体誰が強制送還の対象になるのかと、不安を募らせているのが現状です。このようなやり方では、正規の手続きをやり直したいと申し出るような人が出てくるどころか、通関手続き地以外で違法に国境を超えてこようとする人達が、より一層増えることにもなりかねません。
まとめ
意図的に不法滞在をする人はごく少数派だと思いますし、そういった人達こそ速やかに処罰し強制送還するべきだと思います。しかし様々な事情が重なった結果、不法移民になってしまった人達を強制的に取り締まるよりも先に、不法移民を国中に溢れさせているシステムを見直さなければ、いくら不法移民を強制送還しても根本的な問題解決には至らないのではないでしょうか。トランプ政権下での不法移民対策によって国内での分断が今後より一層広まれば、事態はさらに悪化すると思われます。
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